閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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3. 旋律の月閃と蛇女。

 

「あぁああ!! ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 灼熱サウナから出された雪泉は倒れ込みながら息を荒立てた。

もう何日もこのような拷問を受けているのだろう。何時も冷静で何事にも動じぬ事が少ない雪泉であっても、苦手な熱の拷問には自信には苦痛でしかなかった。

 

「んぁああ!!」

 

「あらあら…こんなに汗まみれになっちゃって、ちゃんと水風呂に入らないとダメね?」

 

 そんな雪泉に対し熱湯をぶちまけた拷楽はそう言いながら再び鎖で雪泉の両手を縛ると、そのまま天井にぶら下げて移動させた。

 

「まぁあなたの場合は……熱熱の熱湯風呂だけどね。」

 

「あがぁ!!」

 

 移動した先にあったのは熱熱の熱湯が入った水槽で、拷楽がスイッチを押した瞬間に鎖は勢いよく水槽に落ちて行き、雪泉は熱湯の中に沈んでしまった。

 

「ごぼぼぉ!! ごぼぼぼぼぼ!! ごばぁ!!」

 

「はぁ~い、じゃあ三十分そのままねぇ。私は雅緋ちゃんの方に行くから。」

 

 蓋もされ溺れかけている雪泉を見ながら話した拷楽は、雅緋が捕らわれている牢屋に向かうと、すぐさま近くにあるスイッチを押した。

 

「んぅぐぅうう!! ぐぅうううう……ぐぎぃいいいい!!」

 

「あらららぁ~、随分と耐えれるようになったじゃ無いの? もしかして、慣れちゃった?」

 

「フ、フン!! この程度の拷問で屈するか。私は雪泉程脆くないぞ!!」

 

 押した次の瞬間、雅緋の全身に電撃が走ったのだが、それに耐えた雅緋を見て拷楽は少し驚いた。

 

「へぇそう………凄いわねぇ。でもね、私の拷問は苦しんでなんぼなの? この程度で耐えるんだったら……」

「これはどうかしら、ね?」

 

 だが拷楽は不気味な笑みを浮かべながら片手を雅緋に向けると、開いた手の指をゆっくり一本、また一本と折って行き、三本まで指を折った次の瞬間。

 

「っ!? ぐぁああああああああああああああああああああああ!?」

(な、何だ!? 急に電撃が強く……いや違う!? 私の身体の痛みが強くなって!?)

 

 雅緋の身体に走っていた電撃に突如としてもの凄く苦しみだす雅緋。いつの間にか電撃の威力が上がったのかと思った雅緋だったが、それは違う事にすぐに気づいた。

 

「アハハハハハ!! どうぉ私の秘伝忍法、痛覚倍量は? 私はどんな奴の痛覚も何倍にも上げる事が出来るのよ? し・か・も……」

 

「っ~~~~!! ぐがぁああああああああああああああああああああ!!」

 

「痛みは何十倍にも上げれるのよ? 今のあなたの痛覚は通常の五十倍。まぁせいぜい苦しみなさいな? ウフフフフフフ!!」

 

 雅緋に説明しながら更に「痛覚倍量」を使って雅緋の痛覚を更に上げた拷楽は、そのまま電撃に苦しみ悶える娯楽を見て顔を赤らめながら笑みを浮かべた。

 

「おぉ~おぉ~!! 豪勢に溺れてんなぁ!! ま、ざまぁみろって所か!!」

 

 そんな中、熱湯水槽で苦しむ雪泉を見て楽しんでいる者がいた。

 その者は龍姫。彼女は雪泉が溺れ苦しむ光景を見ながらスタミナ丼を食べていた。

 まるで雪泉の拷問をおかずにして、ご飯やパンを食すように。

 

「まったく、龍姫って本当、月閃や黒影の事になるとキャラ変わるよね? 何時もは世に言う姉御肌だけど、こういう時は最低人間になるって言うか?」

 

「っへ!! 何度でも言ってくれや。私はこの……クソ黒影のクソ弟子兼クソ孫のコイツが苦しんでるのを見れたらそれで良いんだよ。ってなわけで、何時もあんがとな拷楽!!」

 

「良いわよぉお礼なんて? 私も龍姫ちゃんがリクエストしてくれた拷問内容をプレイ出来るから問題ないしね?」

 

 そんな龍姫を見て漆月が話しかけると、そう答えながら拷楽に礼を言う龍姫に対し、娯楽は笑みを浮かべながら言い返す。

 

「ふぅ~ん、まぁ良いけどさ。それよりも龍姫さぁ、そろそろ行っても良いんじゃないの? そのクソ黒影のクソ弟子が居る……」

「君のかつての母校に。」

 

 その後漆月は龍姫に近付きながら話し、悪びれた笑みを浮かべながら夜桜、叢、四季、美野里の写真を見せ、龍姫はそれを受け取った。

 

「……ヘッ!! そうだな。あのクソ叢もアイツらの所に帰ってる頃合いだし行ってきますか!! あの……」

ビリィ!!

「クソ黒影のクソ弟子共を……ぶちのめしに。」

 

 龍姫は不気味な笑みを浮かべ、そのまま夜桜達の写真を破り捨てた。

 そんな龍姫の姿を見ていたのは漆月や拷楽だけでなく、同じ仲間の鎌倉も見ており、その手には両備と両奈の写真があった。

 

「アハハハハハ!! そうかぁリュッキー遂に月閃の所に行くんだねぇ!! じゃあ僕も……」

スパァ

「あの二人の首を狩り取りにでも行こうかな?」

 

 鎌倉も鎌倉で不気味な笑みを浮かべながら両備と両奈の写真を宙に浮かせると、その写真を得物である鎌で引き裂いてしまうのだった。

 

「……フフ、まぁせいぜい楽しんで来なよ?」

 

 そう呟きながら漆月が拷問部屋を後にすると、漆月の目の前に蒼の短髪、女の子らしい青のワンピースの上にジャンバーを着、刀を持った少女が立っていた。 

 その彼女こそが、焔達が調べていた元蛇女子学園の忍、蒼志だった。

 

「蒼志じゃん? そんな所に突っ立ってどうしたの?」

 

「……一つ質問があります。」

 

 蒼志を見て聞いた漆月に対し、蒼志は漆月に質問した。

 

「何故、半蔵学院の忍学生を捕縛しなかったんですか? あの飛鳥って言う忍の少女が漆月、あなたのお楽しみだって事は聞いています。ですが他の忍学生も捕縛しなかったのは何故ですか? 捕縛して置けば人質にもなれますし。」

 

 蒼志の質問はシンプルだった。何故半蔵学院を攻めたにも関わらず、半蔵学院の忍学生を捕縛しなかった事について質問したのだ。

 

「……だってさぁ、仮に飛鳥ちゃん以外の忍学生を捕縛するとするじゃん? でもそうなってもしも、飛鳥ちゃんがまともな戦いが出来なかったらどうするの?」

 

「それは……私達にとっては好都合なのでは?」

 

「だぁ~め!! 他の忍学生は知らないけどさ、私は飛鳥ちゃんとあの子とはねぇ………」

「ベストな状況下で戦いたいの。」

 

 その質問に対して漆月は、蒼志の周りを踊りながら答え、最後に蒼志に背中を見せながら身を後ろに振り向かせながら言い終えた。

 

「……ハァ~、まったくあなたは、だったらあの葛城に裏切り何てさせる事もしない方が良かったのでは?」

 

「それだとベスト過ぎて、それはそれで面白くないじゃん?」

 

「やれやれ……相変わらずですね。あなたは。」

 

 漆月の言動に思わずため息を付きながら呆れる蒼志だったが、その表情には納得の笑みが浮かんでいた。

 

 

「……良し、これで大丈夫、なわけ無いか。」

 

「………」

 

 半蔵学院旧校舎の忍教室で、焔に傷の手当てをして貰った飛鳥だったが、その顔はとてもでは無いが大丈夫とは言えなかった。

 

「斑鳩さん……そんな事を言うなんて。」

 

「自分の事は忘れろって、一体何を考えてるんだ?」

 

 焔達から斑鳩の事を聞いた雲雀と柳生の表情にも、戸惑いが隠せずにいた。

 雲雀はともかくあの柳生ですら動揺してしまう。それほど飛鳥達にとって、斑鳩の存在は大きいのであろう。

 

「……ほんまなんか?」

 

「え?」

 

「葛城が、あの葛城があんたらを裏切ったって、ほんまんかって聞いてるんや。」

 

「日影!!」

 

 そんな中、飛鳥に対して葛城の事を聞こうとした日影に叫ぶ焔。ただでさえ飛鳥達本人が傷ついていると言うのに、これ以上傷口を抉るような事は止めて欲しいと言う事だろう。

 

「まぁ確かに、私も信じられないわね。」

 

「詠お姉ちゃんも戻ってこないし。一体どうなってるのよ……」

 

 春花と未来が呟いた後、忍教室には沈黙が続いた。

 無理もない。超秘伝忍法書事件から続いていた半蔵学院と焔紅蓮隊の関係。時に戦い、時に協力し合った彼女達の間には、善忍抜忍の関係を超えた絆が生まれていた。

 その絆の一つが壊れかけない事が、今ここで起きているのだからだ。

 

「お、おじゃましまぁ~す。」

 

「風魔に土方か。……菖蒲はどうなんだ?」

 

「……心体ともに重症で、特に心の方は……」

 

「……そうか。」

 

 忍教室の出入り口から戻って来た風魔と土方に気付いた柳生は菖蒲の事を聞くと、土方の話を聞いて頷いた。

 あんなに葛城の事を慕っていた菖蒲。その葛城に裏切られ、ボコボコにされたのが辛かったのであろう、菖蒲は医務室のベットに座り込んだまま、涙を流していたらしい。

 

「……焔ちゃん、そろそろ。」

 

「あぁそうだな。じゃあ飛鳥、またな。」

 

 春花の声を聞いて忍教室から出ようとする焔達。流石に抜忍である自分達がここに長居してはマズいだろうと思ったのであろう。落ち込みの表情が続く飛鳥達を気にしながら出ようとしたその時だった。

 

ボォオオオオオオン!!

「ぬわぁあ!! ゲホォ!! ゲホォ!! 何だよコレって、」

 

 突然煙玉の煙が出て来、それに咳き込みながら焔が前を向くと、そこにはいつの間にか霧夜が立っていた。

 

「霧夜先生……」

 

「飛鳥、それに焔達も居るのか。丁度良い、皆心して聞いてくれ。実は……」

 

 霧夜を見て少し驚いた飛鳥達に霧夜が発した言葉。それを聞いて飛鳥と焔達は、額から冷や汗を出す程動揺するのだった。

 

 

 忍専門緊急病院。忍が大きな負傷、重傷を受けた際に配送されるのがこの病院らしい。

 ここの病院では善忍悪忍、そして抜忍関係なく入院する事も出来、妖魔絡みで善忍悪忍双方が重傷を負った際は、こちらに運搬される事が多い。

 

「夜桜ちゃん!! 両備ちゃん!!」

 

 その病院内で飛鳥達が走りながら向かった先は集中治療室。その前には夜桜達月閃女学館と両備達蛇女子学園の面々が集まっており、全員不安な表情だった。

 

「叢と忌夢の容体はどうだ!?」

 

「……まだ分かんない。あの二人の事だから死にはしないって言いたい所だけど、」

 

「流石に今回は……」

 

 霧夜から叢と忌夢の事を聞いた焔は両備と夜桜に聞いたが、両備と夜桜もなんとも言えず、近くの窓から見える検査を受けている叢と忌夢の無事を祈るしか出来なかった。

 

「……お姉ちゃん。」

 

「紫ちん……ってかどうしたの柳生ちん達!? そんなボロボロで!?」

 

「それに詠ちゃんの姿が見えないけど、一体どうしたの?」

 

 べべたんを抱きしめながら姉の忌夢の無事を祈る紫を見て四季が呟いてると、全身傷の手当ての後がある飛鳥達に驚きながら聞き、隣に居た美野里も詠がいない事を聞いた。

 

「………」

 

「……実はな。」

 

 それを聞かれて飛鳥達が下を向く中、焔達は月閃と蛇女の面々に斑鳩、そして葛城の事を代わりに話した。

 

「……ちょっと、何なのよそれ。葛城が裏切って? 斑鳩が自分の事は忘れろって言ってた? もぉ一体全体どうなってんの今回は?」

 

「こっちも雪泉や叢の事で精一杯だってのに、流石に頭が追い付かん。」

 

「私も正直信じられないよ。かつ姉ぇや斑鳩さんの事もだけど、雪泉ちゃんや雅緋ちゃんまでそんな事になってるなんて。」

 

「あぁ……一体全体どうしろって言うんだよ?」

 

 その事を聞いて両備と夜桜も頭を抱え、霧夜から雪泉と雅緋の事も聞いていた飛鳥と焔も動揺、他の皆も同じで不穏な空気が流れていた。

 これまでどんなピンチを乗り越えて来た彼女達であったが、今回は本当に異常だった。

 仲間の裏切り、行方消失、チームからの離脱、瀕死の重傷、そして命の危機。様々な事が起こり過ぎてどうすれば良いか迷っていたからだ。

 

「お前達、揃ってるな。」

 

 そんな中、霧夜が飛鳥達を見ながら聞いて来、その隣には蛇女の教師である鈴音も立っていた。

 

「今後の事で話がある。皆会議室に集まってくれ。」

 

『…………』

 

 鈴音の言葉を聞いた飛鳥達は少し戸惑いながらも、このままじっとしてても意味が無いと思ったのか、霧夜と鈴音の後を追って会議室に向かった。

 

「………」

 

「紫? どうしたのよ? 早く行くわ、」

 

「……私は、ここに居ます。もう少し……ここに居たい。」

 

 

「……分かった。」

 

 そんな中、今だに集中治療室前で座っている紫に両備が話しかけると、そう答えた紫の言葉を聞いて納得せざるを得なかったのか、両備は紫の思いを尊重する事にした。

 

 

病院の会議室を借りて話し合う事にしたのだが、現状霧夜と鈴音にも分からない事だらけだ。

分かっている事と言えば、破忍の目的と動向とそのメンバーのついてぐらいだ。

まず破忍の目的、これまでの動向を見る限りでは、まず目的は現社会の破壊。動向について現時点では、日本中の忍学校もしくは忍クラスがある学校を襲撃し、その際にそこに在籍する忍学生を拉致している事が現時点で分かっている事なのだが、その目的はまでは今だ分からずじまいらしい。

次に破忍のメンバーに関してだが、これも殆ど分からない事の方が多い忍も居るので確証はないので、分かっている事だけを纏める事にした。

 

まずは龍姫。元死塾月閃女学館中等部の忍学生で、両手に取りつけられ手甲から発せられる双竜の力を使ってでの戦闘が得意とするらしい。

 元は善忍家系の娘として生まれ育ったらしいのだが、何故月閃を抜けたのかは現時点で不明。

次に鎌倉。元私立蝶姪高校一年忍学科の忍学生で、二振りの鎌と血を用いた戦闘を得意とする忍なのだが、過去の情報を見るとこの鎌倉、自分の忍クラスを皆殺しにしたと言う事実があるようだ。

続いて蒼志。元秘立蛇女子学園一年選抜補欠メンバー筆頭代理と言う実績を持つ忍学生なのだが、何故蛇女を抜けたのかは鈴音にも分からないらしい。

 蒼い炎を纏った刀を用いた戦闘スタイルを用いり、その実力は焔も認めるほどらしい。

 拷楽。この忍は情報が集まり切れていないので分からい事が多いが、唯一分かっている事は彼女は拷問を得意としている事と、その拷問に対する異常な性格の事ぐらいだ。

 転界。こちらも詳しい事はいまだ不明。ただ忍学校が襲撃される際は何時もこの忍に似た少女の目撃情報が少しだが確認されており、恐らく破忍の突然の襲撃も、彼女の転移忍法によるものと推測されている。

 項羽。上記の三人と同じく分からない事だらけだが、確認された少ない情報を見る限り、項羽は斧を使っての荒々しい戦闘をする事ぐらいだ。

 闇。彼女に関しては恐らく一番分からない事だらけの忍で、こちらも唯一分かっているのは、茨をつかってでの忍法を用いる事ぐらいだ。

 そして、その破忍達を束ねるリーダーが漆月。何故忍学校を襲うのか、何故忍社会の破壊を目論むのか、そしてその実力、こちらも分からない事だらけで、噂では妖魔とも手を組んでいるとの話もあるらしい。

 

 

「ハァ……要するに、破忍に関してはそっちも分からない事だらけ。って事なんだな?」

 

「あぁ、だからと言ってこのまま野放しにしてるわけにも行かん。こうしている間にも、破忍は次の忍学校を襲うかもしれんからな。」

 

「それに半蔵学院が襲撃を受けた以上、何時月閃と蛇女にも襲撃が来るか分からん。こちらも対処した方が良いだろう。」

 

 焔のため息混じりの質問に答える霧夜と鈴音だったが、対処するにもそれは現時点では著しい程に難しかった。

 

「対処って言っても、儂らと蛇女、半蔵もメンバーが欠けている状況なんじゃが!? それに紅蓮隊の皆さんだって……」

 

『…………』

 

 現在雪泉と雅緋は破忍に捕らわれ、叢と忌夢も重傷で戦える状態ではなく、紫も今の状態ではまともに戦えるのは難しいであろう。

 そして葛城に関しては信じたくないが、破忍に付いている。

斑鳩も現在消息不明で、斑鳩を追った詠もあれから連絡が来ていない。

この今までに無い戦力の不十分、加えて柱となるべき人物が四組の内三人もいない状況では、まともな対抗が出来るとは思えなかった。

 

「夜桜の言う事も分かっている。だからと言ってここで立ち尽くしてるだけでは、破忍の好き勝手を許すことになる!! それだけは…許してはならん。」

 

「ともかく今いるメンバーで、出来る限りのことをするまでだ。まずは飛鳥、そして夜桜に両備。お前達には半蔵、月閃、そして蛇女のリーダー代理を頼んだ。」

 

 霧夜と鈴音の判断により、半蔵には飛鳥、月閃には夜桜、そして蛇女には両備がリーダー代理を任され、あまりリーダー経験のない夜桜と両備は、少し驚き、これまでも斑鳩の代わりにリーダー的ポジションを取った事ある飛鳥は驚きはしなかったが、内心では不安の方が強かった。

 

 次に決められたのが臨時メンバー。空いてしまった戦力の蓋をする為の物らしい。

 抜忍である焔紅蓮隊を除いて決まった臨時メンバーはと言うと……

 

「半蔵からは風魔、そして土方。蛇女からは総司、千歳、芭蕉。そして月閃からは、選抜メンバー候補生から三人に頼む事とする。」

 

「ま、現時点で出来る事と言えばこれぐらいだ。私と霧夜先生も出来るだけ情報を纏めて置くが……気は抜かないようにな。」

 

 鈴音の話を最後に会議は終了したのだが、飛鳥達の顔には今だ、不安の表情が拭えなかった。

 

「んぅ? あれ?」

 

「どうした?」

 

「日影が……いない。」

 

「えぇ!?」

 

 会議室を出てしばらく歩いた後、未来がいつの間にか日影がいない事に気付き、それを知った焔は辺りを見渡して探したが、日影の姿は見当たらなかった。

 

「? 焔ちゃん。背中に何か貼られてるわ。」

 

「えぇ?」

 

 そんな中、春花が焔の背中に張られている紙を見つけ、それを聞かれて気づいた焔がその紙を取り、その中身を見ると……

 

【すまん、しばらく一人で行動するわ。 日影】

 

『…………』

 

「……オメェもかよ。」

 

 その紙、日影からの手紙を見て未来と春花は唖然となり、焔は頭を抱えながら戸惑いを隠せずにいた。

 

 

「…………」

 

 その頃、破忍のアジトらしき場所の外に居た葛城は、そこに座り込んでカップラーメンを食べていた。

 いくら半蔵を裏切ったとはいえ、好物までは変わらない見たいだったが、その表情は何時もの様な明るさは無く、暗く、何処か寂しげな感じだった。

 

「あらあら、こんな所でお食事を取っていたのね。」

 

「……闇か。ってか何だよそれ?」

 

 そんな葛城の後ろから話しかけて来たのは闇で、闇も食事中らしいのだがその食べているのを見て葛城は少し引いた。

 何せ明らかに虫のゲテモノを食パンで挟んだ、何処からどう見ても美味しいか疑わしい食べ物だったからだ。

 

「ウフ、私特製のサンドイッチですのよ? おひとついかが?」

 

「冗談よしてくれ。ラーメンが不味くなる。」

 

「それは残念。」

 

 闇の笑みを浮かべながらの言葉に言い返した葛城を見て本当に残念がった闇は、葛城の隣に座った。

 

「……随分と浮かない顔をしてますわね? やはり、かつての仲間を倒すのには抵抗ありまして。」

 

「……そんな分け、ないだろう。」

 

「何でしたら、私のおっぱいでも揉みますか? 確か葛城さん、女の子にセクハラするのだが大好きと聞いた事がありますが……」

 

 葛城と話した闇はそのまま自身の、大きさ的には春花と同じぐらいの大きさの胸を寄せ、谷間を大きく見せた。そこで本来の葛城だったら嫌がられても揉むと思った闇だったのだが、

 

「……悪りぃ、もうセクハラ好きも起きねぇよ。」

 

 葛城はそう言って再びラーメンを食べ始め、それを見た闇は少しつまらなそうな顔をしながら、ゲテモノサンドイッチを食した。

 

 

「…………ハァ。」

 

 翌日、半蔵学院忍教室では、飛鳥が沢山の資料の紙を見ながらため息を付いていた。

 どの資料も霧夜から渡された現時点で纏めた破忍の資料で、雑に置いたせいか忍教室の至る所に散らかっていた。

 しかしどの資料を見ても飛鳥の頭には入らない。その原因は言うまでも無く、斑鳩と葛城の事だった。

 

(斑鳩さん……かつ姉ぇ……どうして、どうしてなの?)

 

 怒ると怖いが、頼もしく皆を纏めてくれる斑鳩。セクハラ好きなのが短所ではあるが、どんな時でも優しく接してくれる葛城。どちらも飛鳥にとっては大事な先輩であり、家族同然の仲間でもある二人だ。

 その二人が片方は裏切り、片方は自分を忘れてくれと言う発言を残したまままたもや行方知れずになってしまう。

 柳生や雲雀達より一年多く二人と一緒に居る飛鳥にとっては、それは本当に理解できない事だった。

 

「飛鳥ちゃん……昨日の夜からずっとあの調子だよね。」

 

「あぁ……あいつなら心配ないと言いたい所だが、流石に今回はな。」

 

 忍教室に入って来た雲雀と柳生は、実は昨日の夜からこの状態だった飛鳥を見てそう話していると、

 

「わぁあああああ!! ちょっと待って菖蒲ちゃん!!」

 

「落ち着いてくださいって!? ちょ、」

 

『わぁああああああああああああああああああああ!!』

 

「ど、どうしんだって、」

 

「あ、菖蒲ちゃん?」

 

 何かを止めようとした風魔と土方の声が忍教室の出入り口から聞こえて来たかと思えば、そのまま倒れるように現れた風魔と土方を見た柳生と雲雀は、その原因となった菖蒲を見たのだが……

 

「殴り込みじゃあああああああああああ!! 待ってなさいよ漆月ぃいいい!!」

 

 菖蒲の姿は何処ぞの戦国武将見たいな格好になっており、一緒に見に付けていたハチマキと背中に背負っていた旗には、「許すまじ恋敵!!」とか「漆月殺す!!」と言った物騒すぎる言葉が書かれていた。

 

「ど、どうしたの菖蒲ちゃん!? とりあえず落ち着いて!?」

 

「これが落ち着いていられますか!? かつ姉様が……あの凛々しく美して優しいかつ姉様が裏切るなんてありえません!! きっといや!! 絶対あの漆月って女がかつ姉様を誘惑して、そして寝取ったに違いありいません!!」

 

「何でそうなるんだ!? ってか寝取ったって誰からだ!?」

 

「もちろん私から!?」

 

「言うと思ったぁ………」

 

 菖蒲を見て落ち付かせようとする雲雀だったが、菖蒲は落ち着く処か更に混乱状態になってしまい、柳生と風魔にツッコまれてしまう。

 

「とにかく私は、かつ姉様を取り戻しに行ってきます!! 止めても無駄ですからね!!」

 

「あぁもうだから落ち着け!? 第一どこに潜伏してるのかも分からないんだぞ!?」

 

「そんなのどっかに居る抜忍をボッコボコにして無理矢理情報聞き出せば良いでしょうが!?」

 

「ダメぇええええええ!? そんな勝手な事したら霧夜先生に怒られちゃうよ!!」

 

「知った事かぁあああああああああああ!!」

 

「あぁ……こりゃ重症だわ。」

 

「重症!? かつ姉様が!? こうして居られません、菖蒲!! 舞い忍びますぅうううううう!!」

 

「あんたですよ!? あんたが重傷なんですよ!?」

 

 完全に暴走してしまっている菖蒲を止めようとする柳生と雲雀と風魔と土方だったが、一向に落ち着く気配は無く、更に暴走状態が強くなってしまう菖蒲だったが次の瞬間、

 

「うるさぁあああああああああああああああああああああいぃ!!」

 

『わぁあああああああああ!!』

 

 飛鳥の大きな怒鳴り声に驚いてしまった柳生達は、その反動で忍教室から追い出されてしまう。

 

「ハァ……ハァ……うるさいから、ちょっと黙ってて!!」

 

 大きく怒鳴った反動で息を荒くした飛鳥は柳生達に怒りながら、忍教室の出入り口のドアを思い切り閉めた。

 

「あ……あんな飛鳥先輩、初めて見ました。」

 

「わ、私もです。」

 

『……………』

 

「飛鳥先輩………」

 

 そんな飛鳥を見て菖蒲と土方が唖然となってる近くで、柳生と雲雀は飛鳥を見て心配な顔を浮かべ、風魔も呟きながら飛鳥が居る忍教室を見つめた。

 

 

「…………」

 

 その頃焔紅蓮隊のアジトでは、焔はそのアジトの中で茫然としていた。

 斑鳩と葛城の事があるとは言え、詠と日影が居ないアジトは何処か、寂しく思えたからだろう。

 抜忍になって以来、共に過ごして来た焔紅蓮隊。辛い事も、厳しい事も、どんな事も、五人一緒だから切り抜けられた。

 そんな五人の内二人が一時的とは言え離れてしまったんだ。いくら焔と言えど不安になってしまう。

 

「うぅ~おはよう。」

 

「おはようって未来、その調子だとあなた全然眠れていないんじゃない?」

 

 そんな中、目を擦りながら部屋から出て来た未来を見て、昨夜はあまり眠れなかった事を春花が指摘する。

 

「だって……何時詠お姉ちゃんや日影が帰って来るとか、帰って来ないんじゃないのかと思うとさ……」

 

「気持ちはわかるけど、そんなんじゃ何時破忍が現れた時に大変なのは未来でしょ? とにかく、もう一回寝て来なさい。」

 

「で、でもぉ……」

 

 未来の気持ちを分かってはいても、未来を思って寝かせようとする春花。

 昔イジメられていた未来にとっても、詠や日影の存在は本当の姉妹同然の存在だった。その二人が居なくなった事は、未来とっては不安しかないからだ。

 

「……春花。未来の事、頼んだ。」

 

「頼んだって、焔ちゃんはどこ行くのよ?」

 

 そう言ってどこかに行こうとする焔を見て春花が聞くと、焔は来ていた赤のジャージのチャックを開けたかと思えば……

 

【散歩だ。】

コクッ

 

「………って、それぐらい自分の口で言いなさいよ!?」

 

 シャツに書かれていた文字を春花に見せた焔は頷いた後、そのまま外に出かけて行った焔の背中を見つめた後、さっきの行動の事にツッコむ春花だった。

 

「………」

 

 その隣で未来は眠たげな眼で焔の、寂しそうな背中を見ていた。

 

 

「どうぞ、夜桜先輩。」

 

「ありがとうございます、神裂。」

 

 その頃月閃女学館の忍部屋では、同じく破忍の事について調べていた夜桜が温かいお茶を渡す少女に礼を言っていた。

 彼女の忍名は神裂。背の高く青い長髪をポニーテールで纏めた彼女が、月閃女学館中等部の選抜メンバー候補生にして、今回臨時で追加されたメンバーの一人でもある。

 選抜メンバー候補生と言うのはその名の通り、中等部の中でも一番次の高等部の選抜メンバーに近い実力を持つ忍学生の事で、現在は神裂の他にも四人の忍学生がおり、その内神裂を含めた三人が、今回の臨時メンバーである。

 

「それは……龍姫の資料ですか?」

 

「えぇ。正直信じられなくてね。中等部とは言え月閃から抜忍が出ていた処か、破忍の一員となってる事にも。」

 

 夜桜が調べていたのは、破忍メンバーの一人でもあり、月閃の抜忍である龍姫の事が主だった。

 夜桜にとっても月閃の忍学生である事は誇りと思っているのか、その月閃から抜忍が出た事が今でも信じられないらしい。

 

「神裂、龍姫ってどんな子だったんですか? 同じ中等部だったんですよね?」

 

「残念ながら私も、龍姫とはあんまり接して無かったもので。あぁでも、中等部の中には龍姫と話した事のある生徒もいるかもしれません。すぐに準備を。」

 

「ありがとうございます。流石は将来、雪泉の右腕として戦う事を夢見ていると豪語するだけあります。」

 

「フフ、お褒めの言葉として頂きます。」

 

 龍姫について聞いた夜桜の質問に対し、神裂は答えながら準備をしている光景を見て、夜桜は思わず神裂を褒めた。

 神裂は家族を悪忍に殺されており、その事もあって悪忍の事を恨んでいたのだが、雪泉の温もりと月の正義によって心を救われ、現在はそこまで悪忍の事を恨んではいないらしい。

 以来雪泉の事を慕っている神裂にとって、今回の臨時メンバーとして選ばれた事は嬉しい限りだったようだ。

 

「……先生方と話は付けました。今からでも大丈夫ですよって。」

 

「ありがとうございます。それじゃあ早速、」

 

 神裂の報告を聞いて夜桜が立ち上がったその時だった。

 

ドォオオオン!!

「っ!? なんじゃ今のは!?」

 

「この爆発は……まさか!?」

 

 突如として大きな爆発音が聞こえた夜桜が驚く中、神裂はその音を聞いて嫌な予感を感じた。

 

 

「あぁ~もぉ!! どこ行ってんのよあいつらは!?」

 

 同時刻の蛇女では、集会室で両備が大きな声を出して怒鳴っていた。

 どうやら今回の臨時メンバーとして加わった補欠メンバーの総司、千歳、芭蕉の三人が集会にも来ずに独断行動を取ったのを知り、その事で両備はイライラしているらしい。

 

「もぉ~両備ちゃんったら、そんなに怒らなくても。」

 

「これが怒れずにいられるかっての!? あのナルシスト過ぎる総司や皮肉屋の千歳はともかくとして、芭蕉まで私に報告もせずに勝手な行動をとるってどういう事よ!?」

 

「ば、芭蕉ちゃんは総司ちゃんに無理矢理連れ行かれただけだと絶対に思うけどなぁ~。」

 

「だとしても!? 反論して一人だけでも私の所に来るぐらいは出来るでしょうが!? ったく!!」

 

 怒りっぱなしの両備を落ち着かせようとする両奈であったが、両備のイライラは今だに収まる事無く、それを見ていた両奈はと言うと……

 

「しょうがないなぁ~!! だったらそのイライラ、両奈ちゃんにぶつけて見ない!? そしたら絶対ぜっ~たい落ち着くと思うから。」

 

「……あぁそうね、だったらあんたに八つ当たりしてイライラ発散と行こうじゃ無いのよ!?」

 

 両備に対して尻を突き出し、そのまま尻を振る両奈を見て両備は、更に眉をひそめながら片手を突き出し、そのまま両奈の尻を叩こうとしたその時だった。

 

ドォオオオオン!!

「わぁああ!!」

 

「ワォオオオオオン!!」

 

 突然の爆発音に驚いた両備はその反動で転び、そのまま顔を両奈の尻に当ててしまったのに対し、両奈は何時も乍らの反応で犬の鳴き声の様な声を上げる。

 

「もぉ~両備ちゃん!!  私●●の匂いを●●●だなんて変たぁ~い!!」

 

「あんたに言われたくないわよバカ犬!? ってかそんな所じゃない?!」

「敵襲よ!!」

 

 その事について両奈が言った事に対して両備はツッコミながらも、すぐさまやって来たであろう敵襲に対して戦闘態勢を取ろうとする。

 

 

 死塾月閃女学館中等部。そこでは現在、謎の襲撃を受けていた。

 校舎の至る所が破壊されて行き、逃げ惑う中等部生徒。その奥にはその原因となった者達が居た。

 

「ウゥウウウウウウウウ………」

 

「……フン。さぁ~てと始めますか? 懐かしの母校で行う、」

「クソ黒影のクソ弟子の、残虐ショーをな。」

 

 人工妖魔の群れと共に現れた襲撃、それは両手に斧を持ちながら唸り声をあげる項羽と、無気味な笑みを浮かべながら双竜を模した手甲をはめた手を鳴らす龍姫によるものだった。

 

 

 そして蛇女でも同じような襲撃を受けていた。蒼い炎によって燃え盛る森林エリアの訓練場の中を進み人工妖魔の群れ。その中には……

 

「いやぁ~蒼志ちゃんが元蛇女で良かったなぁ!! 楽に蛇女に入れちゃったよ!!」

 

「ご託は後にしてください。さぁ、さっさと始めますよ。」

 

「分かってる分かってるって!! そんじゃあ僕も……」

「血祭ショーを始めるとしますか。」

 

 蒼く燃え盛る原因となった蒼炎を纏った刀を持つ蒼志に答えながら、二振りの内の一本の鎌の刃を舐める鎌倉の姿があった。

 

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