霧がかかった入り口の前にたどり着くと一呼吸だけ間を置いた。これまでの経験上、霧がかかった入り口をくぐり抜けると恐らくまた厄介なのが現れると考え、覚悟を決めるための時間を取ったのだ。
無論、これまで出会ってきた奴らも大概だがそれでもブレブレになりそうな気持ちを落ち着かせるにはこれ以外方法がなかった。
野獣「行きますよ?行きますよ?行く行く?」
MUR「さっさと入るゾ」
押すなよ?絶対に押すなよ?という目を向けていた野獣先輩だったが、ちょっとイラついたのかMUR先輩が蹴飛ばして入り口をくぐり抜けさせた。それに続いて全員入り口をくぐり抜けた。
亡者「うーん、趣味悪い銅像やな」
KMR「そうですか?僕は親近感が沸きますよ」
教会の屋根にたどり着くと、今にも動きそうなガーゴイルの銅像が無数に並んでいた。
MUR「根暗のおやっさんが言ってたけど、もしかしてこの中の銅像が動くのかゾ?」
根暗のおやっさん曰く、教会の鐘をならす前にガーゴイルがいるからそれを倒してからじゃないと鳴らすのは不可能に近いらしい。空中を飛び回ったり、火を吹いたり武器を使ってくるとも言われている。
おまけにt-ウイルスなんて物が広まっているなか恐らくガーゴイルも変貌しているのだろう。
野獣「今度は何に変貌しているのかこれもうわかんねえな」
先輩が進むと真っ正面にある巨大なガーゴイルの像がピシピシと音を立てていた。それどころかひびも入ってきている。
KMR「先輩!あの銅像動いてますよ!」
野獣「やべえよやべえよ」
銅像は徐々に動きだし最終的に生物としてなんら変わらない動きをし始めた銅像のガーゴイル。翼をはためかせ右手に斧槍を持ち、左手に盾を構え頭に兜を着たその姿はガーゴイルとは思えない姿をしていた。
MUR「アイツもやっぱり変貌してそうだゾ」
亡者「いやごく普通におるガーゴイルやであれ」
野獣「え」
確かにガーゴイルの姿ではないだろう。ないのだが、この世界のガーゴイルは武器を携えていて当たり前なのである。変貌していないと分かるや否や野獣先輩とMUR先輩は目の色をかえるとニコニコしだすと……
野獣「殺りますねぇ!殺ります殺ります!」
MUR「いいゾ〜コレ」
と言い出し、待ってましたと言わんばかりのような勢いでガーゴイルに突っ込んでいった。
MUR先輩がガーゴイルの懐に素早く潜り込むと得意の空手でガーゴイルを攻撃すると、驚いたのか翼を使ってガーゴイルは後ろに飛んだ。
いや、正確には
鐘のガーゴイル「ゴガァ!?」
野獣「ハホーン!!」
意味不明な叫び声と共に野獣先輩は起き上がろうとしていたガーゴイルにRAIDAキックを繰り出し再び吹き飛ばす。それをチャンスと見たMUR先輩はガーゴイルの持っている斧槍を無理矢理奪い取った。
鐘のガーゴイル「ガ!?」
MUR「いいゾ〜コレ」
既に閣下の顔になっていたMUR先輩はガーゴイルの斧槍を持ってガーゴイルを切ったり突いたり殴ったりと様々な攻撃をしていた。あまりの痛みにガーゴイルは闇雲に暴れだしたがMUR先輩は全て見切り、1つの攻撃も当たらずにガーゴイルを攻撃していた。
だが、その攻撃も続くわけではなくガーゴイルが咄嗟に盾でガードしたことによってMUR先輩の攻撃は防ぐ事ができた。だが…
野獣「それ俺にもくれよなぁ!頼むよぉ〜!」
まるでカエルの飛び方のような状態で割り込んできた野獣先輩に、持っていた盾を無理矢理奪われ、馬乗りになると奪った盾で何回もガーゴイルの頭を殴り付けた。
野獣「ホラホラホラホラホラホラホラ」
鐘のガーゴイル「ガッ!?ゴエッ!グオッ!」
その姿はまるでパンチラッシュ先輩のようでバキッ、ドガッとグロテクスな音を出しならガーゴイルをボコボコにしていた。
そんな野獣先輩を余所に、MUR先輩はガーゴイルの斧槍をガーゴイルの股間部分に連続で叩きつけて「いいゾ〜コレ」と気が狂ったかのように同じ言葉を何回も発していた。
そんな混沌とした状況にKMRと亡者は股間を押さえながらかなりドン引きしており、自分に向けられている訳ではないのに恐ろしい程、威圧感を感じていた。
野獣「最後の一発くれてやるよオラァッ!」
鐘のガーゴイル「ガッ…」
最後に拳を思いっきり振りかぶり、ガーゴイルは断末魔を出すこともなく絶命した。絶命したガーゴイルはソウルとなって先輩達に取り込まれていった。
野獣「foo↑!気持ちぃ〜」
MUR「スッゲー楽しかったゾ〜」
亡者「兄さんら鬼か何か?やってることデーモンよりヤバイんやけど」
野獣「んにゃぴ…んまそう…」
亡者「都合悪いときにんにゃぴ使うなこの猿ゥ」
野獣「ウーン…」
KMR「ま、まあまあ。ガーゴイルも倒した事ですし早く鐘を鳴らしましょう!」
MUR「あっ、そっかぁ。スゲー忘れてたゾ」
先輩達は先に進むと世界を見渡せる教会の天辺辿り着きそこには大きな鐘とレバーが存在していた。
亡者「このレバー倒せば鳴るんかな?」
野獣「じゃけん、鐘鳴らしましょうね〜」
特に疑うこともなく野獣先輩がレバーを引くと心地のいい鐘の音が火継ぎの祭祀場まで響いたそうな。