閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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23.戦い続ける理由

 

「………………」

 

 翌日、漆月はとあるビルの屋上に立ち、空を眺めていた。

 その後ろには闇、蒼志、龍姫、鎌倉、拷楽、転界、項羽。そして数体の人口妖魔を待機させていた。

 

「……良い天気。絶好の襲撃日和だね。」

 

 そう呟いた漆月は両手を上に上げ、自身の力を両手に溜め込み、そして解き放った。

 

「はぁあああああああ!!」

 

 解き放たれた力は空高くまで飛んだ後、巨大な忍結界となって周囲に展開された。

 まるで、自分達の狩場を作るようにだ。

 

「良し……じゃあ雑兵妖魔達、やっちゃって。」

 

 結界を作り終えた漆月は人口妖魔に向けて命じると、全ての人口妖魔は雄叫びを上げながらビルの上から飛び降りて行き、結界が張られた街に向かって行く。

 

「それじゃあ漆月。私達も……」

 

「そうだね……じゃあ作戦通りに……皆、お願いね。」

 

 それを見ていた闇の言葉に漆月が片目を瞑りながら答えると、龍姫と鎌倉と拷楽と項羽、闇と転界に分かれて行動に移し始め、この場に残ったのは漆月と蒼志だけになった。

 

「……どっしたの? 今回の作戦に不安?」

 

「そんな事ありませんよ。ただ……作戦に入る前にやっておくべき事があるだけです。」

 

 蒼志が残った事に漆月が聞くと、それに対して蒼志は答え始めた。

 

「あなたは私を仲間にする時言いましたね。私の憎しみを利用するって……お礼に私の復讐に協力してくれるって。……まさか本当に協力してくれるとは思っていませんでしたよ。」

 

 蒼志は少し微笑みながら漆月に話す。完ぺきとは言えないが、斑鳩と葛城に対して復讐の半分は出来た事に対し、漆月に礼が言いたいようだ。

 

「……私はほんの少し手を貸しただけだよ。」

 

「それでも!! あの二人をあそこまで追い詰められたのは、あなたの存在が居たからです。私だけだったらこうまで出来なかったでしょう。……だから、改めて言わせていただきます。」

 

 漆月が頭を掻きながら答えた事に対し、蒼志は頭を下げ、そして再び漆月を見つめた。

 

「……ありがとうございます。私を、仲間にしてくれて。この借りは……必ず返します。」

 

 蒼志は、今まで見せた事の無い笑みを浮かべながらお礼の言葉を言った後、龍姫達が向かった方向に向かって飛んで行った。

 

「……ありがとう……か。久しく言われなかったなぁ。」

 

 蒼志の言葉が少しこそばゆかったのか、漆月は少し照れながら頭を掻き、そう笑みを浮かべるのだった。

 

――――

 

「破忍が!? 場所は……はい、分かりました。すぐに現場に向かいます!!」

 

 その頃、忌夢と叢が入院している病院に来ていた夜桜は別行動を取っていた神裂からの電話を聞いて驚きながら、その電話に答えた後電話を切った。

 

「神裂ちゃん何て?」

 

「それが……町中に巨大な忍結界が貼られて、そこに数体の人口妖魔と破忍の忍達がいるそうなんです!?」

 

 美野里の質問に答えた夜桜の話を聞いて両備達は少し驚いた。

 昨日の話を聞いて破忍達、特に漆月に対して色々と思う事があるが故、何人かは戦う事に少し躊躇していた。

 

「ここでモタモタしててもしょうがないでしょ!?」

 

「りょ、両備ちん?」

 

「どの道……アイツらとは戦わなくちゃなんないし、言いたい事があったら戦いながらでも言いなさい!! 私達、何時だってそうして来たでしょが!?」

 

その空気をぶち壊したのは両備だった。

 そして両備の話を聞いて四季達は驚きながらも思い出す。

 そう……彼女達は何時だってそうして来た。話すだけでも、思うだけでも分からない。だから刃と刃、力と力をぶつけ合う。それが……今まで彼女達がやって来た、忍のやり方だと言う事を。

 

「……そうだったな。皆……行くぞ!!」

 

 柳生の掛け声と共に夜桜と両備達は走ってその場所に向かおうとした。

 

「……かつ姉さま? どうしたんですか?」

 

「…………」

 

 だがそんな中、葛城はその場に突っ立っているだけで動きもせず、菖蒲に聞かれながらも葛城は黙って下を向くだけだった。

 

「か、かつ姉ぇ? 大丈夫?」

 

「葛城先輩……あなた、」

 

「……ごめん。あたいまだ……」

 

 葛城が心配になって戻って来た雲雀と土方に声を掛けられるが、今だに迷う事があったのか、葛城は目を逸らしながら答えた。

 

「………葛城。お前がどうしたいのか、どうすれば良いのか、それを決めるのお前次第だ。だがこれだけは言っておく。」

 

「俺は……俺達はお前の事を、信じてる。」

 

 そんな葛城に対して柳生はそう話した後、雲雀と菖蒲と土方を連れて夜桜と両備の後を追い、葛城だけがこの場に残ってしまった。

 

 

――――

 

(本当にあたいは……どうすりゃ良いんだ? 今からも……これからも……)

 

 仲間の元に居て良いと分かりながらも、葛城の心は今だ迷っていた。

 自分にまだ、仲間と共に戦う資格があるのか……自分はこれから、何の為に戦えば良いのか。

 葛城の頭は、そのような事ばかり考えていた。

 

(……父さん。母さん。あたいは……私は本当にどうすれば良いんだ。)

 

 そう考え続けながら葛城は忌夢と叢が居る病室に向かい、病室のドアを開けると……

 

「な……な、何やってんだよオメェら!?」

 

 葛城は目の前の光景……忌夢と叢が制服に着替えて、すぐにでも夜桜と両備達の元に行こうとしているのが見え見えな所を見て、思わず声を挙げながら聞いた。

 

「両備達が急いで何処かに行ったのを見てまさかと思ってな。それにさっきから感じる気配……僕達も急いでいかないと。」

 

「急ぐったって、オメェら自分の事分かってんのか!? 傷もまだ完全に治ってないし……おまけに、」

 

 忌夢に驚きながら言い返す葛城は、ベッド横の棚に置かれた忌夢と叢の巻物を見た。その巻物には、黒い染みの様な物が半分ぐらい浸けられていた。

 

「は……話は聞いてます。破忍の闇って人の秘伝忍法のせいですよね?」

 

「この巻物浸いた染みのせいで、僕と叢は秘伝忍法も威力が落ちて、おまけに忍転身もまともに出来ないんだろう?」

 

「分かってんなら何で!?」

 

 どうやら忌夢と叢の巻物の染みは、闇の秘伝忍法「忍力呪縛」によるもので、そんな状態でも行こうとする忌夢と叢に対し葛城は聞くが、二人の決意は変わりはしなかった。

 

「それでも行くしかないだろう。これ以上、両備達にも迷惑かけるわけには行かないからな。行こう叢。」

 

「は、はい!!」

 

 葛城に対して言った後、忌夢は叢と共に病室を出て急ぎ両備達の元へ向かおうとした。

 

「……どうして!?」

 

『……?』

 

「どうして……そこまで戦うんだよ? どうしてそんなになっても戦えるんだよ? あたいには……もう分かんねぇ。何の為に戦うのかも……何もかも………」

 

 そんな忌夢と叢を大きな声で呼び止めた葛城は、二人に聞き出した。

 何を目標にして、何の為に戦えば良いのか? それすら分からなくなった葛城は痛める胸を押さえるように言い、目尻からは涙も流れていた。

 

「……ほい。」

 

「痛っ!?……ひ、日影?」

 

 そんな葛城に対して、いつの間にか目の前に立っていた日影がおでこにデコピンし、デコピンされたおでこを押さえながら日影を見る葛城。

 

「はぁ……さっきから聞いてれば小難しい事ブツブツブツと……葛城、あんたそんな事イチイチ考える女ちゃうやろ?」

 

「え……」

 

「好きなように女の乳揉みしだいたり、好きなようにラーメン食い、そして好きなように戦う……難しい事考えるよりも自分がやりたい事をやる、それが葛城ちゅう女やろ?」

 

 葛城の目を見ながら話し続ける日影の目は、何時になく真剣だった。

 そしてその言葉は誰よりも葛城と戦い、誰よりも葛城と共に競い合ったと自負してるからこそ、言える言葉だった。

 

「……葛城、僕も蛇女の誇りだとか言ってるが、そんなの正直二の次だ。僕は雅緋と一緒に居たい。雅緋が目指す場所を一緒に目指したい。雅緋が……雅緋や紫が護りたいものを一緒に守りたい。その為に、今の今まで戦い続けたんだ。」

 

「わ……我も、雪泉さんや夜桜ちゃん、四季ちゃんと美野里ちゃんのように……強くなりたい。黒影様に恥ずかしくない忍になりたい……正義とかそう言うのよりもまずは!! 自分がなりたい物の為に戦いたい!! 我のような者が言うのもおこがましいですが……でもそれが!! 我が戦う理由なんです!!」

 

「忌夢……叢……」

 

 そんな日影に続くように話した忌夢と叢の話を聞いて、葛城は今の今まで考えていた事を論破されたようだった。

 

「どうや葛城? 戦う理由なんて、皆単純なもんや。何の為に戦うのも、どうして戦うのも人それぞれ。だったら……自分が信じた事の為に戦えば良いちゃうか?」

 

「日影……」

 

 日影の言葉に葛城は胸を打たれたような衝撃が走るなか、日影と忌夢と叢は後ろに振り返り……

 

「葛城……あんたならもう分かってるはずやで? 自分がどうして戦うのかも……」

 

 日影は葛城に向けてそう言った後走り去り、忌夢と叢も日影の後に続いた。

 そして、一人残った葛城は三人の背中を見つめた後、自身の巻物を手に取り、見つめた。

 

「………そうだ、そうだったな。私は……あたいは………」

 

 巻物を見つめていた葛城はそう呟きながら目を開いた。

 その時の葛城の目はさっきのような者では無く、かつて……誰もが知る葛城の目に戻っていた。

 

――――

 

「な、なぁ日影?」

 

「なんや?」

 

「お前……やっぱり感情あるだろう?」

 

「確かに……感情が無いとあそこまで言えませんからね。」

 

 移動中の最中、日影に対して忌夢が質問し、その質問に叢も賛同するのだが……

 

「何度も言っとるけど、ワシは感情ないで。ただ言いたい事を言ってた

だけや。」

 

「……まったく、お前も相変わらずだな。」

 

 そう答えた日影を見て忌夢が呆れながらも、急いで両備達の元へ急ごうとしたその時だった。

 

「お、お姉ちゃん!! それに叢さんも!!」

 

「む、紫!?」

 

 忌夢達の前に紫が立っており、息を整えながら立っていた紫の手には、少し大きめな鞄があった。

 

「紫……言っておくが僕達は、」

 

「だ……大丈夫。止めないから。わ、私も……お姉ちゃん達と一緒に行くから……その前に、」

 

 忌夢が言おうとする前に紫は答えながら、鞄の中からある物を取り出した。それは二つの巻物だった。

 

「お、お姉ちゃんと叢さんに……渡したい物があって。」

 

「こ、これは……」

 

「後、叢さんにはこれも……」

 

「え……?」

 

 紫はその巻物を忌夢と叢に渡し、叢には更に、天狗のお面を渡した。

 

「ふ、二人の役に立つと思って……鈴音先生から貰って来た。」

 

「む、紫さん……」

 

 少し照れながら話した紫を見て叢は呟いてると、忌夢は紫に近付いて手を頭に乗せた。

 

「まったく……普段からこれぐらい出来たら良いんだがな。」

 

 そう言いながらも、紫の頭を優しく撫でる忌夢だった。

 

――――

 

「だぁあああああ!!」

 

「はぁああ!!」

 

「フンッ!!」

 

 先に現地で人口妖魔と戦闘を始めていた風魔と神裂と総司の三人は次々と倒して行くのだが、次から次へと湧いて出るように現れる人口妖魔に体力を奪われつつあった。

 

「ハァ……ハァ……こ、これ、結構きついかも?」

 

「た……確かに、一体一体は弱いとは言え………」

 

「こうも次から次へと……キリがない。」

 

 息を整えながら風魔と土方と総司が呟いていたその瞬間、数体の妖魔が三人に向かって襲い掛かった。

 

「リコチェットプレリュード!!」

 

「地獄極楽万手拳!!」

 

 だが、妖魔は風魔達を傷つける事は出来ず、ようやくやって来た両備と夜桜の秘伝忍法によって塵も残らず消え去った。

 

「風魔ちゃん!!」

 

「総司さん!!」

 

「かっちー!! 大丈夫!?」

 

 それを見ていた風魔達に菖蒲と芭蕉と園子が駆けつけ、息を荒立てていた三人に肩をそれぞれお貸した。

 

「まったく……また独断行動取って!?」

 

「すみません……でも待ってられなくて。」

 

「……あの、飛鳥先輩と焔さんは?」

 

 総司に向かって両備が言った事に神裂が代わりに謝っていると、風魔は飛鳥と焔が居ない事について聞いた。

 

「それが……二人共昨日の夜から連絡が付かなくて……」

 

「まぁ、あんな事があったからしょうがないと思うけど……」

 

「そんな……」

 

 その事について雲雀が答えた事に付け足す様に春花が言い、それを聞いて風魔は不安で顔に影を落としていると……

 

「今いない奴の事考えてもしょうがないでしょ!?」

 

「今はまず、こいつらを何とかしないと……」

 

 そんな風魔に対して両備と夜桜は構えながら、目の前に群がる人口妖魔の群れを見て話したその直後だった。

 

「あらあら~予想通り虐めがいのある子達が集まったわねぇ~。」

 

 妖魔の群れの後ろから声が聞こえたかと思うと妖魔の群れは左右に分かれ、分かれた際に出来た道から拷楽がやって来、その後ろには龍姫と鎌倉と項羽、そして蒼志の姿もあった。

 

「くぅ……予想はしてましたが、やはりですか。」

 

「全国の忍学生の拉致が殆ど終われば後はウチら。だからウチらをおびき出す為にわざわざ忍結界を作って……」

 

「俺達を誘い込んだってわけだな。」

 

「正かぁ~い!! まぁこれくらいは分かるわよね?」

 

 拷楽達の姿を見ながら千歳と四季と柳生が話した内容を聞いて、拷楽は鞭の先端を舐めながら頷いた。

 

「はぅ~!!  あの鞭で叩かれたら、両奈ちゃん絶対気持ちよくなっちゃうかもぉ~!!」

 

「ちょっとバカ犬黙ってて!?……あんた達、そうまでして漆月に恩でも返したいわけ?」

 

「あなた達にもそれぞれ事情があるのは分かります……けど、だからと言って!! あなた達と漆月がやってる事は正しくありません!! こんな事して何に……」

 

 拷楽の動きを見て両奈が腰をくねらせながら言った事にツッコんだと、両備は夜桜と共に蒼志達に問いただそうとしたのだが、

 

「ウルサイ!! オマエタチニ……ワタシタチノナニガワカルゥ!!」

 

「オメェらと違ってなぁ、私達は地獄のような日々を続けてたんだ!! 忍の掟がどうとかそんなクソくだらねぇ事が為に苦しみ続けた!! けどあいつは……漆月はそんな私達に手を差し伸べてくれたんだ!!」

 

「僕達の力を利用する為かもしれないなんて事も考えた。でも漆月ちゃんは違った……漆月ちゃんは僕達を、本当の意味で仲間として接してくれたんだ!! 僕達にとって、漆月ちゃんは太陽見たいなものなんだよ!!」

 

「その漆月ちゃんの邪魔するなら……ここに居る全員、虐めてあげるわ。」

 

 項羽と龍姫と鎌倉と項羽は、それぞれ漆月に対する思いをぶつけた。

 龍姫と鎌倉と項羽だけでなく拷楽もそう言ったのを見て、彼女達にとって漆月は、本当に太陽の様な存在なのだろう。

 

「……蒼志、お前にとってもそう言う存在なのか? 漆月は?」

 

「……えぇ、だから私は、ここに居るんです。」

 

 その話を聞いた柳生は蒼志にも聞くと、蒼志は笑みを浮かべながら鞘から刀を抜いた。

 

「あの人は私に手を差し伸べてくれた。復讐にも手を貸してくれた。今の私が、こうして復讐の半分も成し遂げられたのは……漆月、彼女の存在が居たからです。」

 

 蒼志も何処か吹っ切れたような顔で漆月に対しての思いを言いながら、刃を柳生達に向けた。

 

「だから……今私が、私達がやるべき事はただ一つ、私達を道具でも何でもない、仲間として認めてくれた漆月の為に、」

 

「戦う事です!!」

 

 言い放った後、蒼志は柳生と夜桜と両備達に向かって突っ込み、龍姫達も蒼志に続いた。

 

「っ!? 来るぞ!!」

 

 それに少し驚いた柳生達は構え、蒼志達との戦闘に入るのだった。

 

 

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