閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆 作:XW
「………んぅ、んぅううう……」
同時刻、とある漫画喫茶の一室で眠っていた斑鳩は目を覚ました。
着替えなかったのか、ボロボロの半蔵学院の制服のまま寝てしまった斑鳩の髪は寝ぐせが酷く、目の下には大きなくまが出来ていた。
「………もう、殆どお昼ですね。」
斑鳩は時間を見て呟いた。
確かに今の時間は午後十一時半。完全に遅起きである。
何時もの斑鳩であればこのような時間に起きる事はまず無いが、今の斑鳩には時間すらどうでも良くなっていた。
斑鳩は朝食と言うより昼食を買いに行くのか、布団代わりにしていたボロボロのコートを着、ゴミが乱雑していた一室を出た。
「店長? あの子が例の?」
「あぁ、一週間前からここに寝泊まりしててね。何があったのかって聞いても答えないし、一室をしばらく貸してくれるだけで良いって言ったきり何も言わないからねぇ。」
「うぅうん、包帯で右目部分が隠れて分かりずらいですけど、かなり美人さんですよね? それに見た感じ学生見たいですけど?」
「だろうね。何かあったか分からないけど……とりあえず言える事はあの子、日に日にボロボロになってる感じだよ。」
顔をフードで隠し、そのまま漫画喫茶を出た斑鳩の背中を、漫画喫茶の店員と店長を話しながら見つめるその瞳には、まるで自分の家族を心配するような瞳だった。
「ありがとうございましたぁ!!」
漫画喫茶を出た斑鳩は、近くのコンビニで昼食を買い、そのままコンビニを後にした。
その買って来た昼食も、菓子系の奴かパンが殆どで、これまた何時も斑鳩であればあり得ないような昼食だった。
「おいおお嬢ちゃん? こんな所で何してるの?」
「結構ボロボロだけど、何かあったのかなぁ~!?」
人目を避ける為か、人通りに少ない道を通っていた斑鳩を見かけたのか、数人の何処かの学生が声を掛けて来た。
いわゆるナンパのような物だった。
「……すいません、そこを退いてください。」
「そんな事言わないでさぁ~!! 困った事があるなら相談に乗るぜぇ!!」
「そうだよぉ!! よく見ればお嬢ちゃん良い身体してる見たいだしさぁ!! 大方汚い大人に痛い目にされてそして……」
「馬鹿!! 余計な事言うんじゃねぇよ!!」
「まぁまぁ、そんな事より嬢ちゃん、近くでお茶でも……」
心配するとは建前で、完全にイヤらしい事が目的で斑鳩に声を掛ける男達は斑鳩が歩こうとするのを邪魔しており、その中の一人が斑鳩の右肩を掴んだその瞬間。
グギィ!!
「んぎゃああああああああああああああああ!!」
「なぁ!?」
「こ、このアマぁあああああああああああああ!!」
斑鳩は左手でその男の腕を掴み、そのまま力強く捻った。
腕を捻られた男が悲鳴を上げるのを見て、男達が血相変えて斑鳩に襲い掛かったが………
「ハァ……ハァ……わ、私に、絡むからですよ。」
その数分後、斑鳩は息を荒立てながら、先ほどまで自分に絡んでいた、今はボロボロになって倒れている男達を見て言った後、落とした昼食が入った袋を手にしてこの場を去った。
漫画喫茶での遅起き、昼食はコンビニの菓子かパンで済ます、そして絡まれたら必要以上に痛めつけるなど、以前の斑鳩を知ってる者からしたら、考えられない生活が、今の斑鳩の生活だった。
「……………」
昼食を済ませた後、斑鳩は偶然通りかかった公園のベンチに座り込んでいた。
何をする事無く、只々座っているだけかに見えたが、斑鳩の光を失いかけている瞳は、ある光景を見ていた。
「アハハハハハハハハハ!! お姉ちゃんこっちこっち!!」
「あぁもうコラ、待ちなさぁい!!」
それは公園で遊んでいる姉妹だった。
妹を追いかける姉、そんなごく普通な姉妹が遊んでいる光景を、斑鳩何処か羨ましそうな、そして悲しげな表情で見つめていると………
「っ!? くぅ………」
何かに痛み出したのか、斑鳩は何処か苦しそうな顔をし、自身の身体を抱いた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
数秒程息を整えた後、額から出る汗を拭った斑鳩はベンチから立ち、そのまま公園から去ろうとすると………
「そんなになって……鳳凰財閥が倒産でもしたんですの? お嬢様。」
「……よ、詠さん。」
後ろから話しかけて来たのは、斑鳩の事を心配していた詠で、その詠が斑鳩を見つめている目は、悲しげな目をしていた。
「……ごちそうさまでした。」
「お粗末様です。」
再びベンチに座った斑鳩は、詠から頂いたもやしだらけの弁当を食べ終え、食べ終えた空の弁当箱を礼を言いながら詠に返し、それに返答する詠。
「っで、何か話しがあって来たんですよね? それとも、ただもやし弁当を食べさせに来ただけですか?」
「……分かってるんでしたら、そんな言い方しないでください。」
斑鳩の言葉に答える詠だったが、その目はとても今の斑鳩が見ていられない程なのか、斑鳩が居る別方向を向いていた。
「……何なんですか、今の斑鳩さんは? さっきまでずっと見ていましたが、とても斑鳩さんらしくありませんわ。」
「……よく、私の居場所が分かりましたね。」
「伊達にバイト生活してませんから。ちょっと前に、あそこの漫画喫茶の近くの店でも働いた事ありますから。」
斑鳩に対して言い続ける詠の心には、次第に今の斑鳩に対する怒り、そして悲しみが込み上がって来ており、思わず胸を掴んでしまう詠だった。
「っで、結局の所何が言いたいんですか?」
「何が言いたいんですか?……じゃありませんわ!! 本当にどうしたんですか!? 今の斑鳩さんは、斑鳩さんじゃありません!! あんな……あんな毎日ばかり続けていたら、何時か身体が壊れてしまいます!!」
「……あなたには関係ない事です。」
「関係大ありです!! 私は……私はあなたの………」
斑鳩のその言葉を聞いて詠は大きな声で叫び、それに言い返した斑鳩に詠は答えようとしたが、途中から言いづらくなってしまったのか、話すのを止めてしまう。
「……もう良いですか? じゃあ私はこれで……」
「っ!? せ、せめて!! 半蔵学院に戻ってください!! 斑鳩さんの事、きっと皆待ってるはずですわ!!」
「……………」
そう言いながら立ち去ろうとした斑鳩を呼び止めようとする詠の言葉を聞いて、斑鳩は立ち止まりながら右腕を握りしめ、昨日の飛鳥達の言葉を思い出す。
(斑鳩さん約束したじゃない、皆で一流の忍になるって!? その約束はどうしちゃったの!?)
(だから斑鳩、戻って来てくれ。俺達はお前が居ないと……)
(そんな……自分を許せないような顔しないで? 悩みがあるなら、雲雀達に相談してよ!!)
「………私なんて、あそこに居て良い人間じゃないんです。」
飛鳥と柳生と雲雀の事を思い出しながらも、頑固として半蔵学院に戻る事をしない斑鳩を見た詠は……
「何で……何でそこまで自分を傷つけるんですか!? 自分の誇りも帰る場所も何もかも捨て去るような事ばかりして、それであなたに何が残るんですか!? お願いですから……お願いですからこれ以上、」
「貴方に私の何が分かるんですか!?」
「っ!?」
これ以上の斑鳩が見ていられなくなったのか、詠は大きな声で叫んで斑鳩を説得しようとしたのが、斑鳩の叫びに思わず驚き、言葉を途切れさせてしまった。
「……お願いですから、お願いですからこれ以上、私に関わらないでください。」
「っ!? い、斑鳩さん!?」
そう言って走り去ってしまった斑鳩を呼び止めようとしたのだが、その際に見えた斑鳩の潤んだ目を見てしまった詠は、斑鳩を止める事が出来なかった。
「………斑鳩さん。」
「随分と、派手に振られてもうたなぁ詠さん?」
詠は呆然となり、その場に座り込んでしまったそんな時、後ろから声を掛けられて振り向くと、そこにはベンチで横になっている日影の姿があった。
「日影さん……どうしてここに?」
「まぁちょっと、わしもわしで人探しをな。」
「それってもしかして……葛城さん?」
詠の質問に答えながら立ち上がる日影に対して再び詠が質問すると、日影は静かに頷いた。
「そうですか、やっぱり日影さんも……それで、どうして私の所に?」
「なんでって、詠さん斑鳩が去った後すぐにわしらから離れたやろ? だから知らん事があるさかい、教えて来たんや。それと……」
「それと?」
「焔さんから伝言も頼まれた。」
そう言って日影は詠に洗いざらい話した。
葛城が半蔵学院を裏切って破忍に付いた事。雪泉と雅緋が破忍に捕まってる事とそして……焔からの伝言だった。
「焔さん……」
「わしもあんな涙を流す焔さんの初めてやからな、流石に罪悪感を感じてもうたわ。」
「そうですね……」
焔の伝言を聞いて思わず下を向く日影と詠。
抜忍になって以来、ずっと行動を共にしてきた焔紅蓮隊。
その家族同然の紅蓮隊に相談もせずに勝手に斑鳩を追ってしまった詠も、焔や春花、未来に対して罪悪感を感じた。
(焔さん、春花さん、未来……勝手な事をしてごめんなさい。)
焔達に謝った後詠は、日影に対して新たな話しをした。
「それにしても………あの葛城さんが飛鳥さん達を裏切るだなんて……考えられませんわ。」
「わしも昨日葛城に久方ぶりにあったけど……人間どうしたらあんなに変るのかと? 感情ないわしもつい思ってしもうたわ。」
「本当に、どうしてしまったんでしょう?」
「さぁな。わしも葛城がどうしてあぁなったのか調べては見たけども、何も分からずじまいやわ。」
「そうですか……」
日影の話を聞いて思わず愕然となる詠。
斑鳩と葛城、超秘伝忍法書争奪戦以来、ライバルかつ最強の友達として競い合い共に戦った二人が、かたや落ちぶれたような姿になり、かたや裏切って破忍に付いている。
もうどうしたら良いか分からずじまいの二人であったが、一つだけ可能性があった。
「ただ……あの二人があぁなったきっかけになったとしたら恐らく、」
「………一週間前に起きた、破忍討伐作戦。」
詠と日影は、一週間前に失敗に終わった破忍討伐作戦に、斑鳩と葛城があぁなってしまった理由があるのではないかと考えたその時、
「んぅ?」
「どうしたんですか?」
「いや……あそこから誰が見てるのを感じてな。」
自分達を見ている人の気配を感じたのか、日影が気配のした方を見ると、物陰から一人の男が現れた。
「んぅ?」
「あ、あなたは確か……」
その男を見て日影は首を傾げ、詠は少し驚いた。
その男は、鳳凰財閥次期当主で斑鳩の兄である、村雨だった。
「あなたは確か斑鳩さんのお兄さん、ですよね?」
「え? って事はあんたが村雨さんか? どうしてわしらの所に?」
「……付いて来い。案内したい所がある。」
村雨に近付きながら聞いた詠と日影に対し、村雨は静かに答えながら振り返り、詠と日影は少し疑いながらも、村雨の後を追った。
――――
「なんかすまんな、お前の実家を集合場所にしてしまって。」
「あぁ良いよ良いよ!! 善忍悪忍抜忍関係なく集まりそうなところここしか無かったし、なによりじっちゃんも今留守にしてるから。」
飛鳥の実家である寿司屋。そこで飛鳥に焔が話している内に夜桜達月閃、両備達蛇女のメンバーがやって来た。
どうやら、この店を集合場所にしたらしい。
「すみません、お待たせしました。」
「ううん、大丈夫だよ!! それより、何か分かった?」
「奈楽と別れた後、私達なりに漆月や破忍の事を調べてみたんだけど……殆ど鈴音先生から貰った情報と同じ物ばっかりだったわ。」
夜桜に答えた飛鳥は両備達に聞くと、両備は匙を上げるように両手を上げ、それを見て飛鳥達も思わず下を向いた。
「それで……そっちは何か分かったの?」
「あぁ、私達は斑鳩の行方を探ってたんだ。こちらとしては……こっちの方も重要だしな。」
「そ、そうですか。それで何か分かったんですか?」
「幾つか情報を得たんだが……正直耳を疑う物ばっかりだ。」
四季の質問に焔が答え、それを聞いて芭蕉が聞いた事に柳生は頭を抱えながら答えた。
焔達がバイト先で知り合った人達から何とか得た情報を聞いたのだが、その殆どがそいつが本当に斑鳩なのかと疑いたくなるばかりだったらしい。
「ハァ……話を聞くだけで荒れてるとしか思えんな、その斑鳩って奴?」
「まったくですね。だとしても……一体何が起きてそんな事に?」
その話を聞いて総司がため息を吐き、神裂が顎に手を添えながら呟いていると、両奈が両手を上げながら意見を上げた。
「もしかして!! もしかしてだけどさ!! 斑鳩ちゃん、破忍の拷問をすっごく受けちゃって!! それで廃人みたいになっちゃったとかしれないよ!!」
「両奈~冗談でもそういう事言わない。飛鳥達も聞いてるでしょうが?」
「いやでも可能性は絶対なくはないと思うの!? 破忍の誰かにバキューン!!されてぇ、バキューンとかズガガガン見たいな事されてそれからぁ!! それからぁ!!!!」
「あの……両奈ちゃん? 両奈ちゃん!?」
「んぅ?」
両奈の場違いすぎる発言に両備がツッコむが、両奈は止まらずに大きな声で叫び続けていると飛鳥が両奈を呼ぶと……
「ちょっと………マジで黙ってて!!」
「キュウウウウウン!!」
飛鳥の目を鋭くさせながらのツッコミを聞いて、両奈は何故か気持ちよさそうな笑みを浮かべながら倒れてしまった。
「前々から思ったんですが、選抜には絶対変態な奴がいないといけない決まり事でもあるんですか?」
「それは……流石に微妙な所ですね。」
そんな光景を見て千歳が呟いた事に、土方は目を逸らしながら答えた。
「はぁ……破忍の事に関してはまったく分かんない事ばかりだし、斑鳩ちゃんにしても分からない事ばっか!! 完全にはっぺん塞がりだよ!!」
「それを言うなら八方塞がりな。ったく……あ、」
そう大きな声を発した美野里に柳生がツッコみながら呆れていると、何かを思い出したように未来を見た。
「そう言えば未来、お前斑鳩と葛城の事で気になる事があるって言いかけたよな?」
「あぁ……そうだけど。」
「良ければで良いんだが、聞かせてくれないか?」
そう柳生に頼まれた未来は少し驚きながらも頷き、全員が聞こえる場所を変えた。
「いやその……私の推測でしか無いんだけどさ、斑鳩があぁなったり、葛城が裏切ったのって、二人の過去が関係あるんじゃ無いのかなって?」
「過去?」
未来の話を聞いて飛鳥が呟くと、未来は話続けた。
「私も小説を書くとかによく使うネタなんだけどさ、登場人物が悪堕ちしたり、性格が荒れたりするのって、基本過去が原因にあるのが多いのよ?」
「あぁ、そう言うのってよくあるよね?」
「それで、私昨日あれから考えてみたんだけどさ……斑鳩って、確か鳳凰財閥の養子だったわよね?」
「あぁうん、そう聞いてるよ。」
未来の話に四季が頷く中、未来が聞いた質問に対して飛鳥が答え、それを聞いて未来は顎に手を添えると、
「じゃあさ……斑鳩が養子になる前って、どんなだったの?」
未来の言葉を聞いて全員、主に飛鳥達は少し驚いた。言われてみれば、斑鳩は鳳凰財閥の養子になる前の話は聞いた事はあんまりない。
聞いた事あるのは、両親がお金の無い貧困な家庭で、忍学校に行かすお金すら無く、このままでは忍としての才を生かせないとの事から鳳凰財閥に引き取られたと言う話しぐらいだ。
「言われてみれば……考えて見たら私達、斑鳩さんが養子になる前の事ってあんまり聞いて無かったかも!?」
「でしょ? もしかしたら、その養子になる前の家族とかが、何か原因になってるかなぁと思ったんだよね。」
「……………」
雲雀の言葉に未来が話してる中、四季も何かを考えながら夜桜に近付いた。
「……あのさぁ、葛城ちんの親って確か、黒影様の暗殺任務が失敗したのが原因で、抜忍になったんだよね?」
「はい……まぁ、その原因には儂も加わってるようなもんですが……」
四季の質問に答える夜桜は答える中、思わず下を向いた。
葛城の両親は昔、雪泉の祖父で夜桜達の師匠であった黒影がその雪泉を始めとした五人、夜桜と叢と四季と美野里を育ててると聞き、革命を起こすのでは無いのかと考えた上層部は葛城の両親に、黒影暗殺の任務を与えたのだが、両親を見つけた夜桜が涙を流しながら止めた為任務は失敗。
それがきっかけで抜忍となった。
「でさぁ、その話を聞いて前々からおもってたんだけど……ちょっと可笑しい所多すぎない?」
「お、おかしい?」
「だって!! あの黒影様だよ!? いくら年老いたからって二人がかりで暗殺するのはさ……後!! いくら任務に失敗しただけで追放するってのも流石に厳しすぎない!?」
「っ!? い、言われてみれば……」
四季の言葉に柳生と夜桜は思わず驚いた。
確かにいくら年老いたとは言えあの黒影だ。いくら何でも二人がかりであるのは少し難易度が高すぎる。
それが出来るのは、暗殺に特化して経験豊富な忍ぐらいだ。
更には黒影暗殺失敗したのが原因で追放するのも、少し無理がある。
忍とは言え元は人間、失敗の一つや二つする。黒影の暗殺なら、なおの事だ。
故に、暗殺が失敗しただけで追放するとのは、無理があるような話である。
「か、考えてみれば私達、斑鳩と葛城の事について知らない事が多すぎるわね?」
「そうね、もしかしたら未来の言う通り、本当に二人の過去が原因で……」
両備と春花がそう話していると、雲雀は頭抱えながら座り込む飛鳥を見て近づいた。
「あ、飛鳥ちゃん? 大丈夫?」
「ご、ごめん。しょ、正直言うとね……自分が斑鳩さんとかつ姉ぇの事を知らなさすぎる事に…がっかりしてた。」
「飛鳥……」
「あんなに……皆より長く一緒に居たのにさ、私……二人の事ちゃんと、ちゃんと分かって無かったみたい。」
雲雀と柳生に慰められる中、飛鳥は自身の情けなさに思わず涙を流してしまう。
「知らなさすぎるのは儂達も同じです。とにかくまずは、出来る所から始めて行きましょう!!」
「出来る所って、こんな八方塞がりな状況でどうしろと……」
飛鳥に声を掛ける夜桜の言葉を聞いて両備が聞こうとしたその時、何処からか着信音が聞こえた。
「うん? 私の……紫からだ。」
その着信音が鳴ったのは両備のスマホで、それが紫からの電話と知った両備は尽かさず電話に出る。
「どうしたの紫? うん…………えぇ!? 分かった、すぐそっちに向かわ!!」
「な、何だ?」
「両備ちゃん、紫ちゃんなんて?」
紫の電話に驚いた両備を見て焔と両奈が聞くと、両備は笑みを浮かべながら全員を見て、
「忌夢と叢の、意識が戻った見たい。」
忌夢と叢が目を覚ました。それは今の飛鳥達にとって一番の朗報だった。
――――
「……………」
その頃、破忍のアジトで横になっている葛城の目の前には、一個のカップラーメンが置かれており、それが出来上がるのを待ってるようだ。
とは言え以前の様にワクワクして待っているのではなく、ただ静かに、何かを考えながら待っている葛城の目は何処か、悲しみに満ちた目をしているようだった。
「今日もラーメンですか? 相変わらず好きですね。」
そんな葛城の前に現れたのは、漆月の仲間の一人である蒼志だった。
蒼志の言葉から察するに、葛城のここ最近の食事は、殆どラーメンかカップラーメンのようらしい。
「もう楽しみはラーメンを食べる事ぐらいしか残ってねぇからな。それぐらい大目に見てくれねぇか?」
「別に、あなたが何を食べようが勝手ですけどね?」
そう答えながら三分経ち、出来上がったラーメンを食べ始める葛城を見て呆れた蒼志は、そのまま後ろに振り返って去ろうとすると、
「なぁ……お前、何時になったらあたいを殺しに来るんだ?」
葛城のらしくない言葉に立ち止まる蒼志。
「もう知ってだぜ、お前はあたいの事が死ぬほど嫌いって、殺したいほどにってな。だってのに何時までも殺しに来ないから……まぁ、まだあたいも死ぬ気じゃ無いけどな。」
ラーメンを頬張りながら聞いた葛城の質問に、蒼志は葛城を見直しながら答える。
「……ここでの仲間割れは禁止にされています。確かに、私はあなたも殺したいほど嫌いですし………」
「あなたの仲間であった斑鳩はもっと嫌いです。ただ殺すだけじゃなく、生き苦しむ地獄も味あわせたい程。」
葛城に答えた蒼志の目は、斑鳩の事を話すと葛城の時より険しくなり、刀を持っていた左手の拳は力強く刀の鞘を握りしめていた。
「まぁだから安心してください。あなたもここでは殺さないし、まだ斑鳩も殺しません。だからあなたは、安心してラーメンでも食べててください。」
その後、蒼志は葛城に言いながら再び振り返り、そのままこの場を後にした。
(…………そう、ここではね………)
その際に蒼志は何時もの彼女とは思えない、不気味な笑みを浮かべていた。
そんな蒼志を感じたのか不明だが、葛城は食べ続けているカップラーメンを見つめながら………
「……これが、最後の晩餐になるかもな。」
そう言って再び食べ続けたのだった。