閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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9.破忍の猛威

「焔ちゃん!!」

 

「おぉ飛鳥。」

 

 

 半蔵学院である程度資料を纏めた後、飛鳥は柳生達と共に海沿い公園に向かい、そこで待ち合わせしていた焔と春花と未来の三人と合流した。

 

「ごめん、待たせちゃった。」

 

「あぁ良い、私達も今来た所だしたな。」

 

「そうか……所で焔、月閃と蛇女の奴らはどうしたんだ?」

 

 焔と挨拶代わりに話した飛鳥の隣に立っていた柳生は、焔に月閃の夜桜達と蛇女の両備達が居ない事を聞いた。

 

「あぁ、アイツらなら神楽の所に向かってる。」

 

「神楽? まさか……アイツにも協力を仰ぐつもりなのか?」

 

「あぁ、昨日説明するの忘れてたんだった。ごめん。」

 

「それは別に良いが……どうしてだ?」

 

 焔の返答を聞き、全ての妖魔を滅するものとして存在し、飛鳥達とも関わりも何度もある神楽とも協力しようとする事に驚いた柳生に飛鳥が謝った後、神楽に協力する事について説明を聞こうとする柳生。

 

「漆月達は妖魔、とは言っても人工的に作られた見たいな妖魔を率いている。人間の手で妖魔を一から作れるのかどうかも不明だし、第一あの妖魔は本当に妖魔って呼んで良いのも曖昧だ。」

 

「だから、妖魔に詳しい神楽ちゃんの力を借りようって事になったわけ。」

 

「あぁなるほど!! それで月閃と蛇女の皆はその神楽って人に会いに行ったんですね!?」

 

「でも、神楽ちゃんそう簡単に協力してくれるかなぁ?」

 

「神楽は無理だったとしても、巫神楽三姉妹を貸してあげるぐらいは交渉して見るって、両備が言ってた。」

 

「まぁとりあえずは、夜桜ちゃん達の連絡を信じるしか無いって事ぐらいかな。」

 

 焔と飛鳥の説明を聞いて風魔が納得した隣で雲雀がそう呟くと、それについて両備が昨日話していた事を話す焔と飛鳥。

 例え神楽の協力が仰げなかったとしても、巫神楽三姉妹である蓮華、華毘、華風流の三人の力でも借りれば、十分な戦力になるはずだ。

 それが昨夜飛鳥と焔と夜桜と両備の考えらしい。

 

「まぁ……神楽の事に関しては月閃と蛇女に任せるとして、私達はどうするの?」

 

「私達は……斑鳩さんを探そうと思う。」

 

 未来の質問に対して飛鳥が答えた、斑鳩を探すと言う言葉に全員、身を固くした。

 だが、飛鳥の目を見て本気と確信し、飛鳥の話を聞くことにした。

 

「ほら、かつ姉ぇは今破忍側に付いてるでしょ? だからかつ姉ぇを探すんだったらまず破忍のアジトを探さないといけないけど……」

 

「今の状況ではそのアジトすら分からずじまい。だからまずは、斑鳩を探す事を最優先にするって事だな。」

 

 飛鳥の話を聞いて焔は飛鳥にそう聞くと、飛鳥は静かに頷いた。

 確かにこの状況下では破忍のアジトを探る事は難しい、仮に昨日の様に偶然葛城を見つけたとしても、漆月か破忍の仲間が迎えに来たと言う形で逃げられる可能性も高い。

 ならばまずは破忍側に付いていない斑鳩を先に探すべきだと考えたのだろう。

 

「……ま、斑鳩がお前達の所に戻ってくれば、詠も私達の所に戻って来るだろうしな。分かった、協力してやるよ。」

 

「うん、ありがとう焔ちゃん。」

 

「気にするな。」

 

 飛鳥の考えに納得してくれた焔に礼を言った飛鳥に対して、そう答える焔。

 焔自身、葛城を探している日影の事も心配だが、詠に関してはもっと心配だからだ。

 詠にとって斑鳩は焔で言う所飛鳥、つまり最強の友達のようなものだ。

 その友達を助けようとするならばどんな無茶だってするかもしれない。

 

(多分……私が詠の立場だったらそうするかもな。)

 

 そんな事を考えていた焔は頭を掻いた。

 

「斑鳩さん……本当にどうしちゃたんだろう?」

 

「飛鳥先輩や焔さんの話を聞く限り、普通じゃ無いのは確かですよね。」

 

「えぇ、あの格好のままでいるなんて……身体って言うより心がボロボロって所かしらね。」

 

「ここで色々考えてもしょうがないでしょ? まずは街で情報収集して方が……」

 

 雲雀と土方と春花が斑鳩の話す中、未来はこの場で考えても埒が明かないと考え、街に向かって情報収集しようと提案したその時だった。

 

「あ゛ぁあああああああああああ!!」

 

『っ!?』

 

「んな面倒な事しないでさぁ~、まっさきにあの漆月って言う恋敵をぶっ潰せば全て済む話しでしょうがぁ!! アジトの場所も抜忍ボコって無理矢理聞き出すとかしてさぁ~!!」

 

「………なぁ、菖蒲の荒み具合が尋常じゃ無いんだが。コイツ本当に菖蒲か?」

 

「うん……菖蒲ちゃんですって、何で菖蒲ちゃんここに居るの!?」

 

 いつの間にか現れた菖蒲を見て全員が驚くと、そんな菖蒲の負のオーラ全開かつ荒れたような顔つきを見て焔が聞き、それに答えながら何故ここに居るのかを菖蒲に聞く飛鳥。

 

「皆さんが何時まで経ってもかつ姉様を助けに行かないのが行けなんでしょがぁ!? それでようやく行動するかと思ったら斑鳩さん!? 何で斑鳩さん優先何ですか!? そんなに皆!? かつ姉様より斑鳩さんの事が好きなんですかぁあああああああああああああああああああ!?」

 

「あぁもう!! だから落ち着けって!?」

 

「大丈夫だから!? かつ姉も絶対助けるからさ!!」

 

「信じられますかそんな言葉ぁあああああああああああ!!」

 

「ダメだ、重症以前の問題だわこりゃ。」

 

「重しょ、」

 

「それもう良いですから!!」

 

 完全に葛城の事しか頭にない菖蒲を落ち着かせようとする柳生と雲雀と風魔と土方だったが、一向に菖蒲の暴走は止まる事無く、それを見て焔達は呆れていた。

 

「ハァ……葛城に溺愛しているとは聞いたが、ここまでとはな。」

 

「でもどうするの? このままじゃ前に進みようにも進めないって。」

 

「そうね…………あぁ!! そうだわ!!」

 

 ため息を付きながら焔と未来が話していると、何か思いついたのか春花は持って来たカバンの中からある物を取り出した。

 

「菖蒲ちゃん!! 菖蒲ちゃん!!」

 

「あ゛ぁああん!?」

 

「ンフフフフフフフ、じゃ~ん!!」

 

 完全にヤンキー口調気味な菖蒲に春花が見せた物。それは葛城の写真がプリントされた抱き枕だった。

 

「………春花、何だそりゃ?」

 

「抱き枕よ!! 抱き枕!! 雲雀が葛城に会えないから寂しがってるかなぁって思って、昨日急いで作ったのよ!! でもよくよく考えてみれば雲雀はそこまで子どもじゃないと思って渡さないでいようかなぁって思ったんだけどねぇ……せっかくだから菖蒲ちゃんにプレゼントしようと思うの!!」

 

 柳生の質問に答えた春花の返答を聞いて、思わず固まってしまう飛鳥達。

 確かに雲雀と言えどそこまで子どもってわけじゃない。

 本当に寂しければ部屋に置いてあるぬいぐるみを抱きつくし、もしもの時は柳生の部屋に行って一緒に寝て貰うとかあるからだ。

 とは言っても後者の場合、柳生が逆に眠れなくなる確率が高くなるだけだが。

 

「ほらほら菖蒲ちゃん!! これあげるから、落ち着いてね?! ね!?」

 

「いやいや春花さん、流石に抱き枕で落ち着く程、今の菖蒲ちゃんは簡単に……」

 

 葛城の抱き枕を菖蒲に見せびらかし、それを見て飛鳥は話しながら菖蒲を見るとそこには………

 

「キュイィイイイイイイイイイイイイイン!!」

 

「って!! めっちゃ大人しくなったって言うか、目がハートになってるぅ!!」

 

 そこには目をハートにして、オーラも負の様な黒いオーラからピンクのオーラになっており、そんな菖蒲を見て驚く飛鳥。

 

「あぁ!! あの春花さん!! こ、これ……私が落ち着けば、く……くれるんですよね!!」

 

「え、えぇまぁ、」

 

「もう暴れたりとかしなければ!! 貰えるんですよね!!」

 

「う、うん………」

 

「…………分かりましたぁあああああああああああああああああ!!」

 

 鼻息を荒くしながら、顔を真っ赤にして聞き続ける菖蒲を見て、流石の春花も少し引きながら答えていくと、それを聞いて大きな声で返事しながら飛鳥達を見る菖蒲。

 

「飛鳥先輩!! 皆さん!! もう大丈夫です!! ご心配かけて申し訳ございません!!」

 

「う、うん……それなら、良いんだけど。」

 

「ってか、それで良いのかお前は?」

 

「まぁ、落ち着いてくれるんだったら良いんだけどさ。」

 

「流石にドン引きッスね。」

 

「あんたの頭の中どうなってるんですか?」

 

 飛鳥達に謝った菖蒲を見て飛鳥、柳生、雲雀、風魔、土方も引きながら呟く中、菖蒲は春花から葛城の抱き枕を取り、近くのベンチに置いた。

 

「ウゥウ~うひょぉおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 改めて葛城の抱き枕を間近で見た菖蒲は、変な叫び声を出してすぐさまその口を両手で塞いだと思ったら、頭の中はこんな事を考えていた。

 

(も!! もう変な声しか出ませんよぉ~!! なんですかぁ~この神々しいまでのフォルムは!! これってつまり……かつ姉様を抱きしめて良い!! と言う公式の許可が降りた!! って事ですよねぇ!! 何て素晴らしいアイテム何ですか素晴らしい!! 素晴らしすぎます!!)

 

『……………』

 

 なんかもう別の意味で暴走している菖蒲を見て、飛鳥達も焔達もドン引き以前に呆れていた。

 

(では早速、正義の為に舞い忍んで……チューから行かせて、いただきやぁーす!! あざぁ~す!!)

 

 そんな中、菖蒲は葛城抱き枕に向かって思いっきり抱きつきながら唇を突き出し、思いっきりキスをしようとした次の瞬間。

 

「いい加減に、しなさぁあああああああああああああああああい!!」

ゴォオオン!!

 

「あひゃああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 土方が菖蒲の前に出て、菖蒲に向かってハンマーを振り、そのまま菖蒲を近くの海まで吹き飛ばすのだった。

 

「ハァ……もう頼むから、これ以上変な事しないでくれ。話が進まん。」

 

「そういう割には、まんざらでもない顔してるじゃん。」

 

「い、良いだろう別に。」

 

 そんな光景を見てため息を付きながら呆れる柳生の顔を見て、呆れながらも笑っている事を指摘した未来に柳生が少し顔を赤くしながら答えた。

 

「……ねぇ、ちょっと良い?」

 

「何だ?」

 

「いやその……斑鳩と葛城の事で気になった事があってね……」

 

 そんな柳生に対し、未来が斑鳩と葛城に関して気になっていた事を聞こうとしたその時だった。

 

~♪

 

「んぅ? 私のだ。」

 

 飛鳥のスマホから着信が来て、画面を見るとそれは夜桜からの物だった。

 

「夜桜ちゃんから電話だ!!」

 

「何!? 神楽との交渉で何かあったのか!?」

 

「とりあえず電話に出て見るね!!」

 

 夜桜から電話が来た事を聞いて焔が質問する中、飛鳥は少し落ち着きながらその電話に出た。

 

「もしもし夜桜ちゃん? うん……うん……えぇ!? それ、どういう事!?」

 

「何だ? 何かあったのか?!」

 

 夜桜と電話していた飛鳥の反応を見て焔が聞くと、飛鳥は尽かさず電話の内容を全員に聞こえるようにした。

 

――――

 

「破忍に対して油断はしてないつもりでしたが……先手を打たれました。」

 

 そう話しながら夜桜がいるのは本来神楽や巫神楽三姉妹が住む神社のはずだが、その神社は見る影も無く破壊されており、それを見て夜桜は冷や汗を掻いた。

 

【よ、夜桜ちゃん……これって……】

 

【本当に、破忍の仕業なのか?】

 

 何かを見て驚いたような声を発する飛鳥と焔の声がスマホから聞こえる。

 どうやら両備が今の神社の姿を写真に撮り、それをメールで送った様だ。

 

「それは確か見たいよ。現にそう証言してる奴もいるし。」

 

 そう夜桜のスマホを取って電話で話す両備の目の前には、神楽を守る護神の民の者の一人である奈楽が、腕を組みながら立っていた。

 

「っで、一体ここで何が起こったのか? 破忍の誰がやったの?」

 

「教えてくだされば幸いですが………」

 

「………良いだろう。ま、お前達も知った方が良いかもしれんしな。」

 

 両備と夜桜の質問に答えることにした奈楽は、夜桜がスマホから聞いている飛鳥と焔達にも聞こえるように準備するのを待った後、話し始める。

 

「昨夜に起きた事だ。私は神楽の命である調査をしていて、その調査を纏めようと一旦戻ろうとした事だった。」

~~~~

 

「ふぅ……思ったより時間を食ってしまったな。」

 

 月明かりが明るい暗闇の中、奈楽は今回調べた事を思い出しながら神社に帰ろうとしたその時だった。

 

ドォオオオオン!!

 

「っ!? 何だ!?」

 

 神社がある方から爆発音が聞こえ、それに少し驚いた奈楽はすぐさま忍転身し、急いで神社の方へ向かった。

 

(今神楽は神社に居ないとは言えこの感じは……嫌な予感がしてならん!?)

 

 そう考えながら神社に着いた奈楽が目にした光景に、思わず目を疑い掛けた。

 

「うぅう……うぅうう……」

 

「あぁ……ぐぅう………」

 

 神社は破壊され、その周囲も炎が燃えており、何より肝心なのが、巫神楽三姉妹の華風流と華毘が倒され、気を失っていた事だった。

 そして、その主犯も目の前に立っていた。

 

「んぅ? おぉ誰かさんと思えば、君が神楽のボディガードの奈楽って子?」

 

「……お前は、」

 

「私? 私は漆月。破忍のリーダーって所かな?」

 

 主犯、漆月が奈楽に気付いて軽く挨拶し、対して奈楽は警戒しつつ漆月を睨んだ。

 

「ここに何の用だ? 言っておくが神楽は、」

 

「居ないんでしょ? 居たらこんなに暴れたらすぐ出て来るはずじゃん?」

 

「だったら、何しに来た?」

 

「何って、ここに神楽ちゃんに挨拶しに来た以外で私達、破忍がすることぐらい……君でも分かるでしょ?」

 

 奈楽の問いに対し、漆月が答えながら質問したその時、漆月に襲い掛かった者がいた。

 

「どっせぇえええええええええい!!」

 

 巫神楽三姉妹が長女、蓮華である。

 忍装束もボロボロ、額からは血が出ているにも関わらず漆月に向かって長いバチを振り下げたが、漆月はそれを軽々と避けた。

 

「蓮華!?」

 

「ハァ……ハァ……き、気を付けろ奈楽?! こいつの狙いは私達だ!!」

 

 奈楽に対し息を荒立てながら話す蓮華。

 どうやら漆月の狙いは神楽では無く、巫神楽三姉妹や奈楽を先の忍学生達のように拉致するのが目的らしい。

 

「おぉ~そんなにボロボロだってのにまだ気張るなんて、流石は長女って所かな?」

 

「てやんでぇ!? 巫神楽三姉妹舐めるなぁ!! 妹達が倒されたツケ、速攻で返してやらぁ!!」

 

 そんな蓮華を見ながらも余裕の態度を取る漆月に対し、蓮華は和太鼓を展開して秘伝忍法を放つ準備をしたのだが……

 

「秘伝忍法!! 紫で、!?」

 

「でも、ここまでだよっと!!」

 

「がぁあああ!!」

 

 秘伝忍法を放とうとしたその瞬間、蓮華のすぐそばまで近づいた漆月に驚くのもつかの間、漆月は蓮華にはっけいのような衝撃波を左腕から放ち、それを食らってしまった蓮華は吹っ飛び、そのまま気を失ってしまう。

 

「蓮華!! くぅ!!」

 

 その瞬間を見た奈楽がすぐさま戦闘態勢を構えた次の瞬間、漆月の前に二つの人影が現れた。

 その人影は漆月の仲間である、転界と闇だった。

 

「漆月さん、お待たせ致しました。」

 

「おぉ~良いタイミングでやって来たね。 もう三人は倒しちゃったから、さっさとアジトまで転移させといて。もちろん、荊の方も忘れずにね。」

 

「フフ、分かっておりますわ。」

 

 転界と闇を見て漆月がそうお願したのもつかの間、闇は荊を展開して蓮華、華毘、華風流をその茨で縛り、それに続くように転界もその場所に転移空間を発動させると、一瞬にして巫神楽三姉妹は連れ去られてしまった。

 

「うん、ありがとう。じゃあ帰ろっか。」

 

「っ!? 待て!!」

 

 それを確認した漆月がそう二人に言った後、転界が新たに展開した転移空間を通して帰るのを見て、奈楽は漆月を止めた。

 

「まだ私が居るぞ? 私はあの三人の様に捕えなくて良いのか?」

 

「うぅ~ん、今回は止めとく。 君にはここに来るかもしんない忍にこの事を話してもらいたいしね。じゃ、チャオォ~!!」

 

「ま、待て!!」

 

 奈楽の質問に答えながら転界と闇と共に転移空間から去って行く漆月を呼び止めようとした奈楽だったが、漆月達はこの場から去ってしまうのだった。

 

「…………」

 

 一人残された奈楽は、今だ燃え続ける周囲と破壊された神社を見て思わず冷や汗を掻いた。

 それなりの実力がある巫神楽三姉妹を殆ど手も足も出ずにやられた。気を失った華毘と華風流、そして目の前で倒された蓮華を思い出して、奈楽は漆月の、そして破忍の実力を改めて実感した。

 

~~~~

 

「そ、そんな、」

 

「アイツらが……」

 

 奈楽の話を聞いて驚きを隠せない夜桜と両備。

 巫神楽三姉妹の実力を知ってるからこそ、漆月に殆ど手も足も出なかった事がそれ程衝撃だったからだ。

 覚悟はしていたものの、漆月の底知れない強さに、電話で聞いていた飛鳥と焔達も冷や汗を掻いていたらしい。

 

【そ、それで!? 神楽ちゃんは今どこに居るの?】

 

「神楽は今、あそこの山奥にある小屋に居る。」

 

【それは……何でだ?】

 

「そこまでは聞いておらん。だが……今回の件に関して、神楽は深く関わらないようにするとは言っていたな。」

 

 飛鳥と焔の質問に対し奈楽が答えた話を聞いて、神楽の力は借りれない事に落胆する飛鳥達。

 巫神楽三姉妹も破忍の捕らわれてしまい、夜桜と両備も何の成果も得られなかった事に落胆していた。

 

「ハァ……そう分かりやすく落ち込むな。神楽は今回手はあまり出さないが、代わりに私がお前達に力を貸してやる。」

 

「っ!? 本当ですか!?」

 

「神楽の命でもあるからな。まぁ神楽の代わりとしてだが、よろしく頼む。」

 

 奈楽の話を聞いて驚く夜桜にそう答えた奈楽。

 神楽を護るものとして鍛えて来た奈落が手を貸してくれるのは確かにありがたい。

 飛鳥と焔と夜桜と両備は、事態が少しだが前進した事に思わず笑みを浮かべる。

 

「では、また何かあったらここに連絡してくれ。」

 

「え? あんたどこに行くのよ?」

 

「まだ神楽に頼まれた調査の途中なんでな。ま、何か分かればお前達にも教えてやる。」

 

 そう言ってアドレスと番号が書かれた紙を両備に渡した奈楽は振り返り、そのまま山の方へ去って行った。

 

――――

 

「えっと……とりあえず夜桜ちゃんと両備ちゃん達は一旦こっちに戻って来て。もう一回状況確認したいから。」

 

 その一部始終を聞いた飛鳥は夜桜にそう話した後、電話が切れたのを確認したのち焔達を見渡した。

 

「な、何て言うか……行動力が半端ないわね、破忍って。」

 

「上の命令も無ければとりわけ後ろ盾なども気にする必要もない。色々自由な分、そっちに関してはアイツらの方が上手だな。」

 

 未来が呟いた事に頷く柳生。

 確かに破忍には善忍のような幹部も無ければ、勝手な事をして何かを失うようなデメリットも悪忍以上に無い。

 それ故に自由に行動し、好き勝手に出来るのに関しては、今の飛鳥達より上手だった。

 

『……………………』

 

 飛鳥と焔達は、改めて破忍の猛威に少しばかりか、恐怖心を感じた。

 

――――

 

「……………」

 

「巫神楽の方は順調?」

 

 その頃破忍のアジトでは、昨日捕えた巫神楽三姉妹を見ていた闇に、漆月が後ろから声を掛けた。

 巫神楽三姉妹である蓮華、華毘、華風流は今だ気を失っており、身体は闇の荊で拘束されていた。

 更に特徴的だったのは、三人の頭に縛り付けるように巻かれた荊で、その荊は不気味に光っていた。

 

「順調ですわ。これなら数日足らずに完成するかと。」

 

「そう。他の皆は。」

 

「一番最初に捕らえた学生達はゾディアックを始め既に完了済み。残りももう出来上がってますわ。」

 

「でしょうね。相変わらずいい仕事するねぇ~闇は。」

 

「ウフフフ、お褒めに預かり光栄ですわ。」

 

 闇と話しながら会話をしながら漆月が見ていたのは、これまで破忍が倒し拉致した忍学生達だった。

 ゾディアック星導会の麗王、遠野天狗ノ忍衆の夕焼、志野塚工業高校の飛彗と元親に加え、この前龍姫と鎌倉と闇らが襲った薄桜女学院の胡蝶を始めとした忍学生達が、巫神楽三姉妹と同じように荊で捕らわれており、頭にも同じく、不気味に光る荊も巻き付けられていた。

 

「フフフフ、ねぇ漆月。私達の悲願が達成されたら、この子達はどうするつもりなのかは、もちろん覚えているわね?」

 

「……もちろん、その前にこの子達に一仕事してもらうつもりだけどさ……ま、それが済んだら………」

 

 闇の質問に答えながら、捕らわれの忍学生達に向けて手を伸ばした漆月。その目は何処か、慈愛に満ちたような瞳をしていた。

 

「……………」

 

 そんな漆月の後ろでは、葛城も忍学生達の方を見つめていた。

 その瞳は漆月とは全く別だが、何かを考えているような瞳だった。

 

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