閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆 作:XW
0.プロローグ
夕暮れの光が差す公園。子どもも既に家に帰って誰も居ないはずのその場所で、異様な事が起きていた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ………」
一人の学生少女が息を荒立てながら膝をついていた。その姿は何処ぞの特撮ヒーローのコスプレのようだが、その衣装も至る所が破かれており、少女の豊満な胸も少しでも破かれば丸見えになる程だった。
なぜコスプレをしている学生少女がこのような事になっているのか?
それは彼女がただの学生では無く、忍学生だからだ。
忍、影に生まれて影で散る。その影で世を支え、誰も知られる事なく戦い続ける存在。その忍になる為学生時代に忍としての知識と力を得、時に命懸けの戦いに身を投じるのを、忍学生と言う。
「ハァ……ハァ……ま、まさか、こんなに強いだなんて。」
その忍学生の一人である、県立志野塚工業高校の飛彗は、目の前の敵を見て、苦虫を噛んだような表情を見せる。
目の前に入る敵、それは飛彗と何ら変わらない少女だった。
一人はふんわりとした茶色の長髪に白色のフード付きパーカーを身に付けており、両手には武器である籠手が装備されていた。
もう一人は腰まで垂れた白髪に青い瞳、甲冑の様な紫色の胸当てを装着して大鎌を二つ手にしていた。
最後の一人は二人に比べて小柄でピンク色の前髪で目元は隠れており、赤と白のドレスを身に纏っているが、その手には大きな斧を手にしていた。
彼女達も忍らしいのだが正直な話、その実力は飛彗処か志野塚工業高校の忍学生に比べて遥かに上だった。
その証拠に、飛彗の仲間である楓、霞、蔵人は既に倒されてしまい、飛彗の後ろで気を失っていた。
「ハァ……ハァ……け、けどここで……こんな所で……」
「負けてたまるかぁあああああああああああああああああああ!!」
絶望的な状況の中、飛彗は背中に背負っていた一見見た目は特撮ヒーローの武器見たいだが中身は普通の大型手裏剣を手にしながら、目の前の三人に向かって走り出したのだが………
「………ガァ!?」
龍をモチーフにした籠手を見に付けていた少女のパンチを、まともに腹に食らってしまった飛彗は手裏剣を地面に落とし、そのまま倒れて行った。
「へっ、他に比べて耐えた方だったが、結局はこんなもんか?」
「ウゥ……デモ一人……逃シタ。」
「あちゃ~!! どうしようか? 今すぐ追いかけるのもありだけど?」
「その必要はないですわ。」
志野塚工業高校の忍学生を倒した三人の忍の少女達は、一人逃がしてしまった事を話していると、三人の仲間であろう一人の少女が現れた。
髪は白く黒いドレスを見に付けて鮮やかななのだが、その肌は黒い何かの模様に覆われ瞳も血の様に赤いその少女には三人とはまた違う危険な気配が漂っていた。
「おぉ闇か。必要はないってもしかして……」
「もう追ってを放ってるって事ですわ。それよりも龍姫、鎌倉、項羽。あなた達は先に帰りなさいな。あれは私が運びますから。」
龍姫と言う名の、先ほど飛彗を倒した少女の質問に答えた闇と言う少女は、仲間である龍姫、鎌を所持した鎌倉、そして斧を持ちながら首を傾げていた項羽に話した後、龍姫と鎌倉と項羽は言われるがまその場から去って行く。
「……さてと、こっちも始めますかね。」
それを見届けた闇は、倒れた志野塚工業高校の四人の忍学生を見下ろしながら手をかざした次の瞬間、何処からとなく茨が現れたかに思えば、瞬く間に飛彗、楓、霞、蔵人をその茨で縛り上げるのだった。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
その頃、志野塚工業高校の忍学生最後の一人である元親は、息を荒立てながら走っていた。
龍姫達三人との激戦から何とか抜け出せたのか、電車の駅員を模した忍装束は至る所が破かれており、その表所には必死と苦痛を浮かべていた。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
(早く、早くこの事を先生や上忍に知らせないと!? 今ならまだ!? まだ間に合うかもしれない!!)
とは言え元親は仲間を見捨てて逃げたわけでは無い。この事を志野塚工業高校の忍の先生や近くの忍が集まる部隊所に居る上忍達に知らせる為、楓の命で一人急いでいたのだった。
「ハァ……ハァ……も、もう少し……っ!?」
だが、それは叶わぬ事だった。一人の少女が元親の目の前に立ち塞がった。状況からして、龍姫達の仲間であろう。
「あ……あなたは、まさか……」
その少女の顔を見て口を開こうとした次の瞬間、少女は元親に向けて足を伸ばし、
ドォオン!!
何かが何かを蹴った音が響いた空。その空の下では一人の忍学生が倒れ、気を失っていた。
――人とは、罪を犯す生き物だ。自らの意思で、何時の間にか、そしてその当人すら気づかぬ内に、どのような事であれ罪を犯してしまう。
忍ならば尚更だ。忍の一つの行動が罪を産み、恨み、怒り、悲しみ、そして憎しみを産んでしまう。――
――人は絆を作る生き物だ。親、兄弟、姉妹、友達、様々な形であれ、人は絆を作る。
忍もまたしかり、古き時代から受け継がれた一族の力、親から子へ受け継がれる技、そして共に技と力を競い合う好敵手。忍もまた、様々な形で絆を作っていた。――
――罪と絆。それは人が生まれた時から定められた性なのだろう。だが、その罪が積もりに積もり、溢れ出ればどうなるか? その罪に人は、忍は、絆を信じられ続けるのだろうか?――
――これより始まる物語は、忍を志す少女達の罪、そして絆の物語である。その中で少女達は何を思い、何をしめすのであろうか? それは、まだ誰にも分からない。――
――少女達の絆は儚く、そして、美しい。――