MUR「あっ、そっかぁ…」
驚きと動揺を隠せずにいるMUR先輩。それはそうだ。
何せ今、目の前にいた虐待騎士がMUR先輩によって落下死してしまったのだから。
KMR「先輩!?なにしてんすか!?マズイですよ!?」
MUR「ポッチャマ…」
亡者「いや、これポッチャマ?で済む問題なん?」
一時的とはいえ味方として1人で立ち向かい牛頭のひデーモンを倒した虐待騎士を悪意がないとはいえ殺してしまった後にポッチャマで済む問題ではなかったのだ。
正に恩を仇で返す所業。
MUR「うう…すまないゾ騎士さん…」
流石にMUR先輩にも思うところがあり涙を流しながら虐待騎士が落ちていった場所に手を合わせながら謝罪していた。
そんな事をよそに虐待騎士が死んだ折りに現れた虐待騎士の鎧を着はじめた野獣先輩。
亡者「野獣サン!?なにしてんの!?」
野獣「え?この鎧格好いいから着たいなぁ〜って」
亡者「今そんな雰囲気ちゃうやろ…?」
野獣「どうせ敵になってたから大丈夫だって安心しろよ〜」
亡者「えぇ…」
雰囲気台無しである。
謝罪を終えたMUR先輩は野獣先輩に向き直り近づくと手を差し出した。
野獣「な、なんすか」
MUR「野獣……我が儘言っちゃうんだが、その鎧を俺にくれないかゾ?」
野獣「な、なんでですか?」
MUR「俺は悪意がなかったとはいえ騎士さんを殺してしまったんだゾ。あの人にとって俺達は敵だったのにも関わらず俺達を助けてくれたのに恩を仇で返す形になってしまったんだゾ…。ならせめて…勝手な事だけどあの人みたいな心の精神を継いでこの優しさを他の皆にもしてやりたんだゾ」
だから虐待騎士の身に付けていた鎧を形として受け継ぎたい、そうMUR先輩は語った。
今までの所業の事を考えたらそんな事出来るわけないだろ!いい加減にしろ!と言いたいのだがやはり仁義に厚いのかMUR先輩がここまで他人の事を想って自分の意思を語ったのは同じ空手部の2人にとっては初めての事だった。
亡者は驚くような顔で、KMRに至っては感動で涙すら流していた。
野獣「やだよ」
「「は?」」
野獣先輩の一言で亡者の顔は真顔になりKMRの涙は引っ込んだ。MUR先輩に至ってはポカーンと口を開けた状態である。
野獣「これ俺が最初にさわったんだから俺のもんだしー。格好いいから上げないしー。あっかんべー」
と言ってヒソカの顔になりながら笑い続けていた。
KMR「人間の屑がこの野郎…」
腹の底まで黒く人を煽る野獣先輩。MUR先輩が聖人じみた事を言ったのにも関わらず子供のように煽りまくった野獣先輩に流石のKMRも殺意を湧かずにはいられなかった。
だが――――
MUR「そうかゾ…それもそうだよな」
野獣「え?」
普通なら怒り狂い野獣先輩をボッコボコにして無理やり鎧を奪う場面な筈なのに何故か妙に落ち着き、少し悲しい顔をしたMUR先輩に野獣先輩は困惑せざるをえなかった。
MUR「どんなに綺麗な事を言ったって俺は騎士さんを殺してしまったのだから受け継ぐなんておこがましいよな」
野獣「え」
MUR「俺みたいな人間に騎士さんの心を受け継ぐなんて騎士さんの侮辱になるよなぁ…」
野獣「え、ちょ」
MUR「野獣の言うとおりだゾ。最初に触ったのは野獣だし、ましてや騎士さんを殺した俺が騎士さんの鎧を着るなんて間違ってるゾ…」
野獣「あ待ってくだs」
MUR「野獣…我が儘を言ってすまないゾ」
そう語るとMUR先輩は後ろに振り返り前に歩きだした。
野獣「………何これは」
亡者「当たり前なんだよなぁ…」
KMR「あの三浦先輩があそこまで言うなんて僕ですら初めて見たのにこのステハゲうんこの擬人化野郎ときたら…」
野獣先輩をゴミを見るような目で見ていたら野獣先輩が少しバツが悪い顔をして
野獣「……三浦先輩が落ち込んでたのは目に見えてたから元気付けようとふざけたのになぁ……」
と言ったのだ。
亡者「限度があるやろ」
KMR「最後の方子供みたいで気色悪かったんですがそれは」
野獣「…そうするとイライラするだろ?だから三浦先輩の悲しみを怒りに変えて俺を殴らせて元気出させようとしたんだけどなぁ…しくじったんだよなぁ…」
KMR「先輩…」
流石の野獣先輩と言えどもMUR先輩の心情を理解し、先輩なりの励ましだったのだろうがそれが裏目に出てしまい余計にMUR先輩に悲壮感を持たせてしまった。
野獣先輩は走ってMUR先輩が進む道を遮る形で近づくと
野獣「先輩!俺実は…先輩が落ち込んでいたのを悟ってわざとふざけて先輩を元気付けようとしたけどちょっとふざけ過ぎました!許してください!何でもしますから!」
MUR「野獣…」
誠心誠意土下座してMUR先輩に許しを乞うていた。
それを聞いてハッとした顔をすると、土下座している野獣先輩に
MUR「嬉しいゾ〜これ!」
と、とても素敵な笑顔で手を差し出していた。
野獣「先輩!」
顔を上げて喜んだ顔をする野獣先輩。2人は全裸の状態だが抱き合い(深い意味はない)友情を確かめ合った。
亡者「ええ話やなぁ…感動や!何が日本一や!世界一や!」
KMR「何だかまとまって良かったです!」
拍手をしながや2人の友情に賛美する亡者とKMR。空手部で転生してからまだほんの少ししか経ってないが改めて友情があったのだと亡者を除いた3人は分かり合えた。
MUR「あっ、そうだ。おい野獣」
野獣「え、何ですか?」
MUR「さっき何でもするって言ったよな?」
野獣「いいましたけど…」
MUR「なら騎士さんの鎧、俺にくれないかゾ?」
野獣「当たり前だよなぁ!」
そんなこんなで虐待騎士の鎧はMUR先輩の所有者となったのだ。
優 し い 世 界
まだ続くよまだまだ続くよ!