閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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2. 望まぬ再開

「し、漆月。」

 

「破忍の……リーダー……」

 

 破忍のリーダーと名乗った漆月を見て戸惑いを隠せずにいる風魔と土方の隣で、柳生は飛鳥に聞いた。

 

「飛鳥。あの漆月って女、久しぶりって言ってたが、もしかして知り合いか?」

 

「え? いやその……ダメだ、思い出せない。」

(でも何だろうあの子。とてもじゃないけど、初めて会った気がしない。)

 

 柳生の質問にそう答える飛鳥だったが、漆月の顔を見ながら頭を抱え、額から汗を出し始める。

 

(……覚えてない、って感じかな? まぁそれもそうか。なんせ、)

 

「ちょっとあなた!!」

 

「んぅ?」

 

 そんな飛鳥を見て漆月が思っていると、一歩前に出た菖蒲が漆月に対して指を指す。

 

「あなたさっき、あの破忍のリーダーって言いましたよねハッキリと。」

 

「そうだよ? それがどうかした?」

 

「……単刀直入に聞きます。かつ姉様は……半蔵学院の葛城をどうしたんですか!?」

 

 菖蒲は怒りの表情を浮かべながら漆月に問いただした。無理もない、憧れかつ溺愛している葛城と離れ離れになってしまった原因でもある破忍、しかもそのリーダーが目の前にいるからだ。

 

「葛城? あぁあの子か!! 何? もしかして憧れの先輩だったりして!? もしかして私が寝取ったと思ってるの?」

 

「ね、寝取ぉ!! そ、それも含めて聞いてるんですよ!! 良いから早く答えてください!!」

 

「分かった分かった。教える教えるよ。でも……」

 

 漆月の挑発じみた口調に戸惑いながらも大きな声で聞く菖蒲に対し漆月がそう口にすると、漆月達の後ろに待機していた妖魔の群れが漆月達の前に立つ。

 

「こいつらの相手をして、私達を満足させたらね。」

 

パチン

 

『ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 漆月が右手を上げ、指を鳴らしたのその直後、妖魔は揃って飛鳥達に向かって襲い始めた。

 

「っ!? 皆、気を付けて!!」

 

 飛鳥の掛け声と共に周囲に散った飛鳥達は、そのまま妖魔の戦闘に入った。

 

「ハァ!! 忍……転身!!」

 

 脇差を二刀とも手にした飛鳥は向かって来る妖魔を斬り伏せて行き、更に向かって来た二体の妖魔を斬り倒しながら転身した。

 

「フン、忍……転身!!」

 

 柳生は獲物傘で妖魔の攻撃を防ぎつつ、傘に捕まった妖魔を身体を回転させ、そのまま転身しながら払いのける。

 

「わわわわわわわ!! し、忍!! 転身ぅううううううううう!!」

 

 秘伝忍法獣である忍兎を召喚した雲雀はその忍兎雲に捕まり、妖魔の下を通りながら転身したのち、妖魔に向かって雷を放つ。

 

「おわっと!! し、忍転身!!」

 

 鎖付き手裏剣を手にした風魔は、初めての妖魔との戦いに戸惑いつつも、何とか転身してそのまま手裏剣で妖魔を切り倒して行く。

 

「……忍、転身!!」

 

 風魔とは対照的に冷静な土方はハンマーを展開しながら妖魔の攻撃を防ぐと、そのまま手にしたハンマーを振りかざしながら転身し、妖魔を叩き倒す。

 

「だぁあああああああああ!! 忍!! 転!! 身!!!」

 

 そして一番殺気に満ち、気合の入っている菖蒲は妖魔を殴り蹴りながら手甲と具足を展開しそのまま転身を完了させる。

 

「よっと!! これが妖魔? 何か思ったより大した事無いね!!」

 

「油断は禁物ですよ風魔!! 数が多いのは変わりないんですから!!」

 

「土方の意見も同意……とだけは言いたいがこの妖魔の群れ、弱すぎる!!」

 

 背中を合わせながら話す風魔と土方の話を聞きながら戦い続ける柳生は話しながら、倒していった妖魔を見直す。

 

(この妖魔共、身体中の至る所が機械化されている。やはり人工的に作られた物なのか? まさかアイツらが……)

 

 倒した妖魔はすぐに消えずそのまま残骸となっており、その残骸にある機械じみたものを見て再び疑問に思う柳生は、この戦いを見学している漆月達を見た。

 

「あらら、思ったよりやるものですわね。」

 

「選抜はともかく他の忍学生もあの強さ……負け記録が多いと思ってあまり危険視もしなかったですが、どうやら見くびっていたようですね。」

 

「そうねぇ。ま、あの飛鳥ちゃんがいる学院の忍学生って分けって……」

 

 飛鳥達の戦いを見てそう感想述べるように言った闇と転界に向けて漆月が答えようとする中、空中から何かが来るのに気づく。

 

「だぁあああああああああああああああああああああああ!!」

 

 その正体は菖蒲。漆月に向かってキックを食らわそうしたのだが、漆月達三人はそれを軽々と後ろに下がって避けた。

 

「っ!? 菖蒲ちゃん待って!! その子達がどんなのかも分からないんだよ!! もっと慎重に!!」

 

「だぁああああ!! はぁあああ!! がぁあああああああ!!」

 

「ダメだぁ~!! 菖蒲ちゃん全然聞こえてないこっちの話!?」

 

「あぁもう!! あの葛城先輩バカ!!」

 

 菖蒲の行動に気付いて飛鳥が止めようと声を掛けるが、菖蒲には全く聞こえておらず、それを見て頭を抱えながら涙目になる雲雀と頭を掻き乱す風魔。

 

「おぉおぉ凄い殺気だね。でもそんなに殺気出しても、一発も当たらなきゃ意味ないよ?」

 

「煩い!! かつ姉様をどうした!! 返してください!! 今すぐに!!」

 

 菖蒲のラッシュ攻撃を軽々と避ける漆月の挑発にも反応したせいか、菖蒲の怒りは更に強くなっていき、完全に冷静さを忘れてしまっていた。

 

「だらしゃああああああああああああああああああ!!」

 

「ハァ……しょうがないか。そんなに言うなら、」

「合わせてあげる。」

 

 菖蒲の右ストレートが放たれると、それを避けながら漆月が再び指を鳴らした次の瞬間、

 

「がぁああ!!」

 

「菖蒲ちゃん!!」

 

「まさか、新手!!」

 

 何者かに腹を思い切り蹴られた菖蒲が遠くに吹っ飛んでしまい、それに驚いた雲雀と飛鳥達はその新手らしき敵を見ようと振り返った。

 

「………え?」

 

「…………嘘?」

 

「バ、バカな………」

 

 その敵を見つけた飛鳥だったが、その姿を見て開いた口が塞がらない程に驚き、雲雀と柳生も、動揺を隠せずにいた。

 

「ね、ねぇ。あ、あの人って。」

 

「ま、まさか………」

 

 風魔と土方も驚愕したその敵の姿は黒に染まったYシャツに赤のネクタイとリボン、黒一色に染まった半ズボンのジーパンと半そで破ったジャケットを身に付けているもののその姿を、飛鳥達は見間違える事は無かった。

  その蹴り姿、その黒金の具足、そしてその顔を、見間違える事は無かった。

 一週間前、破忍討伐に行って以来行方不明になり、ずっと帰りを待ち続けていた……。

 

「せっかくだし、紹介するよ。私達の新しい仲間、元半蔵学院の……」

 

「葛城だよ。」

 

 半蔵学院選抜メンバー三年、葛城が帰って来た。もっとも望んでいなかった、いや考えもしなかった、破忍の仲間として。

 

「かつ……姉?」

 

「何で……何でこんな、」

 

「い、一体何がどうなって……」

 

「ね、ねぇアレ、偽物とかだよね? 私達を惑わす為に誰かが変装したって言う……」

 

「そ、そう願いたいのですが……」

 

 破忍の仲間として現れた葛城を見て飛鳥と雲雀と柳生は動揺し、風魔と土方はあの葛城が偽物だと思おうとしていた。

 

「……に……決まってます。」

 

「!? 菖蒲ちゃん!!」

 

「かつ姉様が私を、私達を裏切るなんてそんなの……嘘に決まってるでしょうがぁあああああああああああああ!!」

 

 そんな中、立ち上がった菖蒲に風魔が気づいたかと思えば、菖蒲は全速力で漆月に向かって殴りかかろうとしたが、それは遮られてしまう。

 

「なぁ!?」

 

「……相変わらず、あたいの事になると落ち着きねぇな。菖蒲。」

 

 遮ったのは葛城の具足が履かれた足で、菖蒲に声かけたその口調にはかつてのような明るくて元気さは無く、暗く冷めきった口調だった。

 

「……本当に、かつ姉様……何ですか?」

 

「……だったら、どうするんだ?」

 

「っ!? 嘘、ですよね? 嘘だって……嘘だって言ってください!! じゃないと菖蒲っ!?」

 

 葛城の反応を見て、この葛城が本物だと確信してしまうが、それでも嘘だと信じ続けようとした菖蒲だったがその直後、菖蒲は葛城の回し蹴りを顔に食らってしまう。

 

「……クロスパンツァー。」

 

「がぁ!? がぁああ!? あぁあああああああああああああああ!!」

 

 そのまま葛城は菖蒲に向かって秘伝忍法「クロスパンツァー」を繰り出す。

 何回もの回し蹴りを食らわした葛城は、トドメのかかと落としを菖蒲に当て、そのまま地面に倒れ伏せた。

 

「菖蒲ちゃん!!」

 

「い、今のは完全に、葛城先輩の……」

 

「じゃあ、あの人はやっぱり……」

 

 技を食らい気を失ってしまった菖蒲を見て飛鳥が叫び、葛城の秘伝忍法を見て本物だと確信してした風魔と土方が再び動揺する中、葛城は柳生を見つめた。

 

「……葛城、お前……っ!?」

 

 葛城を見て柳生が呟いたその瞬間、葛城は柳生に向かって走り出して咄嗟に柳生は傘で技を防ごうとしたが、葛城は柳生の左下に廻り込んだかと思えば、そのまま柳生の左わき腹に蹴りを食らわした。

 

「がぁあああ!?」

 

「柳生ちゃ!? あがぁあ!?」

 

 もの凄く力の入ったケリをモロに食らった柳生を見て助けに向かおうとした雲雀だったが、葛城はすぐさま雲雀の元まで向かい、そのまま膝蹴りを食らわした。

 

「雲雀ちゃんって!? わぁああ!?」

 

「危ない!!」

 

 その光景を見て風魔と土方が驚いたのもつかの間、葛城は柳生と雲雀を風魔と土方が立っていた場所まで投げ飛ばし、それに気付いた風魔と土方はすぐさま二人をキャッチしようした次の瞬間。

 

『っ!?』

 

「……トルネード、シュピンゲル。」

 

『うわぁあああああああああああああああああああああああああ!!』

 

 葛城は素早い速さで柳生と雲雀、そして風魔と土方の真ん中に立ってすぐに両手を地面に付け、そのまま秘伝忍法「トルネードシュピンゲル」を四人に向けて発動し、その龍が起こした様な竜巻に巻き込まれてしまった柳生と雲雀と風魔と土方の忍装束は瞬く間に至る所が破れて行き、そのまま地面に向かって頭から落ちて行った。

 

「……………」

 

 飛鳥はその光景を見て立ち尽くしてしまう。あの葛城が、セクハラばっかりするけど仲間思いで情に熱かったあの葛城が、その仲間をいとも簡単にボロボロに倒してしまった事が、飛鳥にとって信じられない事だったからだ。

 

「……次はオメェだ。飛鳥。」

 

「っ!?」

 

 葛城の冷たい視線と言葉を見て、思わず身体を震わせてしまう飛鳥。

 今の葛城は本気だ。本気で私達を潰そうとしている。

 そんな事わかっていた飛鳥であるが、仲間であると同時に頼りになる先輩である葛城に対してどうすれば良いかと言う迷いと、先ほどの戦いを見てからの恐怖心が、飛鳥の戦意を失わせていった。

 

(……無理だ。今のかつ姉に勝てるなんて……でも、このまま立つくしてばっかり居てもやられるだけだ!! だったら……だったらぁ!!)

「うわぁああああああああああああああああ!! 秘伝忍法!! 二刀繚斬!!」

 

 だが飛鳥は、襲い来る恐れを打ち消す様に叫びながら秘伝忍法「二刀繚斬」を発動し、葛城に向かって斬りかかった。

 

「なぁ!?」

 

「甘いんだよ、飛鳥。」

 

 だがその時には既に葛城の姿はそこに無く、秘伝忍法が空振りで終わった事に驚く飛鳥が驚いたのもつかの間、すぐ近くから葛城の声が耳元で聞こえかと思えば……

 

「っ!? がああぁあ!!」

 

 葛城の両足を使った連続蹴りが飛鳥に直撃し、その風を纏った蹴りで飛鳥を空中に蹴り飛ばした次の瞬間、

 

「絶・秘伝忍法……デッドスクリュードラゴン!!」

 

「あ゛ぁああああああああああああああああああああ!!」

 

 葛城の「デッドスクリュードラゴン」が炸裂し、昇竜する龍の一撃を食らってしまった飛鳥は悲鳴を上げ、そのまま地面に落ちてしまった。

 

「……………」

 

 地面に落ち、気を失いかけている飛鳥を見下げながら葛城は、トドメを刺そうと飛鳥に近付くのだが、それを止める者がいた。

 

「はい葛城ストーップ。」

 

 それは意外にも漆月だった。漆月は転界に残った妖魔の回収を任せながら葛城に近付いて来ていた。

 

「今日の所はこれくらいにしよう。今回は半蔵学院に挨拶がてら実力を試す&葛城の紹介をしに来ただけだしさ。あぁ心配しないで。ちゃんと半蔵学院の、飛鳥ちゃんの相手はちゃんとするからさ。何せ……」

「飛鳥ちゃんは最後の、お・た・の・し・み何だから。」

 

 葛城にそう話した漆月は転界が出現させた、転異空間に入って行き、闇と転界もそれに続いた。

 

「………?」

 

 葛城も三人に続こうとしたのだが足を何者かに握られる感触を感じ、ふと足元を見ると、足を握っていたのは飛鳥だった。

 

「……どうして………どうしてなの……答えてよ、」

「答えてよ!? かつ姉ぇえ!!」

 

「………っ!!」

 

「がぁ!!」

 

 飛鳥は涙を流しながら葛城に問いだそうとした。だが葛城は答えもせずにその手を足で払い、飛鳥の脇腹に蹴りを入れた。

 

「……………」

 

 完全に気を失った飛鳥を確認した葛城はふと、半蔵学院を見つめた。まるで今まで世話になった学院に別れを告げるように見つめた葛城は振り返り、半蔵学院を去って行った。

 

 

「はぁ~結局今日も収穫無しか。」

 

「どうするんや? このまんま調べても正直時間の無駄やで?」

 

「確かに。これならバイトのシフトを増やしてそっちの方を優先にした方が得策だわ。」

 

「とりあえず帰ろう。何か一雨来そうだし。」

 

 結局今日も蒼志の事に関しては何も分からずじまいだった焔紅蓮隊の面々は、路地裏を通ってアジトに帰ろうとしていた。

 

「………んぅ?」

 

「どうしたんだ詠?」

 

「いえ……あそこから人が近づいて来ると思っただけで………」

 

 そんな中今だに斑鳩の事を考えていた詠がふと前を見ると、目の前に人が近づいて来たのに気付く。

 焔にその事を話しながらその人物を見た詠は、その人物の顔が見えてくる内に目を見開かせた。

 

「んぅ? あいつは……」

 

「え?……嘘。」

 

「もしかして……」

 

 どんどん近付いて来る人物の顔が見えてくる内に日影と未来と春花も驚き、焔も同様だった。

 その人物は、一週間前の破忍討伐作戦以降行方不明だった……

 

「お久しぶりですね……紅蓮隊の皆さん。」

 

「い、斑鳩!?」

 

 半蔵学院選抜メンバー三年の斑鳩だった。

 

「斑鳩さん!! 無事だったんですか!? 今まで、今までどうしてたんですか!?」

 

「詠お姉ちゃん落ち着いて!? それに完全に無事だったってわけじゃないでしょこれ!?」

 

「全身包帯まみれやし装束もボロボロ。これで無事だったとは、とてもやないが言いきれんわ。」

 

 久方ぶりに会えた斑鳩に歓喜の声を上げる詠を落ち着かせようとする未来と日影は、今の斑鳩の姿を見て返す言葉も無かった。

 忍装束は至る所がボロボロに破れており、胸元の谷間部分は丸見えで右袖に至っては完全に無くなっていた。

 身体の方も至る所に包帯が雑に巻かれて右目も包帯で隠れていて、左目は何処か、虚ろな目をしていた。

 

「これは……とてもじゃないけど穏やかじゃないわね。」

 

「あぁ。すぐにちゃんと治療した方が良いな。春花は先にアジトに戻って手術の準備を。私は飛鳥に、」

 

「……焔さん。」

 

 そんな斑鳩を見て春花と話した焔は、急ぎ飛鳥達の元に向かおうとしたのだが、斑鳩がそれを呼び止めた。

 

「……焔さん、皆さんは今、蒼志の事を調べてるんでしたよね?」

 

「え……あぁそうだが。どうしてそれを?」

 

「……単刀直入に言います。」

 

 斑鳩の言葉に首を傾げた焔だったが、斑鳩は構う事無く話を続けると……

 

「これ以上、蒼志の事を調べるのはやめてください。それと……飛鳥さん達にこう伝えて貰えますか?」

「もう……私の事は、忘れてくださいと。」

 

「……はぁ? それどういう意味っておい!?」

 

「斑鳩さん!?」

 

 斑鳩の言葉を聞き、思わず間抜けな声を上げた焔は次の瞬間、すぐさま去ろうとした斑鳩に詠と共に声を掛けて止めようとしたが遅く、斑鳩は一目散に去って行った。

 

「……なんだったのかしら? 今の。」

 

「分からないけど、何時もの斑鳩じゃ無かった気がする。」

 

「せやな。一体何が……詠さん?」

 

 そんな斑鳩を見て春花と未来も疑問を浮かべる中、日影は様子がおかしい詠に気付いてたかと思えば、

 

「くぅ!?」

 

「なぁ!? おい詠!? お前まさか、待って詠!? 待ってって!?」

 

 斑鳩を追いかけるように行ってしまう詠を呼び止めようとした焔だったが、詠にはまったく聞こえておらず、焔達はただただ見るしか出来なかった。

 

「詠お姉ちゃん。ど、どうしよう焔!?」

 

「ひとまずは、雲雀達の所にこの事を教えた方が良いかもね。」

 

「ぬぅう……だぁあああもぉおお!! だったら早く行くぞ!?」

 

 未来と春花の話を聞いた焔は、苛立ちを叫びながらも半蔵学院の方向を見、すぐさま半蔵学院に向かった。

 

「…………」

 

 そんな中、日影は詠が行った方向をしばらく見つめた後、遅れて焔達の後を追った。

 

 

「ふぅ、今日の所はこんな所でしょうか?」

 

 その頃月閃女学館野外訓練場では、今日の修業を終えた夜桜が額から出た汗を拭いながら言い、夜桜の下では四季と美野里がぐったりとしていた。

 

「ぬぇ~、今日は一段ときつかったし。」

 

「美野里もぉ~動けないよぉ~!!」

 

「これくらいの修業で何ですか!? そんなに言うなら明日はもっと……」

 

「んぅ? どっしたの夜桜ちん?」

 

 情けない声を漏らす四季と美野里を見て夜桜が言いかけたその時、ある光景を見て言うのを止めた夜桜を見て四季が夜桜が見ていた方を見ると、そこには一匹の大きな狼、同じ仲間の叢の忍犬の大五郎だった。

 

「嘘!? あれってむらっちの大五郎じゃん!?」

 

「本当だ!! ってちょっと待って!! 大五郎の背中に乗ってるのってもしかして……」

 

 大五郎を見て四季が驚いてると、美野里は大五郎の背中に乗っていた人に気付くと、その人はぐったりと倒れ込んだまま地面に落ちた。そしてその人物は……

 

「叢!?」

「むらっち!?」

「叢ちゃん!?」

 

 一週間前から雪泉と同じく行方不明だった叢だった。

 

――――

 

「ちょっと紫!? 本当にこの先から忌夢の匂いがするの!?」

 

「……間違いない……この匂いはお姉ちゃんの……でもこの匂いは……い、急がないと!?」

 

 所変わって蛇女子学園。その学園内にある林の中を通り抜ける両備は先を急いでいた紫に聞くと、紫は答えながら更に急いでいた。

 「あっちから……お姉ちゃんの匂いがする。」そう言いながら急いで向かっていた紫の表情からは、何時になく必死の表情が露わになっていた。

 

「ね、ねぇ両備ちゃん!? 紫ちゅんの言ってる事って本当かな?」

 

「紫の嗅覚は雅緋のお墨付きだからそれは間違いないはずよ!! でもあんな必死な紫……嫌な予感しかしないわね。」

 

 遅れて来た両奈の質問に答えながら両備は紫の後を追うと、動きを止めていた紫と合流した。

 

「あぁ……あぁああああ……あぁ…………」

 

「ど、どうしたのよ紫って……」

 

「え……これって……」

 

 悲痛の声を上げかけている紫が見ていたのを見た両備と両奈も出る言葉を失っていた。

 確かにそこに忌夢は居た。だが見つけたのは……

 

「お姉ちゃん!!」

「忌夢!!」

「忌夢ちゃん!!」

 

 木にもたれ倒れていた、瀕死の重傷の忌夢だった。

 

――――

 

「叢ちゃん!! 叢ちゃんしっかりして!?」

 

「ちょ、何なのこれ……忍装束どころか身体もボロボロ何だけど……」

 

「と、とにかく医務室に運ばんと!?」

 

 忌夢と同じように瀕死の重傷で帰って来た叢を見て、声を掛ける美野里の後ろで見ていた四季は絶句していた。

 ただでさえ露出の多い忍装束は大破されて身体もボロボロ。大事な般若のお面も半分以上割れていた。

 そんな叢を見て動揺しながらも、急ぎ医務室に運ぼうした夜桜だったが、

 

「っ!? む、叢……」

 

 それを止めたのは、目を覚ました叢だった。

 

――――

 

「お姉ちゃん!! お姉ちゃんいや!! 死んじゃ嫌だ!!」

 

「紫落ち着いて!! 両奈!! 早く救護班を呼んで来て!! 非常事態だからふざけ無しで頼むわよ!!」

 

「う、うん分かった!!」

 

 忌夢も同じように酷い状態だった。

 忍装束も肉体もボロボロ、眼鏡に関しては完全にレンズが壊れていた。

 そんな状態で気を失っていた忌夢を目の辺りにし、涙を流しながら叫び続ける紫を落ち着かせながら、両備は両奈に救護班の要請を頼むと、

 

「う、うぅ……」

 

 目を覚ましかけた忌夢を見て紫と両備は近付いた。

 

――――

 

「叢!? しっかりすんじゃ!? 今救護係を呼んで来るから!?」

 

「あ、ありが……とう……そ、それよりも……話さないと……いけな……事が……うぅ!?」

 

「何じゃ!? 何が言いたいんじゃ!?」

 

 夜桜に上半身を起こされながら言葉を発した叢の発言を聞こうとする夜桜。

 

――――

 

「紫……それに両備か。くぅ!! 時間がない、急いで……話すぞ。」

 

「何よ!? 何を話すのよ!?」

 

 今だやって来る痛みに耐えながら何かを伝えようとする忌夢の言葉を聞こうとする両備。そして……

 

――――

 

「急いで……破忍を何とか……何とかしてください……このままだとゆ、雪泉が………」

 

――――

 

「早く……破忍を止めてくれ……このままだと……このままだと雅緋が……

 

――――

 

『殺される。』

 

――――

 

 その事を叢は夜桜達に、忌夢は両備達にそう伝えた後再び気を失い、雪泉と雅緋が命の危機に瀕している事を知った夜桜達と両備達が状況に追いつけないでいると、次第に空から雨が降り出した。

 

 

「な……何だよ……これ。」

 

 大量の雨が降り続く空の下、半蔵学院に着いた焔達だったが、その半蔵学院の運動場で見た光景を見て驚きを隠せずにいた。

 無理もない。半蔵学院選抜メンバーでライバルと言っても良い飛鳥と雲雀と柳生、補欠メンバーである程度は知っている風魔と土方と菖蒲、其の六人が運動場で気を失っており、雨に打たれていたからだ。

 

「酷い……一体誰がこんな……」

 

「……とにかく今は、」

 

「分かってる!! 日影と補欠組を、未来と春花は柳生と雲雀を頼む!!」

 

「分かったわ!!」

 

 未来と日影の話を聞いた焔は動揺しながらも、春花達に雲雀と柳生の救護をお願いした後、焔は飛鳥の元まで駆け寄った。

 

「飛鳥!? おいしっかりしろ!? 何があった……返事ぐらいしろ!! 飛鳥!?」

 

「………」

 

 飛鳥を抱いて大きな声で問う焔。その飛鳥の頬に雨が当たり流れ落ちると、その雨粒と同時に涙が流れて、雨粒と重なりながら落ちて行った。

 

 

「たっだいまぁ~!!」

 

「あら漆月ちゃん? お帰りなさい。フフッ、何だかご機嫌じゃない?」

 

 同時刻、破忍のアジトに帰って来た漆月が向かった先にある部屋。

 そこに居たのはボサボサの金髪にボンテージに近い露出の多過ぎる紫の服にその上に着られた真っ赤な白衣の忍。名を拷楽と言いその名の通り、拷問を楽しむ忍である。

 

「まぁねぇ。そう言うそっちもご機嫌じゃない?」

 

「そりゃあぁそうよぉ!! なんせこっちはこんな……」

「素敵な拷問を続けているのだから!!」

 

 質問に答えた漆月の質問に拷楽は、紫以上に大きな胸を揺らしながら両手を上げ、二つの部屋を見せた。

 

「んぅ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」

 

「くぅ!!」

 

 その二つの部屋には、何十度か分からない温度のサウナ部屋に鎖で繋がられている雪泉と、牢屋の天井から伸びる鎖に全身の動きを封じられている雅緋の姿があった。

 

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