閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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22.今自分が成し遂げるべき事、今自分に出来る事

「…………」

 

 アジトに戻り、閃光と月光を闇に任せた漆月はアジトの中を周って、仲間達の様子を見て行っていた。

 

「ハァ!! スゥ………ハァアアアア!!」

 

 最初は蒼志。訓練所で刀を振り、訓練用の人口妖魔を斬って行く姿は、何処か気分が良いように見えた。

 目的の半分ぐらい達成出来たせいなのか不明だが、そんな蒼志を見て思わず微笑んだ漆月の脳裏には、蒼志と初めて会った時の事を思い出していた。

 

~~~~

 

「ハァ……ハァ………何ですかあなたは? 人の住処に勝手に入り込んで?」

 

「いやぁごめんね。ちょっと気になっちゃって。」

 

 がむしゃらに訓練し、息を整えながら住処に入って来た漆月に聞いた蒼志に対し、漆月は壁一面に張られた斑鳩や葛城の写真を見ながら答える。

 

「………ねぇ? 君って子の達のストーカー? それとも……」

 

「貴方には関係ありません。さっさと……っ!?」

 

「そう言わないでって? 話すぐらい別にいいでしょ?」

 

 そう聞いて来た漆月に蒼志が答えかけたその瞬間、いつの間にか目の前に立った漆月に驚き、その後もしつこく聞いてくる漆月に折れたのか、蒼志は全てを話した。

 

「そりゃ酷いねぇ、親だけじゃなくあんなに好きだった妹も忘れて、挙句に家族を無茶苦茶にした忍の娘と仲良くなってるのって。そんなお姉さんなんて……憎んでも憎みきれないよね。」

 

 蒼志の話を聞いた漆月は笑いもせずにそう頷き、思い出したせいでイラついた顔を見せる蒼志の元に静かに近付き、こう聞いた。

 

「……ねぇ? あなたの憎しみ、私に利用させてくれない? お礼にだけど、あなたの復讐に手伝ってあげる。」

 

 その問いかけに対し蒼志は一瞬迷ったが頷き、漆月の元に着くことになった。

 

~~~~~

 

「ぐがぁ~!! がぁああ~!! がぁあ~!!」

 

 次に様子を見たのは龍姫。つい先ほどまで晩飯を食べていたのか、空の容器がすぐ近くで散らかっている付近で寝ていた。

 だが漆月はそれを見ても怒りもせず、ただただいびきを上げながら寝ている龍姫を見つめていた。

 そして思い出していた、龍姫と初めて会った時の事を。

 

~~~~

 

「かぁ……ハァ……ハァ……ゲホォ!! ゲホォ!!」

 

 ふとした気分でとある善忍の屋敷に侵入した漆月が目にしたのは、道場の真ん中で息を荒げながら倒れている龍姫の姿だった。

 全身傷だらけ、大きな火傷もあり口からは血も出ている龍姫を見た漆月は、龍姫の元に近付いた。

 

「ハァ……ハァ……な、何だよオメェっ!? ゲホォ!! ゲホォ!!」

 

「あぁ~大丈夫って分けじゃ無いのに無理して喋らないで。ほら、水あげるから。」

 

 咳き込んだ龍姫を壁側まで支えながら連れて行き、つい先ほど手に入れた水を渡した後、龍姫から色々な事を聞いた。

 

「うわ~酷いねそれぇ。もうスパルタ通り越してただの拷問じゃん。家庭内暴力じゃん?」

 

「……あんなの父親でも何でもねぇよ。人の気持ちも理解しないで自分の事ばかり。こんなの……何時まで続けりゃ気が済むんだってんだ?」

 

 そう言いながら目尻に涙を浮かべた龍姫を見た漆月は、そんな龍姫の前に座りながらこう聞いた。

 

「……こんな家にずっと住んでたら、一生自由なんて得られないよ? ねぇ、私と一緒に自由にならない?」

 

「……え?」

 

「そして壊そう? こんなクソったれな忍の家しか生まない忍社会を。」

 

 手を伸ばしながら聞いた漆月に対して、漆月から感じ何かに引かれた龍姫はその手を握った。そして家との縁を切り、漆月の仲間になった。

 

~~~~

 

「はぁ~♡ 両姫お姉様ぁ~!! もっと!! もっと僕の事を見てぇ~!!♡」

 

 次は鎌倉。鎌倉も同じように眠っていたのだが、こっちは完全に夢に酔いしれており、両姫の写真がプリントされた抱き枕を抱き、涎を垂らしながら寝言を呟いていた。

 

「何処で買ったんだが、あの抱き枕。」

 

 そんな鎌倉を見て漆月は少し戸惑いながら呟いた後、今度は鎌倉と初めて会った時の事を思い出していた。

 

~~~~

 

「ハァ……ハァ……ハァ……んぅう!?」

 

「わぁああ待った!! 待った!! 私は君の敵じゃないし!? それにここの生徒でもないしさ!?……しっかしこれは、ザ・地獄絵図って言った所だね。」

 

 息を荒立てながら、怒りと憎しみに満ちた瞳で見つめて来た鎌倉を止めながら漆月が見ていたのは、今いる忍学校の惨状だった。

 他の忍生徒は誰一人残らず殺されており、忍教師も誰一人として生き残って無かった。

 そしてその主犯は、目の前に居る血まみれの鎌倉だった。

 

「だから何? 君には関係ないでしょ?」

 

「まぁそうなんだけどねぇ……でも関係ない人だからこそ話せる事もあるでしょ? だからさ、聞かせてくれない? こんな事した理由を。」

 

 そう言って鎌を向ける鎌倉だったが、手を合わせながら聞いてくる漆月にそれでも良いかと思い、鎌を降ろした。

 そして鎌倉は話した。自分がこいつらに虐められていた事。自分が尊敬している忍を馬鹿にされた事。そしてその尊敬していた忍が同じと言う事もあり、仲が良かった親友がその虐めていた奴らに殺された事を。

 

「なるほどねぇ~。それで虐めて来た連中も、それを見ぬフリをしていた先生や他の奴らも皆殺しっと。そうか……辛かったよね。そんなになるまで我慢してたのは。」

 

 鎌倉の話を聞いた漆月は鎌倉の頭を撫で、それに少し驚いた鎌倉に向けてこう告げた。

 

「でもさ、もうそんな我慢なんてしなくても良いよ? 私と一緒にくれば。」

 

「え……」

 

「私と一緒に来ない? そしたら君が大嫌いな人、好きに殺して良いからさ。」

 

 そう聞いて再び頭を撫でた漆月の手を鎌倉は退かさず、逆に添えるように振れた鎌倉は、すぐさま漆月の仲間になった。

 

~~~~

 

「ふっふふふ~ん、フッフ~ン!!」

 

 続いては拷楽。今拷楽は自室で拷問器具の手入れをしていた。

 定番のもあればマイナーな物もあり、中には説明しずらいような物もあった。

 

「……アイツとの出会いは、ちょっと変わってたなぁ~。」

 

 そんな拷楽を見て呟いた漆月は、他の皆とはちょっと違う拷楽との出会いを思い出していた。

 

~~~~

 

「へぇ~、それで追放されたって事?」

 

「そうなのよぉ~!! 私は好き放題に拷問してただけ何にそれがやりすぎとか自分勝手な理由で拷問を止められて、挙句に自分から拷問し始めた所を見てもう限界とか言って追放したのよぉ~!! 人に拷問役やらせといて自分勝手って思わない~?」

 

 漆月の質問に対して身体をくねらせながら話す拷楽。

 その近くには拷楽の拷問によって気を失う程に痛めつけられ、瞳が完全に死んでいるような目をしている抜忍が、何も身に纏わない姿で倒れていた。

 流石の漆月もこれにはドン引き……はせず、拷楽の瞳から感じる何かをやりたいのに好きにやれない事と言う虚しさを感じていた。

 

「………あ!! じゃあ私の元に着かない!? そしたらこんなザコなんかよりも凄い忍を拷問させてあげるからさ!?」

 

「えぇ!? それ本当!?」

 

「本当の本当!! だからさ、私に協力して!? 私に力貸してくれらさ、もっと好き放題に拷問出来るようにするからさ!!」

 

 そう言った漆月に対し、拷楽は疑いもせずにその誘いを受けた。後から聞いた話だと、漆月からは嘘は感じられなかったとからしい。

 

~~~~

 

「よっと、ほい、ハイそこ!!」

 

「んぅ!! んぅうう!! あぐぅ!!」

 

 最後は転界と項羽。転界が転移能力で飛ばしたおにぎりを項羽が犬の様に飛んで口に咥え、そのまま頬が膨れる程に被り付いた。

 

「良し良し。良く出来ました。」

 

「うぅ~。」

 

 まるでペットの犬にするように、項羽の頭を撫でながら褒める転界。

 そんな微笑ましい光景を見ながら、漆月は思い出す。転界と項羽と初めて会った時の事を。

 

~~~~

 

「グゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」

 

「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 漆月の目の前にある光景。それは漆月を今にでも噛みつきそうな表情で睨みながら双斧を両手に構える項羽と、転移忍法の使い過ぎで疲れ果てて横になり、息を荒くしている転界の姿だった。

 

「あのぉ~そこの君? 別に私は君達を追って来た忍でも無いから。単に君達とお話がしたいだけだからさ。だからさ……」

 

「グワアアアアアアアアアアアア!!」

 

「や、止めなさい項羽!?」

 

 頭を掻きながら近づこうとする漆月に対し、項羽は双斧を振って攻撃しようとしたのを転界が止め、項羽はそれに従った。

 

「ハァ……ハァ……す、すみません。ついさっきまで追ってに追われたもので。」

 

「あぁうん。そこは大方予想できたから。だからさ……良かったら聞かせてくれない? 君達がこんな事になった理由。」

 

 杖で身体を支えながら近付き、そのまま頭を下げた転界に頷いた漆月は、転界と項羽が何故追われている理由について聞き、それに転界は項羽を落ち着かせながら話した。

 転界はその転移忍法があるがゆえにまるで道具のように使っている忍組織に属しており、その忍法の向上の為だけに無理矢理手術しようとする組織が完全に嫌になったのか逃亡し、その際に項羽も連れて行ったらしい。

 項羽はもっと酷かった。人体実験で無理やり忍動物の力を加わせたり、それ以外の度重なる人体実験のせいで理性も過去の記憶も無くしてしまい、戦闘の際は常に暴走しているような忍にされたからだ。

 転界が彼女を連れて逃亡したのは、そんな項羽が可哀そうだと思ったのが一つらしい。

 

「……そうか。二人共辛かったね。そんな組織に自分の身体を好き勝手に利用されて。……でもさ、このまま逃げ続けてもいつか捕まっちゃうだけだよ?」

 

「そ……それはそうですが……」

 

 漆月の話に思わず下を向く転界と項羽。そんな二人に対して漆月は手を差し伸べながらこう聞いた。

 

「だったら私と来ない? 私ももしかして君達を利用するかもしれないけどさ……これだけは信じて欲しい。」

「私は……君達を道具としてでなく、仲間として利用するってね。」

 

 そんな良く分からない事を述べた漆月だったが、転界はその誘いを受け入れた。

 これも後から聞いた話だと、漆月に利用されるのは、嫌じゃないかもしれないと思ったかららしい。

 項羽も最初は警戒していたが、一緒に居るにつれその警戒心も薄くなり、漆月や他の仲間達の事を好きになったようだ。

 

~~~~

 

「はぁ………」

 

 そうして自室に戻り、闇を含めての皆と初めて出会った時の事を思い出し続けた漆月は、ソファに横になりながらため息を付いた。

 闇も、蒼志も、龍姫も、鎌倉も、拷楽も、そして転界と項羽も、皆それぞれ今の忍社会が生んだ傲慢などによるものによって苦しんでいた。

 そんな彼女達を仲間に引き入れて来るに連れて強くなったのだ。

 今の忍社会を壊すと言う、使命感と願いが。

 

「……そうだよね、やらないと行けないとね。皆の為にもそして……お姉ちゃんの、夢の為にも。」

 

 そう言って漆月は決意を固めるように、首から下げていた太陽の形に造られたペンダントが付いたネックレスを握りしめた。

 

――――

 

「……………」

 

「……………」

 

「…………」

 

 その頃飛鳥の実家の寿司屋には、風魔と総司と神裂がまだ残っており、一つのテーブル席に座っていた。

 

「……あのさぁ、これからどうすれば良いんだろう?」

 

「どうするって、漆月達破忍を倒す以外他にないだろう?」

 

「まぁ確かに、どんな理由があろうと、それで全国の忍学生を襲い拉致して良い理由になりませんからね。」

 

 風魔の質問に対して総司と神裂はすぐに答えたが、神裂は別の事を考えていた事を話した。

 

「とは言え……ただ漆月達を倒して全て解決ってわけでは無いですけどね。」

 

「? どういう事?」

 

「さっきの葛城さんの話を思い出してください。今回の主犯である破忍が出来たのは、言わば今の忍社会の傲慢などで傷つき、そして恨み始めたのが原因だと。そしてそんな忍は、恐らく漆月達以外にも………」

 

 神裂の話を聞いて風魔が質問し、それに答えた神裂が言うように、漆月達様な忍は、恐らくまだまだ居ると言う事だ。

 

「だからどうした?」

 

「仮に漆月を何とかしたとしても、下手をすればこの先第二、第三の漆月が増えてしまいます。今の忍社会じゃ、その可能性も無くも無いかと……」

 

 総司の質問に再び神裂が答える。

 確かに漆月達を倒しても根本的な解決にはならない。下手をすれば破忍のような忍はこの先何度も出て来る可能性だってあると言う事だ。

 

「………だからと言って私達に何ができるって言うんだ? 今の忍社会を何とか出来るなんて力、私達が持ってるわけでもなかろうに………」

 

「それはそうですけど、このままじゃ………」

 

「……………」

 

 総司の言葉に、神裂と風魔は何も言えなかった。

 今の自分達に出来ることなど限られている。そのような事総司でも分かっているからだ。

 だがこのまま何もしないで良いわけでもないと思い続ける風魔と神裂と総司は、その後も何も言わずに黙り込んでいた。

 

「ほい食え!! 食え!! 食え!!!」

 

『っ!!?』

 

 その時だった。何処からか牛肉がどっさり入った牛丼が目の前に置かれ、それを見て驚いた風魔達が出した人の方を見ると、半蔵学院で伝説の先輩として名を知らしめている。エプロン姿の大導寺だった。

 

「だ、大導寺先輩!!」

 

「何であんたがここに……それよりその姿は……、」

 

「良いから食え!!」

 

『は、はい!!』

 

 大導寺を見て風魔が驚いた近くで今の大導寺の姿に神裂がツッコもうとしたが、大導寺は叫んで風魔達を黙らせると、風魔達は急ぐように出された牛丼にかぶり付いた。

 

「師に、霧夜先生に頼まれてうぬらに助力しに来たんだがな?……何だうぬらの体たらくは? それでも時期半蔵と月閃と蛇女の選抜か?!」

 

「んぶぅ!! そうは言っても、私達本当どうすれば良いか分かんないッスよ!! ねぇ先輩どうすれば、」

 

「喝ぁつ!!」

 

『!!?』

 

 そう言いながらため息を付いた大導寺に対して風魔が答えようとしたが、大導寺のまさに喝が入った言葉にまたもや驚いた。

 

「確かに、うぬらに出来る事などたかが知れてる。ならばこそ……今己が出来る事を命とっしてでもやり抜く!! それが忍と言う物だろう!!」

 

『……………』

 

 大導寺の言葉に、風魔も神裂も総司も黙ってしまう。

 今己に出来る事を命賭けでもやり抜く。凄く単純そうに見えるが、今の風魔達にとって胸に突き刺さるような言葉だった。

 

「……今出来る事を、命を賭けてでも………」

 

 特に一番胸に刺さったのか、風魔は胸に手を当てながら呟いてると、大導寺はエプロンを椅子に掛けて出入り口を開けると……

 

「我は他用で少し出る。……今一度確かめろ。うぬらが今出来る、命を賭けてでもやり抜く事をな。」

 

 そう言って大導寺はこの場を去り、残った風魔達は牛丼を食べ終え片付けると、何かを考えながらも自身が住まう寮にそれぞれ帰って行った。

 

――――

 

「……………」

 

「やっぱ辛いか。陽花さんが亡くなってた事は。」

 

 とあるビルの屋上に立っていた飛鳥は、幼き頃の自分達が写った写真を見つめながら夜空を見上げていると、そんな飛鳥を見つけた焔が声を掛けた。

 

「それは……焔ちゃんも一緒でしょ?」

 

「やっぱ分かるか。」

 

「分かるもん、シャツにもそう書いてるし。絵文字付きで。」

 

「んなぁ!?」

 

 飛鳥に言われた焔はシャツを見ると、そこには確かに「辛い」と言う文字とそれに合わせた絵文字が書かれており、気づいた焔はジャージの前を閉めて隠した後、飛鳥の隣に立った。

 

「……昔さ、じっちゃんの隠れ特訓場で忍の修業をしてたんだ。でもその頃の私は何をやっても出来なくて、こんなんでじっちゃん見たいな忍になれるのかな? そもそも私は本当に忍になれるのかな?って何度思った事か……そんな時さ、じっちゃんの隠れ特訓場に遊びに来たって陽花さんにこう言われたんだ。」

 

(どうしても半蔵様見たいな忍になれなかったら、自分だけの忍の道を見つければ良いんじゃないかな? 迷って迷って迷いまくって、そうしてやっと見つけた道。それが君だけの道なんだと思う。だからさ、無理して半蔵様と同じじゃなくても良い、自分の道で半蔵さまと同じぐらいの忍になれば良いんだよ。)

 

 そう昔陽花から聞いた言葉を思い出した飛鳥の表情は、嬉しさ半分寂しさ半分の様な顔だった。

 

「……私も似たようなもんだ。立派な忍になろうと努力して努力し続けた。けどまだまだ足りない、これで誰もが認める忍になれるのかって。そんなちと我儘な私を見かけたのかどうかは今となっちゃ分かんねぇけど、陽花さんが話しかけて来て、相談したらこう話してくれたんだ。」

 

(良いじゃないかな? 誰もが認める忍ってもの。確かに私達はこの世の影で生きる者だけどさ、せめてその影の世界だけでも認められる、自分がこの世界に生きた証を残すぐらいなら良いんじゃない? なんだったら善忍じゃなくても悪忍でも良い。私は応援してるよ、君のその頑張り。)

 

「……今では悪忍どころか抜忍だけどね。」

 

「うるせぇ。」

 

 っと、飛鳥と同じような表情でかつて陽花からきいた言葉を思い出した焔は、そんな焔を見て飛鳥が言った事にすぐさま言い返した。

 

「………ねぇ焔ちゃん。私達どうすれば良いかなぁ?」

 

「どうすればって……漆月の事か?」

 

 今度は悲しげな表情を浮かべた飛鳥が言った事に焔が聞き、それに無言で頷く飛鳥。

 

「漆月ちゃんが……今までやって来た事は許せない事、それは分かってる。だからこそこれ以上あんな事させない為にも、止めないと。それも分かってる。分かってるけど………」

 

「今の私に…私達にそんな資格があるのか、漆月が一番苦しかった時に手を差し伸べなかった自分達にって?」

 

 そう言ってその場に座り込む飛鳥の話を聞いた焔は聞き、それに飛鳥は再び何も言わずに頷いた。

 

「確かに、善忍だとか抜忍とか関係ないとしても……そもそも今のあいつは昔なんか遥かに超えてる。とてもじゃ無いが………」

 

 焔は手すりを強く握りしめ、悔し顔を浮かべた。

 今の漆月は昔と比べても、比べ物にならない程に強くなっている。真影の飛鳥と紅蓮の焔担った二人であっても、敵う可能性はかなり低い。

 

「まったく、最強の友達が………最強の幼なじみが聞いて呆れるな。」

 

「………うん。」

 

 これほど自分の弱さが嫌になる事があったのか。焔と飛鳥はこれまでにない己の不甲斐なさを恨み、そして悔しがる。

 

「じゃあ………今よりもっと強くなれば良いんじゃない?」

 

『っ!?』

 

 そんな時だった。何処からか声が聞こえ驚いた飛鳥と焔は、その声がした方を見た。

 そこには中学生ぐらいまでに成長した、妖魔を滅する者として生まれたと言っても良い少女、神楽の姿があった。

 

「お前……まさか神楽か?」

 

「強くなれば良いって……まさか、」

 

 神楽の姿を見ながら焔は少し驚き、飛鳥が聞こうとすると神楽は後ろに振り返と……

 

「ついて来て。君達には損はさせないから。」

 

『…………』

 

 そう言って飛鳥と焔を連れて行こうとする神楽に対し、飛鳥と焔は少し戸惑った。

 だがここで戸惑っても何も始まらない。そう考えた飛鳥と焔は、神楽の後を追いかけた。

 

―――――

 

「………………」

 

 同時刻のとある山奥。そこには誰かの墓が置かれていた。

 その墓がある場所まで歩いて花を添えたのは、雪泉にとって姉ともいうべき存在で、妖魔と人間の間に生まれた存在、不雪帰だった。

 

「………私に、何か用ですか。」

 

 墓の前で手を合わせ、しばらく黙祷していた不雪帰は、背後にある気配を感じてそう口を開いた。

 

「………あなたに、頼みたい事があります。」

 

 不雪帰の後ろに立っていたのは詠だった。

 詠は不雪帰に対してそう口を開いた後、その後も話続けて最後には頭を下げた。

 その時の詠の表情は何時も以上に真剣なのは、不雪帰も分かる程だった。

 

「………命を落とすことになる。かも知れませんよ。」

 

「……構いません。」

 

 そんな詠に対して不雪帰が聞いた事に対し、詠は迷わず頷くのだった。

 

 

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