閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆 作:XW
「…………あの時も、こんな空でしたね。」
同時刻、破忍のアジトの外で曇り空を見て蒼志は、昔の事を思い出していた。
――――
義理の両親を蒼炎の暴発によって殺してしまった蒼志は、その後今の自分でも入れそうな蛇女に志願し、無事入学した。
残念ながら補欠ではあったものの、必ずや選抜になれると信じ、日々努力を続けていた。
その姿を見て何時しか誰にでもその実力を、微かだが認めて貰えるようになり、善忍の情報なども教えてくれるものも居た。
そんな日々が続いたある日の事だった。教えてくれた善忍の情報を見て、蒼志の心に突き刺す事が書かれていた。
それが、実の姉である斑鳩が、半蔵学院の善忍になっている事だった。
(……お、お姉ちゃん………)
微かにだったが斑鳩の事を覚えていた蒼志は、すぐさま会いたいと言う気持ちが強くなってしまい、身分を隠して斑鳩に近付いた。
~~~~
「あ、あのぉ!?」
「は、はい?」
「は、半蔵学院の、斑鳩さんですよね!? わ、私……別の学校で忍学生をしてる物なんですが、い……斑鳩さんに質問良いですか?」
「……答えれる範囲なら。」
帽子などで顔を隠し、何とか斑鳩に近付けた蒼志は話しかけ、すぐさまこう聞いた。
「い……斑鳩さんって、い、妹とかいたりしませんか!?」
そう聞いた蒼志の頭にはその後事しか考えていなかった。
質問に答えた後帽子を外して姉を驚かし、再開した後今まで何があったのか話したりとかして見たいなどと、今思えば自分が悪忍だと言う事を忘れていたのも知れないと思っていたのは言うまでもない。
そんな考えばかりが頭に浮かぶほど、蒼志は期待に胸を膨らませていたのだった。
しかし………
「妹?……すみません、兄は居るのですが、妹はいるかどうか……」
「………え?」
その瞬間、蒼志の心は崩れ落ちた。
実の姉が、妹である自分の事を忘れていたからだ。
その後も蒼志は、昔の家族の事や様々な事を聞いたのだが、返される言葉は、どれも同じだった。
覚えていないと………
~~~~
蒼志の心は、憎しみに塗りつぶされた。
鳳凰財閥で裕福なのはまだ良かった。最終的に両親が決めた事なんだから。
だが……実の家族を、そして自分を忘れ、自分の苦しみを知らずに善忍として、あの自分を苦しめた義理の家族がいた善忍としている斑鳩が、その瞬間から憎くて憎くて憎たらしかった。
その後の蒼志は、ただがむしゃらに選抜を目指していた。
選抜になれば斑鳩を殺せる。そう思っていたからだ。
だがいくら頑張っても、焔や選抜メンバーには一度も勝てず、何時しか蒼志の心は荒れてゆき、蛇女を去って抜忍となった。
抜忍になった後も修業をしながら斑鳩の事を独自に調べていた蒼志は、更に衝撃の事実を知ってしまう。
それは斑鳩の仲間である葛城の両親が、自身の本当の家族の幸せを壊した張本人である事だった。
何故自分達の家族を壊した両親の娘が善忍として生きている? 何故あの両親の娘と姉が一緒に居る? 何故……私が苦しんでいると言うのに、あの二人はあんなにも忍として幸せなんだ!?
蒼志の心は、完全に斑鳩と葛城への憎しみに染まってしまっていた。
そんな時だった。蒼志の元に漆月が近付いて来たのをは。
「……ねぇ? あなたの憎しみ、私に利用させてくれない? お礼にだけど、あなたの復讐に手伝ってあげる。」
そう声をかけられた蒼志から見て、漆月の言葉と顔に嘘は無かった。
漆月は本気で自分の憎しみを利用する気だ。漆月は本当に、自分の復讐を手伝ってくれるはずだ。
そんな雰囲気を感じ得ずにはいられなくなる程、蒼志にとっても漆月は、何処か引かれる所があったのだろう。
――――
(……そうだ、私はあの時決意したんだ。必ず斑鳩と葛城に復讐する。そして……あの二人を受け入れる、この忍社会を破壊すると!?)
昔の事を空を見上げながら思い出し、刀を持っていた右拳を握りしめ、そのまま空に向けて上げた。
「だから私は今……ここにいる。」
その時の蒼志の瞳には憎しみの炎だけでなく、決意を改めて決める目をしていた。
「…………」
そんな蒼志の背中を、葛城は遠くで壁にもたれながら見ていた。
そして葛城もまた何かを思いながらも決意し、そのまま何処かへ歩き出すのだった。
――――
「……………………」
そして斑鳩はと言うと、一人コインシャワーを浴びていた。
温かいシャワーを浴びている、包帯を解いた身体の至る所には一週間前の破忍討伐作戦で受けた物だろうか、至る所に傷跡と火傷の後が痛々しく残っており、斑鳩の可憐で水も弾くような肌はボロボロに傷んでいた。
そして同じく包帯が巻かれていた右目にも、眉の上から右頬の唇横まである大きな斬り傷痕が痛々しくあり、傷のせいで視力が弱くなっているのか、右目に灯る光も弱くなっているように見えた。
「……私は、私は何で……こうも人を、人を傷つけしまうんですか……」
そう呟きながら自身の身体を抱き、俯いてしまう斑鳩の脳裏に浮かんだのは………破忍討伐作戦で蒼志が発した言葉と、斑鳩を恨むように睨む目だった。
~~~~
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
一週間ほど前、破忍の策略にはまってしまいピンチに陥ってしまった破忍討伐作戦チーム。
その中に入っていた斑鳩は、蒼志の猛攻に苦戦を強いられていた。
蒼志のとてつもない怒りや憎しみが力となっているのか、それがこの時はまだ分からなかった斑鳩は只々蒼志の斬撃を受けるしかなかった。
斬られた忍び装束は斬り裂かれ、同時に斬られた身体に出来た傷口からは血が出て来ていた。
「はぁ……はぁ……くぅ!! 鳳火炎閃!!」
息を荒立てながらも倒れず、歯を食いしばった斑鳩は蒼志に向けて秘伝忍法「鳳火炎閃」を使い、蒼炎の鳳凰が蒼志に向けて放たれたが、
「……秘伝忍法、獄狼炎・鬼火!!」
「なぁ!?」
蒼志は秘伝忍法「獄狼炎・鬼火」を使うと、斑鳩の蒼炎の鳳凰と同じような、蒼炎を纏ったケルベロスが放たれ、そのケルベロスは斑鳩の鳳凰を喰い千切った。
そして喰い千切られて消滅した鳳凰を見て斑鳩が驚愕する中、蒼炎のケルベロスは斑鳩に近付き当たった。
「ぐあぁああああああああああああああああああ!!」
秘伝忍法をまともに食らってしまった斑鳩は悲鳴を上げ、そのまま仰向けに倒れてしまう。
忍装束はさっきの秘伝忍法のせいで半壊してしまい、身体には傷口のほかに火傷を負ってしまった所がいくつかあった。
「うぅ……あぁ……がぁああ!?」
「フン……いい気味です。何もかも忘れて自分勝手に、自分の人生を楽しんでるから、こう言う罰が当たるんですよ。」
痛みに苦しみ、悶える斑鳩の髪を引っ張りながら呟く蒼志の目を見て、斑鳩はようやく蒼志の怒りと憎しみに気付いた、いや気づいてしまった。
「あ……あなたは、あなたは一体………」
「……覚えていない。そう、あの時もそうだった。あの時再開した時も、あなたは私の事を忘れていた。私だけじゃない、お父さんもお母さんも、おじいちゃんもそして……私達を引き裂いたあの日の事も!?」
「っ!?」
斑鳩は蒼志の言葉、お父さんとお母さんとおじいちゃんと言う言葉を聞いて思わず驚いた。
そして薄々分かって来た、分かって来てしまった。この忍が何なのかを。そしてこの忍が、私とは無関係では無かったと言う事を。
(ま……まさか、そんな……まさかこの人は………)
「あぁ……本当に腹が立つ。怒りが……憎しみがこみ上げてこみ上げて仕方ない。あんたは……あんただけは絶対許さない。私達を………」
「妹である私を忘れたあなたを、斑鳩を絶対に許さない!!!」
そして蒼志の憎怒に満ちた言葉を聞いてそれは証明されてしまう。今目の前で自身と戦っていた蒼志が、かつて養子になる際に生き別れてしまった自分の、実の妹だって事を。
「そ……そんな、あ、あなたなんですか? わ、私の、私の妹でがぁああ!?」
「今更になって思い出したんですか? 随分と都合の良い脳みそですね。そんなんだから私達実の家族の事も忘れるんですよ?」
「ち……違っ、あれは……」
「私の苦しみなんて知らずに善忍の、あんな糞見たいな善忍の忍としているに飽き足らず、あの……私達の幸せを壊した忍の娘と一緒にいるあんたが……忍として幸せなあんた達が、憎くて憎くて仕方ないんですよ!!」
「……………」
もはや斑鳩の言葉なんて聞かず、ただ自身の憎怒を吐き捨てるように言う蒼志は更に話続けた。
葛城の両親の事も、蒼志が今で受けた苦しみと痛みも、そしてかつて再開した時に斑鳩が言い放った言葉の事も全て。
「……………………」
「あんたの事は全て知ってるつもりですよ。あなたはただ忍として素質があるだけであの、葛城の両親を殺したも当然の鳳凰財閥の村雨って男からその刀を奪い、そしてあなたが財閥の養子になっただけであの詠と叢って忍の心を苦しめた。……分かりますか? ここまででもあなたはあなたで居るだけで三人以上、いやそれ以上の人の人生を狂わせたような物なんですよ?」
蒼志は話を聞いて出る言葉も無い斑鳩に追い打ちをかけるように耳元に近付きながら話し続け、そして確実に、斑鳩の心を壊して行った。
「もしかしたら……あなたのせいで死んでしまった人もいるかもしれませんね。……所詮あなたの人生は幾多の……あってはならない屍の上にある、血まみれの人生なんですよ。」
「………ち、違う!! 私は、がぁあああああああ!!」
蒼志の言葉に反論しようとした斑鳩だったが、右手に持った、蒼炎を纏った刀に胸部分を斬られ、血しぶきが胸部分から吹き出しながら倒れしまう。
「うぅう……ううぅううう……ゴホォ!! ゴホォ!!」
「へぇ……まだ立ち上がるんですか? 諦めの悪さだけは……認めても良いかもしれませんね。」
「こ、こんな所で……倒れる訳には…わ、私には……立派な忍になる使命が………」
「その立派な忍になって、その後はどうするんですか?」
口から血を吐き出しながらも立ち上がるが、さっきの言葉のせいか少し弱らしく立ち上がる斑鳩を見て呟いた蒼志は、そう答えた斑鳩野言葉を聞いて更に言葉で攻め続け始める。
「っ?!……そ、それは……それは………」
「………答えれないのも当然ですよね。貴方の忍の道なんてその程度の、空っぽの物だったですから。」
「っ!?!?」
蒼志の質問に答えれなかった斑鳩を見て、刀の刃を向けながら近付き、斑鳩に向かって言った蒼志の言葉は更に斑鳩の心を傷つけ、
「………貴方見たいな人に、忍になる資格なんて………ありません。」
ザァン!!
「あ゛ぁあああああああああああああああああああああああああ!!」
蒼志は斑鳩に向けて言い放ちながら刀を振り、その刃は斑鳩の右目を斬り、斬られてしまう斑鳩はそのまま悲鳴を上げた。
そんな血が出る右目を抑えながら苦しむ斑鳩を睨み続ける蒼志は、再び刀に蒼炎を纏わせた。
「秘伝忍法……鬼火・蒼炎歌!!」
蒼志は秘伝忍法「鬼火・蒼炎歌」を放った。蒼炎を纏った刀の無数の斬撃が斑鳩を襲い、斑鳩の身体を傷付けて行った。
そして、身も心を傷つけられてしまった斑鳩は悲鳴を上げる事も無く、そのままうつ伏せに倒れてしまった。
「あぁ……あぅう………うぅ……」
倒れた斑鳩はうめき声と身体を少しだけ震わせるだけで、立ち上がる事すら出来なかった。
そんな斑鳩を見下す蒼志は、トドメを刺す事無く刀を鞘に戻すと、
「……今は殺しません。せいぜい己が犯してしまった罪にでも苦しんでください。殺すのは、その後です。」
そう言って立ち去り、残されたのは、身も心も斬り裂かれてしまった斑鳩だけだった。
「………………」
数分後、雪泉も雅緋も、そして葛城も漆月に連れ去られ、何も無くなってしまった戦闘後の戦場で一人、斑鳩は目を覚ました。
降って来た大量の雨が、酷く傷つけられた斑鳩の身体に当たる中、斑鳩は四つん這いになりながら涙を流し始めていた。
「………蒼志。」
理由は様々あったが、一番の理由は蒼志の事だった。
斑鳩とて養子になる前の家族の事を、そして妹の事を忘れていたわけではない……と思いたいが、本当は忘れていたのかもしれない。
今の家族の事や半蔵学院の出来事、様々な事があり、何時の間にか忘れていたのかもしれない。
蒼志に対してどう言おうと、全て言い訳にしか聞こえないのも当然だった。
そして何より、蒼炎の言葉一つ一つが、斑鳩の心を傷つけてしまった。
「私は……私は…………うぅう、うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
大量の雨が降り続ける空の下斑鳩は泣き叫び、その瞬間、斑鳩は自分自身の事を信じられなくなってしまった。
~~~~
「……………」
蒼志の言葉、そして蒼志に傷つられた事を思い出した斑鳩は、シャワーを浴び続けながら壁にもたれ、そのまま座り込むと、そのまま三角座りになって顔を隠すと、
「……ううぅ……うぅうう……うくぅ……うくぅ………」
そのまま涙を流した。
蒼志に対する罪悪感の涙かどうか分からないが、斑鳩はただただ、涙を流し続けていた。
――――
「……………」
奈楽の話を聞いた後、飛鳥は一人待合室の自動販売機で飲み物を買っていたが、その顔はまたもや浮かない顔をしていた。
無理もない、今まで知らなかった斑鳩と葛城の事を知り、それに今まで気づけなかった事が、よほどショックだったからだ。
「最近お前……そんな顔ばっかしてるな。」
「焔ちゃん、それに夜桜ちゃんに両備ちゃんも。」
そんな飛鳥の顔を見て焔が声を掛け、その声を聞いて飛鳥が振り向くと焔のほかに、夜桜と両備の姿もいた。
「まぁ無理もありませんよ。斑鳩さんと葛城さんの事を知ったら……正直儂も、葛城さんの事を聞いて……本当はショックの方が強くて。」
そう話す夜桜の顔を浮かなかった。やはり葛城の両親の事を知ってる故、真実を知った際の衝撃は強かったようだ。
「斑鳩に居たっては、実の妹が敵である破忍側に付いてるしね。こんな事、今までなかったわよね。」
「そうだな。両備と両奈は一緒に悪忍になってるし、忌夢と紫に至ってはなぁ……姉妹が敵同士になった事なんて、本当になかったしな。」
両備の話に同感する焔が言う通り、斑鳩と蒼志の立場は今までに無かった事だ。おまけに今の飛鳥達は知らないが、蒼志は斑鳩に対して憎怒が強い。今までの両備と両奈、忌夢と紫、そして巫神楽三姉妹のような関係とはまるで違うからだ。
「………つくづく嫌になるよ、自分の甘さと無知さに。」
そんな中、飛鳥は椅子に座り込みながら呟くと、焔と夜桜と両備は飛鳥の方を振り向いた。
「かつ姉ぇも斑鳩さんも家族がバラバラになって、その後も大変で苦しい事ばっかり続いていたのに……私にはそんな素振り見せないでいた。いや、見せないでいようとしていたんだ。なのに私は……そんな二人の気持ちを全然知らないで………」
「本当に甘いや。私は。」
今までずっと一緒にいたにも関わらず、斑鳩と葛城の事を何も知らな過ぎた自分が嫌になったのか、飛鳥は下を向きながら涙を零していた。
「そんな顔しないであげてください。第一葛城さんの両親の事は葛城さんも知らなかった事がありますし、何より儂も、葛城さんには何か出来なかったのかと後悔しています。」
「それにさ、家族の事でトラブルがあるってよくある事じゃないの? 私も両姫お姉ちゃんの事で色々あったし。」
「で、でも私は……」
「自分は何も苦しい思いはして無いって言うんじゃねぇぞ? お前だって、半蔵の爺さんの孫だってだけで、それなりにプレッシャーもあったはずだろ?」
夜桜と両備の話を聞いてもなおそう呟く飛鳥に対し、焔は腕を組みながら飛鳥に話す。
飛鳥は他の皆と違って殆ど苦しい事がないと思われがちだがそれは違う。
伝説の忍である半蔵の孫と言うだけでそれなりに重圧もあり、それに答えようと苦労していたからこそ、今の飛鳥が居るのだから。
「でもまぁ……親友だった奴の親が自分の家族の仇だったり、妹が敵だってのは、辛いことなんだろうな。」
「………うん。」
そう頭を掻きながら呟いた焔に飛鳥は頷き、夜桜と両備も何も答える事はしなかった。
そんな中、待合室に設置された窓から音が聞こえ、飛鳥は立ち上がって窓の外を見た。
「………雨。」
窓の外を見ると雨が降って来た事に気付き、飛鳥はそのまま雨が降り続ける空を見上げた。