閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆   作:XW

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5. 心迷いし少女達。

「うぅ~お腹、調子悪い。」

 

 月閃と蛇女の襲撃から翌日、飛鳥はトイレから出たにも関わらず、お腹を摩っていた。

 どうも昨日から腹痛を何度か起こしていらしい。

 

「随分と調子悪そうだな。」

 

「や、柳生ちゃん。」

 

 そんな飛鳥を見かけたのか、柳生が声を掛けるとそのまま飛鳥の方に近付いた。

 

「……はぁ、飛鳥。お前ちょっとは休め。昨日処か一昨日から一睡もしてないだろう?」

 

「そ、そんな事ないよ。二時間程度だったら、」

 

「嘘つけ。度々起こる腹痛に何だ目の下のクマ? 明らかに寝てない証拠だ。」

 

「うぅ………」

 

 柳生は目の下に大きなクマが出来てたりなど、明らかに休んで無いせいで顔色も悪い飛鳥を見ながら言い、ふと付いた嘘もすぐにバレた飛鳥は黙ってしまう。

 

「とにかく一旦外の空気でも吸って来い。今のお前に必要なのは十分な休みだ。」

 

「そ、そんな、休んでる暇なんて私には!?」

 

「行って来い!!」

 

「っ?! わ、分かりました……」

 

 柳生が発した言葉に反論しようとした飛鳥だったが、柳生の態度を見て思わず引いてしまい、仕方なく外に出るのだった。

 

「フゥ……まったく、世話のかかる先輩だ。」

 

 そうして外に出ようとする飛鳥の背中を見ながらホッとした柳生は振りかえって、忍教室に戻った。

 

「んぅ? 雲雀、何してるんだ?」

 

「え? あぁその、お片付けかな?」

 

 するとそこには、飛鳥が散らかした破忍の資料を整理しながら片付けていた雲雀がいて、そんな雲雀に話しかけて来た柳生に答えた雲雀。

 

「あぁ……そうか。」

 

「柳生ちゃんって、やっぱり優しいね。」

 

「な、何がだ?」

 

「さっき飛鳥ちゃんを外に出したでしょ? 飛鳥ちゃん一昨日からあの調子だったらか、少しでも気分を良くしようとおもったから外に出した。違うかな?」

 

「………ま、まぁな。今のリーダーはアイツだからな、斑鳩と葛城の事もあるとは言えあれでは困るからな!!」

 

 雲雀の返答に納得した柳生に今度は雲雀から話しかけて来て、その雲雀が笑顔で聞いた事に、雲雀の笑顔を見て照れてしまった柳生はそっぽ向きながら答えた。

 

「フフ、そうか。」

 

「あぁそうだ……!?」

 

 そんな柳生を見て微笑んだ雲雀に答えた柳生は次の瞬間、ある事に気付いた。

 

(待てよ、今この教室には雲雀と二人きり!? マジか!? いやいや、雲雀だって飛鳥だけじゃなくて斑鳩や葛城の事で本当は心配の心配のはずだ!! なのにこんな時に浮かれるな俺!? いや……こんな時だからこそ、雲雀には心の支えが必要なはずだ!! そう、そしてその支えは俺!! 今が、雲雀ともっと先まで進んだ関係になる絶好のチャンスゥ!!)

 

 そんな葛藤?とかをしながら考えていた柳生の脳裏には、完全に雲雀と今より先の関係になった自分の事しか無かった。

 

(ここは!? 正義の為に舞い忍んで、そっと抱きしめる!! ヌゥウウウウ!!)

 

 そう思った柳生は雲雀に近付き、そのままそっと抱きしめようとしたその時だった。

 

「あ、あのぉ~?」

 

(ぬぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!)

 

「あれ? 土方ちゃんどうしたの?」

 

(ですよねぇ~。)

 

 忍教室に入って来た土方を見て雲雀が土方の方に近付き、結局抱きしめれなかった柳生はその場でスタンハンセン的な行動をしていた。

 

「あぁいや、風魔何処にいるかなぁと思いまして。アイツいつの間にかどっか行っちゃった見たいなんですよ。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

「…………」

 

 そんな柳生も気にはせず、何時の間にか居なくなった風魔の事を気にする土方と雲雀を見て、今更ながら自分の行動に後悔する柳生だった。

 

 

「…………ハァ、」

 

 半蔵学院の運動場を見つめながら座り込む飛鳥だったが、その顔は今だ浮かない表情のままだった。

 むしろ、一昨日にあんな事が現実に会ったと言う事実だけが思い出されて行くだけで、より一層気分は落ち込む一方だった。

 

「………このまま戻っても、また柳生ちゃんに怒られるだけだもんなぁ。」

 

 そう思った飛鳥は、当ては無いものの学院の外に出かけた。そしてその姿を物陰から見ている者がいた。

 

「飛鳥先輩。………良し!! 」

 

その物陰で飛鳥を見ていた風魔は、何かを思い立ったようにどこかへ向かって行った。

 

 

「………………」

 

 しばらく歩いた飛鳥は、屋形船などが浮いている川にやって来た。

 だがその川を見つめながら飛鳥が考えていた事は変わらず、斑鳩や葛城の事ばっかりだった。

 

「……斑鳩さん、かつ姉ぇ……ってわぁ!?」

 

「何彼氏に振られたような女見たいな顔してんだよ? 彼氏に振られた女の顔って実際知らねぇけどさ。」

 

「ほ、焔ちゃん?」

 

 そんな飛鳥の首筋に温かい感触を感じ、驚いた反動で立ち上がった飛鳥が振り返ると、そこには焔が温かい缶コーヒーを二缶両手に持って立っていた。

 

「ほらよ。私のなけなしの金で買った奴だから、大事に飲めよ。」

 

「あ、ありがとう。」

 

 その缶コーヒーの内の一缶を投げ渡しながら言った焔に礼を言いながら、飛鳥はその缶コーヒーを飲み始めた。

 

「……斑鳩と葛城の事を考えていたのか? しかもその調子じゃ、大方一昨日からだろ?」

 

「うぅ……うん。」

 

 そんな飛鳥に対し焔が聞き、それに一瞬驚いた飛鳥はすぐさま頷いた。

 

「別に責めてるわけじゃない。むしろお前らしくて少し安心した。」

 

「……それは、どうなんだろう?」

 

 焔と一緒に川岸まで歩きながらコーヒーを飲む飛鳥は、下を向きながら口を開いた。

 

「焔ちゃん、私さ、忍の修業とかであんまり友達とかも作れなくて、それで頼りになる先輩とかも居なかったんだ。……だからかな、斑鳩さんとかつ姉ぇが少し眩しく見えたのは。」

 

「…………」

 

 斑鳩と葛城の事を話し始めた飛鳥の話を、焔はただただ黙って聞いていた。

 

「斑鳩さんは怒ると怖くて少し頑固な所もあるけどさ、優しくて頼りになって、誰よりも一生懸命だった。かつ姉ぇも胸とか揉んだりとかして正直止めて欲しい所も色々あるけどさ、強くて楽しくて、誰よりも仲間思いなんだ。」

 

「……そうか。」

 

「二人の事をずっと見ていて思ったんだ。二人のようになりたいって。二人の様な忍になって、共に戦いたいって。……分かってる、いずれは二人は半蔵学院を卒業する事くらい。でもさ……ひっく…どうせ、どうせ別れるだったらさ…ちゃんと卒業した二人を、笑って見送ってあげたいんだ。…………だから……ひっく…ひっく……だからさぁ……」

 

「こんな………こんな別れ方は、嫌だよぉ………」

 

 話している内にしゃがみ込んでしまった飛鳥の目からは、大量の涙が溢れ出て、斑鳩と葛城のいない寂しさや会いたいと言った思いが、涙となって溢れ出て来たかのように泣き続けた。

 

「……飛鳥。」

 

「グスゥ、ご、ごめん焔ちゃん。こんな時だってのに、自分の事ばっかりで。」

 

「いや良いんだ。……正直言って、私も自分の事ばっかりだ。」

 

「え?」

 

 そんな飛鳥を見て頭を撫でる焔に謝った飛鳥に対し、今度は焔が話し始めた。

 

「覚えているか? 蛇女子学園で超秘伝忍法書を巡った、私達の戦いを。あの戦いだ、あの戦いをきっかけに私と飛鳥は最強の友達になった。」

 

「……そうだね。」

 

 焔の言葉に頷く飛鳥に対して、焔は話しを続けた。

 

「でも、それは私と飛鳥だけじゃなかったんだ。詠と斑鳩、日影と葛城、春花と雲雀、そして未来と柳生。アイツらも互いを、最強の友達だと思っているはずだ。いうなれば私達焔紅蓮隊とお前達半蔵学院は、最強の友達同士って事になるのかもな。」

 

「うん……」

 

「だってのに、私は詠が斑鳩の事を心配し続ける事も、日影も本当は葛城の事を心配だって事も……そんな事、分かっていたはずなのに。」

 

 話し続ける焔の顔は次第に悔しがるような表情をし、歯も食いしばっていた。

 

「いや、分かってるつもりが分かっていなかった。私がお前の事を大事な存在だって思ってるように、あの二人にとって、斑鳩と葛城が大事な存在だって事を。」

 

「焔ちゃん。」

 

「私は、抜忍になってからずっとアイツらと一緒に暮らして来た。苦しい時も、辛い時も、アイツらと一緒だから楽しめた!!……だってのに私は、アイツらの事を何も分かって無かった!! 私は……私は………」

 

「リーダー、失格だ。」

 

 焔も話し続けながら涙を流し続けるのを見て、飛鳥は焔に聞いた。

 

「焔ちゃん……詠ちゃんと日影ちゃんが居なくて、寂しい?」

 

「グスゥ、あぁ……寂しいよ。」

 

 その質問に焔が正直に答えた後、その後は何も語る事なく時間だけが進み、そのまま二人は別々に歩いて行った。

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ………」

 

「あららら、随分と息が荒くなってるじゃ無いの? 良いわ、良いわよ!! その息をもっと荒立てても!!」

 

 その頃破忍アジトの拷問部屋では、昨日からずっと続いた電撃拷問によって息を荒立てる雅緋を見て、こちらも別の意味で息を荒立てる拷楽が言った。

 いくら雅緋と言えど、痛覚の何倍にも上げられた身体で電撃拷問を何時間も受ければ、流石に堪えるにも限界があったのであろう。雅緋からは疲れの表情が見受けられた。

 

「フ、フン!! 拷問を楽しむ事だけあるって事だけは認めてやるが、こ……この程度蛇女の、私の誇りは屈しないぞ!!」

 

「ウフフフフフフ!! 良いわねその表情、でも……いくら肉体の拷問に耐えても、」

「精神の拷問には耐えれるかしら?」

 

 そんな表情を浮かべながらもすぐに表情を変えた雅緋が言うと、それを見て不気味に笑った拷楽はある物を取り出した。

 それは昨日、蒼志が蛇女から盗み出したノートだった。

 

「っ!? な、何故貴様がそれを持ってるんだ!?」

 

「闇ちゃんの茨って本当に便利よねぇ~!! 相手を縛るだけじゃなくて相手の記憶まで見れるんだから。っで、あなたの記憶から読み取った情報を闇ちゃんが教えてくれてね、私思いついた事があってね!! そ・れ・で、昨日蒼志ちゃんに盗みに行って貰ったの。」

 

「まさか……まさか!?」

 

 どうやらそのノートは雅緋が昔、かっこいいと思った台詞などを書いたノートらしく、それを開きながら話す拷楽の考えが頭に浮かんだのか、必死になって雅緋が叫んだのもつかの間、

 

「地獄の業火を放つその黒竜。その業火を消せる者なく、ただただ燃え行くのみ。………漆黒の翼よ、その堕ちた翼は何処え向かう。何処へ堕ち、どこへ羽ばたくのだ。」

 

「止めろぉおおおおおおおおおお!! それだけは止めてくれぇえええええええええええ!!」

 

「我が母よ!!」

 

「なぁ!?」

 

 雅緋のノートに書かれている、今となっては恥ずかしいにも程がある言葉を言い続ける拷楽を止めようと願う雅緋だったが、拷楽の精神拷問は続いた。

 

「何故あなたは我が母なのか? その優しき手を我が握って良いのか? その温かき胸で、我を包んでくれるのか? あぁ……もし許されるのなら、私はあなたのな、」

 

「ぐわぁああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 拷楽のもう身振り手振りをしながらの台詞の連発に、雅緋の心と誇りは今にでも折れそうになっていた。

 

「あぁ~あ、拷楽ったらすっかり楽しんじゃってよぉ。ま、こっちはこっちで、楽しむけどな!!」

 

「ぁあああ!! ゲホォ!! ゲホォ!! ゲホォ!!」

 

「よぉ~!! 目覚めの気分はどうだ? クソ雪泉。」

 

 そんな光景をこっそり見ていた龍姫はと言うと、雪泉を入れていた牢獄に入ったかと思えばバケツに容れていた高熱のお湯を雪泉にぶっかけ、その熱さとお湯に目を覚ましながら咳き込んだ雪泉の髪の毛を引っ張りながら話しかける龍姫。

 

「ぐうぅう!? あ、あなたは……」

 

「いやぁオメェに聞かせてやりてぇ事があってな。昨日、テメェの母校の中等部を襲撃しに行ってな。」

 

「っ!?」

 

 そうして龍姫は雪泉に昨日の事を洗いざらい話した。襲撃した事だけでなく、夜桜達に対して自分が言った事、そして夜桜が間違えて幸村を殴ってしまった事を。」

 

「………どうして、」

 

「んぅ?」

 

「どうしてそんな事するんですか!? あそこはあなたにとっても母校だったはず!! それをそんな……おまけに黒影おじい様を馬鹿にするだけでなく夜桜さんの心を掻き乱すような事ばかり言って、あなたはそれで良いんですか!? あなたの正義は何処に行ったんですか!?」

 

「っ!? オメェは……いやオメェらは、どこまで私を苛立させるんだよぉ!!」

 

 その全てを聞いた雪泉は龍姫に対して説教じみた言葉を言い放つと、それを聞いた龍姫は怒り任せに雪泉の頭に地面に叩き付けた。

 

「がぁ!?」

 

「月の正義ってのがそんなに凄いのか?! そんなに黒影が大好きなのか!? あぁ!? そうやって自分の信じる正義とかで、あのクソ夜桜だけじゃなくて、他の奴らも縛り上げてそんなに楽しいか!?」

 

「っ!?」

 

 額から血を流す雪泉に対して龍姫が言い放った言葉を聞いて、雪泉は驚きを隠せずにいた。

 自分が、黒影との約束が仲間達を縛り上げている。そんな事雪泉は、今まで思っていなかったからだ。

 

「そ、そんな事は!?」

 

「あるね!! オメェらは約束を守りながらも自由にやってると思ってるがなぁ……クソ黒影との約束だが何だが知らねぇが、それで自分の本当にやりたい事を出来ないなんてのは、私は御免だな!!」

 

「ぐぅうう!?」

 

「あの夜桜って奴もそうだ。家族の為とか何だって言ってるが、殆ど月閃メンバーと一緒!! 本当の家族の事に関しては殆どほったかしだ!! その原因は悪忍とかでも妖魔なんかでもねぇ……」

「テメェと黒影だよ!!」

 

「がぁあああ!!」

 

 それに対して反論しようとした雪泉に対して龍姫は自身が思っている事を全てぶつけ、そして夜桜の事を言いながら再び地面に頭を叩き付けた。

 

「まぁあの夜桜も夜桜だけどな。弟妹の事なんかほったからかしにしてオメェらなんかと楽しくやってんだし。オイどうなんだ?」

 

「………」

 

「何とか言えや!!」

 

「がぁああ!?」

 

 雪泉の頭を踏んだかと思ったら今度は頭を無理やり上げて顔を殴る。まさに龍姫の八つ当たりに近い拷問ではあったが、確実に雪泉の心を折っていた。

 

(私は……私は………)

 

 自分と黒影との約束が皆から自由を奪ったのか? 夜桜達だって本当は色々としたかったのではないのであろうか? 今まで家族同然であった夜桜達に対して自分がやって来た事は、本当に正しかったのか? 雪泉の心は揺れ動き、自分の行いが信じられなくなって来ていた。

 

 

「……大丈夫、ってなわけないか?」

 

「それは……雅緋さんも同じでしょう?」

 

「あぁ……流石にアレは……正直言って辛い。」

 

 拷楽と龍姫の拷問が終わって数分後、精神拷問で疲れ果て心も何もかもが折れかけた雅緋が話しかけた雪泉の状態も酷く、頬は酷く腫れ額には包帯が巻かれてるものの血が今だ出ており、その顔は何処かやつれていた。

 

「……雅緋さん。」

 

「何だ?」

 

「私が……私が今まで仲間達に対して行って来た事は、間違いだったのでしょうか?」

 

 雅緋に対して聞いた雪泉の心には、自身への失望も混じっていた。

 今まで自分がやって来た事、それが仲間達を、特に夜桜を縛り付けていたのでないかと、まるで今までの自分を見損なったように。

 

「夜桜さんは何時も、どんな時でも私や皆を支えてくれました。でも……それが夜桜さん自身を縛り上げていたんじゃないか? 夜桜さんも本当は、弟妹達ともう少し会いたいと思ってるんじゃないのか!? 私は、私はもう……夜桜さんや皆に会わせる顔が………」

 

 話しながら涙を流し始める雪泉を見て、雅緋は上を向きながら口を開いた。

 

「……心配しなくても、お前の仲間は好き勝手、自由にやってたんじゃ無いのか? 少なくとも私はそう見えた。」

 

「そ、それは……」

 

「それにお前の仲間が、お前に対して一度たりともそんな縛り上げてるとか、もっと自由にさせて欲しいとか思うと思うか?」

 

「……………」

 

 雅緋の言葉を聞いた雪泉は思わず目を逸らす。

 

「……信じるしかない。己の仲間を、友を、家族を。今の私達に出来る事は、それしかない。」

 

「……………」

 

 そう言いながら上を向いた雅緋の言葉を聞いて、雪泉は縛り上げられた両腕の拳を握りしめる。

 

(夜桜さん……皆さん………)

 

 そして雪泉は夜桜や皆を信じ、強く祈るのだった。

 

 

「…………」

 

 月閃中等部襲撃から翌日の昼間、夜桜はとある墓地に来ていた。

 そこは夜桜や四季達の師匠でもあり、雪泉の叔父である黒影の墓がある場所だった。

 

「…………黒影様。」

 

 黒影の墓を掃除して花を添えた後、墓に向かって手を合わせた夜桜は昨日の事、そして四季と美野里に言われた事を思い出す。

 

(夜桜ちんの事信じてたのに……見損なった!!)

(ごめん夜桜ちゃん。美野里、ハッキリ言って今の夜桜ちゃん、大っ嫌い!!)

 

「儂は、儂は最低な弟子です。敵の挑発にまんまと乗せられてしまい、その挑発の際に言われた言葉を聞いてあろうことか、黒影様を疑ってしまいました。」

 

 黒影が自分と弟妹達を引き離した。そんな事考えていないはずなのに、一瞬でも疑ってしまった夜桜は、自分が許されずにいた。

 

「挙句の果てには、四季や美野里にも見損なわれ……今の儂を見たら、きっと雪泉と叢も軽蔑するかもしれません。」

 

 黒影の墓に向かって話す言葉は、まさに黒影への謝罪の言葉だった。その言葉を言い続ける夜桜の目尻からは、次第に涙が出始めていた。

 

「黒影様……儂は、儂は一体どうすれば良いんじゃ? 仲間を傷つき見損なわれ、今まで大事にしていたものを自分から捨ててしまった気分なんじゃ……黒影様、もう儂には、儂にはどうすれば良いかわからんのじゃ!?」

 

 涙をポロポロと流し、両手で顔を隠す夜桜が叫んだその時だった。

 

「やっぱりここに居た。」

 

「っ!?……み、美野里?」

 

 後ろからの声に気付いた夜桜が振り向くとそこには、ご機嫌ななめな美野里が、顔を膨らませて立っていた。

 

 

「………こんな格好で来て、ごめん。」

 

 同時刻、両備も姉である両姫の墓がある場所まで来ていた。

 その墓に花を添えた両備は、包帯だらけの格好の事を謝った後この場に座った。

 

「昨日ね、お姉ちゃんの大ファンって言う忍にやられちゃってさぁ、そんでそいつが私や両奈の事を、お姉ちゃんの恥晒しとか泥を塗ったとか、好き勝手な事ばっか言っててね。……まぁ、そいつにやられた私が言うのも何だけどね。」

 

 両備は両姫の墓に向かって昨日の事を全て話した。その姿はまるで、自分を哀れんでいるようだった。

 

「っでさ、臨時のメンバーになってる総司って奴に動きを封じられてこう言われたのよ。私にリーダーは向いてないって。ハハ、それを聞いて私、正直悔しくて悔しくてさあ……でもさ、一番悔しいのは、それに納得してしまう自分によ。」

 

 乾ききったような笑みを浮かべた両備は、髪は掻き乱しながら話を続けた。

 

「……正直アイツの、鎌倉って奴の言う通りね。汚い言葉を言うわ、両奈をイジメてそれで楽しむわ。挙句の果てに勘違いの復讐で悪忍になるわ……もうね、お姉ちゃんの恥晒しとか泥を塗ったとか言われてもしょうがないっての。」

 

 両備は自虐じみた言葉を話すうちに、昨日の事や今までの自分の事を思い出しながら涙を流し始める。

 

「……やっぱり、無理だったのかな? 私にリーダーなんて。雅緋やお姉ちゃん見たいに、皆を信頼されるようなリーダーなんて、最初から無理だったかな? ねぇ……何か言って。何か言ってよ……お姉ちゃん。」

 

 両姫に助けを求める両備。何時もだったらそのような事をしない両備の心は、今にも折れかけていた。

 

「みぃ~つけた!!」

 

「っ……両奈?」

 

 そんな両備に話しかける声が聞こえ、両備が涙をぬぐいながら振り返ると、そこには両奈が立っていた。

 

 

「っと!! 言うわけで、次に破忍が狙って来るとしたらこっちかなっと思ってね。しばらくウチと神裂ちんでボディーガードをしてあげる!!」

 

「いかがでしょうか? 余計なお世話かと思いますが。」

 

 同時刻、四季と神裂の二人はと言うと、昼間は一般生徒と同じ授業をし、夕方以降は密かに忍の訓練を受ける、風紀委員全員が忍学生の都立薄桜女学院に来ていた。

 夜桜の元から去った後四季と神裂が独自に調べた結果、次に破忍が襲って来るのかここだと思ったかららしい。

 

「………分かりました。破忍の恐ろしさは噂でかねてから聞いておりましたのですが、正直我々でも太刀打ち出来るかどうか……しばらくの間、よろしくお願い致します。」

 

「うん、交渉成立だね!!」

 

「ですが……少し聞きたい事が、」

 

 薄桜女学院忍学生のリーダーである胡蝶は他のメンバーの相槌を見た後四季と挨拶しながら、ある質問をした。

 

「月閃からの助っ人は、あなた達二人だけですか?」

 

「っ!?…………」

 

 胡蝶の質問を聞いた四季と神裂の二人は図星を突かれたかの表情をしてしまい、思わず目を逸らす。

 

 

「ほぉ、月閃も同じ考えだったと言うわけか? まぁ良い、奴らがザコを引き付けている間に、我らが本命を叩けば良いだけだ。」

 

「…………」

 

 その様子を近くの小ビルから、双眼鏡で覗き見ながら呟く総司に対し、芭蕉は口を開いた。

 

「あ……あの総司さん。お願いがあるんですが……」

 

「断る。」

 

「えぇええ!? まだ何も言ってないですよ!?」

 

「言うも何も、どうせあの両備達と力を合わすとか、月閃や半蔵、更には焔達とも手を組めと言うんだろ?」

 

 質問を言う前に断った総司にツッコむ芭蕉だったが、総司に聞きたい事を全部答えられてしまい、思わず頷いてしまった。

 

「なら御免だな。あんなリーダー不適正な奴と力を合わすなど。それに半蔵と月閃ならともかく、焔達に借りを作るのは尚更御免だ。」

 

「で、ですが!? 破忍の実力は私の想像を超えてましたし、もし何かあったら……」

 

「その時はその時です。第一半蔵と月閃は善忍で焔紅蓮隊は抜忍。そいつらと手を組むぐらいだったら、忍らしく散った方がマシです。」

 

「それは………」

 

 自分の考えを総司だけでなく千歳にまで否定された芭蕉は、両手をモジモジさせながら座り込んでしまう。

 

「んぅ!? 誰か来たぞ?」

 

 そんな中、四季と神裂が居る薄桜女学院の風紀委員室に一人の学生が入って来たのを見て、総司はその様子をじっくりと見た。

 

 

「どうしたんだ? 今ここは風紀委員以外入室禁止だったはずだが?」

 

「あのその……人を探しているもので? 良ければ協力してくれますか?」

 

「…………」

 

 胡蝶の質問に答えながら身体を震える女子を、四季は少しだけ目を細くした。

 

「………一応確認するが、探している人とは?」

 

 胡蝶は普通の人だったら後で警察にお願いすれば良いと思ったのか、普通に女子に話しかけた次の瞬間、

 

「それはですね……あぁ、大丈夫です。だって、」

「もう見つけましたから。」

 

 女子はさっきまでの弱気な発言から急に冷静な口調になったかと思うと、後ろに突如として空間の穴のような物が出現しだした。

 

「っ!? 皆逃げ、」

 

 その正体に気付いた四季が叫んだのもつかの間、その空間の穴から双竜のオーラを模した気弾と血に染まった様に赤い斬撃が出て来、風紀委員室はその攻撃によって爆発してしまう。

 

「……ふぅ。まったく、」

「私が空間移動は自分に使えないとかだったらどうするんですか?」

 

 その爆発を空間移動によって避けた女子、破忍の転界はため息混じりに呟いた。

 

 

「ぐぅううう!? 皆無事!?」

 

「な、何とか!?」

 

 先程の不意打ちから避ける為、忍転身しながら外に逃げた四季は他の皆に聞き、それに同じく忍転身した胡蝶が答えたのもつかの間…

 

「だぁあああああああああああああああ!!」

 

「っ!?」

 

 後ろから襲いかかって来る気配に気づいた四季は、その攻撃を振り返りながら鎌で防ぐと、襲撃者は後ろにジャンプして距離を取った。

 

「おぉおぉまた会ったな!! クソ黒影のクソ弟子の一人!?」

 

「ぶぅうう~今回両備ちゃんと両奈ちゃんいないのぉ~!! まぁ良いけどさ。」

 

 距離を取った襲撃者、龍姫は四季を見ながら笑みを浮かべている隣では、ふてくされるように頬を膨らませる鎌倉が立っていた。

 

「っ!? あ、あんたは……」

 

「何だぁ? クソ夜桜はいねぇのか? あ、もしかして弟妹が恋しなって里帰りってか? ったく、今頃遅いってのによぉ……」

 

 龍姫の姿を見て驚き、鎌を持った手を強く握った四季の目線も気にせず、龍姫は先日と同じように挑発じみた言葉を言ったその時。

 

「………せいで、」

 

「んぅ?」

 

「あんたの……あんたのせいで……」

「ウチらは絶賛空中分解中だってのぉおおおお!!」

 

 四季は怒り任せに龍姫に突っ込み、龍姫との戦闘に入った。

 

「四季さん!?」

 

「くぅ!? 援護しま、っ!?」

 

 その様子を見て驚いた胡蝶と神裂達が援護に向かおうとした矢先、先ほどの斬撃がその動きを止めた。

 

「君達の相手はぼ~く!! 昨日はちょっと不完全燃焼で終わったからさぁ~君達で、」

「ストレス発散しようかなぁと思ってね♪」

 

 その主犯である鎌倉は両鎌をくるりと回しながら舌で唇を舐める鎌倉の狂気じみた笑みを見て、神裂と胡蝶達は思わず冷や汗を掻いた。

 

 

「まさかこうも早く来てくれるとはな……ともかく行くぞ!! 芭蕉!! 千歳!!」

 

「は、はい!!」

 

「了解。」

 

『忍、転身!!』

 

 その様子を見ていた総司の声に芭蕉と千歳が答えたのもつかの間、総司達は屋上からジャンプしながら忍転身し、地面に着地したのと同時に薄桜女学院に走り向かう。

 

「ど、どうするんですか総司さん!?」

 

「決まってるだろう!! 月閃が奴らの注意を引き付けてる間に、背後から奴らを討つ!! もちろん華麗にな!!」

 

「華麗かはともかく、私的にはそれがもっとも良いと思います。」

 

「そういう事だ、急ぐぞ!!」

 

「あぁああ!! 待ってください!!」

 

 芭蕉の質問に答えた総司の意見に千歳が賛同した後、芭蕉が遅れてるのも気にせず薄桜女学院に着いた総司は、何時でも攻撃出来るようにと鎖鎌を展開した次の瞬間、

 

「っ!? がぁああ!?」

 

「総司さん!!」

 

「これは!?」

 

 突如として地面から出現した荊のツルに総司の身動きが封じられてしまい、それを見て芭蕉と千歳が驚くのもつかの間、

 

「あらあら。まさか蛇女の生徒まで来てくださるとは……」

「さて、今回はどのように痛めつけましょうかね?」

 

「き、貴様は……」

 

 その荊の後ろにやって来た、肌を黒い何かの模様で覆われた少女、破忍の闇の姿を見て、総司は思わず歯を食いしばった。

 

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