閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆 作:XW
「………………」
雨が降り続ける空の下、斑鳩は傘も差さずに路地裏を歩いていた。
つい先ほどシャワーを浴びていたにも関わらず、光を失いかけている目をしながらトボトボ歩く姿は、とてもでは無いが見ていられなかった。
「本当に、見ていられないですわ。」
「……詠さん。」
そんな斑鳩の目の前を、詠が道を遮るように立っていた。
同じく傘も差さずに斑鳩を見る目は、何処か悲しげだった。
――――
その頃葛城も雨が降り続ける空の下、路地裏を一人歩いていた。
雨を防ぐ物も見に付けずにずぶ濡れになりながら、鋭い目つきで歩いていた葛城だったが、目の前のものを見てその足を止めた。
「………何の用だ、日影。」
葛城の目の前に立っていたのは、日影だった。
―――――
「……あなたのお兄さんから聞きました。あなたが養子になる前の家族の事も、葛城さんの両親の事もそして……蒼志さんの事も。」
詠の話を聞いた斑鳩は少し驚いたが、その後すぐにさっきの暗い表情に戻った。
「そうですか、なら今の私にも納得出来ますよね? だったらもう、」
「納得なんて出来ません!!」
斑鳩が話を言い終える前に詠は声を荒げながら叫んだ。その表情からは、斑鳩に対して哀しみだけでなく怒りを感じているように見えた。
「……あなたの事です。葛城さんや蒼志さんの事を知って、責任を感じてるんでしょ? でも……でもそれと今の斑鳩さんとでは話は別です!! 蒼志さんがあなたと別れてから起きた事も、葛城さんの両親の事も、あなた本人は何も関係ないじゃないですか!? なのに……なのにどうして!? そう自分を罰するような事するんですか!? それじゃあ……それじゃあ………」
「それじゃああなたが、一生不幸でなければならないと思ってる見たいじゃないですか!?」
そう叫び続ける内に、詠の目からは大量の涙が溢れでていた。
だがそれを見てもなお、斑鳩の心は動く事は無かった。
「……関係、大ありですよ。実の妹が苦しい思いをしているにも関わらず私は自分の事ばっかり。挙句養子になった家族は、親友の両親を殺したきっかけを作ってしまった。……分かりますか? 私は……私は呪われてるんですよ。人を不幸にさせる呪いに。」
そう話した斑鳩の目にもうっすらと涙が流れ落ち、その目で詠を見つめた。
「葛城さんや蒼志だけじゃない。詠さん、あなたも勘違いとは言え私が財閥の娘と言うだけで私を憎み、心を苦しめていた。多分……私が知らないだけでもっと、もっと沢山の人達が不幸になってるはずなんです。」
「…………」
「もし私が人と関わり続けたら、飛鳥さんに皆、沢山の人達が不幸な目に合ってしまうかもしれない。そんなの……そんなの許されるはずがないんです。だから……だから私は…………」
「この世に……居て良い人間じゃ無いんですよ。」
強く雨が降り続ける中、斑鳩は詠を見つめながら、何もかも諦めたような顔をしていた。
忍の道も、そして生きる事にも………
「……フッ、可笑しいですよね。こんな私が今でものうのうと生きてるなんて。本当私は……」
「……けた事を、……ないでください。」
「え?」
「ふざけた事を……言わないでくださいって言ったのですわ!!」
乾いたような笑みを浮かべながら話した斑鳩に対し詠は今まで以上に怒りを露わにし、涙を流し続けながら叫んだ。
「何なんですかさっきからあなたは!? 自分が人を不幸にする呪いに呪われている?! 冗談じゃありませんわ!! 私が勘違いであなたを恨んだ事も、村雨さんが飛燕を継承できなかった事も、自分が生きてるせいだと思わないでください!! 葛城さんの両親の事だって、そして蒼志さんの事だって……あなたが不幸とかそんなの関係ありませんわ!!」
「詠さん……」
「それを何ですかあなたは!? 何もかも自分のせいにして!! 自分を罰するような事ばっかり言って!! そんなのただの自己満足じゃないですか!?………今の、今の、」
「今の斑鳩さんは!! 完全なる偽善です!!」
斑鳩に対して怒る詠。それは斑鳩に対する憎しみとか失望でも無く、斑鳩を案じての怒りだった。
刃を交え、絆を深めた詠だからこそ、そのような怒りを露わに出来るのだ。
「……だったら、どうすると言うんですか?」
「そんなの、決まっていますわ。」
詠の言葉を聞いてもなお心を閉じたままの斑鳩の質問に対し、詠は答えながら忍転身し、背中に背負っていた大剣を手にすると……
「貴方を……貴方の心を縛っているその呪縛を、私が殺すまでです!!」
その大剣を両手で持って斑鳩に向けながら構えた。
それに対して斑鳩もコートを脱ぎ捨てながら転身したが、その姿は再開した時と変わらず、半壊したままだった。
「………」
にも関わらず斑鳩は飛燕を手に取り、詠を見つめながら構えた。
――――
「まぁその、なんや。葛城の両親の事は……気の毒だったな。」
「……どこで知った。」
「ある人から聞いたんや。っで、あんたはそれを知って善忍に失望して、飛鳥達を裏切ったと? 随分自分勝手な理由やな。」
「……何とでも言え。」
日影の話しに答えながら、葛城は雨空を見上げながら口を開いた。
「……なぁ日影。あたいなぁ、お父さんとお母さんがもういない事を知ったり、漆月の話を聞いて気づいちまったんだ。……この世に、忍の世界に本当の正義だなんてねぇって。」
日影に対して話しているその顔は、何かに失望してる顔だった。
「善忍は正義の忍とか言ってる癖に、自分の気に入らないものは切り捨てる。正義を隠れ蓑にして不法な実験をする。挙句の果てには正義と称して人の人生を殺す。……こんなのが善忍の正義だと? ふざけんなっての。」
「…………」
「分かるだろ? 忍の世界に最初から善なんて無かった。白なんて何処にもねぇ。最初っから真っ黒なんだよ。」
そう善忍に失望した顔を見せる葛城だったが、その顔を見て日影は別の事を感じた。
感情がないと自称する日影ではあるが、それだけは自分でも分かっていた。
「………わし、感情はないけど、今の葛城に悩みがあるってのわかったで。」
「はぁ?」
「なら簡単やな……」
そんな日影の言葉に葛城が首を少し傾げると、日影は忍転身した矢先にナイフの刃を葛城に向ける。
「今、目の前にいるアホを思いっきりぶん殴る!! 目ぇ、覚ましたるわ。」
そのまま葛城を睨む目つきは、今まで感じた事の無いような物だった。
感情がないと自称する日影であったが、その目から感じるのは怒り。葛城に対して失望の怒りでは無く、思いやりの怒りだった。
「………あたいが悩んでるだと? 日影オメェ………」
「面白しろくもねぇ冗談言ってじゃねぇよ。」
そんな日影に対して葛城は忍転身するのと同時に具足を展開し、日影を睨みながら構えた。
「……ぶっ飛ばす前に一つ聞きてぇ。日影、お前なんであたいにここまでするんだ?」
「……そんなの決まっとるやろ? あんたがウチの……」
―――――
「……先に、一つ聞いて良いですか? 詠さん、あなたはどうしてそこまで、私に構うんですか?」
「そんなの……決まっていますわ。あなたが私の……」
葛城が日影に、そして斑鳩が詠に対して同じような質問をすると、日影は葛城に対して、詠は斑鳩に対して同じ事を答えた。
―――――――――
「最強の友達だからやぁ!!」
「最強の友達だからですわぁ!!」
そう答えた日影は葛城に、詠は斑鳩に向かって走った。
―――――
「はぁああああああああああああああああああ!!」
斑鳩の方に走りながらジャンプし、着地するのと同時に大剣を振り下げる詠。
それを飛鳥と戦った時と同じように、幽霊の様な動きで後ろに下がった斑鳩に対し、詠はクロスボウの矢を数発放った。
「っ!?」
その矢を飛燕の刃で弾き飛ばしながら着地する斑鳩だったが、その間も待たずに詠が近付きながら大剣を振りかざし、今度はそれを飛燕の刃腹で防いだ。
「貴方はさっき言いましたね? 自分は人を不幸にさせる呪いに呪われてるって? でも、不幸だったのはあなたも同じだったでしょ?! 新しい兄にも認められず、理不尽な怒りを受けられて……それなのに何で!? 何で自分を苦しめ続けるんですか!? それじゃあ……それじゃあ……」
「それじゃあ何時!? 斑鳩さんは救われるですの!?」
刃と刃を混じり合わせながら斑鳩に訴えながら涙を流し続ける詠。
と言うよりさっきから泣き続けてばっかりだ。
それほど今の斑鳩に対し本気で哀しみ、本気で怒り、そして本気に思ってるのだろう。
「………救われたいとかそんなの……思っていません!!」
だが斑鳩はそんな詠に対してそう言い返し、刃を横に振りながら詠を放すと、斑鳩は抜刀の体勢に構えた。
「秘伝忍法……鳳火炎閃!!」
「っ!? 秘伝忍法!! シグムンドォ!!」
そして秘伝忍法「鳳火炎閃」で蒼炎の鳳凰を放つが、詠は自身の秘伝忍法「シグムンド」で大剣を展開させ、更に巨大化させた刃でその鳳凰を斬り防いだ。
「そんなにあなたは救いを求めないと言うのなら……私が、無理矢理にでも救い出して見せますわ!!」
そして詠は大剣を構え直し、その涙を流し続ける目で斑鳩を睨んだ。
――――
一方の葛城と日影も、激しい戦いを繰り広げていた。
葛城の足甲と日影のナイフが本気でぶつかるたびに周囲に衝撃が発せられるが、葛城も日影も気にせず足と刃をぶつけ合い続ける。
「……このさいやから言うけど葛城、あんた忍の善悪とそう言うの気にする奴やったか?」
「あぁああ!?」
「わしの記憶にある葛城は、そんなの気にする奴やなかったわ。善忍とか悪忍とか抜忍とかそんなの関係ない、ただただ強い奴と戦って楽しんで、女の乳揉んでセクハラして笑顔で笑ってる、それが葛城って言う女やろう!?」
「くぅう!?」
日影の言葉に少し動揺してしまったのか、葛城はバランスを崩しながら少し日影から離れ、離れた葛城に対し日影はナイフの刃を向けた。
「親が死んだからなんや? 親が抜忍になってしもうたのが仲間の家族だったからなんや? そんな小難しい事考える奴やったか? ちゃうやろ。常に前を見て戦い、自分が好きな事は大いに楽しむ……」
「それが………ワシの知ってる葛城って言う名の忍やないのか!?」
刃を向け続けながら叫ぶ日影の目からは、今まで流した所を見た事のない物が流れていた。
それは涙。感情がないと自負しているはずの日影の目からは葛城の事を考えていたせいか、自然と涙が溢れ出て来たのだ。
「………黙れ……黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!」
「黙れぇえええええええええええええええええええええええええええ!!」
そんな日影を見てまたもや一瞬動揺しながらも、葛城はそう叫び続けながら秘伝忍法「トルネードシュピンゲル」を発動し、両足の回転で出来た竜巻を作りながら日影に向かって行く。
「秘伝忍法……おおよろこびぃ!!」
それに対抗しようと日影も秘伝忍法「おおよろこび」によるナイフの乱撃を葛城の蹴りによる竜巻にぶつけ、ぶつかり合った二つの秘伝忍法は衝撃で粉砕され、葛城と日影も衝撃で後ろに吹き飛んだ。
「がぁああ?!」
「くぅうう!?」
吹き飛んだのと同時に倒れる葛城と日影だったがすぐさま立ち上がり、息を整えながら構え直すのだった。
――――
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ………」
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
激しい戦闘を続けていた斑鳩と詠は、互いの得物を杖代わりにしながらも立ち、息を整えながら互いを見ていた。
呼吸は詠の方が多いものの、その瞳からには今だ、斑鳩を救い出すと言う思いが残ってるように見えた。
「ハァ……ハァ……ず、随分と……諦めが悪いですね。そ、そんなに私を、こんな私を……救いたいと?」
「ハァ…ハァ…ハァ…と、当然ですわ!!」
息を整えながら体勢を戻した斑鳩の問いに対し、詠は大剣を持ち直しながら答え、その心中ではこう思っていた。
(この先私がどうなったって良い……なんなら斑鳩さんに嫌われても構わない!! ただ……ただ……金持ちの癖に心も綺麗でちょっと不器用な所もあるけど、誰よりも忍としての道を突き進んでいたあの斑鳩さんを救えなきゃ私は……私は……)
「私は!! 一生後悔しますから!!!!」
そう叫びながら大剣を再び展開させ、横向きに構えた次の瞬間、
「絶・秘伝忍法!! ラグナロクゥうううううううううううううう!!」
詠は絶・秘伝忍法「ラグナロク」を発動させ、展開させた大剣を持ちながら身体を回転させ、そのまま斑鳩に近付いた。
「はぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
斑鳩を助けたい、ただそれだけを考えて放った絶・秘伝忍法。
その勢いは更に強くなって行き、斑鳩に近付いた次の瞬間、周囲に衝撃が走る程の勢いで爆風が起こった。
「……………………」
「……………………………………」
しばらくして爆風が晴れると、そこには座り込む斑鳩を見るように詠が立っていたが、手に持っていた大剣はするりと地面に落ちてしまう。
「………ゴフゥ!!」
その瞬間、詠の口からは吐き出された。
詠の胸を見ると、斑鳩の飛燕の刃がその胸に突き刺さっていた。
どうやらさっきの絶・秘伝忍法の隙を狙い、斑鳩は詠に刃を向けて傷を負わせようと考え、その刃が刺さったらしい。
「……あぁあああ、あぁあああああああ……あぁああああああああああああああ………」
だが斑鳩が狙っていた場所を間違えてしまったのか、刃が詠の胸に刺さっているのを見て青ざめながら怯え、悲鳴にも似た声を上げた。
そして次第に刃は詠の身体から離れ、後ろにふらりと歩きながら斑鳩から離れた詠は、そのまま倒れてしまった。
「…………ご、ご……ごめ………ごめごめ………ごめんなさい!!」
それを見てしまった斑鳩は唇を震わせながら詠に謝罪し、その場から逃げるように去って行った。
自分を最強の友達と言ってくれた詠の、刺してはいけない場所を刺してしまった。
もしかしたら死んでしまうのかもしれないと言った、様々な恐怖感に包まれてしまった斑鳩の顔は怯えの色で染まっていた。
―――――
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ………」
日影と戦っていた葛城は、息を荒立てながら見下ろしていた。
葛城が見下ろした先には、葛城との戦闘で敗れてしまい、倒れてしまった日影の姿があった。
互いに秘伝忍法を繰り出したりなどをし、身体中にボロボロになりながら戦ったが、勝利の軍配は葛城に上がった様らしい。
「ハァ………ハァ………ハァ……ハァ……くぅ、」
荒立っていた息を整え、壁にもたれながらも歩き出す葛城は、倒れる日影を通り過ぎて進もうとした。
「……や、やっぱり……強いな、葛城は。」
だがその足は、倒れてもなお葛城に話しかける日影の言葉を聞いて止まってしまう。
「ワシ、感情は無いけど……あんたとの戦いはいっつも、楽しいって言うかなぁ……そんな感じのが感じてるんやけど……ハッキリ言って今回は、くっそつまんかったわ。」
「その意味、あんたならわかるやろ?」
「………………」
日影の言葉にただ黙って聞く葛城に対し、日影は話し続けた。
「だからさ……どんだけ自分の目標失っても、どんだけ苦しい現実があってもやな………ワシはやっぱり、何時もの葛城の方が楽しいからさ……戻って……来て……」
そう言いかけながら気を失った日影。そんな日影対し葛城は、日影の元に近付いた。
「………オメェ、やっぱり感情あるんじゃねぇか。」
そう呟いた後、葛城は屋根がある場所に日影を置き、身に付けていたジャケットを羽織らせた後、再び壁にもたれながら歩き出した。
――――
「あのぉ~柳生先輩? いい加減私らもその傘に入れて貰ってくれないッスか?」
「俺達は忍だぞ? 雨の中ぐらい傘無しでどうにかしろ。さぁ雲雀、風邪引かないように俺の傘の中に……」
「すみません柳生さん、その姿見せられて何の説得力もありませんから!?」
「……なんかごめん。」
今だ雨が降り続ける空の下、半蔵学院に帰る為歩く飛鳥達。
そんな中、柳生にお願いした風魔に対して柳生がそう断ったが、自身の傘に雲雀を入れようとする姿を見て土方がツッコんだ後、土方や風魔に対して謝る雲雀だった。
「………あ、菖蒲ちゃん。大丈夫?」
「大丈夫……じゃないですけど、それは飛鳥先輩も同じって言うか、私より酷くないですか?」
「あぁ………そうかもね。」
そんな柳生達の前を歩いている飛鳥は、泣き続けたせいか目が赤くなっていた菖蒲に声を掛け、それに答えながら疲れ切ったような顔をしている飛鳥に聞いた菖蒲に頷きながら、飛鳥は頭を抱えた。
それだけ今回知った葛城と斑鳩の事がショックだったらしい。
「……………」
(私にもっと……もっと力があったら……かつ姉ぇも、斑鳩さんも救え他のな………)
「…………」
そう自身の無力さを改めて痛感してしまい、思わず悔し顔を見せた飛鳥の顔を見てしまった風魔は、そんな飛鳥を心配そうに見ていたその時、
「んぅ?……ってぇええ!?」
「ど、どうしたの風魔ちゃん!?」
「あぁああああああああ飛鳥先輩!! あそこ!? あそこぉ!?」
路地裏で何かを見つけた風魔の驚き声を聞いた飛鳥は、少し慌てながら指を指した風魔の指先にある物をみると、
「んぅ……うぅううう………」
「っ!? 詠ちゃん!?」
そこには胸を抑えながら、壁にもたれ倒れていた詠の姿があり、それを見て驚いた飛鳥達は詠の元に急いだ。
――――
「あぁもおぉ~、何でこんな気分の時に雨降るかなぁ?」
「本当、嫌な気分になるだけよね。」
「ボヤいてないでさっさと帰るぞ。でも本当、最悪な気分だな。」
その頃未来と春花と焔も、未来の傘の中の中でそう呟きながらアジトに帰ろうとしていると、
「んぅ?」
「ど、どうしたの焔?」
「お、おい……あそこに居るのってまさか………」
焔が何かに気付いたのを見て未来が声を掛けると、焔は少し驚いた表情で指を指した。その指を指した場所に居たのは……
「……んぅ、んぅうううう……ここは、」
『日影!?』
屋根のある場所で目を覚まし、頭を抱えながら上半身を起こした日影を見て驚いた焔達は、急ぎ日影の元に急いだ。
――――
「そう…なんだ、それで斑鳩さんは?」
「……私が気が付いた時にはもう……」
詠の元に駆け寄った飛鳥達に何があったかを話した詠は、止血した胸を抑えながら再び口を開いた。
「私……最初は斑鳩さんの事が嫌いでした。けど、彼女が養子だった事やそれ以上に大変だった事を聞いて、金持ちの娘だったとかそんなのどうでも良くなったんです。ただ友として、そして好敵手として……共に競い戦い合って行きたかったんです。だから、これ以上斑鳩さんが堕ちていくのを見るのを耐えれなくて……救おうと思ったのに……グスゥ……なのに…」
飛鳥達に話して行くうちに、詠の瞳からは涙が溢れ出していた。
それだけ、斑鳩を救えなかったのが悔しく、悲しかったのであろう。
「ごめんなさい……結局私は、斑鳩さんを傷つけてばっかりで……こんな…こんな情けなくて弱い自分で……ごめんなさい。」
泣きじゃくりながら飛鳥達に謝罪する詠に対し、飛鳥は頭を撫でながら詠に抱きついた。
「そんな事無い、詠ちゃんは強いよ。ずっと一緒に居たのに、斑鳩さんの事を何も知らなさ過ぎた私なんかよりも。」
「飛鳥先輩……」
抱きつきながら詠に呟きながら、詠以上に悔しげな顔をする飛鳥の顔を見て風魔が呟く中、飛鳥は立ち上がって詠が通って来た道を見つめた。
「………風魔ちゃんと土方ちゃんは詠ちゃんを病院まで連れてって上げて。柳生ちゃん、雲雀ちゃん、菖蒲ちゃん……行こう。」
「……あぁ、」
「うん。」
「は、はい!!」
見つめながら風魔と土方に指示した後、飛鳥は柳生と雲雀と菖蒲と共にその道の先に向かった。
「あ、飛鳥先輩!!」
「風魔さん!! 今は詠さんを病院に届けるのが先決です!!」
「で、でも!!」
「今私達も行っても足手まといです!!」
「ぐぅ!?」
そんな飛鳥を見て心配になったのか追いかけようとした風魔に土方はそう話し、それを聞いた風魔は苦虫を噛んだ様な顔を浮かべた。
「……分かったならさっさと行きますよ。詠さん、まだ苦しいと思いますけど…」
「えぇ、迷惑かけてすみません。」
そう詠に肩を貸しながら話しかける土方は、そのまま病院まで詠の身体に負担が無いように急いだ。
そんな土方の背中を見た後、一人その場に残った風魔は……
「………くそぉ!! くそ!! くそ!! くそ!! くそぉおおおおおおおおおお!!」
苦しむ顔を見せる飛鳥を見ても何も出来ない自分に腹が立ったのか、風魔その場にある物を必要以上に蹴りながら叫び続けるのだった。
――――
「すまんな……勝手に独断行動した癖に、皆に迷惑ばかりかけてもうて。」
「良いのよそれくらい。迷惑かけるのはお互い様でしょ?」
「まぁ……焔や春花様の迷惑に比べたら、こんなの可愛いものだしね。」
『おい。』
同時刻、日影の手当をしていた焔達に対して日影は謝罪し、それに春花が言った後に未来が呟き、それに対してツッコむ春花と焔。
「……それより日影、葛城が迷っているってのは、本当か?」
「……少なくとも、ワシにはそう見えたな。」
「そうか。」
焔の問いに対して日影は少し俯きながら答え、それを聞いた焔は髪を掻きながら呟く。
「春花と未来は日影をアジトまで連れて行ってやってくれ。葛城の事は、私が何とかして見せる。」
そう言いながら焔は忍転身し、日影が寝ていた場所にある道の先まで急いだ。
「……………」
「どうしたの? 未来?」
「………戻れるのかな、半蔵の皆。前のような五人に。」
「そうね。私も、そう願いたいわね。」
そんな焔の背中を見つめる未来に日影が聞くと、そう答えた未来に対して春花は答えるが、その顔は浮かなかった。
それだけ、焔紅蓮隊にとって、半蔵学院の五人の存在は大きいと言う事なんだろう。