閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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30.束の間の休息。そして……

 

 病院近くにある広場。

 そこには夜桜と両備達が準備をしていた、肉や野菜と言った食材や飲み物が置かれていた。

 病院の院長の許可も取っており、ここでバーベキューをする事にしたらしい。

 こんな時にと思われがちだが、こんな時だからこそ最後の決戦であろう戦いに備える為、英気と士気を高める為に行うらしい。

 

「あ~ゴホン!! 不本意ながら、僕が乾杯の音頭を取らせてもらう。思えば今回お前達には………」

 

『乾ぱ~い!!』

 

 準備も終え、食べる前の乾杯の音頭を取ろうとした忌夢だったが、飛鳥や焔達、夜桜と両備達はその音頭も聞かずに乾杯し、最後まで言えなかった忌夢は、ほんの少し孤独感を感じた。

 

「……………」

 

「お姉ちゃん………」

 

「忌夢………」

 

 そんな忌夢を見かけた紫と叢は、そっと飲み物が入ったコップを忌夢に向けた。

 忌夢の妹である紫と同じ病室を過ごした叢には、今の忌夢は少し可哀想に見えたらしい。

 

「………か、乾杯。」

 

『乾杯。』

 

 二人を見て少し嬉しかったのか、忌夢は紫と叢と乾杯し、そのままコップに入った飲み物を口にするのだった。

 そんな三人も気にせず、飛鳥達は肉や野菜を焼いたりと、バーベキューを楽しんでいた。

 

「良いか。こう言うのはな、食うタイミングがあるんだよ。」

 

「え? あぁ……うん。」

 

 良い感じに焼けた肉を両備が取ろうとしたのを、そう言って一旦止める焔に少し戸惑う両備。

 そんな中、焔の隣に居た総司は、大きめな肉を取って口にした。

 

「って!! 言ってる傍からお前何勝手に取ってんだ!? しかも私が狙ってた!?」

 

「フン!! こう言うのは先手が勝つものだ。悔しかったら肉に名前でも書くか、自分で大きめの奴でも焼くんだな!?」

 

 それを見てツッコんだ焔に対して総司は言いながら、隣で肉を焼いてる菖蒲を見た。

 

「エヘヘヘヘ!! これは私の肉なので渡しませんよ!? あ、風魔ちゃんお皿!!」

 

「へい!!」

 

 菖蒲は笑みを浮かべながら言った後、風魔に皿を取らせに言った。

 

「んぅうう………」

 

「………ねぇ焔ちゃん? 忌夢ちゃんと紫ちゃんと叢ちゃんは何処に居るか知らない?」

 

「え? さぁ……んぅ? どうした夜桜?」

 

 そんな光景を見て悔しそうな顔を浮かべる焔に飛鳥が話しかけると、夜桜が飛鳥と焔の肩を軽く叩き、ある場所を指さした。

 

『………………』

 

「……何故に流しそうめん?」

 

「何か………寂しそうだな。」

 

「そうじゃな………」

 

 忌夢と紫と叢は隅っこら辺で、何故か流しそうめんをしており、それを見て何処か寂しそうに感じた飛鳥と焔と夜桜は、呟きながら見つめていた。

 

「………って!? お前何勝手に食ってんだ!?」

 

「んぅ?」

 

「んぅじゃねぇってか!? それも私が狙ってた肉だぞ!? よこせ!!」

 

「んぅあああ!! ちょ!? 止めなさいよみっともない!? この!?」

 

 そんな事も知らずに両備は焼けた肉を食べていると、ふと両備を見た焔にツッコまれると、その肉を無理やり取ろうした焔を離そうと、思い切り頭を叩くのだった。

 

「ハァ……いっつも肉、肉、言ってる癖に、余計な事してるから。」

 

「まったくね………っ!!」

 

 そんな光景を見て未来が呆れている隣で春花も呟きながら飲み物を取ろうとすると、春花はある物を見付けて目を見開いた。

 それは、準備の際に雲雀が使っていたであろうタオルだった。

 

「こ………これは、ひ、雲雀の……タオル!?」

(ぬ、拭いたい………これで汗を拭いたいいや………いっその事、)

 

(止めなさい!?)

 

(え……ぬぉ!?)

 

 それを見て声を少し震わせながら春花が考えていると、何処からか自分と同じ声が聞こえ、その声がした方を見ると、そこには何故か鎖で繋がれた小さな春花が居た。

 

(そんな事して見なさい………いつか雲雀に本当に嫌われるわよ!?)

 

(………で、でもぉ~、こんな機会………滅多にないし………)

 

(そうよ!! そうよ!!)

 

(え………ぬぇえ!?)

 

 天使と悪魔で言う所天使ポジの春花に言われ、ほんの少し本物春花が戸惑っていると、今度は悪魔ポジの、全身雲雀グッズに包まれた小さな春花を見つけ驚いた。

 

(雲雀はね、何時も頑張ってる私の為に、あえてここにタオル置いたのよ!! やったぁ!! アハハハハハハハハハ!! アハハハハハハハハハ!!)

 

(……………フン!!)

 

(キャ!!)

 

 そう雲雀の写真がプリントされた抱き枕を抱きながら笑う悪魔春花を見て決めたのか、春花は天使春花を思い切り叩き潰すと、そのままタオルを手に取った。

 

(それでは、舞い殉じて………遠慮なく!!)

 

 そう心中で礼をした春花は、タオルで汗を拭う処か、タオルに着いた匂いを嗅ぎ、思い切り嗅いだ春花は右腕で拳を作ると、その拳を上に突き上げて………

 

(………良い匂いだわ………)

 

 周りがお花畑に見える程に、その匂いを堪能していると、そのタオルの所有者でもある雲雀が通って来たのに気づいた。

 

「っ!? 雲雀あの、」

 

「ん?」

 

 雲雀を呼び止めて何故か礼を言おうとした春花だったが、その雲雀の手元には同じ柄のタオルが握られていた。

 

「お、同じタオル………じゃあこれは誰の!?」

 

 それを見て春花が混乱していると、さっき春花が嗅いだタオルを手にする者が居た。

 それは柳生で、しかもタオルにはしっかりと、柳生の名前が書かれていた。

 

「あんたのかい?! 良い匂いしてんじゃないわよ!?」

 

「………フッ!!」

 

「ぬ、ぬぅううううううううう!!」

 

 その名前を見てしまった春花がツッコみながらショックを受けているのを見て、勝ち誇った笑みを見せながらタオルを肩にかけた柳生に対し、春花は悔しさで頬を膨らませるのだった。

 

――――

 

「わぁあああキレイ!!」

 

「本当マジキレイ!! ねぇ写真撮って良い!?」

 

「良いよ!!」

 

「アチチチチチチチ!! もぉ~春花様!? 今日は激しいよぉ~!!」

 

「ちょっと嫌な気分が残ってね……明日にも支障来すから今の内に発散させなさい!!」

 

「ワォオオオオオオオオン!!」

 

「ちょっと二人共!? そんな花火の遊びは火傷しますよ!!」

 

 食事も終わり、美野里と四季と雲雀達は締めの花火を楽しんでいた。

 とは言っても、両奈や春花見たいに、いけない遊び方をしている者もいて、当然そう言った者は土方みたいなしっかり組に怒られていた。

 

「……………」

 

「どうしたんですか? 花火、もぉ良いですか?」

 

 そんな光景を見ながら、ほんの少し笑みを浮かべていた飛鳥を見かけたのか、夜桜は話しかけながら飛鳥の隣に座った。

 

「あぁ………いやね、何かこうやって楽しんでる皆を見るのが、久しぶりって思ってさ。」

 

「あぁ…………」

 

 飛鳥が言った事に夜桜も頷いた。

 確かにここ最近は色々と大変な事や出来事があった為、こうして皆……とは行かないが、楽しんでいるのは、本当に久方ぶりのようだった。

 

「やっぱりさ……こう言うのを見てると、この為に私は忍を目指してるんだって思うんだ。朝起きて、ご飯食べて、皆と過ごして、またご飯食べて、楽しい事して、そして寝る。そう言う日常を私は、護りたいって。」

 

「………そうですね、儂も、その為に忍を志したと思えます。」

 

 そんな久方ぶりの楽しい日常を楽しんでいる仲間達を見ながら飛鳥は言い、それに夜桜は賛同した。

 

「まったく……善忍って考えてる事と言えば殆どそれと似たようなばっか。本当、悪忍になって良かったと思うわ。」

 

 そんな二人を見かけて呆れていたのか、両備は頭を掻きながら飛鳥と夜桜の隣に座った。

 

「両備ちゃん………」

 

「じゃあ両備さんは、こんな日常は嫌いですか?」

 

「べっ!? 別に嫌いとは言ってないわよ!? 私もこう言うの……どっちかと言うと、ちょっと……ほんの少し………好きな方だし。」

 

 両備の態度を見て飛鳥と夜桜が呟くと、それに対して両備は顔を赤くしながらそっぽ向き、そう言いながら頷いた。

 

「…………あっ!! そうだ両備ちゃん!?」

 

「何よ……って、何その巻物?」

 

 そんな両備を見ていた飛鳥は何かを思い出しのか、慌てて胸辺りからある巻物を取り出し、それを振り向いた両備は見て聞いた。

 

「神楽ちゃんから預かってて、これを両備ちゃんに渡してって。」

 

「アイツが? 何で私に?」

 

「さぁ? 神楽ちゃんは、これが両備ちゃんを護るお守りだって事しか……」

 

 両備の質問に対して飛鳥は首を傾げながら答え、その話を聞いて怪しみながらも、両備はその巻物を手にした。

 

「……お守り、ねぇ。」

 

 そう呟きながら、両備はほんの少し汚れている巻物をじっと見つめていた。

 

――――

 

「え? 焔さんこれ………」

 

「………返す。」

 

 その頃、広場から離れた場所に移動した焔は、詠にある物を返した。

 それは詠を狂乱化させ、命まで奪えかねないあの黒い大剣だった。

 

「……で、でもこれは、」

 

「どうせ止めてもお前、コッソリ奪って無理にでも使おうとするだろ? そんなんだったらお前にここで返した方がまだマシだ。」

 

 戸惑う詠に対して、焔は頭を掻きながら答え、そのまま詠の顔を見て話し続けた。

 

「て言っても、そのまま返すと本当に死んでしまうからな。奈楽に頼んで、一日二分しか使えないように術を掛けてもらった。一度使えば、時間切れになるまで解除も出来ないし、解除されたらそれ以降しばらく使えなくしてる。」

 

「……………」

 

「だから………ここぞって時にしか使うな!? そう約束してくれるなら、コイツを返してやる。」

 

 焔の言葉を聞いていた詠は、胸近くで自身の両手を握りしめながら、この前の焔達を思い出す。

 自分の為に本気で怒った焔。自分を本気で心配してくれた日影。自分の為に本気で涙を流した未来。そして何も言わずとも、本気で自分の事を気に掛けていた春花。

 そんな自分の事を本気で思ってくれる焔紅蓮隊の仲間、家族を思い出した詠は、決意を新たにした。

 

「………分かりましたわ。この詠、必ず生きてそして………」

 

「皆も、斑鳩さんも助けて見せます!!」

 

 そう焔に決意を見せながら、詠は大剣の持ち手を握りしめるのだった。

 

「……フッ、お前、本当斑鳩の事好きだな。」

 

「なぁ!? そ……それは言わないで欲しいですわ!!」

 

 そんな詠を見て少し笑いながら焔は言い、それに詠は顔を赤くしながらツッコンだ。

 

――――

 

「…………ハァ!! ハァア!! ハァアアアア!!」

 

 同時刻、忍本部に置かれている訓練場では、蒼志が一人修業を行っていた。

 修行用にと用意してもらった人口妖魔を斬り伏せ行き、更に群がって来る人口妖魔相手には、蒼炎の斬撃を食らわした。

 

「秘伝忍法………獄狼炎!! 鬼火!!」

 

 最後の仕上げとして、秘伝忍法「獄狼炎・鬼火」を放った事で、訓練用の人口妖魔は全て倒されたのだった。

 

「フゥ………」

 

「良いねぇ良いねぇ、良い感じに仕上がって来てるねぇ~。」

 

 刀を鞘に仕舞いながら息を整えていると、漆月が蒼志に話しかけながらやって来た。

 手には蒼志に渡す用のタオルがあり、更に片方には水が入った水筒があった。

 

「……わざわざすいません。訓練場を使わせてもらって。」

 

「ふんぞり返ってるだけの幹部が、使うわけも無いのに名目上あるだけの訓練場だよ? 別に使っても構わないでしょ?」

 

「………それもそうですね。」

 

 漆月の話に納得しながら、蒼志は漆月から頂いた水筒に入った水を一気に飲み干し、掻いた汗もタオルで拭った。

 

「他の皆は?」

 

「ここにあった大浴場でのんびりしてるよ。しっかし幹部の奴ら、若者には偉そうに嫌な命令ばっか出す癖に、自分達は贅沢三昧ですかって感じだね?」

 

「確かに………漆月がぶっ壊したくなる気持ちも分かります。」

 

 漆月の言う通り、ここ忍本部には幹部クラスの忍しか使えないようなVIPルームが多数あって、自分達見たいな忍には無茶や嫌な命令をする癖に、幹部の殆どはここで有意義にしているだけで何もしない幹部の顔を浮かべた漆月と蒼志は、苦虫を噛んだような顔をした。

 

「………いよいよ、ですね。」

 

「そうだね………あ!! そう言えばあの子来るかな?」

 

「あの子?」

 

「決まってるでしょ? 君の大嫌いなお姉ちゃんの………」

「斑鳩ちゃん!!」

 

 蒼志の問いかけに対して漆月は頷くと、そのまま漆月が言った事に対して蒼志は一瞬首を傾げたが、その疑問もすぐに解決した。

 

「………そうでもしないと、来てくれないと困りますよ。私の復讐が果たせないんですから。」

 

 蒼志は漆月に対してタオルを首にかけながら答え、その時の蒼志の顔は、不気味な笑みを浮かべていた。

 

「じゃあ私も、風呂に入って来ますので。」

 

「はいよぉ~、ごゆっくり~。」

 

 そう言って訓練場を後にした蒼志の言葉に漆月は答えた。

 あんな蒼志の見たにも関わらず不安がる処か、何処か安心したような表情だった。

 

「………本当、そうじゃないと蒼志ちゃん、救われないもんね。」

 

 そう天井を見上げながら呟いた後、漆月も後を追うようにして訓練場を後にした。

 

――――

 

「………………」

 

 その頃その斑鳩はと言うと、河原の隅で焚火をしており、その火をじっと見つめながら横に転がり、そのまま空を見上げた。

 

「……………………」

 

 身体だけでなく、心までもがボロボロになっていた斑鳩は、生気も何も感じない表情をしながら空を、月明りが明るい夜空を見上げていた。

 それはまるで、己の死を待っているかのようだった。

 

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