閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆 作:XW
「……まずいね。」
「あぁ、まずいな。」
「まずいわね。」
「まずいのぉ……全然、」
『作戦が思いつかない。』
飛鳥の実家でもある寿司屋で再び集まった半蔵、紅蓮隊、月閃、蛇女の面々。
そのリーダー格である飛鳥と焔と両備と夜桜は一つのテーブルを囲みながら、そうため息混じりに言った。
現在半蔵、紅蓮隊、月閃、蛇女の面々は、忍本部を乗っ取った漆月率いる破忍を倒す為の作戦を立てようとしてたのだが、中々良い案が出ず、八方塞がり状態に陥っていた。
「葛城から貰った破忍の情報、そして忍本部内部の大まかな地図。これだけ揃ってるのに……作戦の一つも立てられないなんてなぁ。」
「まぁ私達、殆どロクに作戦立てて忍務やった方が少ないしね。」
「それ言ったらお終いですよ。」
テーブルに置かれた様々な資料を手にしながら焔が呟いた後、両備がため息混じりに言った事に夜桜がツッコんだ。
「ハァ……とは言え、今回は今まで通り行って良い相手じゃない。作戦立てて行かないと、最悪全員破忍負けるぞ?」
「柳生ちんの言う通りだね。それに……今回は負けられないよ?」
そんな光景を見てため息を付いた柳生が言った事に四季も同意し、他の面々も頷いた。
確かに、今回は今までとは違う。
忍社会の未来を掛けた、最大級の忍務と言っても良い程だからだ。
「問題は……アイツらがどう動くかが問題だな。奴らの事だ、まだ何か隠している事がある可能性も高い。」
「葛城、何か他に知らんか?」
「あいにくさっき渡したのが限界だ。今回の乗っ取りだって、あたいは知らなかったし。」
顎に手を添えながら忌夢が言った言葉を聞いた日影は葛城に聞くが、葛城はそう答えながら頭を掻くしかなかった。
「乗っ取りの事すら知らされてないって事は……」
「葛城……あんまり信用されてなかったんじゃ……」
「おいそこぉ!? 聞こえるように言うな!? ほんの少し傷つくだろうが!?」
そんな葛城の言葉を聞いて、総司と未来が聞こえるように言ったのを聞いて、葛城は涙目でツッコんだ。
自分から抜けたとは言え、一時的に破忍の仲間になったせいか、ほんの少し愛着はあるらしい。
「っでどうするの!? 何か良い作戦考えないと、皆やられちゃうよ!?」
「分かってるわよそんな事!? でもマシな作戦が思いつかないの!?」
美野里が言った事に対して両備はツッコむが、だからと言って現状が変わるわけがない。
今までまともに作戦を立てて戦う事が少なかった飛鳥達にとって、今の状況は少し難儀だった。
「…………あの人なら、何て言うでしょうか?」
「…………斑鳩か?」
そんな中、詠が呟いた事を聞いて焔が聞くと、詠は静かに頷いた。
確かに、この場に斑鳩が居れば、何か良い案を考えてくれるかもしれない。
半蔵と紅蓮隊の面々は、特にそう言った考えが強かった。
「今いない奴の事考えてもしょうがないでしょ!? 今いるメンバーでどうすべきか考えなさいよ!?」
「今いるメンバー………あぁ!!」
そんな半蔵と紅蓮隊の面々に両備がツッコむと、そのツッコミを聞いた神裂が何かを思い出したかのように立ち上がった。
「そう言えば今朝方、幸村が復帰すると言う話を聞いて、今度の戦いにも参加するそうです。」
「っ!? そ、それは本当か!?」
「はい、本当はすぐにでも参加したかったらしいのですが、色々ドタバタしていたらしくて………」
神裂の話を聞いて、夜桜はホッと胸をおろした。
状況が状況とは言え、自分が幸村を傷つけてしまった事に対して、ずっと気に掛けていたからだ。
最悪命に別状もなく、既に怪我の方も治っていたのだが、中等部が半壊した事もあって、復帰が遅れたらしい。
「良かったね、夜桜ちん。」
「………うん。」
そんな夜桜を見て四季が肩を叩きながら言い、それに夜桜が頷いていると、寿司屋の出入り口が開く音が聞こえた。
「まったく……すっかり善忍と悪忍と抜忍の集合場所になってるな、ここは。」
「な、奈楽ちゃん!?」
出入り口の方を見ると、奈楽が言いながら入って来るのを見え、奈楽の姿を見て飛鳥は驚いた。
「何だ? 何かまた新しい情報でも教えに来たのか?」
「いや……今回はお前達に伝えなきゃいけないことがあってやって来た。」
焔の質問に対して奈楽は椅子に座りながら答え、その伝えなきゃいけない事を口にした。
「今度の戦い、大導寺と鈴音、そして私も加勢する事にした。」
「えぇえ!? それ本当ですか!?」
「この状況で嘘の情報を教えるのは敵ぐらいだ。これ以上、奴らを野放しにするのも危険だしな。」
奈楽から話を聞いて、風魔だけでなく全員が驚いた。
奈楽だけでなく、実力者の大導寺と鈴音が加勢してくれる。
今の飛鳥達にとって、これ以上ない朗報だった。
「大導寺と鈴音も、当日には駆けつけるらしい。っで、何か作戦は思いついたのか?」
『あ………』
そう言った奈楽の話を聞いて、大事な事を思い出した飛鳥達は、再び頭を悩ませた。
何せ忍本部で待っている破忍の決着は明日、正確には明日の夜明け前だ。
にもかかわらず作戦の一つも出来ていないのは、かなり不味い状況だ。
「う~~~~ん………っ!! 良し、だったらこうしよう!!」
そんな中、頭を悩ませていた飛鳥は何か閃いたのか、目を見開きながら言ったのを聞いて焔達が飛鳥を見る中、飛鳥が発したのは……
「正面突破で突入!! 何か罠があったらその場で対応!! これで行こう!!」
『ズコォオオオオオオオ!!』
作戦でも何でもない物だった。
焔達はそれを聞いて、全員もれなくズッコケた。
「痛たたたたたた、思いっきりコケちゃいました。」
「まぁでも、それが今までの私達っぽいかな?」
起き上がりながら芭蕉が言った後、さっきの飛鳥の言葉を聞いて雲雀は少し笑みを浮かべながら呟いた。
ほんの少しだが、何時もの飛鳥が戻って来たのが嬉しいのだろう。
「まったく……そんな事で一人前の忍になれるのか? 忍だったらもう少し忍べ。」
「何時も自分の美しさとかで目立とうしてる感じのあなたにだけは言われたくないですけどね。」
飛鳥に呆れたのか、頭を掻きながら言った総司に対して、千歳は冷静にツッコんだ。
「アハハハハ…あ!! それじゃあ私、雪泉ちゃんと雅緋ちゃんの見舞いに行って来るね!!」
「あぁ飛鳥!? 私も行く!!」
そんな皆の態度を見て飛鳥は笑みを浮かべていると、雪泉と雅緋の見舞いに行く事を思い出して寿司屋を出、焔もその後を追った。
「……何だか飛鳥先輩、何時もの調子に戻って来た感じしませんか?」
「え? あぁ……まぁちょっとね。」
さっきの飛鳥を見てそう思ったのか、菖蒲が風魔に聞くと、風魔は頬を少し掻きながら答えた。
風魔からして見れば、まだ本当の意味で戻って来て無い見たいらしい。
「フゥ……さて!! 儂らも準備と行きましょう!!」
そんな中、夜桜が手を強く叩きながら皆に言うと、各自それぞれその準備の為に行動に出るのだった。
――――
「そうですか……明日の夜明け前ですか。」
「うん、助っ人も来てくれるらしいから、心配しなくても大丈夫だよ!!」
雪泉と雅緋が居る病室にやって来た飛鳥と焔は、明日の事を二人に伝えた。
その事を聞いて雪泉が呟くと、心配させないように飛鳥はそう声を掛けた。
「出来る事なら私も参加したいところだが……この様ではな。」
「仕方ねぇよ。お前達の完治は結構時間掛かりそうだし、行けたとしても足手まといになるだけだしな。」
「事実とは言え、それを真っ向から言われると、流石にきついな。」
同じように聞いた雅緋が少し悔しそうに言った事に対し、焔は近くに置かれている雪泉と雅緋の巻物を見ながら呟き、焔の言葉に雅緋はそう言い返した。
雪泉と雅緋は拷楽の拷問で身体的にも精神的にもダメージが多く、更に闇の秘伝忍法「忍力呪縛」の染みが巻物全体に浸けられているせいで、秘伝忍法どころか忍転身すら出来ない状態になっている。
「ま!! 漆月の事は私達やお前の後輩達に任せて、お前はとりあえず、身体を直す事だけでも考えてろ!?」
「焔………そうだな、さっさと身体直して蛇女に戻って来いって両備にも言われてるからな、そうさせてもらおう。」
雅緋が焔に答える中、隣でその様子を見ていた雪泉の顔色は、今だ優れなかった。
「んぅ? どうした雪泉? って、まぁお前も家族同然の仲間の事は心配だろうが、」
「っ!? い、いえ!? ……いや、それもありますけど、私は少し、これからの事で不安になってて……」
雅緋の質問に雪泉は答えながら顔影を落とし、そんな雪泉を様子を見て、焔と雅緋は真剣な顔つきになる。
「例え……例え漆月達を止めれたとしても、それはこの忍社会の根本的な解決にはならないんじゃないでしょか? 元はと言えば今回の件は漆月も被害者に近くて、原因も忍による傲慢な考えが起こした様な物ですし・……」
「……下手をしたら、第二、第三の破忍が生まれるんじゃないか? そう考えているのか?」
雪泉の話を聞いて雅緋は聞き、雪泉は静かに頷いて答えた。
「私は……一体何を信じればいいんでしょうか? 自分のだけでなく、忍の正義ですら信じれらくなってしまった私は、一体どうしたら……」
雪泉は悲しげな目で言いながら、布団のシーツを強く握りしめた。
今まで信じていた自分の正義も真っ向から否定され、忍の正義すら汚れまみれになったものに見えるようになってしまった雪泉は、一体これからどうすれば良いか、何を信じれば良いか分からなくなってしまっていた。
「雪泉ちゃん……」
「え? あ、飛鳥さん?」
そんな雪泉に駆け寄った飛鳥は、優しく雪泉の手を握り、それに雪泉が驚いていると、飛鳥は雪泉に対してこう言った。
「私さ、ずっと考えてたんだ。何が忍の正義として正しいのか、何が正しくないとかって……でもさ、そう考えてる事が間違いだって気付いたんだ!!」
「え?」
飛鳥の言葉に雪泉が首を傾げていると、飛鳥は話続けた。
「忍の正義に……正解も不正解も無い。皆それぞれ、自分が信じる正義があって、刀も盾がある。だから、時にその正義がぶつかる時もあるんだよ。私たちだってそうでしょ?」
「あ………」
飛鳥の言葉を聞いて、ハッと気づく雪泉。
確かに、飛鳥達半蔵と、雪泉達月閃も最初は正義の考えた方の違いでぶつかった事もあったからだ。
だがぶつかった事で分かり合い、今に至るようになったのだ。
「だからさ!! 雪泉ちゃんは雪泉ちゃんが信じる正義を信じれば良いよ!! 例えそれが間違ってたら、私が全力で止めるからさ……だから元気出して!!」
「………飛鳥さん。」
飛鳥の言葉が届いたのか、雪泉は思わず涙を流した。
最初は対立し、戦った相手でも心を開く飛鳥。雪泉はその優しさに、再び救われたような気持ちだった。
「……はい、ありがとうございます、飛鳥さん。」
雪泉は涙を流し続けながらも、笑みを浮かべながら飛鳥に礼を言った。
そんな雪泉と飛鳥を見ていた雅緋と焔はと言うと……
「……ッフ、まぁでも、プリプリ言うのがお前の正義だ……ってのは勘弁してくれよ。流石の私も引く。」
「それはねぇだろ……ってか、何だプリプリの正義って?」
そう少し茶化しながら言った雅緋に対して焔がツッコみ、それを見た飛鳥と弓は……
『………プッ!! プっハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!』
「って!? 雅緋さん今さらっと、プリを侮辱しませんでしたか!? プリを侮辱したらプリに泣きますよ!!」
「泣くか!? そもそも何だプリって!? 表現が古いんだよ色々と!!」
「お前が言うな年長者!?」
「そ!! それは言うな!!」
「アハハハハハハハハハ!!」
「お前は笑い過ぎだ!!」
「飛鳥は笑い過ぎだ!!」
「飛鳥さんは笑い過ぎです!!」
「アハハハ!! ゴメンゴメン!!」
さっきの漫才を見て少し笑ったのだが、さっきの雅緋の言葉を思い出して雪泉は言い、それに対して雅緋がツッコんだ事に対して焔がツッコむと雅緋はツッコみ返し、そんな光景を見て笑い続ける飛鳥に対して、今度は三人同時にツッコんだ。
「まったく……ここが病院だって事忘れてませんか?」
「ま、しんみりするよりはマシなんじゃないの?」
そんな飛鳥達を見てやって来て早々呆れながら、夜桜と両備が話しかけた。
「夜桜さん、それに両備さんも。」
「何だ、お前達も見まいに来たのか?」
夜桜と両備を見て雪泉と雅緋はそう聞くが、どうやら二人がやって来たのはそうじゃ無いらしい。
「いや、二人の様子を見に来たのはそうですが、飛鳥さんと焔さんを呼びに来た次第で……」
「ほら、二人ともさっさと行くわよ!! 先に始まるわよ!!」
そう言って夜桜と両備は飛鳥と焔を呼び、呼ばれた飛鳥と焔は礼をした後、病室を後にした。
「………今回ばかりは、アイツらに頭が上がらんな。」
「………はい。」
四人が去ったのを確認した後、雅緋が言った事に対し、雪泉は静かに頷くのだった。