閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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40.再翔の鳳凰

 

「………………」

 

 分厚い雲に覆われた空から降り続ける雨。

 その雨が落ちて行く荒野の中心でただ一人、斑鳩は顔を隠しながら座っていた。

 どうやらここは、斑鳩の心中の光景なのだろう。

 

(どうして……どうして皆して、私を連れ戻そうとするんですか? 私には……もうそんな資格すら無いのに? あったとしても私が居れば……)

 

 先ほどの詠や葛城の言葉を思い出しながらも、斑鳩の心は今だ閉ざされたままだった。

 

(私はもう……自分のせいで誰かが傷つくのは見たくない……嫌なんです。もうこんなの……私がいるだけで誰かが苦しむのは、嫌なんです。もう……本当に………死んでしまいたい…)

 

 村雨、詠、叢、葛城、そして蒼志。自分が存在するだけで傷つき、苦しんだ人達や、まだ見ぬ傷つけてしまった人々の事を考えながら、斑鳩は雨が降り続ける空の下、涙を流し続けていた。

 

――そうやって……あなたは何時まで逃げてるおつもりですか?――

 

(……え?)

 

 そんな斑鳩に対して、声を掛けた者がいた。

 斑鳩はその声を聞いて顔を向けると……そこにはもう一人の、まだ心が折れる前の斑鳩が立っていた。

 

「……あなたなら……私でしたら分かっているでしょ? 自分なんですから。」

 

「………」

 

「私にはもう……忍びとしての資格も、誰かと居る資格すら無いんです。私が居るだけで……私が生きてるだけで、誰かを傷つけてしまうんです!! だったらいっそ、そんな事ならいっそ!! 私一人だけ死んでしまった方が!!」

 

 もう一人の斑鳩を見た斑鳩は立ち上がりながら、今の今まで抱え込んでいた事を、自分自身にぶつけるように言い放った。

 もう嫌だ、苦しい、死にたい、そんな事ばかり考えていた斑鳩の言葉から、完全に自暴自棄となっていたのは明白だった。

 それを今だ蒼志に倒される前の、己の罪の深さを分かっていなかった自分にぶつけていたのだったが……

 

「……いい加減に、」

 

「え?」

 

「いい加減にしなさい!! このバカ!!」

 

 もう一人の斑鳩は思い切り斑鳩の顔を殴り飛ばし、その反動で斑鳩は倒れたが、もう一人の斑鳩は両肩を掴んで上半身を起こした。

 

「そうやって何もかも自分のせいにして、何もかも自分が居なくなればもう大丈夫って勝手に思って、それで満足するのはあなただけです!! そんなの……そんなの誰も望んでなんかいません!!」

 

「……じゃあどうすれば良いんですか!? 私はたくさんの罪を重ね過ぎた……私のせいで誰かが傷ついてしまった……こんな私に、一体どうしろと言うんですか!?」

 

 両肩を掴みながらもう一人の斑鳩は叫ぶが、その叫びを聞いてもなお、どうすれば良いか分からなくなっていた斑鳩は涙を流し続けながら叫ぶと、もう一人の斑鳩は斑鳩を無理やり立ち上がらせた。

 

「私が……あなたがどんな罪を重ねようとも、どれだけ自分のせいで誰かが傷ついたとしても……それでも抗い、戦い続けるのが!! 斑鳩と言う忍であるのと同時に、人間では無いのですか!?」

 

「………」

 

 もう一人の斑鳩はまっすぐ斑鳩を見つめながら言い、それに少し動揺する斑鳩に対して話し続けた。

 

「それに……例えどんなに罪を重ね、それが許されない罪を犯したとしても、今まで繋げて来た絆は……貴方を見捨てましたか? 貴方を……裏切りましたか?」

 

「っ!?」

 

 その言葉を聞いて斑鳩は、思わず目を見開いた。

 そしてその脳裏には、今まで半蔵学院の仲間達と共に戦い抜いた記憶がよぎっていた。

 

「思い出しなさい!! 貴方が忍としてあり続けた理由を!! あなたの………忍としての夢を!!」

 

 そうもう一人の斑鳩が語り掛けた次の瞬間、斑鳩は思い出して行くのだった。

 飛鳥……雲雀……柳生……風魔……菖蒲……土方……半蔵……霧夜……大導寺……葛城……そして詠……

 時に共に戦い、時にぶつかり合い、そして……自分を助けようと傷つきながらも、手を伸ばそうとした仲間や友の事を。

 そして……自分が何の為に忍としてあり続けようとした理由も、そしてその先にある夢を、斑鳩は思い出した。

 

(……あぁ、なんだ。何でこんな……大事な事を、あった……あったじゃないですか。理由も、夢も。)

 

 その事の全てに、ようやく思い出し気付いた斑鳩がふと自身の手を見ると、そこにはいつの間にか飛燕が握られており、先ほどまで雨が降り続けていた空も雨が止み、青空が広がって行った。

 

「………あ、」

 

 その青空を見上げながら立ち上がった斑鳩の目の前には、もう一人の斑鳩の姿は居なくなっていた。

 だが斑鳩はそれで、不安になる事はもう無かった。

 

「……そうです。私は……私は!!」

 

 飛燕を握りしめながら呟き、目を改めて見開いた斑鳩の瞳には、もう絶望も悲しみも迷いも無くなっていた。

 

――――

 

「秘伝忍法……鬼火・蒼炎歌!!」

 

「がぁ!?」

 

「くぅ!?」

 

「ぐぅううううう!?」

 

 蒼志を食い止めようとする葛城と日影と詠だったが、強い憤怒を燃やす蒼志の斬撃に、防戦せざるを得なかった。

 

「……いい加減退いてくれませんか? さもないと、あなた達もあの女諸共、」

 

「っへ!! 散々あたいも殺そうとしてた癖に今更!?」

 

「あいにく、ウチもそんな覚悟無しにここに来たわけじゃないで。ってよりあんた……頭上注意や。」

 

「なぁ!?」

 

 刃を向けながら蒼志が言った言葉に葛城と日影が答えた直後、日影の言葉を聞いて上を向いた蒼志が見た先には、黒い大剣を振りかざそうとした詠が飛んでいた。

 

「がぁあああああああああああああああああああああああ!!」

 

「くぅ!? 蒼孤炎・鬼火!!」

 

 狂乱状態のまま大剣を振りかざす詠に対し、蒼志は歯を食いしばりながら秘伝忍法「蒼狐炎・鬼火」を放ち、蒼炎で伸びた刃が詠の大剣とぶつかり合って激しく火花を散らした後、詠は一旦蒼志から離れた。

 

「ウゥウウウウウ……ウ゛ゥウウウウウウウウ!! っ!?」

 

 唸り声を上げながら、再び蒼志に突撃しようとした次の瞬間、詠は身体に電気が走ったのと同時に、胸を苦しめていた。

 

「ア゛ぁあああああああああああああああ!!……うぅう……」

 

「っ!? 詠!?」

 

「詠さん!?」

 

 どうやら制限時間が来てしまい、元の姿に戻ってしまった詠は倒れてしまい、葛城と日影もそれを見て駆けつけようとしたが、

 

「邪魔です!!」

 

「がぁああ!?」

 

「ぐわぁ!?」

 

 蒼志が「獄狼炎・鬼火」を放ち、蒼炎を纏ったケルベロスが葛城と日影を襲った。

 

「心配しなくても……あなた達も後で殺してあげますよ。その前に、厄介な奴からですけどね。」

 

「ハァ……ハァ……ハァ……くぅ!?」

(こ…こんな時に制限時間が来るなんて……も、もう身体が……)

 

 攻撃を受け倒れた二人を見ながら、蒼志は息も荒い詠に近付いた。

 詠は詠で立ち上がろうとするが、狂乱化の反動か立てずにいた。

 

「……さぁ、これであなたも……終わりです!!」

 

「っ!?」

(……すみません、皆さん。私……ここまで見たいです。)

 

 そんな詠に近付いた蒼志は、蒼炎も燃やす刀を振りかざし、それを避ける事も出来なかった詠は、心中で皆に謝った。

 

「………え?」

 

 だが……その刃が詠の身体を斬る事は無かった。何故なら……

 

「……な、何故……なぜあなたが……今更!?」

 

 詠の元へ咄嗟に駆け付けた斑鳩の、飛燕の刃が蒼志の斬撃から防いだからだ。

 

「スゥ……ハァアア!!」

 

「くぅ!?」

 

 一息吸った後、気合を入れ直して蒼志の斬撃を退けた斑鳩に対し、蒼志は苦虫を噛んだような表情を浮かべながら後ろに飛んだ。

 

「……まったく、私を助けるからって……それであなたまで死んだら元もこうもありません!? 詠さん、あなたはそこまで愚かな人でもないでしょ!?」

 

「……え?」

 

「葛城さんも日影さんも、何も考えずに突っ込みすぎです!! 特に葛城さんは……もうちょっと慎重になってください!!」

 

「い、斑鳩……」

 

「あんた……」

 

 刃を鞘に戻した後、斑鳩が自分に注意したのを聞いて詠は目を見開き、続けざまに言われた葛城と日影も、同じような表情をした。

 

「三人共………本当に本当に、無茶し過ぎにも程があります!! お陰で……お陰様で私………」

 

「まだ……死ねないじゃないですか。」

 

 そう説教の言葉を言いながら斑鳩が振り向くと、涙は流れていたが、その瞳には光が戻っていた。

 

「………フゥ、ようやっと戻って来たようやな。」

 

「ったく……遅ぇよ!! バカ!!」

 

「本当に……本当の本当に……いくら何でも遅すぎますよ!! 斑鳩さん!!」

 

 そんな斑鳩を見て日影は座り込みながら、葛城は倒れて腕で顔を隠しながら、詠は大量の涙を流しながら斑鳩に言い返した。

 

「……何ですか、何ですか……何ですかあなたは!? 急に現れて死にに来たと思ったら今度は死ねなくなった!? 我儘にも程がありますよ!!」

 

 そんな中、詠とは正反対に蒼志は怒りを爆発させ、斑鳩に向けて刃を向けながら叫んだ。

 

「……蒼志、あなたは言いましたね。私に忍になる資格はないと。立派な忍になっても、その先がないと……でも!! そんな事はないと、今の私は断言します!!」

 

「…………」

 

 蒼志に向けて涙を拭った後、話しだした斑鳩を睨む蒼志。

 だが斑鳩は臆することなく、話し続けた。

 

「私には…護るべきものがあります。苦難と幸福を共にした仲間達。時に競い、時に力を合わせる好敵手達。時間は掛かっても、それでも認めてくれた家族。そして何より……どんな苦しみながらも、私の手を離すまいと手を伸ばしてくれた……最強の親友が居ます!!」

 

「っ!!」

 

 斑鳩の言葉を聞いて、思わず顔を真っ赤にする詠。

 

「私は……その全てを護りたいんです!! どんなに苦しくとも、どんなに傷つこうとも、どんなにその為に、何かを犠牲になってしまっても!! 私は、私が護ると決めたものを護り通したい!! それが私の忍の夢で……」

 

「私だけの、忍道です!!」

 

 斑鳩は右目にある大きな傷痕をなぞりながら、大きな声で叫んだ。

 それは死して絶望から逃げようとした自分との決別であるのと同時に、新たな自分になる為の決意表明のようだった。

 

「………ふざけるな……ふざけるな……ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!」

 

「ふざけるなぁああああああああああああああああああ!!」

 

 そんな斑鳩の言葉を聞いて、憤怒の怒りが限界値を達したのか、蒼志は叫びながら刃の蒼炎を激しく燃やした。

 

「決着を付けましょう……蒼志!! 忍……」

 

「転身!!」

 

 だがその憤怒の怒りに臆する事なく、斑鳩は巻物を手にしながら、大きな声と共に忍転身した。

 その忍装束は前の様なボロボロ状態でなく、元の形に戻る処か白だった所が蒼く染まり、それはまるで蒼炎を現すようだった。

 

「半蔵学院三年……斑鳩、今再び……」

 

「舞い忍びます!!」

 

 転身が完了し、改めて名乗り上げた斑鳩は、怒りを剥き出しにして向かって来る蒼志が刀を振るったのに対し、鞘から飛燕の刃を抜いてそれに応戦した。

 

「ぬぅうううう……ハァアアアア!!」

 

「フゥ……ハァアアアアアア!!」

 

 激しく火花をを放つ刃と刃は、離れたかと思えばまた交わり、また離れたかと思えば再び交わった。

 それを見ただけで、斑鳩も蒼志も、お互い本気だって事が分かった。

 

『秘伝忍法!!』

 

「獄狼炎・鬼火!!」

 

「鳳火炎閃!!」

 

 そして再び離れた直後、お互いに秘伝忍法を放った。

 お互い蒼炎に燃えるケルベロスと鳳凰。 それは何度もぶつかり合った後、互いとも消滅するように爆発した。

 

『ハァアアアアアアアア!!』

 

 その直後、斑鳩と蒼志は再びぶつかるように突っ込み、刃と刃を交わらせた。

 

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