閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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25.狂乱の詠

「行くよ……それぇ!!」

 

「ぐぅう!!」

 

 漆月の勢い良く突っ込みながらの斬撃に、葛城は具足で防ぎ続けた。

 そのまま何の隙も無く続く斬撃に対し、葛城は防戦一方だった。

 

「どうしたの葛城ちゃん!! そんなんじゃ、自分が信じた忍道なんて突き通せやしないよ!?」

 

「くぅうう!?(こいつ……やっぱり強ぇえ!?)」

 

 完全に押されている葛城に対して漆月は斬撃を繰り返しながら言い、それを聞きながらも堪え続ける葛城は、漆月の脅威過ぎる力を再確認した。

 

「っ!? 葛城を援護するぞ!!」

 

「えぇ!!」

 

「承知!!」

 

「了解じゃ!!」

 

 その光景を見た忌夢は両備と叢と夜桜と共に救援に向かおうとするが、それに気づいた漆月は一旦葛城から離れてから刀を左手に持ち替えたのもつかの間、空いた右手を尽かさず妖魔の姿に変えた。

 

「あらよっと!?」

 

『わぁああああああああああ!!』

 

 右手から放たれた気弾は葛城だけじゃなく忌夢と叢達にも辺り、葛城達はその勢いで後ろに下がってしまう。

 

「かつ姉さま!!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

「両備ちゃん!!」

 

「むらっち!!」

 

「夜桜先輩!!」

 

 菖蒲と紫と両奈と四季と神裂達は急いで葛城達の元へ向かう中、地面に足を付けた漆月の横に蒼志、龍姫、鎌倉、項羽、拷楽が並び立った。

 

「フフ……さて、次は誰が私の、私達の相手をしてくれるのかな?」

 

刀を向け、挑発するように言った漆月を見て、葛城達は警戒心を強める。

特に漆月。彼女の強さは想像以上だ。陽花の妹とは抜きで、彼女の力は別格だったからだ。

 そんな漆月と仲間の蒼志達と葛城達が睨み続けいたその時だった。

 

『う゛ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

「んぅ?」

 

「えぇ!?」

 

「な、何!?」

 

「これは………」

 

 何処からか獣の雄叫びの様な声が聞こえ、漆月だけじゃなく春花と未来と日影がそれに気付いたのもつかの間、その雄叫びの主は、漆月達と葛城達の中に割り込むように上空から落ちて来た。

 

「ぬぅわぁあああああ!! な、何だ!?」

 

「あれは……」

 

 突然落ちて来た者に龍姫は驚く中、漆月は砂煙の中から見える者を見て目を少し疑った。

 

「……嘘。」

 

「あれって……」

 

「まさかな………」

 

 その向こう側ではその者を見て、主に春花と未来と日影は信じられないものを見ているかのような顔をしていた。

 やがて砂煙が晴れ、その者が顔を見せた。

 

「ぬぅああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 雄叫びの主は詠だった。だがその姿は、誰もが知る詠では無かった。

 黒く染まった大剣を片手に持ち、全身から汗を出し続けながらも、紅く染まった目で漆月達を睨んでいた。

 

「あ……あれ詠先輩……何ですか?」

 

「でも何か……雰囲気が。」

 

「何か………怖い。」

 

 全身からは赤黒いオーラの様な物も出ており、それを見た芭蕉と土方と園子は呟きながら冷や汗を掻いた。

 

「ぬぅううううう……ぬわぁああああああああああああああああ!!」

 

 今の詠を見てそれぞれ思っているのもつかの間、詠は再び雄叫びを上げ、漆月達に襲い掛かりながら大剣を振るった。

 

「んあぁああ!! 危ねぇ!!」

 

「あぁもう!! どうしたのこの子!?」

 

「この子、私達を倒す事しか……」

 

「考えてない、って所ですかね。」

 

 黒く、そして禍々しい大剣を漆月達に向けて振るう詠の斬撃を避けながら、龍姫と鎌倉と拷楽と蒼志は呟く。

 その姿は、何時もの詠の戦いでは無かった。

 目の前にある倒すべきものを倒し、邪魔するならば何もかも壊すような……狂気じみたようなものが乗り移っているようだった。

 名づけるなら……狂乱の詠。

 今の詠に近付けば、恐らく並の忍は一溜まりではないだろう。

 

「ぬわぁああああああああああああああああああ!!」

 

「っ!! んぅううう!!」

 

「シヅキ!?」

 

 その狂乱の殺気に満ちた詠の一振りが漆月に向かって来、それに漆月が左手も妖魔の姿に変えて防ぎ、それを見た項羽は叫んだ。

 

「大丈夫……って言ってもこれは驚いたなぁ。まさかこんな隠し玉を残してたなんて。」

 

 そんな項羽を心配かけまいと答えた漆月は詠を見ながら呟いた後、左手を振るって詠を離した。

 

「まぁでも……それだけだけどね。」

 

「っ!! ぬがぁあああああああああああああああああああああ!!」

 

 そう呟きながら、狂乱の詠を見ても態度を崩さない漆月は左手から気弾を連発すると、詠はそれを大剣の腹で防ぎながら漆月に近付き、すぐそこまで近づいた。

 

「んぅううう!! んぁあああああああああああああああああああ!!」

 

 その勢いのまま、詠は漆月に向かって大剣を再び振ろうとしたその時だった。

 

「っ!? んぅうううううう!! んぁああああああああああああああああ!!」

 

「よ、詠お姉ちゃん!?」

 

「詠ちゃん!!」

 

 詠が突如、苦しみ悶えるように胸を押さえ、うめき声を出しながら倒れてしまったのを見て、先ほどまで詠の変わりように傍観してしまっていた未来と春花が近づいた。

 

「詠お姉ちゃん!? 詠お姉ちゃんしっかりして!?」

 

「気を失っているみたいね。でもさっきのと言い……」

 

「今のは……なんや。」

 

 さっきまで纏り付いていたオーラも消えた詠に近付き、半ば涙目になりながら未来が叫ぶ隣で、気を失っただけと呟くものの、春花と遅れて来た日影はさっきの詠に疑念を抱いていた。

 

「ありゃりゃ、こりゃ危険な力って奴かな? まぁ良いや、さて次は……って?」

 

 その光景を見て頭を掻きながら呟いた後、次の相手を探そうとする漆月が見たのは、倒れた詠を介護しようとする未来達に近付く蒼志の姿だった。

 

「これ以上漆月の手を煩わせる事はありません。まずこいつらを……私が!?」

 

「っ!?」

 

「させるかぁ!!」

 

 そう呟きながら刀に蒼炎を纏い、未来達に向かって秘伝忍法を振るおうとしたのを見て忌夢と葛城達はそれを防ごうと走った。

 

「絶・秘伝忍法……蒼流炎………煉斬!!」

 

 だがそれも遅かったのか、蒼志は絶・秘伝忍法「蒼流炎・煉斬」を放ち、横一線に振られた蒼炎の刃は、遅れて気付いた未来達のすぐ近くまで近づいた………

 

『はぁあああああああああああああああああああああああああ!!』

 

「なぁあ!?」

 

「!!」

 

 だがその刃は、未来達に届く事は無かった。

 蒼炎の刃は、突如としてやって来た飛鳥と焔の斬撃によって打ち消されたからだ。

 その事に蒼志は驚きく中、漆月は何処か嬉しそうな笑みを浮かべながら驚いた。

 

「あ、飛鳥さん? それに……」

 

「焔……あんた達、どうしたのよ?」

 

 夜桜と両備も、別の意味で驚いていた。

 今の飛鳥と焔はそれぞれ覚醒状態、真影の飛鳥と紅蓮の焔になっているが、問題は見た目ではなかった。

 普段の飛鳥と焔を知っている者ならわかる。

 今の飛鳥と焔は、昨日より確実に、格段に強くなっていると。

 

「漆月……ちゃん。」

 

「オメェやっぱり……あの漆月、なんだよな?」

 

「……んぅ? んぅううう!? その反応……もしかして思い出してくた!! やったぁー!! もう二人して遅いよ思い出すのが!?」

 

 飛鳥と焔の言葉を聞いて、自分の事を思い出してくれた事に喜ぶ漆月に対し、飛鳥と焔の顔は浮かなかった。

 

「………どうして?」

 

「んぅ?」

 

「どうして……こんな事ばかり続けてるの? 忍社会をぶっ壊すとか、他の忍学生の皆を拉致するとか、そんな事……昔の漆月ちゃんだったら絶対そんな事しないはずだよ!?」

 

「飛鳥……」

 

「これが漆月ちゃんの答えなの? これが漆月ちゃんの忍の道なの? だとしたらこんなの……こんなの陽花さんは望んでなんかいない!!」

 

 隣で焔が悲しげな表情を露わにする程、飛鳥は漆月に対して叫び続けた。

 忘れていたとは言え、漆月も大事な幼なじみ。そんな漆月がこれ以上の事をするのは止めて欲しいと思うのは必然だった。

 

「………飛鳥ちゃん、焔ちゃんも知ってるはずでしょ? 私のお姉ちゃん、陽花が望んだ忍の未来の話。それは……聞いてた私にとっても凄いと思えて、叶うように願ったりした。」

 

 そんな飛鳥の話に答えるように話し始めた漆月の表情は、何処か悲しげだった。

 

「でもお姉ちゃんが死んで、私が妖魔をこの身に宿しているってだけで追われる身になって知っちゃったんだ。……今の忍社会の醜さ、愚かさ……そして最低で最悪な物全てを。」

 

「漆月ちゃん……」

 

「お前……」

 

「逃げてる時思ったんだ……何で私は狙われるの? 何で誰一人として助けてくれないの? 妖魔の力を宿しているから? それだけで!? そんなの嫌!? それが忍だから!? それが…お姉ちゃんが信じた忍の正義なの!?って……それで思ったんだ。もしそれが忍の世界の本当の姿だったらそんな世界……」

 

「壊れてしまえば良いのにって。」

 

 漆月が珍しく感情を露わにしながら話続けたのを見て、飛鳥と焔だけじゃなく他の皆も旋律した。

 

「その時だったかな? この妖魔の力を発現したのは。……その後も私は、忍社会の裏、その殆どを知った。何もかもね。そして気付いたんだ……今の忍社会じゃ何も……お姉ちゃんが目指していた夢すらも成就しないって。」

 

「漆月ちゃん………」

 

 再び悲しげな目をしながら話す漆月が呟く中、漆月は今度は目を鋭くして顔を上げた。

 

「だから私は、いや……ここにいる私達は決めたんだ!! 今の忍社会の何もかもを破壊して……」

 

「自分達が!! 新たな忍社会の支配者になるってね!!」

 

 そう拳を握りながら豪語した漆月の言葉は漆月一人だけじゃない、この場に居る蒼志、龍姫、鎌倉、項羽、拷楽。この場に居ない闇と転界。破忍全ての決意だった。

 

「……ふ、ふざけるなぁ!! そんなの……そんなの陽花さんは望んじゃいねぇ!! そんな事妹にやって欲しいとも思わねぇ!! こんなの……こんなの陽花さんが悲しむだけだろうが!?」

 

 それに対して焔は刀を漆月に向け、悲しげな目をしながら訴えかけた。

 これ以上もう一人の最強の幼なじみに堕ちて欲しくない。だが焔の願いは、漆月に届く事は無かった。

 

「……だろうね。でも私は……私達はもう止まれない。止められないんだよ。」

 

 漆月が静かに答えたその直後、漆月達の上空の空間に穴が二つ開くと、その穴から闇と転界が降りて来た。

 

「あらら? お取込み中でしたの?」

 

「こっちは仕事、終わらせました。」

 

「っそ、ありがとう二人共。」

 

 話しかけた闇と転界に礼を言った後、漆月は飛鳥と焔達の後ろにある物を示す様に指を差した。

 

「飛鳥ちゃんと焔ちゃん達の後ろの向こう側にさぁ、忍本部があるのは知ってるよね。そこには今の、元通り出来ない程に腐敗した見たいにになってる忍社会を作った幹部が居るのも?」

 

「……まさか!?」

 

「あんた達!?」

 

 漆月の話を聞いて夜桜と両備は気付いた。

 自分達が漆月達と戦っている裏で、遅れて現れた闇と転界がその幹部達に何かしたのであろうと。

 

「別に殺しては居ませんわ。ただ私が作り放った結界が張られた島に、転界が転移忍法でご招待させただけですわ。」

 

「でも……そこまで雄著もありませんがね。その結界には数体の、幹部を殺す様に調合された人口妖魔も居ますから。下手したら……どうなるか?」

 

 闇と転界の話を聞いて戦慄し、再び飛鳥達が睨む中、漆月は飛鳥と焔達に向けて叫んだ。

 

「これは宣戦布告だよ!! 君達が本当に、本当の意味で今の忍社会を守りたいって言うなら、私達から忍本部を取り戻してみせろぉ!!」

 

「漆月ちゃん……」

 

「お前……」

 

「あぁそうそう!!」

 

 漆月の宣戦布告を聞いて飛鳥と焔が戸惑う中、何かを思い出したかのように漆月は転界に指示すると、転界は何も言わず杖の下を地面に叩いて二つの転移空間を出現させると、その二つの転移空間から二人程倒れるように現れた。

 

「っ!! 雪泉!!」

 

「雅緋!!」

 

 その二人は捕まり、拷問を受けていた雪泉と雅緋で、二人を見て夜桜と忌夢は驚いた。

 ずっと拷楽の拷問を受け続けていたのか、身体中ボロボロなのは明白だった。

 

「その二人、もう必要ないから返すね。って言っても、二人とも戦力外にしかならないから。」

 

「くぅ……」

 

「貴様ぁ……」

 

 そんな雪泉と雅緋を見下ろしながら漆月が話した事に両備と神裂が険しい顔で睨んでいる中、漆月達は転界が作った大きめの転移空間に振り向いた。

 

「それじゃあ飛鳥ちゃん、焔ちゃん、次会うのが楽しみね。じゃ……チャオォ~!!」

 

「ま!! 待って!?」

 

「漆づ、」

 

 飛鳥と焔の静止も聞かず、漆月はさよならを言いながら蒼志達と共に去って行き、全員転移空間を渡り歩いた後、空間は消え去った。

 

「……っ!! 雪泉!! 雪泉しっかりしてください!!」

 

「雪泉ちゃん!! 雪泉ちゃんってば!!」

 

 その光景に見ていた夜桜は雪泉に近付き、一緒に近付いて雪泉に向かって叫んだ美野里の隣で、四季は雪泉の脈を調べた。

 

「死んではいないけど……呼吸も弱いし、早く病院に連れて行った方が。」

 

「そうだな……忌夢、そっちの方は……忌夢?」

 

 四季が呟いた事に叢は頷きながら、近くで雅緋を抱えた忌夢に聞こうとしたが、忌夢の様子はどうも可笑しかった。

 

「っ!?」

(ヤバイ!! 久々の……久々すぎる雅緋の感触!! 心臓がドキドキバクバク!! そんな言葉じゃ表現出来ませんなぁ~!!)

 

 久々の雅緋の感触に歓喜したのか、忌夢は心中でそんな事を考えながら笑みを浮かべていた。

 そんな忌夢を見て神裂が睨んだのに対し、総司は手を合わせながら無言で謝罪した。

 

「いかん……緊張で雅緋の顔が直視出来ない!!……でも見たい!! 至近距離で超見たぁい!!……良し忌夢、ここは悪の誇りを舞い掲げて!! 3!! 2!! 1!!」

 

「やかましいわ!!」

 

「痛っ!!」

 

 途中から心の声でなく、声に出ちゃってる忌夢に対し、両備は頭を叩きながらツッコンだ。

 

「痛たたたたたたた…な、何で心の声が、」

 

「声に出まくってたっての。」

 

「マジで!?」

 

「あんたかっこいい時と気持ち悪い時の格差が酷すぎんのよ。さっさと病院運ぶわよ。」

 

「あ……あうん。」

 

 忌夢と話しながら両備は雅緋を抱え持ち、その近くでは夜桜が雪泉を抱え運び始めた。

 

「んなら……ウチは詠さんを、」

 

「えぇお願い。焔!!」

 

「あ……あぁ分かった。」

 

 日影がこちらも気を失っている詠を抱えながら言い、それに頷いた後春花は焔を呼び、呼ばれた焔は頷きながらふと下を見るとそこには……

 

「これは……」

 

 そこには詠が持ってた、いつの間にか鞘に収まっている黒い大剣が落ちており、焔はそれを拾いながら見つめた。

 

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