閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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31.候補生たちの覚悟

 

 翌日……とは言ってもまだ日も出ていない夜の街。

 街には大規模な忍結界が張られており、その中心となっている忍本部前には、大量の人口妖魔が群がっていた。

 その人口妖魔の目の前に現れたのは………

 飛鳥、葛城、柳生、雲雀、風魔、土方、菖蒲の半蔵学院。

 焔、詠、日影、春花、未来の焔紅蓮隊。

 夜桜、叢、四季、美野里、神裂、幸村、園子の月閃女子学館。

 両備、紫、忌夢、両奈、総司、芭蕉、千歳の秘立蛇女子学園。

 そして巫神楽の奈楽。

 漆月達破忍を止める為に立ち上がった、総勢二十七人の忍少女達だった。

 ちなみに大導寺と鈴音は遅れてはいるものの、約束通り来てくれるようだ。

 

〔おぉおぉ~!! まさか真正面とはねぇ~!!〕

 

 その様子を何処かの隠しカメラから映し出されたモニターで見ていた漆月は、近くに設置されたアナウンスの装置を使って飛鳥達に話しかけて来た。

 

「お前達に、忍んで来るってのも失礼だと思っただけだ。」

 

〔ふ~ん、まぁ良いや!! とは言っても、私の所まで来るのは結構厳しいかもよ? それでも来るって言うなら………ここまで来て見なよ。〕

 

 その声に対して焔が答えると、それを聞いた漆月は挑発するように言うが、当然飛鳥達は誰一人臆する事無く、逃げる者も誰一人としていなかった。

 

「………フン!! 上等じゃないの!? その挑発、受けてやるわ!?」

 

「皆……行くよ!!」

 

 さっきの挑発に対して両備が言った直後、飛鳥の掛け声と共に全員巻物を手にした次の瞬間……

 

『忍!! 転身!!』

 

 飛鳥達は同時に忍転身を行い、戦闘態勢を整えた。

 それを見ていた人口妖魔達は、飛鳥達に倒そうと襲い掛かるが、今の飛鳥達にとって敵ではなかった。

 

『ハァアアアアアアアア……ハァアア!!』

 

 飛鳥と焔と夜桜と両備達は得物に力を加えると、その得物を地面に叩きつけ、その衝撃によって人口妖魔は一掃された。

 そして飛鳥達は残った人口妖魔を薙ぎ払いながら、忍本部へと乗り込んで行った。

 

――――

 

「…………始まったか。」

 

 その様子を観ていた漆月は、ペンダントを握りしめながら呟き、覚悟を決めたように眼をつぶった。

 

「………皆、頼んだよ。」

 

 そう呟いた漆月の言葉には何処か、破忍の仲間達を案じる思いがこもっているように見えた。

 

――――

 

「ハァアア!!」

 

 妨害しようとする人口妖魔を斬り捨てながら、忍本部内部に乗り込んだ飛鳥達。

 入った場所はかなり広く、数人以上入れる程だった。

 

「ねぇ!? 漆月は何処にいるかな!?」

 

「地図を見る限り、恐らく最上階だろう。」

 

「確かに、ラスボスは常に最上階の最終部屋に居るのが決まりだからな。」

 

「何の決まりかは分からないけど、じゃあ早くその最上階に……」

 

 雲雀と奈楽と叢の話を聞いた後、飛鳥が先を急ごうとしたその時だった。

 

「っ!?」

 

「飛鳥!?」

 

「今のは!?」

 

 飛鳥に向かって何者かが斬りかかって来、それに気づいた飛鳥はギリギリの距離で後ろに飛び避けた。

 それを見ていた焔と夜桜達が前を見ると、妨害したのは予想しなかった二人だった。

 

「お……お主らは、」

 

「ゾディアック星導会の麗王に……遠野天狗ノ忍衆の夕焼!?」

 

 目の前に立っていたのは、漆月達に敗れ、捕らわれたはずの麗王と夕焼だった。

 二人が何故こんな所に、しかも飛鳥達の敵として目の前に立っている事に驚く夜桜と両備達だったが、敵側はそんな余裕すら与えなかった。

 

「………二人だけではないようだ。」

 

 奈楽が周囲の気配に気付いて言い、飛鳥達も周囲を見渡すと、いつの間にか敵側に囲まれていた。

 しかもその敵は破忍の忍ではなく、麗王の仲間である銀嶺、夕焼の仲間である牛丸に深里に九魅。

 志野塚工業高校の飛彗と元親、薄桜女学院の胡蝶と言った、破忍に敗れ、捕らわれたはずの忍学生だった。

 

「な……何で? 何で皆、漆月の味方になってるの?」

 

「……闇の忍術のせいだな。」

 

 その光景を見て美野里が困惑していると、一時期破忍側に付いていた葛城が語った。

 

「忌夢や叢も知ってるだろう? 闇は忍の力を封じたりとか、呪術のような忍術を使ってる。こいつらも、闇の忍術で洗脳されてるんだ。」

 

「そ、それは本当か!?」

 

「あぁ……それに前に漆月と闇が、悲願が達成される前に一仕事してもらうって言ってたのも聞いていた。でもまさか、その一仕事がこれとはな。」

 

 葛城の話を聞き、柳生達は驚いていた。

 よく見れば麗王も夕焼も、他の忍学生は皆目が赤く光っており、完全に洗脳されている状態なのは明白だった。

 つまり漆月と闇が話していた一仕事と言うのは、この場で飛鳥達を食い止める事。

 その為に捕らえた忍学生を洗脳した後に一時的に開放、飛鳥達の妨害を命じたらしい。

 

「くぅ!? この数じゃ時間をかなり食うぞ!?」

 

「って言っても、ここを突破しないと前には……」

 

 足止めを食らってしまい、悔しさで歯を食いしばる焔と飛鳥達。

 だが、それを突破しようと前に立つ者達が居た。

 

「先輩達は先に行ってください!!」

 

「こいつらは私達が、」

 

「相手をする!!」

 

 それは風魔と神裂と総司だった。

 更に三人に続くように、菖蒲と土方と園子と幸村と芭蕉と千歳も前に出て構えた。

 

「風魔ちゃん!? 皆!?」

 

「あんた達!? それ本当に言ってるの!?」

 

「フン!! 本気で無ければ最初から前に出んさ!?」

 

 そんな九人を見て飛鳥と両備が驚いく声を聞いて総司が答えると、それに続くように芭蕉達も話しだした。

 

「ここで足止めを食らってたら、それこそ漆月の思う壺です!! ですから!?」

 

「どの道、私達はここから先は多分足手まといです。だったら、ここでこの雑魚を相手にしていた方が得策と言うもの。」

 

「総司……芭蕉……千歳……」

 

「雪泉先輩を傷つけた借りを返せないのは残念ですが、その分も皆さんに託します!!」

 

「何よりこの幸村!! 今まで動けなかった分、ここで挽回させてもらわねば!!」

 

「だから先輩達!! ここは任せて先に行って!!」

 

「神裂さん……幸村さん……園子さん……」

 

「今のかつ姉ぇ様達なら大丈夫です!! だから早く!!」

 

「けど!! 必ず生きて帰ってください!! 誰も欠ける事無く!!」

 

「私は……私達は飛鳥先輩達を信じてる!! だから皆さんも私達を……信じてください!!」

 

「菖蒲ちゃん……土方ちゃん……風魔ちゃん……」

 

 風魔達の言葉を聞いた両備と夜桜と飛鳥達は、風魔達の覚悟が確かだと気付き、それを受け入れると……

 

「………分かった!! その覚悟と思い、確かに受け取ったから!!」

 

 飛鳥が風魔達に答えた後、前に向かって進み、焔達もその後を追った。

 

『……っ!?』

 

「ここから先には行かせないッスよ!?」

 

 飛鳥達が先を進もうとしたのに気づき、麗王と夕焼達は追いかけようとしたが、そうはさせないと風魔達が前に出た!!」

 

「月閃選抜候補生が一人!! 神裂!!」

 

「同じ候補生が一人ぃ!! 幸村ぁ!!」

 

「同じく候補生が一人!! 園子!!」

 

「鎮魂の夢に沈みましょう!!」

「鎮魂の夢に沈もうぞぉおおおお!!」

「鎮魂の夢に沈むよぉ!!」

 

「蛇女子学園一年!! 総司!!」

 

「同じく一年!! 芭蕉!!」

 

「同じく一年、千歳!」

 

「悪の誇りを舞い掲げよう!!」

「悪の誇りを舞い掲げます!!」

「悪の誇りを、舞い掲げます。」

 

「半蔵学院……補欠メンバーの一人!! 風魔!!」

 

「土方!!」

 

「菖蒲!!」

 

『舞い忍びます!!』

 

 神裂達、総司達、風魔達はそれぞれ名乗り終えると、麗王と夕焼達を見ながら得物を構え、

 

『ハァアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 飛鳥達の道を守る為に、麗王と夕焼達に向かって突撃するのだった。

 

――――

 

「ハァ……ハァ……ふ、風魔ちゃん達、大丈夫かなぁ!?」

 

「ウチらを信じてくれたんでしょ!? だったらウチらも信じないと!?」

 

 階段を昇り、更に先に進もうとする中、風魔達を心配して雲雀が呟いた事に四季が答えた。

 誰だって下の階で、麗王と夕焼達の足止めをしてくれた風魔と神裂と総司達が心配なのは一緒だ。

 だがそれだけで足を止めれば、風魔と神裂と総司達の思いを無駄にしてしまう。

 今はただ、信じながら前に進むしかないのだ。

 

「……って言っても、アイツらはそうやすやすと前に通してくはくれなさそうだがな。」

 

 そんな中、そう言って足を止めた焔が見た先を見て、飛鳥達も足を止めた。

 何せ次に現れたのは、飛鳥達も知ってる者達だったからだ。

 

「蓮華ちゃん!! 華毘ちゃんに華風流ちゃんまで!!」

 

「み…巫神楽の三人まで、」

 

「………」

 

 目の前に立っていたのは同じく漆月に敗れ、捕らわれたはずの蓮華、華毘、華風流の巫神楽三姉妹で、三人も先の麗王と夕焼達と同じように、洗脳されていた。

 その姿を見て飛鳥と夜桜達が驚く中、同じ巫神楽の奈楽は、目を鋭くしながら巫神楽三姉妹を見ていた。

 

「………相手はあの三馬鹿姉妹だけじゃないようね。」

 

 そう言って何か気づいた両備が後ろを向くと、天井から二つの影が降りて来た。

 その影の正体は、巫神楽三姉妹と同じように漆月に敗れ、捕らわれてしまった閃光と月光で、二人も当然洗脳されていた。

 

「閃光さんに月光さんまで!?」

 

「くぅ!! 囲まれたか!?」

 

 夜桜が閃光と月光を見て驚いた隣で、柳生が前と後ろも塞がれたのを口にしたその時だった。

 閃光と月光の後ろから二つの影が飛び出すと、そのまま閃光と月光の前に立った。

 

「うぬらの相手は……」

 

「我らがするとしよう。」

 

 その二つの影の正体は大導寺と鈴音。

 飛鳥達が知る中で、最強クラスの忍二人だ。

 

「大導寺先輩!!」

 

「鈴音先生!?」

 

「すまない、遅れた!!」

 

「だがま、遅れた分の事はしてやろう。」

 

 二人の姿を見て飛鳥と両備が驚くと、鈴音は皆に謝罪しながら月光の前に立ち、大導寺も話しながら閃光の前に立った。

 

「こ奴らの相手は、我らがして進ぜよう。」

 

「お前達は先を急げ!!」

 

「大導寺先輩……鈴音先生……はい!!」

 

 そう言いながら大導寺は拳を鳴らし、鈴音は得物を構えたのを見て飛鳥は礼を言った後、巫神楽三姉妹が居る前を見た。

 

「だったらこいつらは、私がまとめて相手してやるか。」

 

 すると今度は奈楽が言いながら、巫神楽三姉妹の前に立ち、得物である鉄球を出現させた。

 

「奈楽さん……」

 

「良いの? こいつらは……」

 

「こいつらには色々と言いたい事があるしな……分かったらさっさと漆月の所に行け!!」

 

 声を掛けた夜桜と両備に対して奈楽は言いながら、飛鳥達の方に顔を少し向けた。

 

「……神楽の命もあるとは言え、今回私はお前達に協力し過ぎたからな……。ここまでやってやったんだ、負けたら許さんぞ!!」

 

「っ!?………分かってるよ!! ありがとう奈楽ちゃん!! 先輩方!!」

 

 奈楽の言葉を聞いた後、飛鳥は奈楽と大導寺と鈴音に礼を言いながら前に進み、焔達もその後を追った。

 

「フッ……さて、我らも参ろうか。凛さん。」

 

「あぁ……こうして共に戦うのは、何回目だろうな?」

 

 飛鳥達が進んだのを確認すると、大導寺と鈴音…もとい凛は歩きながら話し、閃光と月光に近付いて行った。

 

「数えるも忘れた。あなたと共に戦う事が、高ぶらないわけないからな。」

 

「ほぉ……なら私も、お前をがっかりさせぬよう気を付けるとしよう。」

 

 互いに笑みを浮かべながら閃光と月光を睨んだ大導寺と凛は、閃光と月光が動き出したのと同時に動き出す。

 

「参るぞ!!」

 

「あぁ!!」

 

 大導寺は閃光と拳と拳をぶつけあい、凛も月光と得物をぶつけあい始めるのだった。

 

「………まったく、揃いも揃って洗脳されおって。この三馬鹿姉妹が。」

 

 その頃奈楽は、巫神楽三姉妹を睨みながら呟いていた。その時の表情には、多少の苛立ちがあるように見えた。

 

「お前達などに神楽はおろうか、小百合の手を煩わせる必要もない!! 私が直々に………一から鍛え直してやろう!!」

 

 奈楽は睨み続けながら鉄球に足の乗せ、そのまま巫神楽三姉妹に向かって突っ込むのだった。

 

――――

 

「だぁああ!!」

 

「ハァ!!」

 

 その頃、忍本部の最初の部屋では、風魔と神裂と総司達が洗脳忍学生相手に奮闘していた。

 洗脳されているとは言え忍学生。それなりの実力も兼ね備えている者もいて、思っていた以上に辛い戦いになっているらしい。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……キ、キリがないですぅ。」

 

「ハァ……ハァ……ハァ……で、でもだからと言って、今ここで倒れるわけには……」

 

 おまけに数も多い方で、菖蒲と芭蕉もそれに奮闘するものの数は中々減らず、互いに背中を合わせながら息を整える程だった。

 

『ッ!!』

 

「なぁ!?」

 

「しまっ……」

 

 その隙を見逃さなかったのか、銀嶺と牛丸が菖蒲と芭蕉に向かって襲い掛かって来、反応が遅れた菖蒲と芭蕉はそのまま倒されてしまう………

 

「えぇええええい!!」

 

 かに思われたが、園子が槍の先端付近を傘の様にして展開し、そのまま盾として二人を護ったのだ。

 

「そ、園子さん!!」

 

「凄い………」

 

「エヘヘヘヘ!! この槍盾にもなるんよぉ~!! さぁお三人様方、今だよ!!」

 

『ハァアアアアアアアアアアア!!』

 

 それを見て菖蒲と芭蕉が驚く中、園子の掛け声と共に幸村と千歳と土方が銀嶺と牛丸の上を飛び、幸村は槍を何十回も突き刺し、千歳は邪弾を撃ち、土方はハンマーを振りかざした事によって、銀嶺と牛丸は無力化された。

 

「み……皆さん!!」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「別にいいんよぉ~!! お互い様だし~!!」

 

「あっちもあっちで、頑張ってるようですしね。」

 

 菖蒲と芭蕉が礼を言うと、園子と土方は話しながら、向こうで麗王と夕焼相手に奮戦する神裂と総司と風魔の姿を見た。

 

「がぁああ!!」

 

「かぁあ!!」

 

「ぬぅううう!!」

 

 戦況は風魔達が苦戦している状態だった。

 ゾディアック星導会と遠野天狗ノ衆のリーダーである麗王と夕焼の斬撃は洗脳されてもなお健在で、その斬撃と剣捌きに苦戦を強いられていた。

 

「ぬぅうううう!! やはり我らも加勢した方がって……ぬぉおお!!」

 

「それも許してはくれないようですね。」

 

 そう言って援護に向かおうとした幸村だったが、千歳の言う通り他の洗脳忍学生の襲撃は今だ衰えず、再び散った菖蒲達は洗脳忍学生相手と対峙し続けた。

 

「くぅうううう……まだぁ……まだまだぁッス!!」

 

「あぁ……こいつらにしかも、洗脳された状態で負けるわけには行かんしな!!」

 

「まだ……これからです!!」

 

 それは風魔と神裂と総司も同じ事で、立ち上がって得物を構え直した風魔と神裂と総司は、麗王と夕焼に向かって突っ込んだ。

 

 

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