閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆 作:XW
「ハァアアアアアアアアアアア!!」
「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!」
「だぁああああああああああああああ!!」
同じ頃、飛鳥と焔も漆月相手に激闘を繰り広げていた。
互いぶつかり合う斬撃、その振動は忍結界全体に響き渡り、壊れないのが不思議なほどだった。
「ぐぅう!! このぉおお!!」
(飛鳥ちゃんに焔ちゃん、やっぱり強くなってる!? でも…だからと言って!?)
漆月は今の飛鳥と焔の強さに少し冷や汗を掻きながらも、迫りくる二人の猛攻に応戦しようと、左手から数発気弾を発射させたが、今の飛鳥と焔には敵では無かった。
『ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「なぁ!?」
二人はその気弾を全て斬り捨てながら漆月に近付いて行き、それに思わず驚いた漆月に急接近した次の瞬間、
『秘伝忍法!!』
「二刀繚斬!!」
「響!!」
「がぁあああああああああああ!!」
二人の秘伝忍法「二刀繚斬」と「響」が決まり、まともに食らってしまった漆月は遂に、膝を地に付けてしまった。
「がぁああ!? ハァ……ハァ……ハァ……っ?!」
息を整えながら立ち上がろうとした漆月だったが、焔に刃を向けられた事で、それを止めてしまう。
「もう良いだろう……これ以上は……本当に、お前を殺してしまう。」
「……ねぇ、もう止めよう。こんな事したって、漆月ちゃんがただ苦しいだけだよ!? だから……」
道は違えたと言えど、これ以上友を傷つけたくない。
元悪忍である焔でさえ、その様な気持ちになっていた。
そしてそれは焔以上の飛鳥は当然、悲しげな表情を浮かべながら漆月に言った。
「………言ったはずだよ? 私は……私達はもう止められない。止まる事が出来ないって。」
「し、漆月ちゃん……」
「お前……」
だが、今だに諦めて無かった漆月は睨みながら立ち上がり、その姿を見た飛鳥と焔が少し驚く中、漆月は話し続けた。
「ここまで来るまで……たくさん残酷な光景を見て来た。残酷な忍の裏を見て来たんだ……それを全て……ぶち壊す為にも………」
漆月は首から下げ続けていた、太陽の形に造られたペンダントを握りしめながら呟いていると、漆月の身体から何かが溢れ出し始めていた。
「っ!? こ……この力ってもしかして……」
「妖魔と同じ……」
それが妖魔と同じ力だと、飛鳥と焔が気づいた中、漆月の身体から出る妖魔の力…妖力は更に強くなって行き……
「私は諦めない……諦めて……たまるかぁああああああああああああ!!」
漆月が叫んだのと同時に、その妖力が急激に強くなったのを示すように、漆月の周りが黒い瘴気に溢れ出した。
「なぁ!?」
「漆月ちゃん!?」
焔と飛鳥が驚く中、その瘴気は漆月の身体を包んで行き、その瘴気が晴れると……漆月の姿は変貌していた。
「…………」
「う…漆月……ちゃん?」
「お前……」
その姿に飛鳥だけでなく、焔も言葉を失った。
結んでいた髪は解かれて紫色に染まっただけでなく、両肩には鳥、両腕には龍、両足には狼、そして胸には獅子の姿をした妖魔の頭が取りついたような姿になっていた。
それはまるで、ありとあらゆる妖魔の力を手にし、それを極限までに高めたような姿だった。
名づけるとすれば……妖神の漆月・獄。
今飛鳥と焔の目の前に立つのは、漆月であって漆月ではないと言っても良い存在だった。
「………フゥウン!!」
「ぐわぁあああああああ!!」
「がぁあああああああああああ!!」
そんな存在と化した漆月が、更に強い瘴気を纏った刀による斬撃を繰り出すと、先ほどまでの物とは比べる事すら出来ない斬撃を飛鳥と焔はまともに食らってしまう。
「がぁ……な、何? 今の……」
「ぼ…ボケっとしてる暇は、無さそうだぞ!!」
吹き飛ばされた後、立ち上がりながら呟いた飛鳥に対して焔が言ったのもつかの間、漆月は不気味な笑みを浮かべながら二人に急接近しながら刀を何度も振るい、それに飛鳥と焔は刀で防ぐのが精一杯だった。
「な……何なの、この力……がぁ!?」
「こ、これが……こいつの、ぐはぁ!?」
その振るった刀による斬撃の重さと強さに飛鳥と焔は防ぎながら呟いていると、その防御の隙を突かれて斬撃を食らってしまい、後ろに少し引いてしまった。
「くぅ!? 半蔵流乱れ咲き!!」
「魁!!」
飛鳥は秘伝忍法「半蔵流乱れ咲き」で、焔は秘伝忍法「魁」を使って応戦しようとしたものの、漆月は足元から禍々しい瘴気を出し、それを全て防いでしまう。
「フフ……お返し……だよ!!」
「ぐわぁああああああああああああ!!」
「キャアアアアアアアアアアアアア!!」
全て防ぎ終わると、漆月はお返しと言わんばかりの更に強い斬撃を放ち、それを食らってしまった焔と飛鳥は、二人とも後ろに吹き飛んでしまう。
――――
「なぁ!? こ、この振動はなんじゃ!?」
その振動は忍本部に響いており、振動の強さなどで驚いた夜桜は思わず立ち上がった。
「どうやら……上に着いた奴らが、ラスボスに苦戦してる見たいね。」
「よ、両備さん!? その傷は……」
そんな夜桜に声を掛けながら、一番傷が酷い右足を引きずりながら両備がやって来て、その姿に夜桜は驚いた。
「お互い様でしょ? それよりどうするの、行ったとしてもこの状態じゃ、足手まといになるのは分かってるだろうし……」
「………。他の皆もこの振動に気付いて、終わった者は最上階へ向かってるはずじゃ。だったら……」
「私達も行かないと……ね。だったら、急いで……くぅ!?」
両備の質問に対して夜桜は答えると、それを聞いた両備は前に進もうとしたが、右足の痛みでそれを止めてしまう。
「クソォ……って!? ちょ、ちょっと!?」
「その足じゃ遅れるでしょ? 肩ぐらいは貸してやりますよ。」
「……れ、礼は言わないわよ。」
その痛みに悔しがる両備を見て、夜桜は自分の肩を貸した。
それに驚いた両備に対して夜桜は言い、それを聞いた両備は思わず、顔を赤らめた。
そうこうしている内に夜桜と両備は、飛鳥と焔が戦っている最上階へと目指した。
――――
漆月の攻撃が止むと、その周囲は殆どが荒れ地のように壊れていた。
忍結界内で作られた公園の遊具も、その周囲にあった家も、何もかもが崩壊していた。
「………へぇ、そんなになっても、まだ諦めないんだねぇ~そっちも?」
そんな光景となり、本当に何時壊れても可笑しくない忍結界の中心に居た漆月は、目の前に居る二人を見て呟いた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ………」
「ハァ……ハァ……ハァ………ハァ………」
全身傷だらけ、至る所からは血も出ている。
当然忍装束もボロボロで、素肌も露わになった場所もあった。
そんな状況で息も荒くなっていながらも、飛鳥も…焔も…その瞳から戦意は消えていなかった。
「……何なの? 何なんだよ………何だよ二人して!?」
そんな飛鳥と焔を見て漆月は自身の頭を思い切り掻きながら、今だ諦めない二人に対して感情を爆発させた。
「そんなに今の忍社会が護る価値あるの!? 二人の忍道って、そうじゃないと果たせないの!? 良いじゃんそんなの!? 私達が今のぶっ壊して、新しい忍社会で果たせれば良いじゃん!! なのに何で!? どうして!? どうしてそこまで!?」
身体がボロボロになってまで、戦い続ける飛鳥と焔を見て、漆月は理解出来なかった。
二人の信じた忍道は理解出来た。
だがそれを今の忍社会でも果たそうと思っている事に限っては、漆月は全く理解できなかった。
自分が作る新しい忍社会でも、その忍道は貫けるのではないのか? 今の漆月には、そう思えるしか出来なかった。
「それは……お前の都合と勝手な理想だろ? 漆月。」
「ハァ?」
そんな漆月に対して焔が刀を向けながら言った言葉に、漆月は理解出来ず首を傾げた。
だが、そんな漆月に対しても、焔は話続けた。
「確かにお前達が今の忍社会をぶっ壊して、新しく作られた忍社会の方が私達も楽かもしれない……けど、そんなんじゃダメなんだ。」
「……何が駄目なの?」
「時に挫折して、失敗して、敗北する……そう言うのも乗り越えないと、私達は……私達でなくなるんだ!! それは、お前達が一番理解出来てるはずだ!!」
「っ!?」
焔の言葉を聞いて、漆月は思わず目を見開いた。
そんな漆月に対し、今度は飛鳥が口を開いた。
「漆月ちゃん……私がさっき言った正義ってのはね……今この瞬間、大事な人達が苦しみ、悲しませているものから助けたい。全部は無理だとしても、この手が、この力が、この刀と盾が届く笑顔と夢を護る事を、諦めたくない。それが私の……私だけの刀と盾で、その中には……」
「漆月ちゃん、君も入ってるんだよ。」
「なぁ!?」
飛鳥の言葉を聞いて、漆月は驚きを隠せなかった。
「な……何を言って!?」
「だって漆月ちゃんも、破忍の皆も、ずっとずっと苦しかったんだよね? 悲しかったんだよね?! だったら!! 全部は無理だとしても、ほんの少し……この手のひらの大きさぐらいの痛みからだけでも私は……私達は救いたいんだ!!」
飛鳥の言葉は嘘偽りなく、本当に自分が思っていた言葉だったが、漆月には、その言葉は理解できなかった。理解したくなった。
「……知ったような……知ったような……知ったような口を聞くなぁあああああああああああああああああああ!!」
『くぅ!?』
漆月は頭を抱えながら叫び、同時に妖力を更に高めた。
その勢いに思わず怯みかける飛鳥と焔だったが、再び刃を向けながら前に足を動かした。
「漆月!! 絶対にお前を倒す……そして、」
「絶対に……助ける!!」
飛鳥と焔がそう豪語した次の瞬間、飛鳥と焔の身体が突然輝きだし、その輝きは光を増して行った。
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
光に包まれた飛鳥と焔が叫ぶと、足元から溢れ出たオーラが二人を包んで行った。
『………はぁああああ!!』
「っ!? その刀は……その姿は!?」
やがて二人が勢い良くそのオーラを破ると、光輝いた力によって姿が変わっていた焔と飛鳥の姿を見て、漆月は驚愕した。
先ほど似まして紅蓮の炎を熱く燃やし、もう片方の手には陽花の形見である、刃身に太陽の刻印が刻まれた刀を握っていた焔。
全身に吹いていた風が強くなっただけでなく、髪も緑に染まっており、忍装束の上には陽花が身に付けていた、背中に太陽が描かれた陣羽織を
羽織った飛鳥。
陽花の形見を手にした焔。身に纏った飛鳥はそれぞれ、覚醒状態のその先の姿……
紅蓮の焔・煉と真影の飛鳥・照となっていた。
「………へぇ、そうか。なる程ね……だったら尚更!!」
その姿、陽花の形見を手にして強くなった飛鳥と焔を見て漆月は、目を見開きながら驚いたかと思いきや笑みを浮かべると、背中に生えていた悪魔の翼を展開し、宙に浮いた。
「尚更二人には……負けるわけには行かないね!!」
そのまま漆月は空中へと飛んで行ったが、それを飛鳥と焔はただ、眺めるだけでは無かった。
「行くぞ……飛鳥!!」
「行こう……焔ちゃん!!」
そう言って焔と飛鳥が大きくジャンプしたかと思うと、そのまま宙に浮いて空中を駆け、宙を舞う漆月を追いかけるのだった。