閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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26.それぞれの思いと願い

「三人の様子は?」

 

「詠さんはまだわかりませんが、雪泉と雅緋さんは心体共に重傷らしいです。」

 

「まぁ……あんだけ痛めつけられたらな。」

 

 病院に辿り着いた後、すぐさま詠と雪泉と雅緋の検査が始まった。

 その検査が終わるまでの間、柳生の質問に夜桜が知ってる限りの事を教え、それを聞いた葛城は頭を掻きながら呟いた。

 

「そんな事言うならあんた、少しくらいは止めなさいよ?」

 

「仕方ねぇだろう!? 実際あたい、拷問部屋出入り禁止だったし。」

 

「あっそ……っで、今度はあんた達に質問なんだけど。」

 

 それを聞いた両備の質問に葛城が答えた後、両備はため息を付きながら今度は飛鳥と焔の方を見て聞き始める。

 

「さっきのあんた達の斬撃を見る限り、明らかに昨日よりも強くなってるわよね? 一体どうして急に………」

 

「あ……あはははは、」

 

「やっぱ気になるよな。」

 

 両備の質問に飛鳥が愛想笑いした後、焔はため息混じりに話し始めた。

 

「昨晩に神楽に会ってな、そいつの後をついて行って入ったのが、現実とは時間の流れが違うように設定された忍結界だったんだ。」

 

「時間の流れが違う?」

 

「つまり……そこで修業を行ったから、昨日よりも強くなってたと言うわけか。」

 

「うん……結界内で一年以上。」

 

『一年以上!?』

 

 焔の簡単に纏めた話を聞いて四季と忌夢が呟くと、それに答えるように言った飛鳥の言葉を聞いて、この場に居た全員驚いた。

 

「それはまた……結構しごかれた感じね。」

 

「ど……どんな修業したんですか?」

 

 少し引きながら飛鳥と焔に対して両備と夜桜が質問すると、飛鳥と焔は顔色を真っ青にしながら答え始めた。

 

「いや本当……死ぬほど辛かったよ。霧夜先生だけじゃなく大導寺先輩に鈴音先生……たまに神楽ちゃんも修業に参加したらしたらで……ほぼ休みなしで一年以上しごかれ続けたよ。」

 

「特に霧夜先生がな……あの人修業中あんまりしない忍転身をしててな……その際の修業が辛くて辛くて……そりゃ大導寺も鈴音先生もあんだけ強くなるわ……」

 

 

『…………』

 

 修業の時の記憶が今だに新しく残っている飛鳥と焔は泣きそうになりながら話し、それを聞きながら飛鳥と焔を見た両備と夜桜達の周りには、気まずい空気が漂ってしまっていた。

 

「いやその……大変だったな。」

 

「お、お疲れ様。」

 

「う……うん、ありがとう。」

 

 そんな飛鳥を柳生と雲雀が慰めている中、何処からか足が聞こえ振り向くと、近付いて来たのは奈楽だった。

 

「奈楽ちゃん? 一体どうしたの?」

 

「……少し話しておきたい事があってな。各陣営のリーダーと、焔紅蓮隊のメンバーは屋上に来い。」

 

 奈楽に気付いた飛鳥に応えながら屋上に向かった奈楽の後を追うように、飛鳥と両備と夜桜、そして焔紅蓮隊のメンバーは屋上に向かった。

 

――――

 

「話しておきたいのは……詠が持ってたあの黒い大剣の事だ。」

 

『っ!!?』

 

 屋上に着くやいなや奈楽の言葉を聞いて飛鳥達、特に焔紅蓮隊のメンバーは驚きを隠せずにいた。

 

「た……確かに、あの剣を持ってた詠お姉ちゃん、何だか怖かった。」

 

「それに急に苦しんだと思ったら倒れて……一体何なのあれ?」

 

 未来が怯えながら、そして春花も考えながら話した後、奈楽は腕を組みながらその話の答えを話し始める。

 

「私も詳しい事までは分らんが……あの大剣には、所有者に狂気に満ちた膨大な力を与える、呪力見たいなのがあるらしい。」

 

「呪力?」

 

「何故そんな物が込められたのか分からんが、とにかくあの剣の所有者になった者は狂気に満ち溢れ、目の前の敵を倒すまで止まらなくなる事もあるらしい。」

 

「……まさに、ゲームで言う所のバーサーカーになるって事ね。」

 

 奈楽の話を聞き飛鳥が呟き、その後も話し続けた奈楽の話を聞いて両備も頭を掻きながら呟いた。

 

「まぁ当然……与える代わりにデメリットを得るけどな。」

 

「デメリット?」

 

「あぁ……その膨大な力を与える代わりにあの剣は……所有者の命を削り、最終的には死に至らしめる。」

 

『なぁ!?』

 

「だからどこかの保倉に封印されたはずなんだが……一体あいつは何処からあれを……」

 

「……………」

 

 その後も話す奈楽に日影が聞くと、奈楽の答えを聞いて飛鳥達、特に焔は驚きを隠せず声を上げた。

 そして話し終え……頭を掻きながら奈楽が呟いてる中、焔はその事に対して怒りを表す様に、拳を握りしめた。

 

――――

 

「んぅ……んぅううう……こ、ここは……?」

 

「あ!? 詠お姉ちゃん目覚ましたよ!?」

 

 翌日、病院の病室で目を覚ました詠。

 それに気づいて、病室に寝泊まっていた未来が声を掛けると、日影と春花、そして焔が詠のそばに近付いた。

 

「未来さん……それに皆さんも、わ…私は確か……キャ!!」

 

 皆の顔を見て詠は上半身を起こし、昨日何かあったか思い出そうとしたその直後、焔に頬を思い切り叩かれた。

 

「ほ……焔さん?」

 

「何で……したんだ。」

 

「え?」

 

「………何であんな剣手にしたんだ!? 何で、あんな無茶な事をしたんだ!?」

 

 叩かれた理由が一瞬分からなかった詠だったが、焔の病院の迷惑も気にしない程に大きな怒鳴り声を聞いて、詠はすぐに気づくのだった。

 

「……そう、ですよね。話さないと、いけませんね。」

 

 そう顔影を落としながら詠は呟いた後、春花の傀儡が持っている大剣を見ながら話し始めた。

 

「あの剣は……不雪帰さんから貰った物なんです。」

 

「不雪帰って確か……雪泉さんの姉的な人って言うか、人と妖魔の間で生まれた、あの不雪帰か?」

 

「はい……私が今すぐにでも強い力が欲しいって言ったらアレを貰って……あの剣が危険なのは解ってます。でも……私は、」

 

「危険を承知で、と言うより受け入れてあの剣を手にしたってわけね。」

 

「そんな……よ、詠お姉ちゃんどうして……どうしてあんな剣手にしちゃったの!? 下手したら死んじゃうかもしれないんだよ!?」

 

 日影の質問に答えながら詠は話し、それを聞いた春花が呟いた後、未来は涙目になりながら詠に聞いた。

 大切な姉とも言うべき存在である詠が死んでしまう……そんな不安で未来の不安はいっぱいだったからだ。

 

「……斑鳩さん、の為か?」

 

「っ……はい。」

 

 そんな中、詠の真意に勘付いた日影が聞いた事に対して、詠はふとんのシーツを掴みながら頷いた。

 

「あの時……私は斑鳩さんを救えないだけじゃなく、更に心を傷つけてしまいました。私が……私がもっと強ければ、斑鳩さんを助けれたはずなんです。」

 

「詠……」

 

「だから……だから私は……何を犠牲にしても……自分がどうなってしまうとしても、斑鳩さんを助けれるような力が……すぐにでも欲しかったんです。」

 

 四日前の雨の日、斑鳩を救えなかったことが後悔でしかなかった詠は、すぐにでも斑鳩を助けれるような力が欲しかった。

 その事を話す内に詠の瞳から、次第に涙が溢れで居ていた。

 

「………お前、本当馬鹿だな?」

 

「ほ、焔さん?」

 

 そんな詠を見て焔が言った事に対して詠が聞くと、焔は詠に呆れ半分怒り半分な口調で始めた。

 

「斑鳩が救えなかった、だから自分を犠牲にしてでも助けれるような力が欲しいだと……ふざけんのも大概にしろ!?」

 

「え?」

 

「そんな事してアイツが!? 斑鳩が喜ぶと思うか!? 斑鳩が助けられると思うか!? そんなの……そんなの絶対ねぇよ!! むしろアイツを更に傷つける事になるだけだ!!」

 

 焔の言葉を聞いて最初は理解出来なかった詠だったが、続けざまに焔の言葉を聞いて分かってしまった。

 

「アイツを助けたいのは私達も一緒だ!! だからさ……私達にも頼ってくれ!! 困った時は手を差し伸べてくれ!! 私達は……焔紅蓮隊だろうが!?」

 

「焔さん……」

 

 焔の言葉を聞いて戸惑う詠に対して、日影は詠の頭に手を乗せた。

 

「日影さん……」

 

「詠さんの気持ち……感情ないワシでも分かるで。でもな……一人で誰かを助けようにも限界もあるし心配されるだけ。ワシもあの時、身をもって知ったわ。」

 

 日影は葛城に敗れた後、焔達の心配そうに自分を見る顔を見てそう思ったらしく、詠にも同じような思いはさせたくないと話しかけた。

 

「斑鳩さんを助ける事は……ワシも協力したる。だから詠さん、もう一人で頑張ろうとすんな。」

 

「日影さん……私は、きゃ!!」

 

 日影の言葉を聞いて詠が話そうとすると、未来に抱きつかれたのに驚いて声を上げてしまった。

 

「……ひっぐ……ひっぐ……うぅ……うぅう……」

 

「み、未来さん……皆さん………」

 

 抱きついた未来が涙を流しているのを見た詠は皆も見ると、いつの間にか焔と春花と日影も、詠に抱きつくのだった。

 

「…………ごめんなさい。皆さん………本当にごめんなさい。」

 

 その温かさを感じ、自分がここまで皆を心配させた事を身をもって知った詠は、更に涙を流しながら焔達に謝り続けたのだった。

 

――――

 

「でも良かったぁ~!! 雪泉ちゃんが無事で!!」

 

「ま、マジで無事ってわけでは無いけどね。」

 

「肉体の方の完治は遅いらしいからな。今はとりあえず、自分の身体を直す事に専念した方が良いだろう。」

 

 同時刻、同じく目を覚ました雪泉を見て、見舞いに来た美野里と四季と叢はそう言うが、雪泉は何故か四季達と目を合わせずにいた。

 

「? どうしたんですか雪泉? さっきから儂らから目を逸らして。」

 

「……ごめんなさい。今の私に、皆と顔を向き合って話せるような気分じゃ………」

 

 夜桜に答えた雪泉は、捕らわれた際に龍姫に言われた事を全て話した。

 それを話してる時の雪泉の目は、何時でも泣き出しそうな目をしていた。

 

「アイツは……ウチらの事嫌い過ぎるでしょう。」

 

「でも……私は龍姫さんの言葉に、言い返せませんでした。皆さんを私の、黒影お爺様の正義を貫くと言う意思巻き込んでしまった。皆さんもそれぞれ、やりたい事があるはずなのに……本当に、本当に申し訳ございません。」

 

 四季が頭を掻きながら呟いた後、雪泉は下を向きながら話続けた。

 自分の夢が、皆の自由を奪ってしまった。その事が否定できない自分に、尚且つ皆の自由を奪った自分に嫌気がさしたように。

 

「………ハァ、何かと思えば、そんな事言うもんじゃないですよ。雪泉らしくない。」

 

「え?」

 

 そんな雪泉に対してため息混じりに言ったのは、一番自由を奪ってしまったと思っている夜桜だった。

 

「雪泉……儂らは別に雪泉が自由を奪ったとか、黒影様が儂らを家族から引き裂いたとか、今更気にしてませんよ。儂らがこうして雪泉と一緒に居るのは……儂ら自身が決めた事なんですから。」

 

「夜桜さん……」

 

 夜桜の言葉を聞いて雪泉は少しだけ感動していると、今度は四季が話し始めた。

 

「それにさ!! 自由奪ったって言うけど、ウチらなんだかんだで自由にやってるよ!? ウチも自分の夢とか目指して頑張ってるし!!」

 

「左様。雪泉はどう思っていようと、我らは今の生活が不自由とは思っておらん。」

 

「うんうん!! 私達は好きなように忍ごっこして、好きなようにお菓子を食べる!! ホラ!! 全然自由だよ!!」

 

「美野里は少し自由過ぎじゃ!!」

 

 四季に続いて叢と美野里も話したが、美野里の話に関しては夜桜は少しだけ怒った。

 

「………どうじゃ雪泉? これでも自分が、儂らから自由を奪ったとでも?」

 

 夜桜は美野里に少し呆れながらも皆を見た後、雪泉の手を繋ぎながら口にした。

 そのことばを聞いた雪泉は、夜桜に続いて四季と叢と美野里が重ねていく自身の手を見た後……

 

「皆さん……ありがとう……ございます。」

 

 一筋の涙を流しながら、夜桜達に礼を言った。

 

「フゥ……まったくお前の元先輩は、世話がかかるにも程があるな。」

 

「まったくね。」

 

 そんな雪泉達の様子を見ていた、同じ病室の雅緋が話した事に対して、見舞いにやって来た両備はため息混じりに答えた。

 

「まぁ……私も人の事言えた立場では無いか。お前にも迷惑かけたな、両備。」

 

「まったくねって……ハァアアア!?」

 

 その後雅緋が両備に言った事に対して、両備は思わず顔を真っ赤にしながら驚いた。

 

「鎌倉の事やリーダー代理の事についてはさっき忌夢や芭蕉から聞いたからな。私が不在の間お前には負担を掛けてしまった。…………礼を言う。」

 

「ななななななななななぁ!? 何らしくない事ばかり言ってんよ!? べ、別に!? あんたの為にリーダー代理になった訳じゃないから!? 私以外リーダー代理に相応しい人材が居なかっただけだから!?」

 

 あまり聞かない雅緋の言葉を聞いて、両備は更に顔を真っ赤にしながら言い返した。

 

「と、とにかく!! あんたはさっさと身体直して!! さっさと蛇女に戻って来なさい!! 破忍の事は私達でなんとかするから!?」

 

「……あぁ、そうするとしよう。」

 

「///////////////////た、たくもぉ!!」

 

 両備は雅緋に指差したながら言った後、雅緋の返事を聞いて顔をまた赤くしながら病室を去った。

 そんな両備の後ろ姿を見て雅緋は少しばかり……

 

(……まったく、お前の妹はなんだかんだで、お前に少し似ているよ。両姫。)

 

 両備と両奈の姉である両姫と重ねるのだった。

 

――――

 

「焔ちゃ~ん!! 遅いよぉ!!」

 

「うるさいなぁ悪かったって。っで神楽、用って何だ?」

 

 焔が病院の屋上に向かうとそこには飛鳥と中学生ぐらいの神楽が待っており、飛鳥に言い返しながら焔は呼んだ神楽にその理由を聞いた。

 

「二人にこれ、渡して置きたくて。」

 

 そう言って神楽が渡したのは、少しボロボロになった陣羽織と刀で、その両方とも、太陽を表したような物が縫われ、刻まれていた。

 

「陣羽織に刀? アレ……でもこれって、」

 

「まさか……これって!?」

 

「そう、これは陽花が残した……いわば形見の様な物かな。」

 

 その二つが陽花の物だと気付いた飛鳥と焔に神楽は話しながら、陣羽織を飛鳥に、刀を焔に渡した。

 

「……私が出来るのはここまで。後の事は君達次第だよ。忍の未来も、漆月の未来も……」

 

 そう言った神楽は屋上から飛び降りた。

 それに少し驚いた飛鳥と焔は屋上から地面を見下ろすと、そこにはもう神楽の姿は無かった。

 分かりきってはいたが、やはり驚きを隠せずにいる飛鳥と焔だった。

 

「………なぁ飛鳥。分かってるよな。」

 

「うん……でもそれは、焔ちゃんも一緒でしょ。」

 

 屋上に残った焔は刀を見つめながら飛鳥に聞き、飛鳥も陣羽織を見つめながら頷いて焔に聞き、それに焔は頷いた。

 

「必ず…漆月をぶっ倒して、」

 

「こんな……馬鹿な事を、」

 

『止めて見せる!!』

 

 決意を固めた飛鳥と焔は互いを見ながら言った後、拳を重ねるながら互いに約束した。

 必ず漆月を倒す。そして馬鹿げた事を止める。

 飛鳥と焔のその決意は、今までに無い程に強かった。

 

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