幽霊少女と、剣士(仮題)   作:ヒラメもち

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第2話 船出

突然だが、海賊は大きく2つに分けられる。

 

ピースメインとモーガニアだ。未知なる冒険や宝を求めて航海する海賊もいれば、己の利益のために略奪さえ行う海賊もいる。その2種類の分け方を明確化することは難しく、主に判断基準として手配書が使われる。

 

また、ローグタウンは多くの住人で賑わっていて、観光のために来る一般人も多い。かつてはこの町は略奪をするモーガニアのたまり場だったらしいが、海軍が駐留し始めて治安は保持されている。そして、彼ら彼女らを引き入るスモーカー大佐はピースメインであっても、とりあえず捕らえる。

 

「だから海賊である以上、気をつけてください。」

 

「まあ、なんとかなるだろう。」

 

「……ぽっ」

 

船長である麦わらのルフィについて話せば、彼が賞金首であることから海賊だとバレた。町中で問題ごとは起こしたくないとはいえ、隠すものでもないとゾロは思っている。それよりも悩むべきことは不幸女であるペローナに懐かれたことだ。

 

誰かに名前を名乗るのは、はじめて。そうゾロに言ったペローナは名前を呼ばれる度に嬉しそうにする。いい意味で豹変したことには悪い気はしないとはいえ、町の人の微笑ましそうな視線に対して、ゾロはうんざりしていた。

 

「でも、スモーカー大佐は悪魔の実の能力者。かなり辛い戦いになりますよ。」

 

「へぇ、どんな奇想天外なことを?」

 

「身体が煙でできています。」

 

「なんだそりゃ。」

 

「自然系。そう呼ばれる部類の能力者です。」

 

「そんなやつがいるのか。」

 

「ええ。もちろん偉大なる航路でも珍しいかと。」

 

あいつらがコレクションしているから、そうペローナは小さく呟いた。曇った表情の彼女のことはまだほとんど何も知らないことにゾロは気づかされる。

 

「……ともかく早くルフィを探さないとな。たぶん処刑台にいるはずだ。」

 

「それなら、こちらです。」

 

案内されるのは、方向音痴にとってありがたいことだ。

 

「おっ、あいつらもいたか。」

 

「あの女性、お知り合いで……?」

 

「あっ、ああ。うちの航海士だ。」

 

「ホロホロホロ、そうですか。」

 

並々ならぬ気迫で尋ねられたが、ゾロは金の亡者は一味の仲間に過ぎない。そう答えた途端、機嫌良さそうに笑うペローナに対して、女ってよくわからねぇと再認識させられる。

 

「……ゾロ、ついにやってしまったか。」

「……ゾロ、海軍に行きましょう。」

 

「なんでだ!?」

 

「てめぇ、三枚に下ろすぞ!」

「あぁん!?」

 

各自買い物をしていたナミたちも同じ考えに至ったらしく集合場所を処刑台広場にした。そして、彼ら彼女らと合流した途端に、ゾロは女性誘拐を疑われた。レディーを誑かしたことにキレたサンジはゾロを理不尽に襲うが、もちろんゾロも売られた喧嘩は買うつもりだ。

 

「サンジ君、その辺にしておいて。」

 

「は~い!ナミさん!」

 

天候は悪くなってきていて、海軍や海賊も動いている。たった5人の海賊団であるし、無駄な戦いを避けるために、海に出ようとしているのだ。バギーという名を聞いたこともあって、事態は一刻を争う。

 

「あんたはこっちを手伝いなさい!」

 

「あっ……はい。」

 

ウソップやナミは船の準備、ゾロやサンジはルフィの救出。そして、ペローナはナミに引っ張られていく。ゾロと違って、彼女の淡い恋心などお見通しのようだ。もちろん、ナミははなはだ共感できないが。

 

「嵐が来る。はやく船を出す準備をしないと。」

 

「まじか!」

 

「海軍も動いているなら、メリー号が危ないわ!」

 

「くそっ、急ぐぞ!!」

 

巨大な魚を持ったウソップ、大荷物を持ったナミと一緒にペローナは走る。しかしあまり体力のない彼女なので、スピードアップした彼女には置いていかれることになる。

 

「……ゴーストリック・スペクター」

 

そう呟いた。

 

「荷物、取りに行きましょうかね。」

 

小さな、もうすぐ店じまいしてしまう酒場へ、ペローナはふわふわと飛んでいく。そして、麦わら帽子を被った未来の海賊王の話を彼女は聞いた。

 

 

 

 

***

 

その頃、ルフィは危機に瀕していた。

ルフィはバギーによって捕らえられていて処刑されそうになっている。ゾロやサンジが救援にかけつけたが、海賊団の人数が違いすぎる。もちろん実力で言えば、彼らの方が圧倒的に強いが、間に合わない。

 

「わりぃ、俺死んだ」

 

雷が、落ちた。

処刑台を破壊し、ルフィの命は尽きることはなかった。

 

 

「ホロホロホロ」

 

すごい悪運ですね、そうペローナは思った。

 

 

「なにかいるのか?」

 

 

ゾロに憑いていた人形の1体が、ポンっと消える。

もちろん、まだまだ潜んでいる。

 

 

 

***

 

 

大雨。

そしてメリー号前にはすでに、バギー海賊団幹部がいた。

 

「くそっ……」

 

「海軍まで……」

 

ナミやウソップは、ルフィたちのように化け物じみた力は持っていない。猛獣使いである敵には百獣の王であるライオンがいて、それを倒さなければならないのだ。海軍まで近づいてきていて、万事休すかと思われた。

 

「ホロホロホロ」

 

笑いながら、ペローナは傘を差して彼ら彼女らに近づく。鞄から出した絵本を広げながら、つぶやく。

 

「世界にはおもしろい人がいっぱいいる。まるでおとぎ話のよう……」

 

大剣豪を志す彼、そして海賊王を夢見る船長。

未来を切り開こうとする彼ら彼女に、惚れた。

 

「おい、お前は逃げろ!」

 

「そうよ! あんたが巻き込まれることじゃないでしょう!?」

 

「知っていますか? 東の海で有名な言葉。」

 

―――恋はいつでもハリケーン

 

「ゴーストリック・ランタン、ゴーストリック・スペクター」

 

ランタンを持った幽霊、白い布を被った幽霊が、ポンっと現れる。

 

「ぎゃ~~!!」

 

【ホロホロホロ】

 

はしゃぐように、浮遊する幽霊たち。

薄暗いこともあって、不気味さにウソップは悲鳴を上げた。

 

「もしかして能力者!?」

 

「そう、ホロホロの実を食べさせられた霊体人間。」

 

絶望で手にした、希望の力。

ペローナもなかなかの悪運を持っているということだ。

 

「幽霊ごとき、相棒がビビるわけねぇだろ!」

 

「ガウウウ~……」

 

「怖がってるじゃないの!?」

 

「ホロホロホロ、お二人はお子様ですね。」

 

「いや、俺もかよ!?」

 

しかし海軍は止まらない。だから、銃を構え始めた彼らにペローナは幽霊を近づける。彼らの周囲を楽しげに廻るゴーストは不気味だ。

 

「なんだ、こいつらは!」

「触れないぞ!?」

「ええい。害がないなら、放っておけ。」

 

「ホロホロホロ、寂しいこと言うんですね。」

 

指を鳴らせば、幽霊たちは爆発。彼らの命を奪うほどではない程度の爆発とはいえ、その音や衝撃によって隊列は乱れた。

 

「ゴーストリック・ハウス。おかえり、みんな。」

 

爆発したはずのゴーストたちは、ペローナに優しく撫でられている。そして役目を終えたゴーストたちはポンっと消えた。遠隔操作できる爆発物を扱う超人系の能力者、彼ら彼女らはそう理解した。

 

 

「今のうちに!」

 

「そ、そうだな!」

 

ナミやウソップと一緒にペローナは乗り込み、船を出した。海岸にいる海軍とはサンジが得意の脚技で交戦中、ウソップも小さなパチンコで的確に援護する。ゾロもルフィもまだ姿を見せておらず、ナミは船の上で彼らの無事を祈るしかない。もっともそう簡単にくたばる彼らではないことは知っている。

 

「あんた、さっきのは使えないの!?」

 

「……ゾロさんのストーカー、いえ監視、いえ護衛。そう護衛にいっぱい使っていますから。」

 

「怖いわ!!」

 

「それにしても、あのたしぎって女性め……ホロホロホロ」

 

たしぎという名をブツブツと呟いているペローナに、ナミはちょっと引いてしまった。

 

 

「なにか、きます!」

 

「えっ!?」

 

突風。

ローグタウン一帯に風が吹いた。

 

ルフィがゴム人間の力を使って、船に勢いよく乗り込めば無事に船出ができた。帆船であるメリー号は追い風を受け、偉大なる航路へ向かってまっすぐ突き進んでいく。麦わらの一味を追うように、海軍やバギー海賊団も出航した。

 

 

「あんたは?」

 

「ペローナと言います。」

 

「おい、暑苦しい!」

 

「てめぇ、このマリモが!!」

 

ルフィがペローナについて聞けば、ちゃんと名前を告げる。相合傘をするペローナは頬を赤くしているそんな彼女は、もう不幸女とは呼べないだろう。レディ―の近くでゾロに手を出せないサンジは歯ぎしりするしかない。

 

「ゾロさんを気に入ったので、ついていこうかと。」

 

「……まじかよ。」

「信じられない。」

「う、うそだと言ってくれ~!!」

 

「にしし、そういうことならいいぞ!」

 

自慢の仲間を褒めてくれることはルフィにとって嬉しいことだ。基本的に直感で動く船長が決めたことなら、批判するメンバーもいない。そもそも彼ら彼女らも、ルフィに気に入られたことで強く勧誘されたのだ。

 

「ホロホロホロ、ありがとうございます。ゾロさんは構いませんか?」

 

「まあ、刀のこともあるしな。だが俺が好きなのは考え直せ。」

 

「そ、それだけは……」

 

「ゾロ、いじめないの。」

 

「なんで俺が悪者扱いなんだ!?」

 

「……な、なあ。能力者なんだよな?」

 

「はい。ホロホロの実の能力者です。ゴーストリック・キョンシー。」

 

ポンっと現れた小人を追いかけたことが、ゾロとペローナが出会うきっかけとなったもの。運命ですね、と言いつつ頬を染めるペローナ。そしてゾロに対してサンジはさらに激昂する。

 

「すっげー!ペローナっておもしろ不思議なやつだな!」

 

「いや、お前もだろ、ゴム人間。」

 

「私を媒体とした霊体。だから、眠っている時に勝手に動くことがあるんですよ。」

 

「ゾロ、どんまい……」

「こいつのことだから気にせずに寝るでしょうね。」

 

「お前ら、どういう意味だ。」

 

「ホロホロホロ、この一味は楽しいですね。」

 

「おう、そうだろ!」

 

ペローナは、絵本を片手で抱きしめた。

儚くて、一味の誰よりもペローナは弱い。ゾロはそう認識する。

 

「……ゾロさん、みなさん。もし私が大変なことに巻き込まれても。」

 

―――助けてくれますか?

 

「当たり前だ。」

 

「おう、当たり前だな。」

 

ゾロやルフィが、一早く告げる。

 

「レディーを守るのは当然だ。」

 

「俺だって、先輩だからな。どんどん頼るといいぞ!」

 

「こいつらの腕っぷしは保証するわよ。」

 

ナミもその言葉に裏切られることなく、救われた。

 

 

「よしっ。進水式でもやるか。」

 

「いいな!」

 

1つの大きな樽の上に、片足を乗せていく。

 

 

海賊王や大剣豪になること、オールブルーを見つけること、世界地図を書くこと、勇敢な海の戦士になること。こうして、皆がそれぞれの夢を述べていく。

 

「お、おい‥…」

 

「ホロホロホロ」

 

ゾロの大きな背中に、ペローナは寄り添う。

ありがとう、そう小さくつぶやいた。

 

「狭い世界から、飛び出したいです。」

 

本来ペローナが望むのは、平穏。

だがしかし、束の間の静寂は彼女を確かに蝕んでいたのだ。

 

「お前ら、準備はいいか?」

 

船長が、そう告げた。

彼ら彼女らは、お互いの夢を笑わない。

 

「いくぞ!!」

「「「「「「偉大なる航路!!」」」」」」

 

 

 

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