閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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11.敗北、そして失望

 

「すまない、お前達に心配をかけてしまって。」

 

「べ、別に心配なんてしてないわよ!? 心配してたのは……」

 

 忌夢と叢が居る病室に飛鳥達が尋ねた後、両備に対して忌夢が言った言葉に対し、両備は少し照れながら答え、忌夢の近くで寝ている紫を見つめた。

 紫は忌夢の意識が戻るまで、ずっとこの病室に寝泊まって忌夢を看病しており、その忌夢の意識が戻った後ほっとしたのか、眠りについてしまったらしい。

 忌夢が心配で、あんまり寝付けなかったようだ。

 

「んぅ……お、お姉ちゃん…………」

 

「……そうだな。紫、心配かけてすまない。」

 

 忌夢のベット近くで眠りについている紫の頭を撫でながら忌夢は礼を言った後、再び両備と総司を見つめた。

 

「今は両備がリーダー代理だったな。お前には負担を掛けてしまうと思うが、引き続き頼んだ。総司も、両備の事を助けてやってくれ。」

 

「言われなくてもそのつもりだから、あんたはさっさと身体直して戦線に復帰しなさい。」

 

「ま、まだコイツがリーダーとは認めては無いが……私が居る限り大丈夫だ!!」

 

 忌夢の言葉に頭を掻きながら答える両備と何時もの態度で答える総司。

 そんな二人を見て、少し安心する忌夢だった。

 

「あのぉ~所でさ、叢のアレ……何?」

 

 そんな中、未来が忌夢に聞きながら指を指した指先には、何時もの鬼のお面では無く、目の部分に穴をあけた紙袋を被った叢がベットの上で、上半身を起こしていた。

 

「驚かしてすまない。我のお面は、先の戦いで壊れてしまってな、顔を画すにはこれしか無かったのだ。」

 

「あぁ~むらっちの大事なお面、こんなになっちゃったしねぇ。」

 

 叢が話した隣で、四季は話しながら叢の鬼のお面を見せると、もはやお面の面影すら殆どなく残っているのは右目部分だけ、その右目近くにあったツノもポッキリと折れていた。

 

「ハァ~、我ながら情けない。お面がないと、こんな物で良いから顔を隠してしまう、己の未熟さが。」

 

「もぉ~そんなに言うなら、この機会に顔隠すの止めたらどうですかっと!?」

 

「って!? わぁああああああああああああああ!! や、やめてぇえええええええええええええええ!!」

 

 そうため息つきながら話した叢に呆れたのか、園子が被っていたお面を急に取ってしまい、包帯と湿布が付かれた素顔を曝け出された叢は顔を真っ赤にして、布団に埋れるように顔を隠した。

 

「………それより、今の現状はどうなってるんだ?」

 

「この状況でそれ聞くか?」

 

「この状況でもだ。それに………」

 

「雅緋だったそうするって?」

 

 そんな光景を見て呆れながらも、現状の事を聞いた忌夢と叢に焔がそう聞き、それに答えようとした忌夢の先の事を予知して両備が発し、それに頷いた忌夢だった。

 

 

 

「なるほど……斑鳩と葛城が………しかも巫神楽三姉妹も破忍の手に落ちて……」

 

「げ、現状は、我らが思ってたより深刻そうですね。」

 

 両備達から今の現状を洗いざらい聞かれた忌夢が口に手を添えながら呟いたのを見て、布団で顔を何とか隠しながら話す叢に頷く忌夢。

 

「あ、あの!! ちょっと良いかな!?」

 

「どうした?」

 

「……一週間前、破忍討伐作戦の時に、何が起きたの?」

 

 そんな中、飛鳥は何時になく真剣な目つきで忌夢と叢に質問した。

 

「かつ姉ぇが裏切ったのも、斑鳩さんがあぁなったのも、その作戦に何かあったからだよね!! お願い……私は二人に、二人に何があったのか知りたいの!?」

 

「あ…飛鳥お前、」

 

「気持ちは分からんでもないですが……」

 

「相手は病人なんだから、少しは落ち着きなさいよ。」

 

 葛城と斑鳩に何かあったのか、その原因が一週間前の破忍討伐作戦にあると思った飛鳥が必死な顔で忌夢と叢に聞くのを見て、焔と夜桜と両備は飛鳥を落ち着かせた。

 よほど葛城と斑鳩の事を知らなさ過ぎたのが嫌だったのか、飛鳥は少し焦っていたようだ。

 

「ご……ごめん。」

 

「いや良い。僕もその事に関しては、皆に話さなきゃいけないと思ってたからな。」

 

「そ、そうですね。」

 

 焔達に言われた飛鳥は少し落ち着きを見せ、すぐに謝った飛鳥に対して忌夢が発した言葉に頷く叢。

 

「あの時の戦いで起きた事は、お前達にも知っておいてもらいたいんだ。あの時見た漆月の力の片麟、僕達が犯してしまったミスを。そして……」

 

 

「葛城の失望を………」

 

 飛鳥達全員が忌夢を見る中、忌夢は少し悲しげな目をしながら、一週間前の破忍討伐作戦で起きた出来事を話し始めた。

 

「一週間ほど前、僕と雅緋、雪泉と叢、そして斑鳩と葛城ら三年の忍学生は、破忍討伐の為の対策チームに含まれた事は知ってるな? 善忍も悪忍も関係なく集まったこのチームには、僕も流石に驚いた。」

 

「ま、それほど破忍が厄介な連中なんだから、そりゃあそうでしょうね?」

 

「あぁ、特に雅緋なんかは、破忍が妖魔と繋がっていると言う噂をのもあってか、僕達の誰よりも気合十分だったよ。」

 

 両備の言葉に答えながらも、忌夢は話を続けた。

 

「僕達は上忍が必死になって聞き出した、破忍のアジトらしき居場所を突き止めて、ようやく奴らを追い詰める事が出来た……と思ってたんだが、」

 

「それは……漆月が仕組んだ罠だったんだな?」

 

 忌夢が話しながらシーツを力強く掴むのを見て、焔が聞いた事に忌夢は頷いた。

 

「僕達は……二つのミスを犯してしまった。一つはアジトらしき場所だった所はフェイクだった事。そこには拉致された忍学生も居なくて、殆どもぬけの殻だった。そして二つ目は………」

「破忍の底知れなさが、想像以上だった事だ。」

 

 忌夢が悔しげな表情を見せる隣で、叢は布団を羽織いながら身体を少し震わせた。

 それほどの事が、忌夢や叢達の身に起きたんだろう。

 

「……それで、その後どうなったの?」

 

「フェイクだった場所からはあの転界と名乗る忍が作った転移空間が至る所に現れて、そこから奴らが作ったであろう妖魔とが出て来たんだ。っで、突然の事に動揺をしてしまった上忍は殉職。僕と雅緋、月閃と半蔵以外の三年の忍学生達も、瞬く間にその妖魔達に倒されて、そして……」

 

「全員もれなく拉致されてしまった、って事になるか?」

 

 四季の質問に答えるように話続けながら忌夢の最後の言葉を言う前に、再び焔が先の言葉を言って、それに頷く忌夢。

 その話を聞いて殆どが冷や汗を掻きながら顔色を少し悪くする中、柳生はある疑問を口にした。

 

「妙だな。俺達が戦った時は、あの漆月達が率いていた妖魔は明らかに弱かった。そんな妖魔に殺される程、上忍は弱くないはずだが?」

 

「これは僕の仮説だが、あの時出て来た妖魔は恐らく、対上忍用に少し強くさせたんだろう。まぁ殆どが不意打ちを狙うように現れたから、流石の上忍も対処出来なかったんだと思う。」

 

「そ、それで!? その後雪泉達はどうなったんですか!?」

 

 柳生の疑問に答えた忌夢に夜桜が近づいて話しを戻そうとし、それに対し忌夢は話しを戻すことにした。

 

「あぁそうだったな。妖魔との戦闘経験があったのもあってか、何とかして妖魔の群れから抜け出して、目の前で待っているように立っていた漆月とその仲間達に挑んだんだ。けど……」

 

「けど?」

 

「結果は、最悪だった。」

 

 そう話しながら飛鳥達に見せた忌夢の表情は、悔しさと怒り、そして悲しみが入り混じったような表情だった。

 

~~~~~

 

「秘伝忍法、黒氷!!」

 

「秘伝忍法!! 悦ばしきInferno!!」

 

 一週間ほど前、フェイクだった破忍のアジトはまるで、地獄のようだった。

 上忍達既に殺され、半蔵、月閃、そして蛇女以外の三年の忍学生達は瞬くまに拉致されてしまった。

 難を逃れた半蔵と月閃と蛇女の六人は破忍に戦いを挑み、漆月に挑んだ雪泉と雅緋は同時に秘伝忍法を漆月に放ったが、

 

「フン……フンっと!!」

 

 漆月は突如変異させた左手から一本の刀を取り出し、その刀の刃を横に振るうと、雪泉の「黒氷」と雅緋の「悦ばしきInferno」を打ち消しすのだった。

 

「っ!? 私達の秘伝忍法を、刀一本で打ち消した!?」

 

「それよりも……貴様、その腕はなんだ?! その腕、明らかに妖魔の腕では無いか!?」

 

 その光景を見て驚く雪泉の隣で、雅緋は漆月の変異した腕を見て刃を向けた。

 漆月の両腕とも人ではない別の物になってしまい、それは明らかに妖魔の腕のようだった。

 

「フフ……だとしたら、どうするの?」

 

「やはり噂は真だったようだな……ならば知れた事、妖魔と組むする貴様は、私の手で討つだけだ!!」

 

 余裕の表情を取る漆月に対し、雅緋は叫びながら漆月に向かい刃を振るうのだが、その全てを漆月の刃に受け流されてしまう。

 

「ちぃい!?」

 

「へぇ……思ってた以上にはやるみたいだな。じゃあ……これならどうかな!?」

 

 舌打ちする雅緋を見て、少し微笑んだ漆月は刀に黒い瘴気を纏わせ、それを斬撃にして雅緋に飛ばすと、

 

「秘伝忍法!! 樹氷扇!!」

 

 二人の間に入るように雪泉が現れ、雪泉は秘伝忍法「樹氷扇」を使い、漆月の斬撃から雅緋を守った。

 

「雪泉!!」

 

「先行し過ぎです雅緋さん!! あの漆月って忍、只者でない事はあなたにも分かるはずです!? それに……」

 

「あぁ分かってる。アイツ恐らく……」

「まだ力の半分も使っていない。」

 

 雪泉に言われて冷静さを少し取り戻した雅緋は、改めて漆月を見て、まだ力の半分も使っていない事を改めて実感した。

 

「だがだからと言って、コイツを野放しにするわけにも行かないだろう。」

 

「分かってます。ならばこそ……」

 

「一気に決めるまでだ!!」

 

『ハァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 そう話しながら漆月の前に並び立った雪泉と雅緋は力を解放し、雪泉は「氷王の雪泉」に、雅緋は「深淵の雅緋」に覚醒した。

 

「ハァアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「だぁあああああああああああああ!!」

 

 雪泉は氷の剣を、雅緋は黒炎を纏う七支のような形に変化した刀を漆月に向けて振るい、これで大きなダメージは与えられたかと思った二人だったが、

 

『っ!?』

 

「おおっと、流石にさっきのは危なかったなぁ。」

 

 雪泉と雅緋が驚くのも無理もなかった。覚醒した二人の一撃を、漆月は刀一本でギリギリで防いだからだ。

 

「くぅ!? 何なんだ貴様は!?」

 

「今の私達の攻撃でさえも、受け止めるなんて。」

 

「嫌々、流石にさっきのは危なかったって。正直こっちの手反動で震えてるし。」

 

 一旦距離を取った雅緋と雪泉に対して漆月が右手を見せると、確かにさっき防いだ際の反動か、少しばかりか震えていた。

 だがその次の瞬間、漆月は笑みをこぼした。

 

「そんじゃあ私もほんの少し、本気だそっかな!!」

 

 そう言った漆月の身体から黒い瘴気のような物が溢れ出ると、漆月の両手は肩まで変異し、更には両足まで妖魔の様な姿になった。

 

「あ……あなたは一体、」

 

「何者……なんだ?」

 

「うぅ~ん、それを答えるのは………」

 

 漆月から放たれる力の覇気のような物を感じた雪泉と雅緋は、あれでもまだ半分以下だと言う事実に驚き、そして漆月に聞くと、その漆月はそう呟きながら刀にさっき以上の黒い瘴気を纏わせると……

 

「まだ先、かな!!」

 

『っ!?』

「きゃぁああああああああああああああああああ!!」

 

「がぁああああああああああああああああああああ!!」

 

 漆月は黒いオーラと瘴気を纏った斬撃を放ち、その強すぎる斬撃を食らってしまった雪泉と雅緋は吹き飛んでしまい、制限時間も待たずに氷王と深淵を強制解除してしまうのだった。

 

「くぅう……うぅうううう……」

 

「がぁあ……あぁあああ……」

 

 そのまま地面に倒れてしまった雪泉と雅緋は立ち上がろうとするが、さっきの斬撃の痛みが強いのか立てずにいて、そのまま気を失ってしまう。

 

「フフン……」

 

 それを見て勝利を確信したのか、元の姿に戻った漆月は雪泉と雅緋を見下ろしながら微笑むのだった。

 

~~~~

 

「そ、そんな……」

 

「覚醒状態の雪泉と雅緋でさえアイツに、しかも力の半分も使っていない状態のアイツにやられちまったのか?」

 

 忌夢の話を聞き、覚醒した雪泉と雅緋が力の半分も使っていない漆月に敗北した事に、飛鳥と焔達は驚きを隠せずにいた。

 

「僕達も信じきれないさ。あの二人が簡単にやられたなんて。」

 

「っで、その間あんたと叢はどうしたのよ?」

 

「もちろん助けに向かったさ!! けど……」

 

 今でも信じれない顔をしている忌夢に両備が次の質問すると、それに答えようとしたがすぐに悔しそうな顔をした忌夢の代わりに、叢が答えだした。

 

「りゅ、龍姫と鎌倉って言う、漆月の仲間に邪魔されたんです。我らも立ち向かったんですが……転界と闇と言う忍のサポートのせいでこっちの攻撃はまともに当たらなくてそれで……」

 

「アイツらの秘伝忍法を受けて敗北したって分けだ。特に叢は、あの龍姫って言う奴に滅茶苦茶やられたからな。」

 

 叢の話しを纏めるようにして忌夢が答え、その際に叢を見た忌夢が目にしたのは、その時の事を思い出して身体を震わせる叢の姿だった。

 夜桜に対する態度や四季をバカにしたなど、龍姫の月閃主に雪泉達嫌いはもう承知していたが、思っていた以上に深刻だったらしい。

 

「アイツ……どこまで私達の事を……」

 

「とは言え、奴らの実力やチームワーク、それが少しでも分かった気がするな。」

 

 叢の様子を見て龍姫に対する怒りがこみ上げてくる四季を抑えながら、柳生がそう呟いた後、

 

「そ、それで!! かつ姉ぇと斑鳩さんに何があったんですか!?」

 

「あぁそうだったな。本来善忍の事情にはあんまり首を突っ込まないつもりだったが、事が事だしな……。」

 

 本当はこっちが聞きたいと言わんばかりに忌夢に詰め寄る飛鳥に対し、忌夢は嫌味を呟きながらも話そうとする。

 

「話を始める前に一つ質問だ。お前達、葛城の両親について何処まで知ってる?」

 

「えっと……それが……」

 

「善忍でも幹部クラスだった事と、黒影暗殺が失敗で抜忍になった事ぐらいしか……」

 

「……そうか、じゃあその事についても話さないとな。」

 

 忌夢の質問に口を閉ざしてしまう飛鳥の代わりに雲雀が答えると、それを聞いた忌夢は葛城の両親に関した話を始めた。

 

「まず葛城の両親が主に行っていた忍務についてだが……一言で言えば、暗殺だ。」

 

「あ、暗殺……」

 

 忌夢の話を聞いて思わず唾を飲む飛鳥の目線も気にせず、忌夢は話しを続けた。

 

「僕も聞いた話だから詳しくは語れないが、どうやら葛城の両親は善忍幹部の命を受けて危険性のある忍、裏切りの可能性のある忍……まぁようするに、幹部が気に入らない忍を暗殺するのが、アイツの両親の忍務だったらしい。」

 

「そ、そんな……気に入らないって理由だけで殺すって。」

 

「そんな忍務を、あのかつ姉様のお父様とお母さまがやってたなんて……」

 

 あの葛城の両親がその様な忍務を行っていた。それを聞いただけで信じれないような顔をする雲雀と菖蒲の隣で、神裂はある疑問を口にした。

 

「だとしたら解せませんね。その様な忍務ばかりをしていた二人が、何で夜桜先輩に止められただけで黒影様暗殺を放棄したんですか?」

 

「…………断言は出来んが、その原因は恐らく葛城にもあるな。」

 

「かつ姉様が?」

 

 その神裂の疑問に対し柳生が口にし、その事を聞いて菖蒲は首を傾げた。

 

「これは俺の仮説だが、黒影を暗殺しようとした葛城の両親は、それを止めさせようと前に立った夜桜を見て、まだ幼い葛城を重ねた。その中で葛藤があったと思うが……」

 

「葛城ちゃんの事が頭に浮かんだ葛城ちゃんのお父さんお母さんは、それで黒影様を暗殺するのをやめたって事?」

 

「まぁ、あくまで仮設だがな。」

 

 美野里の言葉に答えながら、柳生は自身が立てた仮設を口にし、それを聞いた夜桜の表情には何処か複雑な表情を見せた。

 無理もない、自分の行いが葛城の両親を抜忍にさせてしまった、どのような理由があるであれ、その事実だけは拭えないからだ。

 

「う~ん、けどやっぱり無理があるよねぇ。いくら黒影様の暗殺が失敗が原因になったとは言え、それで抜忍になるなんてさぁ……」

 

「あのぉ……その事に関してなんですけど、どうも抜忍になった原因は黒影様の暗殺失敗って言うより、それを利用されたのが原因みたい。」

 

 そんな中、やはり黒影暗殺失敗が原因で抜忍になったのは可笑しいと考える四季を見て、それについて叢が話をし出した。

 

「り、利用された!?」

 

「はい……我も人から話だから自信もって言えませんが、その黒影様の暗殺失敗を利用されて、葛城さんの両親に関する……み、身も蓋もない噂が広まってしまってそれで……」

 

「それを信じてしまった幹部が葛城の両親を追放、そして抜忍になったって事か?」

 

「…………」

 

 夜桜が動揺する中で叢の話を聞き、焔が答えを聞くと叢は頷き、それを見て飛鳥達は動揺を隠せずにいた。

 忍の暗殺を主にしていたとはいえ、葛城にとっては大事な家族なのは変わりない。

 その両親が失敗した忍務を利用し、抜忍にまで追い込んだ事が、悪忍である両備達でさえ少し驚きを隠せずにいた。

 

「酷い……そんなの酷過ぎる!!」

 

「いくら黒影様の暗殺が失敗したからとは言え、何も抜忍にするまで追放するなんて。」

 

「一体、一体誰がそんな事を……」

 

 飛鳥が大声で怒りを露わにし、夜桜も怒りを堪えながらもそう口にする中、芭蕉がそう呟くと……

 

「ありもしない噂を広め、葛城の両親を抜忍にまで追いやったのは……」

「鳳凰財閥だ。」

 

『っ!?!?』

 

 忌夢の発言を聞き、飛鳥達は今まで以上に動揺をしてしまう。

 何せ鳳凰財閥と言えば斑鳩が養子になっている家でもあるからだ。

 

「ほ……鳳凰財閥が?」

 

「正確には当時の鳳凰財閥の長、言わば斑鳩の養祖父にあたる男だ。恐らく葛城の両親の存在を恐れたんだろう、それで黒影暗殺失敗を利用して、」

 

「葛城の両親を抜忍に追いやったって事か?」

 

 忌夢の話を聞いて今だに信じられない顔で飛鳥は聞き、忌夢と叢もそれに頷きながら次の話をし出す。

 

「まぁ……これは葛城が裏切った理由の一端みたいなものだ。多分恐らく本当の理由は………」

 

「……………」

 

 そう話を再開した忌夢と叢の脳裏に浮かんだのはあの時、漆月の言葉を聞き衝撃を受け、悲しみと失望に包まれた葛城の姿だった。

 

~~~~~~

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 フェイクの破忍アジトは、言うなれば戦場後になっていた。

 上忍は全員皆殺し、忍学生の殆ども拉致されてしまい、唯一難を逃れた雪泉と雅緋は漆月に、そして忌夢と叢も龍姫と鎌倉と転移と闇によって敗北してしまった。

 斑鳩も倒されてしまい、ただ一人残った葛城は臆せず漆月に立ち向かった。

 だがその表情には焦りと動揺、そして失望に似た何かが浮かんでいた。

 漆月に言われた自身の親の真実、抜忍になってしまった本当の理由に、葛城の頭からは冷静さは失われていた。

 

「に……逃げろ、葛城………」

 

「は、早く……この事を皆に……ぐはぁ!!」

 

「うるせぇよ。どう言おうが、もうオメェらの声なんて聞こえねぇよ。」

 

 闇の荊に捕らわれても、葛城に退却を伝えようとした忌夢と叢だったが、二人の腹を殴った龍姫の言う通り、葛城には二人の声は全く聞こえなかった。

 

「ぐわぁあああああああああああああああああああああああ!!」

 

「アハハハハハハハハ!! どうしたの葛城ちゃん、叫んでばっかりで一発も蹴りが決まらないよ? あ、やっぱりお父さんとお母さんの事聞いて動揺………」

 

「うるせぇえええええええええええええええええええええ!!」

 

 叫び続けながら放つ葛城の蹴りを軽々と避けながら漆月が居言いかけた事に反論するが如く、葛城はかかと落としを放つが、それを片手で受け止める漆月だった。

 

「あの二人が……お父さんとお母さんがどんな忍務に付いてたって!! 抜忍になっちまった本当の理由を知ったからってそんなの………そんなの関係ねぇ!! あたいにとっちゃ、あたいにとっちゃお父さんとお母さんは、立派な忍で立派な親だ!!」

 

 受け止められた片足に力を入れ、無理矢理にでも攻撃を与えようとする葛城は叫び続けながら、ある思いが巡っていた。

 

(そうだ……お父さんとお母さんがどんな忍でどんな忍務についてたって……抜忍になった本当の原因が斑鳩の爺さんだったとしても……そんなの全部、全部関係ねぇ!! あたいが……あたいが立派な忍として認めて貰えればそれで……それでお父さんとお母さんは………)

 

 そう考える葛城だったが、漆月が放った言葉は葛城自身が思ってる以上に心に響いたのか、今もなお混乱と焦りなどが葛城の中でうずくまっていた。

 

「……自分が立派な忍になれば、お父さんとお母さんとまた一緒に暮らせる。噂には聞いていたけど本当っぽいね。でも……どの道その夢、」

「叶えそうにないよ。」

 

「っ!? ど、どう言う事だ!?」

 

 漆月の言葉を聞いた葛城は驚き、すぐさま聞き返すと次に漆月に言った言葉は……葛城の心を傷つけるには十分な言葉だった。

 

「どうもこうもだって………」

 

 

「死んでるもん、葛城ちゃんのお父さんとお母さん。」

 

「っ!!!?」

 

 その言葉を聞いた、聞いてしまった葛城は目を大きく広げ、まるで逃げるように漆月から離れた。

 

「………嘘だ、嘘に決まってるだろう!? お父さんとお母さんが死んだ!? んな嘘を信用できると思ってんのか!? だって……だって……」

 

「随分前にあった事があるからって? でもそれ、葛城ちゃんにまだ両親は生きているって思わせる為の、善忍達も変装だったのかもしれないよ? 臭いとかも化けれる忍術とかもあるって聞いた事もあるしね。それにこれ……」

 

 嘘だと信じる葛城に対し、漆月は頭を掻きながらある物を葛城の近くに投げ落とした。

 

「…………!?」

 

「それ、葛城ちゃんの両親が隠れ蓑にしてた場所で見つけたんだ。結構血しぶきとかが部屋中に広がって、軽い訳アリ物件みたいになってたよ。」

 

 それを拾い見た葛城が声にならない衝撃を受けるのを見ながら、少し悲しげな目をしながら呟いた。

 葛城が拾った物、それは幼き頃の葛城と父と母が写っている写真で、その写真には飛び散った様に広がる、血の跡が付いていた。

 

「……そんな……嘘……だろう。じゃあ……じゃあ本当に………お父さんと………お母さんは………」

 

 その写真とさっきの漆月の言葉を聞いた葛城の脳裏には、最悪にも程があるような考えばかりが浮かんでしまう。

 両足は膝から地面に座り込み、目からは大量の涙が溢れ出した葛城は次の瞬間………

 

「…………あぁああああ………あぁああああああああああ…………」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 髪がくしゃくしゃになる程頭を掴み、空高く泣き叫んだ。

 今まで信じて来た存在に裏切られ、ずっと目標にしていたものが意図も簡単に壊された。当然の結果であった。

 

『…………………』

 

 それを全て聞き、見てしまった忌夢と叢も、出る言葉が出なかった。

 あの、セクハラ大好きだが情には熱くまさに姉御肌と言っても良い葛城が見せる事無いはずの姿。

 そんな姿を見てしまえば、誰しも返す言葉が見つけるには難しかった。

 

「……辛いよね、大切な家族が死んだのって。悲しいよね、ずっと信じて来たものに裏切られるのって。本当……可哀そう。」

 

 その原因を作ってしまったとも言えるであろう漆月は、何処か哀しみに似た目で葛城を見つめながら近づいた。

泣き叫んだ後、全てを喪って目も虚ろい、廃人になりかけていた葛城に歩み寄った漆月は、葛城の頬に手を添えると………

 

「……ねぇ葛城ちゃん? あんな偽善だらけの善忍なんて辞めて、ウチに来ない? もう、善忍でいる理由もないでしょ?」

 

 その何処か優しい言葉と仕草は、今の葛城の心を揺れ動かせるのは十分すぎる程だった。

 

~~~~~~~~~

 

『…………』

 

 忌夢から語られた話を聞いて、飛鳥達は言葉も出なかった。

 葛城が今まで信じて来たものに裏切られ、何より生みの親であった両親がもうこの世に居ない、それだけでも信じられない事だった。

 

「………それで、その後どうなったの?」

 

「……僕達はそのまま漆月に拉致されて、そのまま本来のアジトに連れていかれたんだ。その後、漆月は葛城に色んな事を話したんだが……」

 

「そ、それを聞いたら葛城さん、まるで壊れたように笑って、こう言ったんです。」

 

「(オメェの言うとおりかもな。善忍の正義なんて嘘っぱち。どれこれも……偽りだらけの偽善ばっかだ。)って。」

 

 両備の質問に忌夢と叢が再び答え、それを…特に叢が最後に言った言葉を聞いて、飛鳥達はもうどう反応すれば良いか分からなかった。

 

「フゥ………」

 

「よ、夜桜ちん。大丈夫?」

 

「だ、大丈夫です。ただちょっと……目まいがしただけで……」

 

 そんな中一人頭を抱えながら座り込む夜桜に四季が声を掛け、それに答える夜桜。

 本当の理由ではないとは言え、葛城の両親が抜忍になってしまい、亡くなってしまうまで追い込んだそのきっかけを作った事に変わりはなく、それがショックだったのであろう。

 

「それにしてもお二人共、良くそこまで知ってましたね。」

 

「無理矢理と言った感じかな? アイツらにその光景を見せられたんだよ。っで、その後は軽く拷問を受けられてた後に何故か逃がされて今に至るって分けだ。……大方、メッセンジャーとして逃がされたんだろう。」

 

「そ……それにしても、ご、拷問してる時のあああああの、龍姫って忍、こ、ここここここ怖かった……ですぅ。」

 

 芭蕉の質問に対し忌夢は呆れながら答え、その後に叢が拷問を受けた際の事を思い出してしまい、身体を思い切り震わせていた。

 よほどの事をされたんだろう。

 

「……本当にさっきの事を伝えたくて忌夢と叢を逃がしたのか一先ず置いといて……これで葛城が裏切った理由は分かったが……」

 

「だとしても……だとしてもこれは……これは!?」

 

「かつ姉様が可哀そ過ぎますぅ!!」

 

 柳生が気まずい感じに話した後、さっきから涙を流し続けながら菖蒲は叫んだ。

 当然だった。憧れでもある葛城の悲劇があまりにも残酷過ぎるからだ。

 

「かつ姉ぇの事もそうだけどさ……まだ、まだ斑鳩さんの事は……」

 

「そうだな……悪いが春花。菖蒲を、」

 

「分かってるわ。」

 

 そんな中、飛鳥が言った事に焔は同意しながら春花に頼み、それを最後まで聞かずにも分かっていた春花は、今だ泣きじゃくってる菖蒲の肩に手を添えながら立ち、そのまま病室に出た。

 

「斑鳩の事も聞きたいらしいのだが……すまない、斑鳩の事に関しては僕達も分からずじまいだ。本来のアジトにも連れて来られなかったみたいだし。」

 

「た……ただその、あの時の戦いでは斑鳩さん……蒼志と言う忍と戦ってるを見ました。しかもかなり劣勢でした。」

 

 どうやら忌夢と叢も、流石に斑鳩の事までは知らないようだったが、叢が言った事に飛鳥と焔は顎に手を添えながら考えた。

 

「……そう言えばアイツ、私達と会った後も、蒼志の事を調べるのはやめろって言ってたな。それも関係してるのか?」

 

「分かんないけど……多分その蒼志って子が、斑鳩さんがあぁなった原因と関係してるのは確かだよね。」

 

 斑鳩と蒼志の関係性を考え、思わず黙ってしまう焔と飛鳥達。すると……

 

「そこから先は……私が話そう。」

 

「んぅ?……お前は、」

 

「奈楽ちゃん。話すってまさか……」

 

 病室のドアが開くのと同時にそう話す声が聞こえ、振り向くとそこにはドアにもたれながら立っている奈楽の姿があり、奈楽を見て焔が少し驚く隣で飛鳥が聞くと、

 

「もちろん……お前達が望んでいる、斑鳩についてだ。」

 

 奈楽は片目を開きながら、飛鳥達に答えるのだった。

 

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