閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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1. 動乱の幕開け

 国立半蔵学院。百年以上続くマンモス進学校であるその学院には、秘密裏にとあるクラスが存在していた。

 忍クラス、忍候補生の忍学生を育てる為に存在しているクラスである。

 

「はぁあああああああああああああ!!」

 

「たぁああああああああああああああ!!」

 

 その忍クラスがある旧校舎地下にある訓練場。そこでは今、二人の忍学生の少女達が修修業の立ち合いをしていた。

 一人は飛鳥。半蔵学院選抜メンバーの二年にして伝説の忍である、あの半蔵の孫である彼女は、愛用の長短二本の脇差を振るっている。

 もう一人は風魔。半蔵学院補欠メンバーの一年で、あの風魔小太郎の血を引く由緒正しい家柄の少女である。

 そんな彼女も、得物である鎖付き手裏剣を手にして飛鳥の斬撃をギリギリで防いでいた。

 

「よっと!! フフ、大分腕を上げたね風魔ちゃん?!」

 

「当然!! 何時までも落ちこぼれって分けには行かないでしょ!?」

 

「ふーん、じゃあこれは防げるかな!?」

 

 飛鳥の言葉に風魔が答えた後、飛鳥は少し悪戯じみた笑みを浮かべながら地面に潜り、そのまま風魔に向かっていた。

 

「はぁあああ!!」

 

 地面の中から出る勢いのまま風魔に斬りかかろうとした飛鳥。だがそこには既に風魔の姿は無く、

 

「こっちですよ先輩!!」

 

 風魔は手裏剣を天井目掛けて投げ、その手裏剣に繋がれた鎖を持って天井に逃げていた。そして風魔は天井に足を付け、そのまま手裏剣を掴み直しながら、

 

「これで……フィニッシュッス!!」

 

「っ!? 負けるかぁああああああああああ!!」

 

 風魔は天井を蹴って飛鳥に目掛け突っ込みながら手裏剣を構え、それに気づいた飛鳥も脇差を自分の前で構えて態勢を整えた。

 

「それまで!!」

 

 次の瞬間、男の声が二人を呼び止めようとしたのも既に遅く、突っ込んだ風魔と飛鳥はぶつかり合い、その衝撃で周囲に煙風が舞った。

 

「…………」

 

「…………」

 

 互いを睨みながら得物を向ける飛鳥と風魔。飛鳥の脇差の一本も風魔の手裏剣も、互いに首の近くまで向けられており、勝負は引き分けに終わったかと思えたが……。

 

「……この勝負、飛鳥の勝ちだな。」

 

 先程呼び止めた男、忍クラスの担任である霧夜は飛鳥と風魔を見て、正確には胸部分を見てそう答える。

 よく見れば飛鳥のもう一つの脇差が風魔の胸に刃が向けられており、後少しでもその刃が胸に当たれば、風魔にとって致命的になっていたはずだ。

 

「ぷはぁ~!! やっぱ強いッスねぇ飛鳥先輩は。」

 

「そんなぁ、風魔ちゃんも凄いよ。まさかこんなに強くなってたなんて。」

 

 張っていた緊張が解けたのか、息を吐きながら倒れ込む風魔に笑みを浮かべながら答える飛鳥だが、確かに飛鳥の方が実力が上だった。

 飛鳥はこれまで、仲間達と共に様々な戦いを潜り抜けて来た。蛇女での雲雀と超秘伝忍法書奪還。死塾月閃女学館と秘立蛇女子学園との学炎祭。カグラ千年祭り。その様々な戦いが飛鳥を強くさせていったのだ。

 

「うむ飛鳥。今日もまた良い潜りっぷりだった。流石と言っておくべきか。」

 

「もぉ、霧夜先生まで。」

 

「風魔もなかなかの手裏剣っぷりだったぞ? あのサボり気味だった風魔が、ここまで育つとはな。」

 

「んげぇ!? 先生はそれは無いですよぉ~確かにサボってましたけど!?」

 

「自覚はあるんだね。」

 

 霧夜の言葉を聞いて何かが胸に刺さったのような感覚をした風魔の返答を聞いて、思わず額に汗を少し掻きながら呟く飛鳥。

 

「んぅ~良し!! とりあえずシャワー浴びてお昼にしようっと!! 飛鳥先輩!! お先です!!」

 

「あぁ!! ちょっと待ってよ風魔ちゃん!?」

 

「あぁ飛鳥、ちょっと待て。」

 

 背伸びしながら立ち上がった風魔はそう言って訓練場から去って行き、飛鳥がそれを追いかけようとした矢先、霧夜に呼び止められた。

 

「んぅ? どうしたんですか先生?」

 

「……まぁそのなんだ、あの二人が今いないからって、あんまり無理はするなよ?」

 

 霧夜の話を聞いた飛鳥は、少しだけ表情を暗くしたのだが、すぐさま笑みを霧夜に向けた。

 

「だ、大丈夫ですよ先生!! 雲雀ちゃんや柳生ちゃんも、今は土方ちゃんも居ますし、こんな所でへこんでたら、斑鳩さんやかつ姉を心配させちゃうからね!!」

 

「………」

 

 そう言って風魔の後を追った飛鳥だったが、霧夜から見てその背中からは何処か、寂しさを感じ得ずにはいられなかった。

 

「……もうかれこれ一週間か。」

 

 霧夜は手に持っていたタブレットを見て呟いた。そのタブレットに写っていた画面には……

 

――破忍討伐失敗!! 参加していた忍学生が行方不明に――

 そう書かれた文字の近くにはその行方不明になった忍学生のリストも載っており、そこには飛鳥の先輩である斑鳩と葛城だけでなく、月閃女学館の雪泉と叢、蛇女子学園の雅緋と忌夢と言った、飛鳥とも関係のある忍学生の名前も載っていた。

 

 

「………」

 

「どうしたんだ雲雀って、何時ものアレか?」

 

 忍教室の近くにある購買部の前で、上を向いて立っていた半蔵学院選抜メンバー一年である雲雀を見て声を掛ける、同じく選抜メンバー一年の柳生は声を掛けようとしたが、その原因を見て納得した。

 

「………」

 

 その原因は菖蒲。半蔵学院補欠メンバー一年で来年には選抜メンバー入りが決まっている彼女は、何時もの様に購買部の店番をしていたのだが、菖蒲の口からは魂が抜け上に昇っており、本体は真っ白になっていた。

 

「もう一週間も経つからね。菖蒲ちゃんにとってはやっぱりきついのかな。」

 

「だろうな。もう明日には天井にまで着きそう感じだからな。……ちなみに、俺も一週間雲雀と、」

 

「おぉ~い菖蒲ちゃーん、起きてよぉ。」

 

「…………」

 

 雲雀と話していた柳生が最後に何かを言おうとしたのだが、それを聞いて欲しかった雲雀は菖蒲を起こそうとしており、言えずじまいに終わってしまった。

 

「まったく……、こうも毎日毎日魂抜けて出てたら、起こす私の身にもなって欲しいぐらいですよっと!!」

 

 そんな中、大きなハンマーを持つ少女、菖蒲や風魔と同じく半蔵学院補欠メンバー一年の土方が購買部にやって来ると、そのまま菖蒲の元まで近づきながらハンマーを振りあげ、

 

「………んぅ!!」

 

「んげぇええええええ!?」

 

 土方は菖蒲の背中目掛けてハンマーを降り下ろし、背中をハンマーで叩かれた菖蒲の身体には魂が戻り、菖蒲の意識も戻った。

 

「痛たたたたたたた、もぉ~土方ちゃん!! 酷いですよぉ毎日毎日!?」

 

「あなたがその毎日毎日店番のやる気も出さないで、ぐったりと魂抜かしてるからでしょうが!? 前みたいにしっかりと仕事してくだいしっかりと!?」

 

 叩かれた背中を摩りながら話す菖蒲だったが、菖蒲に対して土方が言った事に思わず頬を膨らませる。

 

「だ、だってぇ~!! もう一週間ですよぉ!? 一週間!? 一週間も会えないなんてそんなの……そんなの生き地獄見たいなもんじゃないですかぁ!?」

 

「自然学校でお母さんに会えずに愚図る小学生ですかあんたは!?」

 

 そしてそのまま駄々をこねながら叫ぶ菖蒲に対してツッコむ土方。このような光景がここ一週間続いていた。

 

『………』

 

「おーい!! 二人共どうしたのって……あぁまたなの?」

 

「もぉお約束って感じですよねぇ~。まったくしょうがないなっと!!」

 

 それを愛想笑いして見る雲雀と呆れて頭を抱える柳生を見て飛鳥が声を掛けると、菖蒲と土方を見て納得し、隣にいた風魔は呆れながらも菖蒲と土方の元に近付いた。

 

「はいはい!! 二人共そこまで!! もぉ~菖蒲ちゃんもそんなんだったらまた葛城先輩に逃げられますよ!! 土方ちゃんも起こり過ぎるとまたおでこ広がって最終的にはハゲって、ぐばぁ!!」

 

『余計なお世話です!!』

 

 風魔は菖蒲と土方を落ち着かせようとしたのだが、その際に発した言葉がいけなかったのか、菖蒲と土方の逆鱗に触れてしまい、二人のパンチを顔面に受けてしまう。

 

「ハァ……ま、菖蒲の気持ちも分からんでも無いがな。なぁ飛鳥?」

 

「うん…って、何で私に振るの?」

 

「お前が一番気にしてるだろうと思ってな。斑鳩や葛城だけじゃない。雪泉の事だって………」

 

「………」

 

 その光景を見てため息を付きながら話した柳生に話を振られた飛鳥は戸惑っていると、柳生が続けざまに発した言葉を聞いて思わず目を逸らし、頭をくしゃっとした。

 

「でも本当、皆大丈夫かな?」

 

「あぁ、アイツらなら死んだとは考えたくないが………」

 

「…………」

 

 雲雀が不安げな表情を浮かべながら発した言葉に柳生も反応し、その場の空気が静まる中、飛鳥は窓越しに空を見上げた。

 

(……斑鳩さん、かつ姉、雪泉ちゃん、皆……)

 

 その時の飛鳥の表情には何時もの笑顔は無く、不安と寂しさが混ざったような顔をしていた。

 

 

 現在、忍社会はある抜忍組織によって、混沌に包まれかけていた。

 組織の名は「破忍」。その名の通り破壊の忍を自称した組織の目的、それは現忍社会の破壊だった。

 最初は悪戯かと忍の上層部は考えていたのだが、その宣戦布告じみたメッセージが送られた直後、悪忍の養成校であるゾディアック星導会が破忍の襲撃を受けてしまい、そのリーダーである麗王を始めとした忍学生達が連れ去られてしまった。

 その後も破忍による忍学校襲撃は続き、襲撃を受けた忍学校に属している忍学生は皆、ゾディアック星導会と同じように連れ去られて行った。

 そして襲撃はあの遠野の里にまで伸び、襲撃を受けた遠野の里にある遠野天狗ノ忍衆の忍学生もまた、リーダーである夕焼を始め全員連れ去られた。

 事態の脅威を重く見た忍の上層部は、精鋭部隊を結成。高等部三年の忍学生も善忍悪忍問わず選りすぐりの者達が選ばれ、その中には半蔵学院の斑鳩と葛城、月閃女学館の雪泉と叢、蛇女子学園の雅緋と忌夢も配属された。

 しかし……精鋭部隊による破忍討伐は失敗に終わった。上忍達は皆殺されており、忍学生の方は皆、行方を掴めずにいた。それに例外は無く、斑鳩、葛城、雪泉、叢、雅緋、忌夢もまた同様だった。

 それから一週間が経つ間にも、破忍の忍学校襲撃は終わる来なく続いているのだった。

 

 

「…………」

 

「お前までボケっとしてるんじゃないぞ?」

 

「痛っ、あぁゴメン。」

 

 購買部での買い物を終えた後、旧校舎の屋上で皆と昼食を食べていた飛鳥だったが、好物である太巻きを食べながら空ばっかり見ていた。

それを見ていた柳生は軽く頭にチョップし、それを食らった飛鳥は軽く謝る。

 

「飛鳥先輩の気持ちは痛い程分かりますよぉ!! 私もこれ以上かつ姉様に会えない日が続く考えるだけで………あ゛ぁあああああああああああああああああああ!!」

 

「わぁああああああ!? 菖蒲ちゃん落ち着いて!!」

 

「フガフガフガフガフフガガガ!! フガガガガフガ、フガガガガフガガガ!!(でも今はどうしようもないですよ!! とにかく今は、昼食でも食べましょうよ!!)」

 

「細巻き食べながら喋らないでください。お行儀悪いですよ?」

 

「……ま、そんなに不安で一杯一杯だったら、焔の所にでも行って勝負して来たらどうだ? 少しは気が紛れるかと思うぞ?」

 

「う~ん、それなんだけどねぇ。」

 

 飛鳥を見て不安が爆発しかけそうになった菖蒲を落ち着かせようとする雲雀。細巻きを食べながら話す風魔に注意する土方。それを見ながらも飛鳥に気を遣おうとした柳生だったが、それを聞いて飛鳥は不満な表情を浮かべながら皆の元に近付いた。

 

「何か最近ねぇ。焔ちゃんに会っても全然相手してくれないんだ。会っても用事があるってすぐどっか行っちゃうさぁ。」

 

「そうなのか? あぁでも、そう言えばこの前未来を見かけたが、何かを探ってるようだったな。」

 

「私も春花さんを見かけて声を掛けたんだけど、すぐにどっか行っちゃたんだよねぇ。」

 

「まったく!! 何時もはあっちの方から勝負しよう勝負しようって言って来る癖に、本当勝手なんだから!!」

 

『……………』

 

 飛鳥の話を聞いた柳生と雲雀は、ここ最近焔達、焔紅蓮隊が何かを探っているようだった事を話すのだが、文句を太巻きに被り付く飛鳥を見て、少しだけホッとした。

 

 

「ぶわぁくっしょん!!」

 

 その頃、とあるビルの屋上にいた焔紅蓮隊のリーダー焔は、とてつもない大きなくしゃみをしてしまった。

 

「もぉ~焔ぁ。そんな大きいくしゃみしないでよ唾こっちまできたじゃないの!?」

 

「大方飛鳥ちゃんが、最近焔ちゃんが構ってくれないとか愚痴ってるんじゃないの?」

 

「ズズゥ、あぁかもな。最近はこいつの事調べたりバイトとかしてばっかりで、ロクに相手しなかったしな……良し!! これにキリ着いたら、飛鳥の所に殴り込んでやるか!?」

 

「キリ付けたらね。」

 

「うぅ……」

 

 仲間であり家族同然の焔紅蓮隊の未来と春花の話しを聞いて豪語した焔だったが、春花の返答を聞いて苦虫を噛んだような表情を見せる。

 そんな焔達の手元には数枚の資料があり、その資料の写真には、蒼の短髪の少女の写真が写っていた。

 

「元蛇女子学園の蒼志。私達より前に蛇女を抜けたってのは知ってたけど、まさかあの破忍の仲間に居るなんてね。」

 

「まぁ確証も無いけどね。それにしてもこの子、何で破忍の何かに入ったのかしら? 焔ちゃん、あなたこの蒼志ちゃんと何度も組み手をした事あったはずよね? 何か覚えてる事無いかしら?」

 

 どうやら焔紅蓮隊は、自分達と同じく蛇女の抜忍で、今はあの破忍の仲間と噂される蒼志と言う忍の事を調べていた様らしい。

 とは言っても中々情報も集まらずにいるのが現実で、春花は焔に蛇女時代の事を聞いた。

 

「んぅ……筋は中々悪くは無かったな。刀の太刀筋も悪くなかったし、あのまま蛇女に居れば選抜入りも確かかも知れなかった。ただ……」

 

「ただ?」

 

「何時だったか忘れたが、何処か焦り始めたようだったな。一刻も早く強くなりたいと言う。っでいつの間にか蛇女を抜けてた。結局何が原因かもさっぱりだったな。」

 

 そう蒼志の事で出来る限り分かっている事話した焔は、結局蒼志の事に関しては分からずじまいと言う事に思わずため息を付いた。

 

「ふぅ~ん。所でさ、さっきから詠お姉ちゃんはどうしたの?」

 

 そんな焔の話を聞いた未来は後ろに振り替えると、そこには何かを心配し、不安がる詠の姿があった。

 

「……………」

 

「今日も今日とて、斑鳩さんの事考えとんのか?」

 

「……悪いですか? 考えてて。」

 

 詠の後ろから声を掛けて来た、同じ焔紅蓮隊の日影の言葉を聞き、不満げに答える詠。

 どうやら詠は、戦友でもあり親友と言ってもよい斑鳩の事を考えており、その事ばかりここ数日考えていたようだ。

 

「別に構へんけど、あんまし斑鳩さんの事ばっかり考えてもしゃあないやろ。詠さん、ここ最近その事ばっかでただでさえ野草ばっかりの食事にも手つかへんし、もやしの栽培だって忘れかけとるやろ。」

 

「……そう言う日影さんはどうなんですの? 葛城さんの事、心配なんじゃ無いんですか? 結局、あなたと葛城さんの関係なんてその程度だったて事ですか? 本当、感情がない人は気楽で良いですね。」

 

 日影の話を聞いて詠は、普段なら絶対言わない事を口にしてしまい、それを聞いた日影は眉を寄せた。

 

「……まぁ確かにわしは感情ないけど、流石にさっきの詠さんの言葉にはカチンと来たで。」

 

「だったらなんなんですの? 葛城さんや斑鳩さんの事が心配なんですか? そうじゃ無いんですか? どっちかハッキリしてください!!」

 

「あぁちょっと二人とも!! 喧嘩しないで!?」

 

「こんな所で喧嘩したって、あの二人が帰ってくるわけでもないでしょ?」

 

 日影と詠が喧嘩になりそうになったのを見て未来と春花はすぐさま止めに入り、止められた日影と詠は互いに目を逸らす。

 

「ハァ……まったくアイツらは、何時になったら帰ってくるだが?」

 

 その様な光景を見た焔ため息を付きながら、今だ帰ってこない者達を思い浮べながら空を見上げる。

 

 

「コラァ!! 二人共!!」

 

 月閃女子学園。三年の雪泉と叢が行方不明で不在となっている、現在の選抜メンバー忍教室では、二年の夜桜が一年の四季と美野里に向かって怒鳴った。

 

「もぉ~夜桜ちん大きな声で怒鳴らないでよぉ。マニキュアズレちゃったじゃん!?」

 

「どうしたの夜桜ちゃん? そんなに怒って、これでも食べる?」

 

「いりません!! まったくお主らは、雪泉と叢が行方が今だ掴めずにいると言うのに……」

 

 爪にマニキュアを塗っていた四季とお菓子を食べていた美野里を見て、夜桜は思わず頭を抱えた。

 正直な話、雪泉と叢が行方不明なのは夜桜だけでなく、四季と美野里も同じく不安だ。

 だと言うのにいつも通りの四季と美野里を見て、夜桜は怒っていたのだ。

 

「そ、そりゃあ夜桜ちんの気持ち、あたしも美野里ちんも同じだよ。でもだからと言って、何の当てもなく探し回るのは逆に危険じゃない?」

 

「夜桜ちゃん。正直美野里もどうしたら良いか分からないんだ。で、でもさ!! こうしてここで待っていれば、何時か二人が帰って来るって信じてるから!!」

 

 そんな夜桜に対して四季と美野里も、自分の考えを打ち明けた。二人の話を聞いた夜桜は少し落ち着いた後、両手を腰に付ける。

 

「二人の意見に関しては、儂も文句は言いません。四季の言う通り闇雲に探しても見つかる分けでも無いと言うのも、美野里もここで待つのも同感します。」

 

「……じゃあ、夜桜ちんはどうしたいの?」

 

 そう答えた夜桜に対し四季が質問すると、夜桜は右手に拳を作って前に出した。

 

「修業じゃ!! 何時破忍が来ても良いように、何時雪泉と叢の行方が分かって、何か危険な事が起きたか分かってすぐに駆けつけれるように、しっかりと修業するんじゃ!! と言う分けで二人共、行きますよ!!」

 

「わぁああああ分かった!! 分かったからちょっと待って!! まだ左手塗り終わって無いから!!」

 

「夜桜ちゃん待ってぇえええ!! まだこれ食べ終わってないよぉおお!!」

 

「ダメじゃ!! 修業が終わってからにせい!!」

 

『えぇええええええええええええええええええええええええ!!』

 

 そう豪語した夜桜は四季と美野里の制服の襟を掴んで無理矢理修業場に連れて行く。

 

「…………」

 

 その時の夜桜の表情には、何処か不安に満ちた顔が浮かんでいた。

 

 

「ふぅ、今日の所はこんな所かしらね。」

 

 所変わって秘立蛇女子学園。そこの射撃場で射撃の修業をしていた、選抜メンバー一年の両備は今日の分を終え、得物であるライフルをしまって射撃場を後にした。

 

「んぅ?」

 

「…………」

 

「紫……」

 

 その道中、両備は橋の上で下を向いている選抜メンバー二年の紫を見つけた。

 その紫の表情には大きなくまが出来ており、かなりの寝不足に見えていた

 

(またネトゲで徹夜……と思ったけど、一番の原因は忌夢よね。まぁ、気持ちは分かるけどね。)

 

 紫が行方不明になっている姉である忌夢の事を心配していると思った両備には、その気持ちが痛い程分かった。

 両備自身、姉である両姫を失っている。もし紫が自分と同じ事になればどうなるか、分かったもんじゃないと思ったからだ。

 

(忌夢だけじゃない。雅緋がそう簡単に死ぬともおもってないけどね。……ここはとりあえず、励ました方が良いのかも。)

 

 そう思った両備は紫の所まで近づこうとしたが、すぐにその足を止めてしまった。

 

「………何してんのよ? 両奈。」

 

 その原因は、すぐ近くで横たわっているもう一人の姉である、選抜メンバー一年の両奈で、しかも両奈は下着姿でいわゆる亀甲縛りになっていた。

 

「あのね!! あのね!! 両奈ちゃん最近、一人で亀甲縛り出来るようになったの!! この状態で痛い目にあったら両奈ちゃん、絶対絶対気持ち良くなっちゃう!! ねぇ!! ねぇ!! 両備ちゃんも絶対思うでしょ!!」

 

「…………」

 

 目にハートマークを浮かべながら両備に聞いた両奈に対し、両備はさげすんだ目で両奈を見下した。

 

「……何であんたはそういつも通り過ぎるのよこのバカ犬ぅ!!」

 

「わおぉおおおおおおおおおおおおおおおん!!」

 

 そのまま両備は両奈を蹴り飛ばし、それに歓喜の声を上げた両奈の背中を何回も蹴り続けた。で、その様子を別々の思いで見ていた者達がいる。

 

「……フフッ」

 

 一人は紫。普通なら怖がるところだが、この状況でもいつも通りの二人を見て少し元気になったのか、大事なぬいぐるみであるべべたんに抱きつきながら笑みを浮かべた。

 

「………フン。」

 

 そしてもう一人は補欠メンバー一年の総司。その何処か両備の事を認めていない目をしていた総司は、鼻で笑った後どこかに行ってしまった。

 

 

「うぅ~ん!! 今日も疲れたねぇ!! さて、皆帰ろっか!!」

 

 夕方、今日の修業を終えた飛鳥達半蔵学院のメンバーは既に旧校舎の外にいて、寮に帰る準備をしていた。

 

「はぁ、明日も葛姉様はいない。何時までこんな日が続くんですかぁ?」

 

「まったくあなたは、葛城さんがいないとやる気のやの字も出ないんですか?」

 

「はい!! まったく出ません!!」

 

「いやそこハッキリ言わなくても良いじゃん!! 事実だとしても!!」

 

「風魔さんは一言余計です!!」

 

「んがぁ!!」

 

「……相変わらず仲良いなお前達は。」

 

「もぉ~三人とも!! 早くしないと置いてっちゃうよ!?」

 

「アハハハハ。」

 

 ため息をついた菖蒲に対して土方が言った事に菖蒲は即答し、それにツッコむ風魔にもツッコんだ土方に図星を突き付けられる風魔。

 そんな補欠三人を見て柳生は呆れ、雲雀は手を振りながら声を掛けた。そんな光景を見て飛鳥が微笑んでいたその時だった。

 

『!!!?』

 

 飛鳥達は何かを感じ取り周囲を警戒し始める。近くには何も無いが、その気配消える処か強くなる一方だった。

 

「こ、この気配って、忍……ですよね?」

 

「えぇ、それもただならぬ気配です。」

 

「で、でも何か、妙な物も混ざってるような気がするのは気のせい……じゃないよね?」

 

「ね、ねぇ柳生ちゃん。この気配ってもしかして……」

 

「あぁ、恐らくな。」

 

「発生源は……運動場!!」

 

 菖蒲と土方と風魔が忍の気配共に感じる物に疑問を抱く中、雲雀と柳生にはそのもう一つの正体に気付いていた。

 そして飛鳥を筆頭に、気配の発生源である半蔵学院の運動場に急ぎ向かうと、何か結界の中に入り込んだ感覚が飛鳥達を襲った。

 

「っ!? 忍結界!?」

 

「それだけじゃないよ!! アレ見て!!」

 

「むぅ、やはりか。」

 

 忍が展開出来る忍結界に入った飛鳥と雲雀と柳生達が目にしたのは、とてもこの世の物ではない異形の群れだった。

 

「こ、これってもしかして……妖魔!!」

 

「妖魔って、あの!?」

 

「しかもこんなに!?」

 

 忍全ての倒すべき存在である妖魔を始めて目の辺りにした菖蒲と風魔と土方は、妖魔を見て驚愕の顔していたが、何度か妖魔との戦いの経験がある飛鳥と柳生と雲雀からして見れば何処か違った。

 

「ね、ねぇ。あの妖魔、何か変じゃない?」

 

「あぁ。よく見たら至る所に機械らしき所がある。まるで……」

 

「作られ……てる?」

 

 飛鳥達の目の前にいる妖魔。その全てには本来の妖魔にはない機械的な部分が多々存在しており、まるで人工的に作られたような物だった。

 

「あらあら、流石に本物の妖魔と戦った事のあるそちらの三人は気づきましたか?」

 

 そんな時、妖魔の群れの中から少女が前に出た。黒のドレスを着用し鮮やかな姿をしながらも、その肌は黒い何らかの模様で覆われている少女、闇は白髪を靡かせながら血の様に赤い目で飛鳥達を見た。

 

「ま、気づいたとしてもそれがどうしたって話になりますけどね。」

 

 その隣に立つように現れた少女。黒い長髪に眼鏡、黒スーツの上にコートを見に付けている少女の手元には身長と同じ長さの杖を所持し、その杖を少女、転界は飛鳥達に突き刺す様に向けた。

 

『…………』

 

「……まぁ、何もご挨拶無しで現れたらそんな表情を見せるよね。だったらこの言葉は知ってるよね。私達は……」

 

「破忍だよ。」

 

『!!!?』

 

 妖魔の群れから現れた闇と転界を見て飛鳥達が動揺する中、新たに少女らしき声が聞こえ、その少女の話を聞いた飛鳥達が驚愕する中、その声の主である少女が目の前に現れる。

 水色の長髪を団子状で纏め、何処かの学校制服を黒く染めたような衣装と紅いスカートを履いた少女の表情には、この状況を人一倍楽しんでるように見えていた。

 そして少女は半蔵学院、主に飛鳥を見ながら不気味な笑みを浮かべながら口を開く。

 

「どうもぉ~半蔵学院の忍学生の皆。私は漆月。」

 

「破忍のリーダーよ。」

 

 その少女、破忍のリーダーを名乗る漆月の言葉を聞いて飛鳥達は更に旋律する中、漆月は飛鳥の顔をじっくりと見つめていると。

 

「フフ、そんな顔するのもしょうがないか………」

 

「久しぶり、飛鳥ちゃん。」

 

 漆月は飛鳥に向かって手を振りながら、またもや笑みを浮かべるのだった。

 

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