閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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最終章
28.漆月と陽花


 

「うぅ~ん……うう~ん。」

 

 今から昔……と言ってもそこまで大昔ではない過去。

 まだ幼い漆月は、自室で眠りにつこうとしていたのだが、中々寝れずにいた。

 

「どうしたの?」

 

 そんな漆月に気付いたのか、姉である陽花が声を掛けて来た。

 忍務帰りだったのか、何処かの学生服の上に陣羽織を羽織ったままの姿の陽花は、ツインテールで纏めたオレンジ色の髪に触れながら漆月に聞いた。

 

「お……お姉ちゃん……」

 

「眠れないの? もしかして、嫌な夢でも見た?」

 

「分かんない……でも何か寝れなくて……」

 

 漆月の話を聞いた陽花は腕を組み、どうすれば妹である漆月が眠れるか考えてた直後、その答えはすぐに出た。

 

「あ!! じゃあさ、私が昔話を聞かせてあげる!! そしたら寝れるかもしれない!?」

 

「……本当?」

 

「本当!! 本当!! 私も初めて聞いた時すっごくつまらない話だったから、多分寝れると思うよ!!」

 

 そう自信満々に言う陽花を見て少し不満を抱くものの、姉の陽花の事は人一倍に信じている漆月は、その昔話を聞く事にした。

 

「じゃあ話すね……むかぁ~し昔。ある所に、一人の少女が居ました。」

 

 陽花が話したのは、一人の忍少女の話だった。

 少女は誰よりも凄い最高の忍を夢見て、日夜修業の日々を続けて行き、遂に忍として認められる事になった。

 所が……少女を待っていたのは辛い現実だった。

 やりたくも無い忍務を繰り返し行わされ、人も何人も殺した。

 そしていつの日か、最高の忍になると言う夢すらも忘れて行った少女は何時しか、ただ忍務を行うだけの忍になってしまい……最終的には殺されてしまった。

 と言う話である。

 

「ふぅわぁあああああ~、話してたら私まで眠くなっちゃった。さてと……私の可愛い妹の寝顔でもってあれ?」

 

 欠伸をしながら陽花は漆月を見ると、漆月は眠る処から目を見開きながら陽花を見て、その目は少し不満も抱いていた。

 

「あ……あれ? 寝てないの?」

 

「うん……そんな話を聞いて、逆に寝れなくなっちゃった。」

 

「えぇええええええ!?」

 

 寝かせるつもりが逆に目を覚まさせてしまった。

 思ってた事とは全く別の事が起きた事に、陽花は驚きを隠せずに声を上げた。

 

「……お姉ちゃんも、そんな忍の世界で頑張ってるんだよね。」

 

「う? うん、そうだけど?」

 

「お姉ちゃん……私、さっきのお話聞いて少し怖くなって、お姉ちゃんがさっきのその忍の女の子見たいな事にならないかなって、大丈夫なのかなって……そう思うと………」

 

 漆月は身体を少し震わせながら話した。

 何時の日か……お姉ちゃんもさっきの話に出て来た忍みたいになってしまうんじゃないのか?

 もしかしらいつの日か、私の目の前から居なくなってしまうんじゃないのか? 

 そんな事ばっかり考えてしまい、漆月は不安で眠れなかったらしい。

 

「……そうだね。確かに、辛くないって言えば嘘になる……けど私は、私は自分の夢を諦めたくないんだ!!」

 

 そんな漆月を見た陽花は胸を少し押した後、話しながら近くの窓を大きく開けた。

 

「お姉ちゃんの……夢?」

 

「うん………何時の日か、忍の皆がそれぞれの夢を追いかけられて、忍の皆が笑顔で居られる……そんな忍の世界にしたい。それが私の夢。」

 

 陽花の夢を聞かされた漆月の目には、陽花は少し輝いて見えた。

 自身の夢を話している時の陽花の顔は笑みを浮かべており、その笑顔は、夜空に輝く月よりも明るい太陽のように見えたからだ。

 

「……出来るの? その、お姉ちゃんの夢?」

 

「……難しいかもしれない。でも絶対叶えて見せたい!! 私が無理でも、その夢を継いでくれる子が絶対いる!! 私はそう信じたい……信じながら、頑張る!!」

 

 漆月の言葉にも、陽花は笑みを浮かべながら拳を作りながら答えた。

 そう自信を鼓舞するように言った陽花の姿を見た漆月には、胸に込み上がって来る何かを感じ得ずにはいられなかった。

 

「……だ、だったら私は!! お姉ちゃんの夢を助けたい!! お姉ちゃんが叶えたい夢を、私も叶えたい!!」

 

「おぉ!! 言うんじゃないかぁ妹ぉ~!! じゃあそう出来るような忍になる為に、まずは寝なさい!!」

 

「うん!!」

 

 その胸からこみ上げて来た思いを口にした漆月の言葉を聞いた陽花は、漆月の頭を掻きながら言い、それを聞いた漆月はすぐさま眠りについた。

 その後は眠りにつきながらも、漆月の胸には確かな思いが残っていた。

 何時か姉の様な忍になって、姉の夢を一緒に叶えたい。

 今まで考えてなかった忍になってからの夢を、ようやく見つけた漆月にとって、それは一途の希望だった。

 

 だが………その希望と夢は叶う事は無かった。

 翌年、姉であり夢を思い描いたきっかけを作った陽花が死んだからだ。

 それをきっかけに、漆月の人生は崩れ落ちた。

 

~~~~

 

「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」

 

「くそぉ!? アイツどこ行った!?」

 

「探せ!! 何としてでも悪忍よりも先に!?」

 

「善忍よりも先に、あの娘を殺すぞ!!」

 

 漆月が息を荒く吐きながら走る際、耳に聞こえたのは善忍と悪忍の声だった。

 漆月は今、自分を殺そうとしている忍達から逃げていた。

 何故逃げているのか? それは漆月に宿っている妖魔に原因があった。

 漆月も前に姉である陽花から聞かされているから、妖魔の事に関しては知っていた。

 ゆえに今まで保護対象として扱われていたが、それは陽花が生きている間までだった。

 その陽花が死んだ今、善忍悪忍関係なく漆月を殺そうと襲い掛かり、その時何の力も持たない漆月は、ただひたすら逃げるだけだった。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……あぁ!?」

 

 服も靴もボロボロ、全身泥まみれ傷まみれになりながら逃げ続けていた漆月だったが、逃げた先が行き止まりだと気付いた時には遅かった。

 

「フゥ……ようやく追い詰めたぞ!!」

 

「おい!! 悪忍共は手を出すな!! こいつは俺達が殺す!!」

 

「あぁ……ああぁ………」

 

 漆月を追い詰めるように現れる善忍と悪忍の忍達を見て、漆月が声に出ない程に絶望した次の瞬間、漆月の目には写ったのは………

 

「何だと!? コイツを先に見つけたのは俺達だ!! この化け物は俺達が!?」

 

「ふざけるな!! 妖魔を殺すのは俺達善忍だ!! 悪忍は黙ってろ!?」

 

「お前達善忍こそ黙ってろ!?」

 

「何だと!?」

 

「……………」

 

 手柄が欲しいのか、漆月を先に殺そうとして揉める善忍と悪忍の姿だった。

 よく見れば、善忍同士、そして悪忍同士ですら手柄を横取りしようと揉め始めていた。

 そして何より辛かったのは、誰一人として漆月を助けず、誰一人として、漆月を人間扱いしてない事だった。

 

(………何で? 何で私を殺そうとするの? 何で、誰一人として助けてくれないの? 何で……私を殺すが為に争ってるの?)

 

 そんな…醜い忍の我欲などにまみれた光景を見て、漆月の頭は混乱した。

 

(私が妖魔を宿しているから? それだけで? そんなの嫌、それだけで……それが、それが忍だから? それが……お姉ちゃんが信じた忍世界……忍の正義なの?!)

 

 姉同様、忍の未来や正義を信じていた漆月にとって、今見ている光景は絶望にしか見えないからだ。

 ずっと信じていた忍の正義、姉が笑顔にさせようとした忍が、こんなにも醜くて最悪な物だったからだ。

 

(………あぁ、もし……もしそれが、それが忍の世界の本当の姿だったら……そんな世界…………)

 

――壊れてしまえば、良いのに――

 

 っと、漆月の心が黒く染まり、そう思ったその時だった。

 

「……あ゛ぁああああああ……あ゛ぁああああああああ………」

 

「ア゛ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 漆月が叫んだのと同時に、身体から禍々しい力が放たれ出した。

 漆月に宿っていた妖魔の力が、漆月の忍に対しての絶望に反応して発現したからだ。

 

「なぁ?! 何だこの力は!?」

 

「ま、まずい!? 逃げ、」

 

 それを見た善忍と悪忍の忍が逃げようとした時には既に遅かった。

 妖魔の力を表すような禍々しいオーラは、すぐさまその場に居た忍達を包んで行きそして……

 

~~~~

 

「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 数分後、漆月は再び息を荒立てながら立っていたが、さっきとは現状が違っていた。

 漆月の周りには、その場が赤く染まる程の血が散乱しており、その血の主であった善忍と悪忍の忍達は……誰一人残らず死んでいたからだ。

 

「……………」

 

 そんな忍だった死体の群れを見ながら、漆月は自身に着いた返り血を舐めた。

 自分を殺そうとした、自分を人間扱いしなかった忍達が、こうも無惨に殺された、自分が殺したのを見た漆月の心は、何処か晴れ晴れしてる様だった。

 

「………アハ、アハハハハハハハハハハハハ……アッハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 次の瞬間、漆月は壊れたように笑いだし、その場をスキップしながら去って行った。

 それが……漆月の始まり、オリジンだったのだろう。

 

――――

 

「…………」

(あの日からだ。あの日から私は、こんなクソったれな忍社会の裏を見て来た。そして気付いた……今の忍び社会じゃ……お姉ちゃんの夢は叶う事なんて無理だ。)

 

 それから月日が経ち、完全に乗っ取った忍本部の屋上から街を見下ろしながら、漆月は自身の過去を思い出していた。

 辛く……そして苦しみばかりの過去を思い出しながら、漆月は再び決意を固めていた。

 

「だから私が……いや、私達破忍が、今の忍社会の何かもぶっ壊して、新たな忍社会の支配者になるんだ。……それをどうしてでも止めたいんだったら飛鳥ちゃん……焔ちゃん……」

「死ぬ気で止めてみてね。」

 

 そう言いながら、漆月は自身の力を高めて行くのだった。

 

 

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