閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆 作:XW
「うわぁ……随分と荒らされとるなぁ。」
「誰も住まなくなって何年も経ってるって感じですわね。」
その頃、日影と詠は斑鳩の兄、村雨に連れて来られてとある家に来ていた。
大きめな家らしいのだが、誰も住まなくなって何年も経ってるのもあるが、至る所には埃に蜘蛛の糸、家具なども倒されてるか壊されており、家自体も至る所壊されていた。
「昔はとある忍の一族が代々住んでいた屋敷だったんだが、とある事がきっかけで誰も住まなくなり、今に至るってわけだ。」
「なるほど………っで、この家の事と斑鳩さんは何か関係あるんですか?」
「……すぐにわかる。」
村雨の話に少し頷いた詠は尽かさず質問し、それに答えながら村雨はある部屋に入り、そこで何かを探していた。
「確かここらへんに……あぁあった。ほらよ。」
「おおぉお………こ、これは………」
「額縁やな。」
探していた物を見つけた村雨はそれを詠に投げ渡し、投げ渡された額縁を詠と日影が見ると、その額縁には当然写真が入っていた。
「………なぁ、この写真に写っとる女の子ってもしかして………」
「い、斑鳩さん?」
その写真に写っていた女の子を見た日影と詠は、その女の子が斑鳩に似ている事に気付き、それをじっと見ていた詠はある事に気付いた。
「……っ!? も、もしかして……この家はまさか!?」
「ご明察だ。ここは……斑鳩が我が鳳凰財閥に養子になる前の家族の家だった場所だ。」
詠の考えに村雨は頷いた。どうやらここは詠の考え通り、斑鳩が鳳凰財閥の養子になる前に住んでいた、昔の家族との家らしい。
「やっぱり……」
「んぅ? ちょい待ち。確か斑鳩さんが養子になったのって、確か両親がお金のない貧困な家庭だったはずやろ? いくらボロくなっとるって言っても、こないな家ならそんな養子に出す必要ないはずやけど……」
隣で日影が頭を掻きながら呟く中、詠は写真をじっと見ていた。
写真には幼き斑鳩だけでなく、父と母そして祖父が幸せそうな顔をして写っており、そして斑鳩の隣には………
斑鳩より少し年下の女の子が写っており、しかも斑鳩とよく似ていた。
「………っ!?!? ひ、日影さん!?この子よく見てください!?」
「この子? このこってどの子や?」
「ほら!? 斑鳩さんの隣に座ってる!?」
その女の子を見てある事に気付くのと同時に驚いた詠は、すぐさま日影にその女の子を見せた。
幼き頃の斑鳩と少し顔だちや髪の色など違う女の子。だがその女の子に詠と日影は心辺りがあったのだ。
「………なぁ詠さん。この女の子ってもしかして……」
「そ、蒼志さん?」
その女の子はかつて蛇女子学園の忍学生で、今は破忍の一人である蒼志の幼き頃の姿だった。
「間違いない……顔つきとか雰囲気はちと違う気がするけどこの女は……でもどうして昔の斑鳩さんの家族と一緒に……」
「……………も、もしかして、もしかして村雨さん!? い、斑鳩さんと蒼志さんって!?」
「……………」
横に並んで座っている幼き頃の斑鳩と蒼志の写真を見ながら日影がまた呟く中、詠は信じられない事に気付いて村雨に聞き、それに村雨は、静かに頷いた。
――――
『斑鳩(さん)と蒼志が実の姉妹ぃ!?』
そして忌夢と叢の病室では、奈楽の発言にこの場に居た全員驚きの声を上げた。
それもそのはず、奈楽が発したのは、斑鳩と蒼志が、実の姉妹である事だったからだ。
「ま、単刀直入に言うとそういう事だ。」
「ちょ、ちょちょちょちょちょちょちょ!! ちょっと待って!! 単刀直入過ぎて頭が追い付けないんだけど!? い、斑鳩さんと……破忍の一人の蒼志って子が実の姉妹って………そ、そんな事ありえるの!?」
奈楽を見ながら、頭を抱えながら話す飛鳥。ただでさえ葛城の事が衝撃だったのに、ここでまさかの斑鳩と蒼志の関係を知らされて頭がパンクしかけてるのか、頭からは湯気のような物が出ていた。
「………いや飛鳥、その事について私も、気づいた事があるんだが、良いか?」
「な、何焔ちゃん?」
そんな飛鳥を見ながら焔が聞き、それを聞こうと頭を両手で支えながら耳を傾ける飛鳥。
「いやその……改めて気づいた事なんだが、斑鳩と蒼志って、結構似てる所が多かった気がするんだ。」
「に、似てる所?」
「あぁ、蛇女にまだ居た頃の事なんだが……蒼志って案外真面目な奴なんだよな。冷静沈着で、修業にもサボらずに取り組んでいたし。」
「そ、それに……私も今さっき思い出した事なんだけど、蒼志って斑鳩と同じで蒼い炎を刀に纏わせる事があったの。秘伝動物こそ違ったけど……いざ比べて見ると斑鳩と蒼志って………」
焔と未来の話を聞いて、飛鳥は冷静さを取り戻しながら斑鳩と蒼志を脳裏で比べて見た。
確かに斑鳩も真面目で冷静沈着、半蔵学院の誰よりも忍としての修業に取り組んでいた。
また秘伝忍法を放つ際、蒼い炎を纏った斬撃も放つこともあり、秘伝動物である鳳凰も、蒼い炎を纏っていた。
焔と未来の話しが確かならば、確かに斑鳩と蒼志は似てる要素があると言うかあり過ぎていた。
「じゃ……じゃあ本当に、斑鳩さんとその蒼志って子は……」
「本当の、姉妹?」
雲雀と柳生がそう呟いた後、病室にはただ静寂だけが残った。
葛城の両親の事に引き続き斑鳩と蒼志が実の姉妹だったと言う事、良そうにない事実の連続に、他の皆も戸惑いが隠せなかった。
「はぁ……まぁこれだけ言ってもしょうがないか。」
「これだけも何も、これだけじゃ情報不足でしょうが?」
「あの……斑鳩さんとその、蒼志さんについて他に知ってる事って?」
「焦らずとも教えるから、ちょっと待て。」
そう呟いた奈楽に対し両備と夜桜が聞いた後、それに答えながら奈楽は病室の真ん中まで進み、近くに置いてあった椅子に腰かけた。
「斑鳩と蒼志が実の姉妹ってのは、紛れもない事実だ。元々二人は……」
「蒼炎の忍と言われた、忍家族の末裔だ。」
そして奈楽は飛鳥達に対し、斑鳩と蒼志の事について話し始めた。
――――
「蒼炎の、忍?」
「その名の通り、蒼き炎を司る忍と言う意味だ。その歴史も古く、忍が誕生したであろう戦国時代から続いていた。」
同時刻、斑鳩と蒼志がかつて暮らしていた屋敷の中では村雨が、詠と日影に対して奈楽と同じような話をしていた。
「その蒼き炎はいかなる邪悪を燃やし尽くし、その炎を纏った秘伝動物はどんな妖魔をも喰らい尽くすと言われ、その力は一歩間違えば己をも燃やしてしまう程の力、それを守って来たのが蒼炎の忍と言うわけだ。」
「そ、そげな力を持つ忍の家庭が居たとはな……」
「そんな忍の家の末裔が……斑鳩さんと蒼志さんだったなんて。」
村雨の話を聞いて驚きを隠せずにいる日影と詠。それに構わず、村雨は話を続けた。
「故に蒼炎の忍かなりの伝統のある忍ってわけで、斑鳩と蒼志の両親、そして祖父、その更に先代もその伝統を守って生きていた……て言っても、そこまで言う程金持ちって分けでも裕福って分けでも無く、一般的から見たら伝統だけがあるだけの忍の家族にしか見えなねぇがな。 この家も、代々ここに住んでいただけだしな。」
「そ……そうですか。」
村雨の話を聞いて、思わずホッと胸を降ろす詠の隣で、日影は村雨に対して手を挙げた。
「ちょっとええか? もし、もし村雨さんの話が言う通りだとするなら、斑鳩と蒼志は裕福とは言わんでも、それなりに幸せな日々は過ごしていたんとちゃうか? でも………」
「た、確かに、この家の惨状から察するに、何かあったのは明白ですよね。一体何が………」
日影の質問を聞いて詠も気づき、荒れてしまった家を見渡しながら考えていると、村雨は頭を大きく掻きながら口を開く。
「そうだな……そこについての話しをするにはまず、」
「葛城って言う、斑鳩の親友の家族について話さねぇとな。」
――――
「………斑鳩と蒼志の名かを引き裂き、幸せを壊したのは……のちに葛城の両親となる二人の善忍だ。」
『っ!?』
村雨と同じ事を飛鳥達に話していた奈楽が発っした一言に、飛鳥達の身体に旋律が走るような感触を感じた。
「さっき忌夢が話していた通り、葛城の両親は危険性のある忍、裏切りの可能性のある忍を暗殺する、まぁようするに……幹部が気に入らない忍を暗殺するのが主な忍務だ。つまり……ここから先は分かるな?」
「つ、つまりその……斑鳩さんと蒼志の家族は、幹部の命を受けたかつ姉ぇのお父さんとお母さんが暗殺しようとしたから、」
「その幸せをぶっ壊された、って事だな。」
奈楽の話を聞いて飛鳥と焔が考えを口にした後、それを聞いた奈楽は静かに頷き、話の続きを話しだす。
「まだ若かりし頃の葛城の両親の襲撃を受けた蒼炎の家族は祖父が暗殺され、斑鳩と蒼志の両親は、今だ幼い二人を連れ逃亡した。 その逃亡の末、貧困な生活を強いられてしまった両親の決断。それが……」
「斑鳩と蒼志を、養子に出す事だった。わけだな?」
奈楽が最後まで言い終わるのを待たずに、柳生がその最後を言ったのに対し、奈楽はまたもや静かに頷いた。
「……その話とこれまで聞いていた事を察するに、忍としての才の目覚めの兆しが見えていた斑鳩は鳳凰財閥に、今だ目覚めてない蒼志は、どっかの忍、恐らく善忍の家庭の養子になったって分けかしら?」
「あぁ……だがこれが、斑鳩と蒼志の運命を分ける事になるなんて……その時は両親も知らなかったんだろうな。」
両備の考えに頷いた奈楽は、そう話しながら目を瞑り、少しだけ悲しげな言葉を呟いた。
―――――
「俺もつい最近調べて分かった事なんだが……その後の蒼志の人生は、最悪だったらしい。」
「最悪……ですか?」
葛城の両親の事、そして斑鳩が養子になった本当のきっかけを話した後、村雨から蒼志のその後を聞く詠。
「蒼志の義理の親になった奴らは両親共々善忍とは思えない程最悪でな、その両親からの虐待とイジメ。度重なる力と言葉の暴力は、蒼志の身体だけでなく心までボロボロにした。そして……遂に怒りを露わにした蒼志は蒼炎の力を暴発させ、義理の両親を燃やし殺してしまったって話だ。」
「………それで蒼志さんは蛇女に入学したものの抜忍となって、今や破忍の一人になったって事ですね。」
村雨の話を聞いて、悲しげな表情を見せる詠。
本当はずっと続くと思っていた幸せが、のちの親友になる葛城の両親に壊され、事情があるとは言え姉妹を引き裂くように養子に出された斑鳩と蒼志。そして蒼志の身に起きた悲劇に、詠は今にでも聞くに堪えない事ばかりだった。
だが養子になって辛かったのは斑鳩だって同じだ。
今でこそ少しは改善はされてるが、今や斑鳩の愛刀になっている飛燕を巡って村雨と険悪な関係に最初はなっていたり、自分で思うのもどうだと思うが、理不尽な怒りをぶつけられたりと、斑鳩も斑鳩で、下手をしたら蒼志以上に救いのない事になっていたのかもしれなかったからだ。
「斑鳩さん………」
そんな斑鳩の事を考えていた詠は胸を握りしめるように掴む中、日影も何処か割り切れないような顔をしていた。
(なんやろうなこの感じ……感情はないくせに何か……モヤっとするわ。)
先に葛城の両親を聞いていたのもあってか、日影も日影で葛城の事で頭を悩ませていた。
「………本当に今更、兄みたいな事してんだって感じだよな。葛城に関しては殆ど俺のじいちゃんがやった事だが、だからと言って俺は無関係だって言い訳するつもりもない。斑鳩と蒼志が、姉妹を引き裂くように別々に養子に出すのになったも元はと言えば……」
「止めてください……そんな事、聞きたいわけじゃありませんわ。」
そんな詠と日影を見て、村雨も気難しそうに話すが、それ以上の事を聞く程、今の詠の心には余裕は無かった。