閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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19.必ず戻ると信じる者、帰って来た者

 

「……………」

 

 斑鳩と葛城、そして蒼志の間で起こった悲劇から三日後、斑鳩から受けた傷はとりあえず癒え治療を終えた詠は、浮かない顔でとある定食屋に来ていた。

 

「………来たか。」

 

「……………」

 

 ドアを開けると、そこでは斑鳩の兄である村雨が座っており、座っている席で食事を取っていた。

 そんな村雨を見るやいなや、詠は気まずい顔をしながら村雨が座っている席の向かい側に座る。

 

「呼びかけてすまないな。お前の傷が癒えたと言う報を聞いたものだからな。」

 

「いえ……」

 

 そう話しながら食事を続けた村雨の食事を見る詠。

 食べていたのは詠の好物であるもやしが大量に入ったもやし炒めだった。

 

「食べるか? もやしは君の好物だと聞いたが?」

 

「………すみません。そんな気分じゃなくて。」

 

 村雨の誘いを断る詠の顔は、今だ浮かない顔だった。

 好物でもあるもやしを口にする気が無い。傷は癒えてなお、詠の心の傷は深く傷ついているようだ。

 

「それでその、話って言うのは?」

 

 詠が本題に入ろうとすると、村雨は食事を止めてある物をテーブルに置いた。

 それは詠も見覚えのある物だった。

 

「そ、それって………」

 

「三日前に俺の屋敷の前に置かれていた。大方、もう自分には半蔵学院の生徒としても、ここの養子としての資格すらない。って事かもな。」

 

「それでその、斑鳩さんは?」

 

 置かれたのは斑鳩の半蔵学院の制服と得物である飛燕だった。

 それを見て驚く詠に村雨は頭を掻きながら話したのに対し、詠は弱々しく質問したが、村雨は無言で首を横に振るだけだった。

 

「………ごめんなさい。」

 

「? 何で君が謝る? 君が悪いって分けじゃ………」

 

「いえ……私が悪いんです。私がもっと、もっと強ければ斑鳩さんを、何時も斑鳩さんに戻せたはずなんです。」

 

 詠は村雨に謝罪の言葉を話したのを聞いて村雨は言い返すが、詠は今だ、自分自身が許さないでいた。

 

「いつもこうなんです。私の自分勝手な考えで斑鳩さんを目の敵にして、その誤解が解けて友達に慣れたと言うのに今度は……ひっく……ひっく……最強の……友達って言いながら…ひっく、えっぐ……助ける処か逆に傷つけてしまうなんてこんな……ひっぐ……ひっぐえっぐ……こんな私、もう………嫌ですわ。」

 

 詠は涙を流しながら、自身に対し自虐めいた言葉を言い放つ。

 目の仇にしていた自分を友と、親友と認めてくれた斑鳩。

 そんな彼女を救えなかった自分を、自分の弱さがよほど許せなかった。

 詠は村雨に謝りながら、涙を流し続けた。

 

「……俺も似たような物だ。」

 

「え?」

 

「自分が受け継ぐはずだった飛燕をアイツに取られたと思って、アイツを傷つけ遠ざけていた。挙句、今度は俺処か家の事でアイツを苦しめている。こんな一族、早々あって良いものかよ。」

 

 そんな詠を見ていた村雨は、自身が斑鳩にやって来た事を話し、更には自身の家が養妹である斑鳩の心を苦しめている事に対してもそう話し、村雨は乾いた笑みを浮かべた。

 

「村雨さん………」

 

「一族がやって来た事に関して、俺は自分は関係ないなんて思わねぇ。どちらにせよ、アイツの心を傷つけた事に変りねぇからな。」

 

 そう話し続ける村雨の顔を見て、詠は思わず感動を覚えた。

 話しには聞いてはいたが、あれだけ嫌っていたはずの斑鳩に対し今では兄らしき言葉を放つ村雨は、完全に斑鳩の兄だった。

 

「それにな。俺は信じてるんだ。」

 

 村雨は、今度は飛燕の柄を握り鞘から抜いた。

 そこには蒼志によって壊されてしまった刃では無く、新たに作り直された刃を持つ飛燕があった。

 

「どんなに刀が折れても、こうやって刃が戻るようにアイツも……斑鳩が俺達の、皆の元に戻って来るってな。」

 

 飛燕の刃を光らせながら話した村雨はその刃を鞘に納めると、飛燕を詠に手渡した。

 

「こいつはお前が預かっておいてくれ。」

 

「え……でもこれは、」

 

「良いんだ。どうせ俺には過ぎた代物だ。それに俺が持ってるよりお前が持ってた方が、飛燕も嬉しいだろう?」

「最強の友達であるお前の方が。」

 

 村雨の言葉に詠は納得したのか、飛燕を預かってそのまま定食屋を後にした。

 そして、預かった飛燕を見つめながら詠は……

 

「……村雨さん、私は誓います。必ず斑鳩さんの目を覚まして村雨さんの、皆の元に戻って来させると。例え……」

 

「この命に掛けても!!」

 

 決意を新たにする詠の目には、一切の迷いがなくなっていた。

 

――――

 

「………………」

 

 同時刻、こちらも治療を終え、半蔵学院の教室に居た葛城だったが、その顔何処か浮かなかった。

 それもそのはずだ。理由はどうあれ、飛鳥達を裏切ってしまった事に変わりなく、本来ここに自分が居て良いのは可笑しいと思ってるからだ。

 

「……………」

 

 葛城は教室を周りながら、様々な事を思い出した。

 楽しかった事、大変だった事、悲しかった事、それも何もかも皆が居たから良い思い出だった。

 けどそんな皆を、仲間を裏切ってしまった。

 そう思うだけで、葛城は胸が苦しむ一方だった。

 

「…………」

 

「どこ行くんだ?」

 

 ここに居られなくなったのか、葛城が教室から出ようとしたその矢先、後ろから柳生に声を掛けられてその足を止める。

 

「……どこ行こうとあたいの勝手だろう?」

 

「そう言う分けには行かないんでな。お前はしばらくここで待機だ。外出する時も俺か雲雀の同行が無いとダメだ。」

 

 柳生に話した葛城に対し答えながら、柳生は一つのビニール袋を葛城に向けた。

 袋の中には、二つのカップラーメンが入っていた。

 

「ほら、俺が気に入ってるイカラーメンだ。一緒に食うか?」

 

「…………」

 

 柳生に見つめられながら言われ、断われづらくなった葛城はしぶしぶそのラーメンの一つを手にした。

 

――――

 

「おやつにイカせんべいがあるんだが、それも食うか?」

 

「良い。ってか本当お前イカ好きだな?」

 

 ラーメンを食べ終えた後、質問した柳生に対し葛城は答え、そして今度は自分から聞いた。

 

「……何で、責めねぇんだ?」

 

「何だ?」

 

「だから、……何であたいを責めないんだって言ってんだよ!?」

 

 葛城は柳生に対し、まるで自分への不満がないような態度について聞き出した。

 

「あたいは……あたいは自分勝手な理由でお前達を裏切った。お前や雲雀、飛鳥達も傷つけちまった!! そんな……そんなあたいを恨んだりとかしないのかよ!?」

 

「葛城……」

 

 まるで自分に対して怒るように叫び葛城を見て、柳生は少しだけ悲しげな目をした。

 

「つくづく嫌になるよ、自分の不甲斐なさが。親が死んだだけで忍の正義とかも嫌いになって。挙句の果てには大事にすべき仲間まで手にかけちまった!! こんな……こんなの……後悔してもしきれねぇよ!!」

 

 葛城は涙を流しながら叫んだ後、その場に座り込んだ。

 自分が許せない、ここに居る事すらおこがましい。葛城の心には、罪悪感でいっぱいいっぱいだった。

 

「………何を今さら、こちとらお前の自分勝手な行動には慣れっこなんでな。」

 

「……へ?」

 

 そんな葛城に対して柳生が発した事に対して、葛城は思わず少しだけ驚いた。

 

「勝手に人の胸は揉むは、セクハラし放題だわ。一回ぐらい裏切ってしまって俺らを傷つけたぐらいでそんなにへこむな。らしくない。」

 

「そ、それは………」

 

 柳生の言葉に対して、少しだけ顔を赤くしながら言い返そうとする葛城だったが、柳生の次の言葉にそれも止まった。

 

「それに……家族の事になったら、誰だってあぁなる可能性はある。俺も含めてな。」

 

 柳生の悲しげな表情で言った言葉に、葛城は何も言えなかった。

 柳生も柳生で、妹を交通事故で失っていた。だから葛城の家族を失った気持ちは、分からなくも無いのだ。

 

「どんな家族だって、その家族が亡くなったり殺されたら、誰だって動揺し、しまいには世界の全てが許せなくなってしまう。そんな事だってあるだろう。」

 

「……お前も、そんな事があったのか?」

 

「それは無かった……って言えば嘘になるかもな。」

 

 柳生の話を聞いて葛城が質問したことに対し、柳生は右目の眼帯に触れながら答える。

 

「でも俺達はその亡くなった家族の為にも進むしか無いんだ。それが、逝ってしまった家族に対する、数少ない孝行見たいなもんだ。」

 

「柳生……でも、でもあたいは……」

 

 柳生の話を聞いてもなお、今だ自分自身が許せない葛城を見て、柳生は思わずため息を付いた。

 

「はぁ……そんなに自分が許せないんだったら良いだろう。だったら罰として、」

「お前の胸、揉ませろ。」

 

「………へ?」

 

 ため息を付きながら柳生が言った罰の内容を聞いて、葛城は思わず目が点になってしまう。

 

「この際だ。今まで揉まれた分も含めて揉んでやる。ほら逃げるな。」

 

「嫌々いやいやいや!! ちょっと待て!? 何で罰として胸を揉まれるんだよ!?」

 

「ウチで罰と言ったら乳揉みって、そんな感じにしたのお前だろう? 居良いからじっとしろ。そして揉まれろ、胸を。」

 

「だから待てって!? 大体あたい揉むのは好きだけど揉まれるのは苦手なんだって!? それにあたいは……」

 

 手をワキワキ動かしながら葛城に近付く柳生に対して葛城は止めようとしながら逃げるが、柳生は葛城を追い続けた。

 

「かつ姉さまぁ~~~!!」

 

「ぬえぇ!? わぁあああ!?」

 

 その矢先、教室の出入り口から菖蒲が飛び込むように現れたかと思えば、驚いた葛城に思いきり抱きつき、そのまま葛城の胸を揉み始めた。

 

「あぁあああああ~!! 久方ぶりのかつ姉様の匂い、そしてお肌、これほど至福な時はあったでしょうか?!」

 

「はぁ、結局菖蒲に先越されたか。」

 

「ため息ついてる場合か!? あぁあちょ菖蒲!? 頼むから……あぁ、揉むの止めって……離れろって!?」

 

 葛城の感触などに喜びの笑みを浮かべる菖蒲を見て柳生が呆れたのを見てツッコんだ後、葛城は今だ抱きつきながら胸を揉む菖蒲を離そうとした。

 

「ちょ……菖蒲、いい加減離れろって……」

 

「……離れません。」

 

「えぇ、何で?」

 

 そんな葛城に菖蒲が言った事に対して葛城が聞くと、菖蒲は葛城に抱きつきながら答えた。

 

「だって……だって……もし離したらまた……また……」

 

「かつ姉様が居なくなっちゃうかもしれないからじゃないですか!? 私、もうそんなの嫌です!?」

 

「あ、菖蒲………」

 

 菖蒲の涙を流しながら言葉を聞いた葛城は、驚きで返す言葉を失った。

 

「もう離れないでください!! 一緒に居てください!! ずっとじゃなくても良いです!! せめて、せめてかつ姉様が卒業するまで一緒に居てください!! じゃないと……じゃないと私、ここに居ても何も意味ないんです!!」

 

「…………」

 

 泣きじゃくりながら叫び続ける菖蒲を見た葛城は、ふと周りの皆を見た。

 柳生、雲雀、風魔、土方が見るその目には葛城に対しての恨みは一切なく、むしろ帰って来て良かったと言う安心感があるように見えた。

 

(……あぁ、そうか。あたい……私はここに、居て良いんだな。)

 

 そう思った葛城の目から涙がが流れ、今だ泣き続ける菖蒲を優しく抱き返してあげるのだった。

 

「……良かったね柳生ちゃん。かつ姉ぇが戻って来てくれて。」

 

「あぁ……けどまだ何も、終わってない。」

 

 その光景を見ながら柳生に声を掛けた雲雀に対し、柳生は目を少し鋭くしながら答え、雲雀も頷いた。

 漆月率いる破忍。その破忍に捕まった雪泉と雅緋、そして忍学生達。そして再び消息不明になった斑鳩。

 まだやるべき事は山積みだからだ。

 

「……所で風魔? そう言えば飛鳥先輩は? さっきから姿が見えないんですが……」

 

「あぁ……飛鳥先輩なら実家。何か調べる事があるとか言って……」

 

 その近くで土方に質問された風魔は、頭を掻きながらその質問に答えた。

 その際に思い出したのは、飛鳥の何かに苦しんでいる顔だった。

 

「………飛鳥先輩。」

 

 飛鳥の笑顔が大好きな風魔にとって、これ以上あんな飛鳥の顔を見るのは辛い。

 風魔は飛鳥の事を考えながら、痛む胸を抑えるように手を添えた。

 

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