閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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45.本当に欲しかったもの

 

「んぅうううう!!……んはぁ!!」

 

 その頃最上階では、焔と飛鳥に敗れたはずの漆月が立ち上がった。

 全身ボロボロで上半身も半裸状態。

 戦う力すら残っていない状態にも関わらず、漆月の目には今だ戦意が燃えていた。

 

「漆月ちゃん……」

 

「ハァ……ハァ……まだ、まだ……だよ!! こんな……くぅ!! こんな所終わって……終わってたまる…ものかぁ?」

 

「……どうして、どうしてそこまでして、」

 

「二人には分かんないよ!?」

 

 息も荒く、もう戦える状態でもない漆月を見て飛鳥が質問しようとすると、漆月がそれを遮るように叫んだ。

 

「私は……私の中に妖魔が宿っているってだけで、誰も助けてくれなかった!? どいつもこいつも……私の殺そうとして来た。妖魔が宿ってるだけだよ!? それだけで忍は、人の命を簡単に奪えるんだよ!?」

 

『…………』

 

「私はそんな……そんな忍社会が嫌い……だから!! 例え全てを敵に回そうとも、どれだけ嫌われようとも……私は……私は!?」

 

 漆月が飛鳥と焔に対して、今まで抱いていた思いを曝け出す様に避けだその時だった。

 

「だったら……だったら何で破忍なんて作った!?」

 

「っ!?」

 

「さっきのお前の力やその言葉を聞く限り、お前だったら一人でも潰せるものなら潰せるだろう!? なのに何で!? 何でアイツらを仲間にした!? 駒として利用する為か!? 違うだろう!?」

 

 焔が漆月に対して言った言葉を聞き、漆月は目を見開きながら茫然となっていると、今度は飛鳥が口を開いた。

 

「……ねぇ漆月ちゃん。本当は、忍社会の破壊だなんてどうでも良かったんじゃないの?」

 

「なぁ!?」

 

「だって漆月ちゃん、ずっと何処か寂しそうな目をしてたじゃない? 今だってそう、ここで負けたら蒼志ちゃん達に嫌われるかも知れない……だからここで負けたくなかった。そうでしょ?」

 

 飛鳥の言葉を聞いて、再び茫然となる漆月の脳裏に写ったのは、初めて蒼志や闇達と出会った時の記憶だった。

 皆、それぞれ不運や理不尽に傷つき、そして何処か悲しんでいた。

 そんな皆を見て漆月は何処か、自分を重ねていたのかもしれない。

 それは漆月の勝手な想像に過ぎないのかもしれない。だがハッキリ言えるのは、漆月には……そんな皆なら、自分を分かってくれると思っていたと言う事だった。

 

(……あぁ、そうだ。私はただ……誰かに理解されて欲しかったんだ。妖魔が宿っているだなんて関係ない。私がこの世界で生きて良いと認めてくれる人が、私を理解してくれる仲間が……友達が欲しかったんだ。)

 

 只々、自分を理解して欲しかった。

 自分がこの世界に生きて良いと認めて欲しかった。

 自分を理解してくれる仲間が……友達が欲しかった。

 何時からか忘れていた思いが、漆月の脳裏に思い出されて行った。

 

「……なんだよ、それ。そんな単純な事も忘れるなんて……忍社会の崩壊だとか、そんなの……どうでも良かったはずなのに……私は……私は……」

 

 恐らく忍社会を壊そうと思ったのは、自分達の居場所が欲しかった思いから来たのだろう。

 それすらも忘れていたのかもしれない漆月だったが、それも思い出した途端、同時に涙を流していた。

 

「漆月ちゃん………」

 

「え?」

 

 そんな漆月に対して、飛鳥は手を差し伸べた。

 それに漆月が少し困惑していると、飛鳥の隣にいた焔も手を差し伸べた。

 

「私達もその中に居る、だって私達は、」

 

「最強の、幼馴染みだから。」

 

「…………」

 

 そう言いながら飛鳥と焔は笑みを見せ、その言葉に少し笑みを見せた漆月は、その二人の手を優しく握りしめた。

 

「漆月………」

 

 そんな中、後ろから聞き覚えのある声が聞こえて振り向くと、別ルートからやって来た蒼志を除いた闇達が立っていた。

 全員ボロボロで、表情を察するに全員負けた事は、漆月も察しは付いた。

 漆月はそんな闇達を見て、涙を拭った後申し訳なさそうな顔を浮かべて近づいた。

 

「その……皆、ごめん……なさい。私……負けちゃ、」

 

「はい、そこまで。」

 

「え?」

 

 これで皆に嫌われるかも知れない。また一人になるかも知れない。そう思いながら闇達に謝ろうとした漆月だったが、鎌倉に言おうとした言葉を止められた。

 

「その……なんだ、負けたのは私達も同じだ……だから、」

 

「誰も、あなたを嫌おうとは思っていませんよ。」

 

「皆……」

 

 漆月に対して、龍姫と転界が申し訳なさそうな顔を浮かべながら言い、同じような表情を浮かべる闇達を見て、これで何度目か分からない茫然な表情を取る漆月。

 

「だから漆月。最後の最後まで、一緒にいさせてくださいまし。」

 

「正直言って、あなたの所しか居場所も無いしねぇ~。」

 

「漆月……私モ、一緒ガ……良イ。」

 

「み、皆……」

 

 闇と拷楽、項羽の言葉を聞いてまた涙が流れそうなのを我慢していると、向こうの方から気配を感じて振り向いた先には、斑鳩達と一緒に来た蒼志の姿が居た。

 

「斑鳩さん……」

 

 斑鳩の姿を見て、飛鳥が少し困惑している中、蒼志は下を向きながら漆月達に近付いて行った。

 

「………私も、あなたと……あなた達と一緒に、い……居させて、ください。」

 

「………もう、復讐は良いの?」

 

「………もう、する気も無くなりました。」

 

「そっか。」

 

 漆月達に対して言った蒼志の表情を見て漆月が聞くと、その質問に対して笑みを浮かべながら蒼志は答え、そんな蒼志を見て察した漆月も笑みを浮かべながら頷いた。

 

「……ねぇ? これからどうするの?」

 

 そんな中、飛鳥が漆月に対してそう質問すると、漆月は飛鳥達の方を向いた。

 その後ろには、いつの間にか夜桜や両備達も集まって来ており、漆月は飛鳥と焔達に対して答えようと口を開いた。

 

「決まってるでしょ? 私達は破忍、気に入らないものはぶっ壊すだけ!!……皆が、」

 

「皆が、最高の忍として、それぞれの夢を叶えれるようにね。」

 

 っと、漆月は悪びれるような笑みを浮かべながら答え、蒼志達も同じような笑みを浮かべていた。

 

「……ハァ、だったらさっさとここから去れ。じきに忍本部の、」

 

「そうだね。じゃお言葉に甘えてとしますか。」

 

 そんな漆月達を見て呆れたのか、奈楽はため息を付きながら言い、それを聞いた漆月が転界に指示を出すと、転界はすぐに転移空間を作り出した。

 

「それでは皆さん、もしまた会う事があれば……敵じゃない事を祈ります。」

 

「私モ……今度ハ……一緒ニ……戦イ……タイ。」

 

「私は別に敵でも良いけどねぇ~!! だってまた気持ちい事したり~されたり出来るからぁ~!!」

 

「フフッ、まぁ……次に会うお楽しみ、って事で良いじゃないですの?」

 

「ま、まぁ!! 私もクソ月閃意外となら……良いけど。」

 

「私も~!! ぶっちゃけ両備ちゃんの顔はあんま見たくなぁ~い!!」

 

「それはこっちも同じっつうの。」

 

「ウチも……少し同感。」

 

 転界と項羽と拷楽と闇がそれぞれ言いながら転移空間を通って行き、龍姫と鎌倉の言葉に対しては、両備が言い返した事に四季も頷いていた。

 

『……フン!!』

 

 そんな両備や四季達を見た後、そっぽ向きながら龍姫と鎌倉も通って言った後、蒼志は斑鳩の方を見つめた。

 

「蒼志……」

 

「………今度は、別の方法で会いたいですね。」

 

 心配な表情を見せる斑鳩に対して、蒼志はそれだけ言いながら笑みを浮かべ、そのまま転移空間を通って行った。

 

「……それじゃあ皆!! 機会があれば、また会おうねぇ。」

 

「………うん!! もちろん!!」

 

「当たり前だ!!」

 

「……ニヒ!! それじゃあ皆、チャオ~!!」

 

 そんな皆を見届けた後、漆月が言った事に飛鳥と焔が答え、それを聞いた漆月はニヤリと笑いながら去って行き、全員が通った後転移空間は消えてしまった。

 

「あ、飛鳥さん……」

 

 その直後、斑鳩に声を掛けられた飛鳥は振り返ると、そこには少しソワソワしている斑鳩の姿があった。

 

「斑鳩さん………」

 

「その……えっと………ご、ごめんなさい!!」

 

「っ!!」

 

 そして斑鳩は飛鳥に対し、頭を下げながら謝罪し、それに一瞬飛鳥は驚いた。

 

「自分勝手に貴方を突き離そうとしたり、自分には忍の資格がないとか言ってそれが飛鳥さんを傷つけたり!! 挙句に果てには飛鳥さんを本気で傷つけたりしてもう………あ、謝っても謝りきれません!!」

 

 斑鳩は頭を下げ続けながら謝罪の言葉を述べ、同時に瞳から涙を流し始めていた。

 

「ですが……ですがその!! こんな……こんな私ですが……こ、こんな私でもまだ仲間と、友達で居てくれますか!?」

 

 そして斑鳩は涙を流しながら頭を上げ、飛鳥に対して聞くと、その問いに対して飛鳥はと言うと、

 

「斑鳩さん……い…い………斑鳩さぁあああああん!!」

 

 斑鳩の言葉を受け入れたのか、飛鳥は涙を流しながら斑鳩に抱きつき、斑鳩もそれに答えようと抱きつき返した。

 

「本当に……本当に心配したんですから!! この……斑鳩さんの大バカ!!」

 

「ごめんなさい……本当にごめんなさい。」

 

 涙を流しながら言った飛鳥に対して斑鳩はまたもや謝っている中、それを見ていた葛城と柳生と雲雀ももらい泣きしていた。

 

「ったく!! 本当に……心配ばっかかけやがって。」

 

「そ、それお前が言うか?」

 

「でも……でも、本当に!! 本当に戻って来てくれて良かったぉおおおおおおおお!!」

 

 葛城が言った事に対して泣きながら柳生がツッコんでいると、雲雀は泣きながら飛鳥と斑鳩に抱きつき、葛城と柳生もその後に続いた。

 

「皆さん……私……私っ!! うわぁああああああああああああああ!!」

 

 そんな三人や飛鳥を見て、戻って来て良かったと思ったのか、斑鳩は更に涙を流したのだった。

 

「まったく、揃いも揃って泣いちゃって。」

 

「脱水症状になっても知らんぞ?」

 

「でも皆……良かったです。」

 

「うんうん!! やっぱり半蔵は絶対あぁじゃないとね!!」

 

「それはそれで、どうかと思いますけどね。」

 

「フフ、でも……良いですね。あぁ言うのも。」

 

「まぁ……悪くないと、思うがな。」

 

 そんな半蔵学院を見て両備と忌夢は呆れ、紫と両奈は笑みを浮かべ、千歳と芭蕉と総司はそれぞれ感想を言った。

 

「フゥ~、相変わらずじゃな。あの五人は。」

 

「まぁ良いだろう。仲が良い事は良い事だ。」

 

「うんうん!! やっぱあれでこそ半蔵学院じゃないと!!」

 

「美野里もそう思う!!」

 

「ぬぉおおおおおおおおおおお!! 半蔵の先輩方ぁ!! 良かったですぞぉおおおおおおおおおお!!」

 

「あわわわわわ!! ユッキー落ち着いて!?」

 

「まぁ、今回ぐらい良いでしょ。」

 

 同じく見ていてホッとした夜桜に叢は言い、四季が言った事に美野里も頷いていると、その近くで幸村が感動してこっちももらい泣きしているのを見て園子が落ち着かせようとしているに対して、神裂は呆れながら答えた。

 

「ったく!! 本当に心配ばっかりかけやがって。」

 

「でも……ようやく元の半蔵学院に戻ったって感じね。」

 

「そうね、やっぱりあの子達はあぁじゃないと。」

 

「やな……詠さん、ハンカチもってへんけど大丈夫か?」

 

「グスゥ……ふぁい!! じゃ……じゃいじょうぶでしゅ!!」

 

 そして焔は頭を掻きながら言い、未来と春花はホッと胸を撫でおろし、日影はそれに同感しながら詠に聞くと、泣き続けて呂律も回ってない詠はそう答えた。

 

「………う、うぅ~ん?」

 

「あ、気が付きました!!」

 

 そんな中、土方と菖蒲に肩を貸されていた風魔が目を覚ましたのに気付いて、菖蒲は声を掛けた。

 

「菖蒲ちゃん、私は確か……っ!! そうだ飛鳥さん達は!?」

 

「もう終わりました、全部。ほら、」

 

「え?…………」

 

 菖蒲に声を掛けられた風魔は、何があったか思い出して聞くと、風魔に対して土方は答えながら向こうを見せるように顔を向けた。

 そこで風魔が見たのは、涙を流しながら笑みを浮かべている飛鳥の姿だった。

 

「………お帰りなさい、飛鳥先輩。」

 

 そんな飛鳥の笑顔を見て、風魔は目尻に涙を浮かべながら呟いた。

 自分の大好きな先輩である飛鳥の、本当の笑顔が帰って来た。

 お帰りなさいは、それを意味したのだろう。

 

「ハァ~、まったくどいつもこいつも、面倒ばかりかけおって。」

 

「だがま、そう苦では無かったであろう?」

 

「それは!?……まぁ、多少はな。」

 

「フフ……さて、後は大人の仕事だな。」

 

 そんな若き忍学生達の姿を見て奈楽がため息を付いている所に大導寺が声を掛け、それに奈楽は少し動揺しながら頷いた後、凛は笑みを浮かべながら呟くのだった。

 その頃にはもう太陽が昇っており、まるで飛鳥達を祝福するように輝いていた。

 

 かくして、漆月達破忍との戦いは、斑鳩の帰還を最後に終結したのだった。

 

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