閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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16.砕かれし鳳凰

 

「そ…蒼志………」

 

「……なるほど、そういう事か。」

 

 蒼志の姿を見て驚きを隠せずにいる斑鳩と、何かを察した葛城。

 蒼志はついさっき前、葛城に仲間割れは禁止されていると言ったがそれはアジト内での話。

 つまりアジトの外では、仲間割れがあっても良くないわけでは無いと言う分けだ。

 

「察しが早くて助かります。そう、アジトの中で殺しあうのは禁じられてますが、アジト外ではそう言うのもありませんので……何より、」

「私達破忍の仲間になっておきながら今だ迷い続けてるあなたに、私達の仲間でいる資格などありません。」

 

「………そうか、そりゃそうか……」

 

 刃を向け続けながら話す蒼志の言葉に納得したのか、葛城は涙をそっと手で拭い、その涙を見て呟いた。

 確かに破忍に入った事に迷いなど無ければ、先ほどのように涙を流し続ける事も無かったからだ。

 

「…………つくづく哀れな女ですね。両親を失って目的も失い、親友が両親を殺したも当然の家族の養子。悲劇のヒロインってのはこういうのを言うのでしょうか? ……いや違いますね。あなたが、」

「あなたが傍に居たせいでしょうね。斑鳩。」

 

 蒼志が葛城の姿を見て少し哀れと思ったのかそう話した後、斑鳩に刃を向けながら話した言葉を聞き、斑鳩は目を見開いた。

 

「あなたが傍に居たせいで、家族の事はともかくとして、葛城が忍びとしてどう生きて行けば良いか悩んでしまった。あなたが居たせいで、傷つかないくて良い人達まで傷ついてしまった。あなたが居るだけで、不幸にならずに済んだ人まで不幸にさせてしまったんですよ。」

 

「っ!?!?」

 

 蒼志の言葉は、悉く斑鳩の心を引き裂いて行った。

 ただでさえ先ほど詠を傷つけてしまい、そして葛城の涙を流しながら嘆く姿を見たせいで心を傷つけているにも関わらず、蒼志はその心の傷に塩どころか、大量の塩水を流したように言い続けた。

 

「貴方ももう分かってるはずです。あなたが居るだけで人は傷づく。傷つかないて良い人まで傷つけてしまう。そんな不治の呪いに……かかってる事にねぇ!!」

 

 蒼志は刃に蒼炎の炎を纏わせながら下から斬撃を放ち、それをまともに食らってしまった斑鳩と葛城は吹き飛ぶ勢いで離れてしまう。

 

「がぁ!? あぁああ……うぅううう………」

 

地面に出来た水たまりに倒れ、痛みに悶えている斑鳩の前に蒼志が近付く。

 その蒼志の左手には、葛城との戦いの際に話してしまった飛燕が握られていた。

 

「結局……あなたには何もない。立派な忍になって果たす使命すら、忍びとしての資格すらも。あるのはせいぜい、人を苦しめ傷つけるだけの呪いだけです。そんなあなたに………」

 

「こんなものは必要、ありません。」

 

 そう言った蒼志は次の瞬間、宙に舞わした飛燕に向けて自身の蒼炎の刃を振るい、飛燕の刃を粉々に粉砕した。

 

「………あぁああ………あぁああああ………あぁあぁああああああああ………」

 

 刃が粉々に粉砕され、柄と鍔、ほんの少しの刃しか残ってない飛燕が地面に落ちたのを見て、斑鳩は身体を震わせながら飛燕を拾うが、先ほどの事が信じられないのか、それとも相当ショックだったのか、斑鳩は目を見開きながら震え続けていた。

 

「………さて、生き地獄も十分満喫したようですし、もうここで………死んでください。」

 

 そんな斑鳩を見ても悲観なども何も無く、蒼志は冷たい目で斑鳩を見下す様に睨みながら、刀を斑鳩に向けて振るった。

 

ザァン………

 

 刀は振るわれ、斬られた肉体からは血しぶきが舞い散った。

 しかしそれは……斑鳩の身体から出て来たものでは無かった。

 

「…………え?」

 

 斑鳩は、目の前で起きた光景に唖然となっていた。

 さっきまで、さっきまで自分を本気で殺そうとしていた、親友で仲間だった葛城が自分の目の前に立ち、自分を守るように蒼志の刀に身体を斬られてしまったからだ。

 

「……か、かつ、か……か、」

「葛城さぁん!!」

 

 目の前の光景に驚愕しながらも、その場で倒れる葛城を見て叫ぶ斑鳩に対し、こう告げた。

 

――――逃げろ、斑鳩―――――

 

 そう告げた後、葛城は地面に倒れ、そのまま動かなくなってしまった。

 

「………………あぁ、あぁああああ、ぁあああああああ……」

 

 倒れ、ピクリともしなくなった葛城を見てしまった斑鳩は顔を恐怖に染め、後ずさりしながら声を上げ続けた次の瞬間……

 

「あ゛ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 声にならない悲鳴を空高くまで聞こえるように上げ、その現実に耐えきれずに逃げ出してしまった。

 

 

「…………………フフ、フフフフフフフフフ、」

 

 そんな実の姉の後ろ姿を見た蒼志は、追う事も蒼炎の斬撃を放つ事もせず、ただ笑みを浮かべた次の瞬間、

 

「フフフフフハハハハハハハハハハ!! アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! あの顔!! さっきのあなたの顔!? 何もかも傷つけてしまい、そして何もかも忘れて生きていたあなたが見せたあの顔!? そう……あなたの、自分の全てに絶望してしまった顔が見たかった!? 見たかったんですよぉ!!!」

 

 実の姉の悲しみと絶望に腹を抱えながら笑うその姿は、まるで狂気に満ちていた。

 まるで何時もと蒼志とは別人に見えるその姿は、一つの復讐を遂げた復讐者の笑みその者のようなものだった。

 

「ハァ………ハァアアアア………フゥ、さて……もう片方の方も済ませますか。」

 

 笑い続けた後、余韻にしたりながら息を整えた蒼志は地面に刺していた刀を抜き、今だ倒れている葛城の元へ向かった。

 

「正直、あなたには感謝してるんですよ。あなたが斑鳩を庇って倒れてくれたお陰で、あの女の一番見たい顔を見れたんですから。まぁ……それだけですが。」

 

 そう話しながら葛城を見下ろしながら刀を上げる蒼志の顔は、再び笑みを浮かべていた。

 

「それじゃあ……せいぜいあの世で家族ともども仲良くで。」

 

 そう言って葛城に向かって刀を振り下ろしたのが、その刃が葛城に振るわれる事は無かった。

 

「っ!?」

 

 蒼志が振るった刃は、間一髪で間に合った飛鳥と焔の刃によって防がれたからだ。

 

「……何のつもりですか? 私は私の目的を達成してるだけです。邪魔しないでください。」

 

「目的って……かつ姉ぇや斑鳩さんを殺す事?」

 

「えぇ。まぁ斑鳩はさっき凄い顔で逃げ去ってしまいましたが。いやぁ滑稽でしたね。あの何もかも絶望した顔は、」

 

「ふざけないで!!」

 

 蒼志に対して質問した飛鳥はその答えを聞くと、隣に立っていた焔が驚く程の声を怒鳴った飛鳥。

 

「飛鳥……」

 

「何で君がそこまでするのかは知らないけど、斑鳩さんは誰よりも苦しみながらも、誰よりも忍として一生懸命だった!! かつ姉ぇもかつ姉ぇで、ちゃんと私達の事を見てくれた!! なのに……なのに、過去に何かあったってだけで、そこまで苦しめる事も、ここまでする必要もないじゃん!!」

 

「……何を言うかと思えば、それはあなたが何も知らないからそんな事言えるからでしょう?」

 

「分かんないよ!! 何も分かんないよ!! でも……これだけは分かるよ。………これ以上、」

 

「これ以上私の大好きな先輩を苦しめるなぁああ!!」

 

 飛鳥は蒼志に刃を向け、涙を流しながら叫んだ。

 その涙は斑鳩と葛城に対する哀しみの涙でもあったが、二人に対して何も出来なかった、己の無力さへの涙でもあった。

 

「……………」

 

 そんな飛鳥を見ても何も感じようともしない蒼志は目障りだと思ったのか、飛鳥と焔を睨みながら刀を構えたその直後だった。

 

「面白い展開だけど、今回はここまでって所かな?」

 

 蒼志の後ろから声が聞こえ、その方に飛鳥達も顔を向けると、そこには破忍のリーダーである漆月が立っていた。

 

「……私の迎えですか?」

 

「まぁねぇ。大体の一部始終は見てたから説明もしなくて良いよ? ってなけで、これ以上雨の中で居ると風邪引いちゃいそうな蒼志をお迎えに来たって分け? 別に良いよね?」

 

「………まぁ、目的のある程度は達成できたので、続きはまた今度って事にしましょう。」

 

 蒼志の質問に笑みを浮かべながら答えた漆月の話を聞いて、何時も一緒に居たからか大体察した蒼志は、少しだけ笑みを浮かべながら刀を鞘にしまった。

 

「素直でよろしい。じゃあ飛鳥ちゃんに焔ちゃん、私達は帰るから!! あぁ葛城は返すよ!! やっぱ私達側は彼女には向いて無かったっポイし!!」

 

「っ!? 待って!?」

 

 そう頷いた漆月は飛鳥と焔に話しながら蒼志と共に去ろうとすると、飛鳥は漆月を呼び止めた。

 

「……何?」

 

「漆月……君は何が目的なの? 仲間にこんな復讐させて、私達の大切な友達や仲間を傷つけて、更には忍社会を壊すって……どうしてそんな事するの!?」

 

「それは私も聞きたい所だな。それにお前、私や飛鳥の事を昔っから知ってる様だったし……お前、本当に何者なんだ?」

 

 漆月に対しての質問をする飛鳥に続くように焔も質問すると、それを聞いた漆月は頭を掻きながらこう答えた。

 

「……あいにく、中途半端なネタバレって私嫌だからしないんだよね。でもまぁ、しいて言うならこれかな? 飛鳥ちゃんに焔ちゃん、」

 

「陽花って名前の忍、覚えてる?」

 

『っ!??!』

 

 漆月の言葉を聞き、飛鳥だけでなく焔も目を見開きながら驚いた。

 

「今言えるのはそれだけかな? それじゃあ二人共、チャオォ~!!」

 

 動揺を隠せずにいる飛鳥と焔を見て、漆月はそう挨拶しながら蒼志と共にこの場を去って行った。

 

(陽花って……あの陽花さん!? そんな……どうして、どうして漆月が陽花さんの事を知ってて……)

 

(いや、あの陽花さんだ。もしかして知ってても可笑しくない。でも……でもなんであの人の名前を……)

 

「二人共何やってるですか!?」

 

 その後残された飛鳥と焔は、陽花と言う忍の名前を聞いた際の動揺が収まらず、二人共混乱しながらも考えていると、菖蒲が後ろから声を掛け、それに我を取り戻した飛鳥と焔。

 

「今はかつ姉様が!? このままだとかつ姉様が死んじゃいますよぉ!!」

 

「とにかく近くの屋根がある場所まで運ぶぞ!!」

 

 飛鳥と焔が振り返ると、涙を流しながら葛城を抱える菖蒲と、マントを傷口に縛って止血した柳生の姿があり、よく見れば雲雀も忍装束の上を葛城に着せたりと、最善を尽くしていた。

 

「………行こう、焔ちゃん。」

 

「あ、あぁ……」

 

 今だ漆月の事で動揺を隠せない飛鳥だったが、今は葛城の方も心配と考え焔に声を掛けながら葛城に駆け寄るが、途中その足を止めてしまった。

 

「………斑鳩さん。」

 

 飛鳥は空を見上げながら斑鳩の名を呟き、同時に拳を強く握りしめた。

 まるで、無力な自分に怒るように。

 

 

――――

 

「ハァ………ハァ………ハァ………ハァ………ハァ………」

 

 斑鳩は逃げていた。ただひたすら、目の前で起きた悲劇に逃げていた。

 今だ振り続ける雨の中、刃が粉々に砕かれた飛燕を手にしながら逃げ続けていた。

 

「ハァ………ハァ…………ハァ…………ハァ………ぁああ!!」

 

 息を荒立てながら逃げ続けていた斑鳩だったが、足がもつれてしまったせいでその場で転んでしまい、ただでさえボロボロの忍装束は泥で汚れてしまった。

 

「……………うぅ……ううぅううう………うぅあああああああああ………」

 

 倒れた斑鳩は、刃が見る形も無い飛燕を見て唸るように声を上げた。

 もはや斑鳩の心は限界をとうに超えていた。

 親友の両親を殺した家族の養子になってしまい、沢山の人達の人生を狂わせ、家族で会った妹の心を傷つけしまい、最強の友と呼んでくれた友を傷つけ、己の誇りとも言えた刀を破壊させられ、そして目の前で親友が自分を庇って斬られてしまった。

 様々な悲劇に斑鳩の心はボロボロになり、そして今、その心は堕ちようとしていた。

 

「あぁあああああ…………う゛ぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!! あ゛ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 斑鳩は頭を抱えながら泣き叫んだ。喉が潰れるぐらいに泣き叫び続けた。

 自分は、本当に人を不幸にさせる不治の呪いにかかっている。そう自分を悲観処か被虐するように、斑鳩は自身への絶望に泣き叫び続けた。

 その日斑鳩は完全に自身に絶望し、心を深く闇に堕ちてしまった。

 

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