閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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38.信じているからこそ……

「絶・秘伝忍法……ラグナロク!!」

 

「秘伝忍法……おおよろこび!!」

 

『グゥアアアアアアアア!!』

 

 蒼志が呼びだした人口妖魔二体と戦っていた詠と日影は、それぞれ攻撃を避けながら秘伝忍法を繰り出し、それを食らった人口妖魔は二体とも爆散した。

 

「フゥ……思ったより時間食ってもうたな。」

 

「えぇ……早く葛城さんの元へ、」

 

 額に掻いた汗を拭い、呼吸を整えた日影の言葉に頷いた詠は、急ぎ蒼志と戦っている葛城の元へ向おうとすると……

 

「ハァアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「だぁああああああああああああああ!!」

 

 詠と日影が見たのは、龍のオーラを纏った具足と蒼炎を纏った刃がぶつかり合う光景だった。

 その衝撃は詠と日影の所にまで届くほどに、激しいものだった。

 

『秘伝忍法!!』

 

「トルネードシュピンデル!!」

 

「蒼狐炎・鬼火!!」

 

「んぅうううううう!!」

 

「な、何て衝撃ですの!?」

 

 特に秘伝忍法がぶつかった衝撃凄く、日影と詠も思わず後退しかける程だった。

 

「ハァ……ハァ……な、中々やるじゃねぇか?」

 

「フゥ……フゥ……フン、そっちも……まぁそうじゃないと、こっちもただ殺すだけでつまらないですから。」

 

「……言ってくれるじゃねぇか。」

 

 衝撃の反動で距離を取った葛城が発した言葉に対し、蒼志は刀を構え直し答えた。

 その言葉を聞きながら、葛城も構え直したその時だった。

 

「んぅ?」

 

「……何、ですか?」

 

 何処からか足音が聞こえた葛城と蒼志は、何処から聞こえて来るのか周囲を見渡し始めた。

 

「なんや? この足音……それにこの気配は、」

 

「ひ、日影さん……あれ……」

 

 同じように聞こえた日影も、違和感を感じながらも周囲を見渡していると、詠が声を少し震わせながら、ある場所に指を差した。

 

「っ!? お、お前……」

 

「…………」

 

 それは音の発生源を探していた葛城と蒼志も見ており、見ていた葛城は驚きを隠せず、蒼志は驚きこそはしなかったが、小さく笑みを浮かべていた。

 この場に居た殆どが驚いた足音の正体、それは……

 

「……………」

 

 斑鳩だった。

 全身の傷や火傷の後は隠す事なく露わになり、黒の水着のみを身に纏っていた斑鳩の瞳には光も失っており、生気も何も無いその姿に、かつての斑鳩を知っている者が見て驚くなと言う方が無理があった。

 

「い、斑鳩…さん……」

 

「お前…………」

 

「…………」

 

 もちろんそれは詠と葛城と日影も同様で、変わり果てた斑鳩の姿を見て唖然となっていた。

 ただ一人……蒼志を除いては。

 

「……フフ、フフフフフフ……これは股随分と、変わり果てた姿になりましたね。」

 

 蒼志は笑みを浮かべながら斑鳩に近付き、首筋に刀を向けた。

 

「そのような状態では刀もまともに振れない……なのにここに来たのは……私に殺されに来たのですが?」

 

「…………」

 

 刀を向けながら聞いた蒼志の質問に対し、斑鳩は何も答えなかった。

 

「……ハァ、もう良いです。いい加減貴方ともサヨナラしないと行けないですし。」

 

 そんな斑鳩を見て呆れたのか、蒼志はほんの少し離れた直後、刀に蒼炎を纏わせた。

 

「これであなたとも……最後です!!」

 

 その蒼炎に燃える刀を、斑鳩に向けて振るう蒼志。

 それを避けようともしない斑鳩は、本当に死に来たようだった。

 

「んぁな事……」

 

「させません!!」

 

 だがそれを、葛城と詠は当然許さず、斑鳩の前に出たのと同時に斑鳩を後ろに押し、葛城は具足で、詠は大剣で蒼志の斬撃を打ち消した。

 

「っ!? あなた達、邪魔をしないで、」

 

「はぁあああ!!」

 

「くぅ!?」

 

 突然の事に蒼志は驚きながら聞こうとした直後、日影が斬りかかって来て、蒼志はそれに驚きながらも刀で防いだ。

 

「貴方まで……どうして私の邪魔を、」

 

「あいにく……三人はこれから大事な話しがあるさかい、それまでウチが相手してやるわ!!」

 

 一旦離れた日影に対して蒼志が聞くと、日影は目を鋭くさせながらナイフを構えながら答えた直後、再び蒼志に向かって行った。

 

 

「………」

 

「…………」

 

 日影が蒼志に対して時間稼ぎのような戦いをしている中、葛城と詠は斑鳩を睨むように見ていた。

 

「ふ…二人共、一体何のマネ……っ!!」

 

 葛城と詠を見て斑鳩が声を掛けようとした直後、葛城は斑鳩の顔を思い切り殴るのと同時に地面に倒した。

 

「一体何の真似だ……それはこっちの台詞だ!!」

 

 倒れた斑鳩を見ながら葛城は叫びながら近付き、斑鳩の肩を掴んで上半身を起こした。

 

「オメェ……急に現れたと思ったら何だよ!? そんな姿で何もしない、おまけに蒼志に斬りかかれても避けようともしないなんてお前……本気で死ぬ気か!?」

 

 斑鳩の顔を見ながら、これまでに無い程に怒鳴る葛城。

 何度も共に戦い、時に喧嘩し合い、そして苦難を乗り越えて来た葛城だからこそ、今の斑鳩は見るに堪えなかった。

 

「……もう…嫌、なんです。私のせいで……誰かが傷つくのは……」

 

「っ!? 斑鳩……」

 

 そう呟いた斑鳩の言葉を聞いた葛城の脳裏には、雨が強く降るあの日、斑鳩を庇って蒼志に斬られ、目の前で倒れた自分が浮かび上がった。

 

「もう……限界、です。これ以上……私が生きても……だったらいっそ……ここで蒼志に殺されば……私も……蒼志も……皆だって……」

 

 っと、力も何も籠ってない言葉で斑鳩が呟いたその直後だった。

 

「このぉ……大バカ野郎がぁああああああ!!」

 

「がぁ!?」

 

 葛城は斑鳩に対して、怒鳴りながら頭突きを繰り出し、それを食らった斑鳩は、再び頭を地面に倒した。

 

「か……葛城、さん?」

 

「……何がもう嫌だ、何がもう限界だ、何が私が生きてもだ……お前ただ、逃げてぇだけだろうが!?」

 

 突然の事に困惑している斑鳩に対し、葛城は再び怒鳴り叫んだ。

 

「何もかも自分のせいにして、自分が居なくなれば全て解決すると勝手に考えて……んなもぉん、あたいが知ってる斑鳩って女じゃねぇ!!」

 

「…………」

 

「あたいの知ってる斑鳩は……誰よりも真面目で、誰よりも仲間の事を考えてて……誰よりも!! 立派な忍になろうと努力する女だ!! だから……どんなに自分の目の前で仲間が倒れようが、自分の行いが誰かを傷つけてしまいようが……」

 

「そんな事で!! 何もかも終わりにしたいって死ぬような奴じゃねぇ!!」

 

 斑鳩に対して思いの全てをぶつける葛城。

 その目尻からは、涙が溢れ出していた。

 

「………斑鳩さん!!」

 

 そんな中、斑鳩に対して今度は詠が話しかけて来た。

 

「私が……一度はあなたを傷つけてしまった私が言うのも、おこがましいかと思います……けど!! だからこそ言います!! あなたは、こんな所で終わって良い人間ではありませんわ!!」

 

「詠さん……」

 

「どんなに辛く悲しい現実だろうと、どんなに人々が、あなたを敵視していようと……あなたは!! 迷いや後悔など無い、真っ直ぐな忍でいるべきなのです!! いえ、なって欲しいのです!!」

 

 それは願いでもあった。

 詠は斑鳩に対して自身が抱える願い、そして思いを打ち解けながら、今手にしていた大剣を手放した。

 

「その為なら……私は何度だってあなたを助けますわ。例え世界中があなたを敵とみなしても……例えあなたに嫌われようとも……例え!!」

 

「この身が砕けようとも!!」

 

 そう叫んだ次の瞬間、詠は目の前に黒い大剣を取り出した。

 

(焔さん……どうやら、その時が来てしまったようです。)

「ふぅうううん!! んぅうううううううううう……ぬぁああああああああああああああああああ!!」

 

 心中で焔に対して語った後、詠が黒い大剣を鞘から力一杯抜いた次の瞬間、詠の全身に赤黒いオーラが身に纏って行き、瞳も紅く染まった。

 詠は、「狂乱の詠」へと変わった。

 

「よ……詠さん……」

 

「ぬぅううううううう!! んぅうう……んぅううう!!」

 

 そんな詠を見て、斑鳩が驚き目を見開いていると、詠は唸り声を出しながら斑鳩に近付いた。

 頭を抱えるからして恐らく、狂乱化した事で薄れて行く理性を総動員させているのだろう。

 

「……アハ、アハハ……やっぱり、あなたを傷つけてしまった、見たいですね……でも、これを……返し……たくて……」

 

 今にでも涙を流しそうな斑鳩の顔を見て話しながら、詠は斑鳩の手元にある物を置いた。

 それは、斑鳩の兄村雨から預かっていた飛燕だった。

 

「っ!? それは……」

 

「あなたのお兄様……村雨さんは言ってました。どんなに……刀が折れても、こうやって刃が戻るように、斑鳩さんが……私達の元に戻って来るって……そう……信じてまし、た。」

 

「………」

 

 飛燕の刃を見せながら、詠はだんだんと薄れて行く理性を何とかしながら言った後、日影と戦っている蒼志の方に振り向いた。

 

「だから…私も……信じて…ます。あなたが……私達の元へ、帰って来るのを。だって……あなたは…私の………」

「最強の………友達……です…か……ら……」

 

 そう、自身が今の斑鳩に対して思っている思いを最後まで口にした瞬間……詠の理性は消え去った。

 

「……ぬぅうううううううううううう、ぬがぁああああああああああああああああああ!!」

 

 完全に狂乱化した詠は、獣の咆哮に似た叫び声を放ちながら、蒼志に向かって突っ込んで行った。

 

「………」

 

「見たか斑鳩? アイツは……詠はお前の為に、あそこまでやるんだぜ? 正直……妬けるぐらいにな。」

 

 そんな詠の姿を見て茫然となっている斑鳩に対して話しかける、葛城は、頭を掻きながら立ち上がる。

 

「そんな詠の無下にする……そんな奴じゃないだろ? お前は……斑鳩、あたいもお前が、あたい達の前に戻って来るの……信じてるからな。」

 

 葛城も斑鳩に対する思いを打ち明けた後、蒼志に向かって飛んで行った。

 

「…………」

 

 そうして一人残された斑鳩は、手元に置かれた飛燕に手を伸ばしかけたが……

 

「……もう、私には……」

 

 呟きながらその手を引いてしまい、そのまま目を瞑った。

 

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