閃乱カグラ~SHINOVI CHRONICLE~ 少女達の絆 作:XW
「………あ、あの美野里。ま、まだ怒ってますか? まだ、儂が嫌いですか?」
「……そんな顔ばっかしてる夜桜ちゃんなんて、好きじゃない。」
黒影の墓がある墓地の近くにある公園のベンチに座った夜桜は、隣に座っている今だご機嫌斜めな美野里に聞き、美野里は頬を膨らませながら答えた。
「………美野里、儂はもうどうしたら良いか、分からなくなってしまったんです。」
「…どういう事?」
「儂にとって弟妹達は掛け替えのない家族です。両親を失った儂にとっては……でも四季や美野里、叢に雪泉だって、共に黒影様の元で修業をした家族のようなもんです。でも……」
夜桜は昨日四季に対して発した言葉を後悔していた。四季や美野里も自分にとっては大事な家族当然だと言うのに、本当の家族である弟妹達の事を言われて冷静でなかったのであろうと、夜桜は後悔しか残って無かった。
「儂は、儂はどうしたら良いんじゃ!? 美野里達も弟妹達も大事で、でもどっちかを大切にすればどちらかを蔑ろにしてしまう!! 儂は……儂はそれが怖くて……情けない、何時も皆には厳しい事を言っとるのに……こんな儂は、」
「本当に、黒影様の弟子と言えるのじゃろうか……」
夜桜は下を向き、両手で顔を覆いながら呟いたその時だった。
「夜桜ちゃん!!」
「んぅ……わぁちょ、」
「このぉおおおおお、バカァアアアアアアアアアアア!!」
パチィン!!
美野里は夜桜の顔を無理やり上げると、その顔の頬に向かって思いっきりビンタを食らわした。
「バカ!! バカ!! バカ!! 夜桜ちゃんの大バカァ!!」
「ちょ!? 痛い!! 美野里!? どうしたんじゃ痛ぁ!!」
「どうして……どうしてどっちかとかじゃないとダメなの!?」
そのままビンタを連続でした美野里を止めようとした夜桜に対して、大きく叫んだ。
「み、美野里……」
「両方大事に慕って良いじゃん!! 私達も弟妹達も夜桜ちゃんにとって大事な家族だったら、その両方を大切にすれば良いだけじゃん!!」
「っ!?」
美野里の目尻に涙を浮かべながら発した言葉を聞いて、夜桜は目を見開いた。
「もし弟妹達が大変な事になったら美野里達も助けに行くしさ……だからどっちかを大切にしないといけないとか言わないでよ!! 夜桜ちゃんの大バカァ!!」
そう大きな声で言い続けた美野里は、流れだした涙を拭いながらこの場から去って行き、一人残された夜桜は、ふと自身の両手を見つめた。
「……………」
両方の手のひらを見つめた夜桜の脳裏には、二つの光景が浮かんだ。
弟妹達と仲良く暮らしている光景、雪泉と叢と四季と美野里達と修業をしながらも、楽しそうな毎日を過ごす光景。
そして夜桜は思い出した。自分が何の為に黒影の弟子になったのか、何の為に、弟妹達と別れてまで忍びを志したのかを……
「……本当に儂は、大バカ者じゃ。こんな、こんな単純な事を忘れていた何て……」
見つめていた手のひらを握りしめながら一筋の涙を流した夜桜は、その涙を拭って前を向いた。
その瞳にはもう、迷いは無くなっていた。
――――
「よく、ここが分かったわね。」
「両備ちゃんが困った事があったら、絶対両姫お姉ちゃんの所に行くと思ったからねぇ~」
「そう……」
同時刻、両奈に両姫の墓に来ていた事が分かっていた事に両備は聞き、それについて答えた両奈に納得した。
「それにしても珍しいね、両姫お姉ちゃんに助けを求めるなんて? 何時も両備ちゃんだったら、」
「絶対そんな事は恥ずかしくてしないって? フッ、そうね。我ながら情けないったらありゃしないわ。」
両奈の話に答えながら、両備はため息をつきながら両姫の墓を見つめた。
「つくづく情けなくて不甲斐ないわ。お姉ちゃんの事何も分かってない奴にボロクソ言われて、そんでそいつに負けるわ。挙句の果てにはリーダー失格の刻印を押されるわ。もう本当……こんな自分が嫌になる。」
「両備ちゃん。」
「結局私は……鎌倉が言った通りの奴なのよ!? 両姫お姉ちゃんに酷い事言ったり反抗的な事ばっかりして、更にはど汚い言葉を吐くわ誰かをイジメて楽しむわ、挙句の果てには勘違いの復讐の為だけに悪忍になるわ……お姉ちゃんだったらそんな事絶対しないのに!? なのに……なのに私は……本当、本当私って、」
「両姫お姉ちゃんの面汚しのダメ妹だわ。」
両備は三角座りしながら下を向き、涙を流しながら自虐めいた言葉を放っていた。
己の不甲斐なさ、そして姉である両姫の名を汚してしまった、その二つが、両備の心を気づ付けてしまったらしい。
「……両奈ちゃん。」
「………なぁ!?」
そんな両備の後ろ姿を見ていた両奈がとった行動、それは後ろから優しく抱く事だった。
「りょ、両奈?」
「大丈夫、両備ちゃんは情けなくても不甲斐なくもないよ。初めてリーダーをして色々緊張してただけだもんね。でも大丈夫だから、それは両奈ちゃんが絶対保証するから。」
「でも……私は、」
一瞬驚いた両備に対して両奈は優しく語り掛けた。何時も変態行為ばかり起こす両奈ではあるが、姉妹である両備を大事に思う事に関しては、人一倍強いからだ。
「で、でも私は……」
「両姫お姉ちゃんの事も大丈夫。両姫お姉ちゃんは両備ちゃんの事を面汚しだとか、顔に泥を塗ったダメ妹とか思ってない。それは両備ちゃんが絶対一番分かってるでしょ?」」
「そ、それは……」
「汚い言葉を使ってても良いじゃん。イジメて楽しんでても、復讐で悪忍になっても、両備ちゃんは両姫お姉ちゃんの妹だよ?」
「…………」
両奈の言葉一つ一つに、両備は言い返す言葉が無かった。確かに姉はそのような事で自分を見捨てたりなんかしない。嫌ったりしない。
どのような妹でさえ、ウザい程大切にする。それが両姫と言う姉だからだ。
「それを言うならさぁ、両奈ちゃんの方が絶対!! 両姫お姉ちゃんの顔に泥を塗りまくってるよ? それは両備ちゃんが一番知ってるはずでしょ?」
「あ、アンタねぇ……自覚してんだったら流石にむぐぅ!!」
両奈の言葉を聞いて呆れたのか、両備は振り向きながら言い返そうとした矢先に、両奈は口に棒付きキャンディーを咥えさせた。
「それに両奈ちゃん、ハッキリ言ってあの鎌倉ちゃん嫌いなんだぁ~。だからさ、あんな忍の言う事丸吞みにして変わったりなんかしないでね? 両奈ちゃん、」
「変わった両備ちゃんなんかより、今のどSで可愛い両備ちゃんが絶対好きだから。」
そうして両備から少し離れた両奈は、両備に対してそう言いながら去って行った。
「………………」
そして一人残された両備は、再び両姫の墓を見つめると、そこからは両姫だけでなく、両奈や雅緋、両備にとって大切な仲間達の顔が浮かび上がった。
「………グスゥ、バカ犬の癖に、らしくない言葉ばっかり言うんじゃないわよ。」
それを見て涙を流した両備は、両奈に対して呟きながら涙を拭った次の瞬間、
「……ぬぁああああああああああああああああああ!! いや、らしくない言葉ばっか言ってたのは、私の方だったわね。」
大きな声で叫んだ両備は、棒付きキャンディーを咥えながら悪びれた笑みを浮かべるのだった。
「………はぁ、帰るか。」
その頃焔はと言うと、飛鳥と別れた後しばらく街を歩いたが何かが変わると言った事も無く、ため息を付きながらアジトに帰る事にした。
「んぅ?……ラーメン屋か。」
(そう言えば詠が作ってたな。麺も入っていないもやしだらけのラーメン。あぁくそ、まさかアイツのもやし料理をマジで食べたいと思う時が来るとはなぁ……)
帰り際に、前からあったらしいラーメン屋を見つけた焔が、詠のもやし料理を思い出していたその時だった。
「っ!?」
焔はそのラーメン屋から出る女を見て驚いた。
フードで顔を隠してはいるが、その金髪に豊満な胸を見て焔は見過ごさなかった。
「か、葛城!!」
その女が葛城だと確信した焔は、路地裏を歩いて行く葛城の後を追い、しばらく歩いた後宙を飛び、葛城の前に立った。
「……半蔵裏切っても、ラーメン好きなのは変わらねぇんだな? 葛城。」
「…………」
葛城を見ながら言葉を発した焔に対し、葛城は無言でフードを外し、鋭い目で焔を睨んだ。
――――
「…………そろそろ、帰っても良いかな?」
一方飛鳥は、焔と別れた後近くの公園にあったブランコに座り、しばらく揺らり揺らりとして時間を潰した後、ブランコから降りて学院に帰ろうとしたその時だった。
「っ!? こ、この気配……まさか!?」
何処か見覚えのあって、そして大事な気配を感じた飛鳥は、その気配がある場所に向かってがむしゃらに走った。
人の目線を掻い潜って目指した場所は、先ほどより広い公園だった。そしてそこに居たのは……
「い、斑鳩……さん?」
「っ……飛鳥さん、ですか?」
飛鳥が葛城と同じぐらい待っていた斑鳩で、その斑鳩の姿は前に焔に聞いていた通りの姿で、飛鳥は見るに耐えれない程だった。
「……ひ、久しぶりに会った矢先にこれを聞くのはアレだと思うけどさ、……焔ちゃん達に言った事って、本当?」
「………聞いていたのであれば分かってるはずです。もう……私の事は忘れてください。では、もう会う事も無いで、」
「忘れるなんて出来ないよ!!」
飛鳥の質問に、斑鳩は疲れ果てたような声で答えながら去ろうとしたのだが、飛鳥はそれを止めようと大声を発しながら前に立った。
「何で……何でそんな事言うの!? 何で私達から離れようとするの!? お願いだから、そんな事言わないで!! 一緒に半蔵学院に帰ろうよ!!」
飛鳥は必死かつ悲しげな表情で斑鳩と共に帰ろうと説得するが、斑鳩の態度は変わる事はなかった。
「……私なんかが、居て良い場所じゃ無いんですよ。帰るんだったらあなた一人で帰ってください。」
「何で!! あそこは斑鳩さんにとっても家見たいなもんじゃない!! どうしてそんな事ばっかり……」
「……飛鳥さんには、到底分かりませんよ。」
斑鳩の返事を聞いて飛鳥が聞くと、斑鳩は哀しげな声で答えた。
「私は……私がいるだけで苦しんだ人達をたくさん見て来ました。詠さん、村雨兄様、それ以上の人達が、恐らく私が存在しているだけで苦しみ、悲しむ人がいると思うんです。」
「斑鳩さん……」
「もう、沢山なんです。私が居るだけで誰かが苦しむのは……だったらいっそ、私の存在なんて……」
斑鳩の自暴自棄じみた言葉を放ちながら見せる表情は、まさに自分に失望した表情だった。
だがそれを見て退く飛鳥では無かった。
「……だったら、だったら忍への道はどうするの!? 斑鳩さん約束したじゃない、皆で一流の忍になるって!? その約束はどうしちゃったの!?」
飛鳥の瞳からは次第に涙が溢れ出ていた。誰よりも優しく、仲間思いな飛鳥ゆえか、これ以上の斑鳩の言動は見ていられなかったからだ。
しかし、その言葉に答えた斑鳩の言葉は……
「……私見たいな人間、忍になる資格なんて無かったんですよ。」
「っ!?」
「もう充分でしょ? そこを退いてください。」
斑鳩の言葉を聞いて目を見開かせた飛鳥に対して、斑鳩が次にそう話した次の瞬間……
「……勝手すぎるよ。」
「…え?」
「斑鳩さんも……かつ姉ぇも……二人揃って、」
「勝手すぎるって言ってるのぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」
飛鳥は叫びながら忍転身し、斑鳩に向かって行った。
まるでずっと溜めていた不満を叫んだその叫びは、斑鳩に対しての怒りと悲しみが混じった様だった。
「ハァアアアアアアアアアアアア!!」
「っ!?」
飛鳥は二刀の脇差を両手に持って振りかざすと、斑鳩は愛刀である飛燕を出現させ、刃を出して飛鳥の斬撃を防いだ。
――――
「久しぶりだな、焔。っで、何か用があってあたいを着いて来たんだろう?」
「用がある? あぁ……ありまくりだよバカ野郎!!」
その頃葛城と対峙した焔は、自分が知っている葛城と雰囲気が違う事に戸惑いながらも、葛城に向かって叫んだ。
「お前、何で飛鳥達を裏切った!? よりによってお前が……セクハラはするけど仲間思いだったお前が何で!? 何でなんだ!?」
「……はぁ、相変わらず飛鳥の事になると感情剥き出しだなお前は、……答えは簡単だ。あたいが今まであそこで過ごして来た事そのものが、間違いだったからだ。」
感情をむき出しにして叫び続けた焔を、頭を掻きながら葛城が答えたのは、焔が予想もしたくなかった事だった。
「……どういう事だ?」
「……あたいは、今までずっと善忍としての道を信じて来た。飛鳥や雪泉程じゃねが、あたいもあたいなりに、忍の正義を信じて、そして強くなろうと思ってた……」
焔の問いに答える葛城、その表情は次第に何かに怒るような表情に、拳を強く握っていた。
「でもなぁ……そんなのは全部偽物だった!! あたいがずっと信じて来た物なんて、この世に存在しなかったんだよ!!」
「か、葛城?」
「あたいは気づいちまったんだよ。忍に……善忍に本当の正義なんてねぇ。どれも……どれもこれも、偽りだらけの偽善者だらけなんだよ!!」
葛城の善忍、今まで信じて来た物に対しての怒りの表情を見て、焔は思わず黙ってしまった。
信じていた者に裏切られる。かつて経験して、それがきっかけで悪忍になりそして抜忍になった焔にはその気持ちは分かると思っていた。
だが葛城のそれは焔のとは何かが違った。怒りは空の様に高く、そして悲しみは海の様に深かった。
しかし、焔にとってのそれは、気持ちが分かる以前の問題だった。
「……だからって、だからって飛鳥達を裏切って、傷つけて言い理由にはなんねぇだろうが!?」
「……何が言いたい?」
「オメェや斑鳩が居なくなって、アイツは、飛鳥はずっと寂しかったんだぞ!! 涙を流して悲しんでたんだぞ!? 飛鳥だけじゃねぇ、詠も……日影も………オメェや斑鳩が居なくなって寂しくて、オメェら探しにどっか行っちまったんぞ!!」
焔が葛城に対して叫んだその言葉は、次第に詠や日影に会いたくてしょうがない自分の言葉にもなっていた。
「もう嫌なんだよ……もううんざりなんだよ!! 誰が寂しくて悲しむ光景を見るのは!? もうこれ以上、あんな顔を見るのは御免なんだ!!」
「はぁ……だったらどうするんだ?」
「そんなの……言われなくても分かってるだろう?」
焔の叫びを聞きながら頭を掻いた葛城に言葉に、焔は忍転身しながら答え、そのまま六刀を両手に持つ。
「オメェをぶっ飛ばして、無理矢理にでも飛鳥の元へ帰させるだけだ!!」
焔は右手に持った三刀を、葛城に向けながら叫んだ。
「……ま、そう言うとは思ってたけどな。だが言っておくぞ、もうあたいは、」
「遠慮しねぇぞ?」
そう言って葛城も転身し、焔と葛城はにらみ合いそして……
「だぁあああああああああああああああああああああ!!」
「ハァアアアアアアアアアアアアアアア!!」
焔の三刀と葛城の足甲がぶつかり合い、火花を放った。
「がぁ!?」
「くぅう!?」
その頃薄桜女学院では、四季と神裂が苦戦を強いられていた。
ただでさえ実力のある龍姫の双竜を纏っての攻撃と鎌倉の血の帯びた鎌による斬撃、それに加えて転界の転移忍法での支援で四季と神裂の攻撃 の殆どが避けられ、的確な隙を狙って攻撃をされるので、四季と神裂の体力は奪われる一方だった。
「オイオイどうしたんだ? それでもクソ黒影とスーパーニンジャ? 何ての約束したクソ弟子か!?」
「くぅうう!? クソクソクソって……どんだけウチらをバカにすれば気がすむのよぉ!!」
龍姫の挑発に怒った四季が秘伝忍法「クウソクZIX」を発動させて、被っていた帽子を巨大化させてその帽子から数匹の蝙蝠を龍姫に向けて放ったのだが、
「ドラゴン……ズロア!!」
『っ!? わぁあああああああああああああああああああああ!!』
龍姫は秘伝忍法「ドラゴン・ズロア」を放ってその蝙蝠を消し飛ばしながら、神裂ごと四季を吹っ飛ばした。
「おぉお~!! 流石龍姫ちゃん!! こりゃ月閃絶対殺す忍者って称号を得るのも近いね!!」
「嬉しくねぇよそんな称号。」
「あらあら、盛り上がってますわね。」
その光景を見て目を光らせながら言った鎌倉に龍姫が嫌そうな顔で答えていると、背後に数本の荊を展開させながら闇が微笑みながら現れる。
「ぐぅううう……」
「くぅ………」
「うぅうう……」
その荊には総司、千歳、芭蕉の三人が捕らわれており、闇の荊にやられたのか、忍装束どころか全身ボロボロになっていた。
「あっれぇ~!! 闇ちゃんその子達、僕が両備ちゃんの首刈り取るの邪魔した蛇女の子達じゃん!!」
「あらそうでしたの? では……後始末は鎌倉に任せますわ。」
総司達を見て指を指しながら、昨日の事を根に持ってるのか顔を膨らまる鎌倉を見て闇は、これまた冷酷に微笑みながら荊を動かし、総司達を四季達の所にまで吹っ飛ばした。
「がぁ!!」
「くぅう……だ、大丈夫……な分けないですよね。」
「その言葉……そっくり貴様に帰してやる…ぐぅ!!」
吹っ飛ばされた衝撃で傷が痛む総司達を見て神裂が聞き、それに苦しそうに答える総司。
「さてと龍姫に鎌倉。私と転界は薄桜の忍学生の方をするので、そちらの方は任せますわ。」
「っ!? ま、待ちなさいっがぁあああ!!」
そう言って闇と転界が、先ほどの戦闘で倒され気を失ってしまった胡蝶達、薄桜女学院の忍学生の所に向かうのを見て止めようとする四季だったが、全身ボロボロのせいで身動き一つ取れず、それは神裂と総司と千歳と芭蕉も同じだった。
「フン、どうやらオメェらはここまでのようだな!! んじゃあクソ黒影のクソ弟子一人と後クソ月閃の中坊、これでさよならだ!!」
「さぁ~てと、僕も両備ちゃんの首取りの邪魔された君達の首、ここで刈り取っちゃおうかな!!」
そんな四季と総司達を見て悪びれた笑みを浮かべながら、龍姫は両手の手甲に龍の形をしたエネルギーを、鎌倉も両鎌の刃を血の様に赤く染めながら力を蓄えた。
「いくぜぇ!!」
「行くよぉ!!」
『秘伝忍法!!』
避けようにも防ぎようにも、四季も神裂も総司も千歳も芭蕉も身体が指一本動けず、そうしている内に龍姫と鎌倉の秘伝忍法が放たれかけたその時、
ドォオオン!! バァン!!
「なぁ!?」
「誰!?」
龍姫の秘伝忍法は東側から放たれたロケットパンチのような手甲によって、鎌倉の秘伝忍法も西側から放たれた銃撃によって不発に終わった。
「っ!? テメェ……」
「へぇ……そこまで顔に泥塗りたいんだぁ?」
秘伝忍法を止められた龍姫と鎌倉は、それぞれ東と西に顔を向けると、龍姫は歯を食いしばりながら怒りを露わにし、鎌倉は笑みを浮かべながらも怒りの気を出していた。
何せ秘伝忍法を邪魔されたのが二人にとって、それぞれ一番嫌いな奴だったからだ。
「……よ、夜桜、ちん?」
「りょ、両備?」
東側に立っていたのは手甲を展開させている夜桜、そして西側に立っていたのはライフルを持ちながら棒付きキャンディーを咥える両備が立っており、そう昨日とは顔つきが違う二人を見て、四季と総司は思わず驚きを表情を見せる。
「あぁ~ぁあ、居ないから里帰りでもしたと思ってたのに……何で弟妹達の方じゃなくてこっちの方に来てんだよぉ!?」
「まったく両備ちゃんはどうして……どうして両姫お姉様の名を汚すような事ばっかりするのかなぁ!?」
夜桜の顔を見て龍姫は拳を振るい、鎌倉も両備に向かって両鎌を振るったのだが、龍姫の拳は夜桜の手甲が装着された右手に、鎌倉の斬撃は両備のライフルによって防がれた。
「勘違いしないでください、儂は家族を見捨てたわけではありません。儂は……もう一つの家族を助けに来ただけじゃ!!」
「な、何言ってわぁあ!!」
龍姫の拳を払いながら夜桜は手甲を巨大化させ、防御態勢を取る龍姫に対して言葉を言い続けた。
「儂は思い出したんじゃ、儂が忍を志したのは……家族を守る為!! その為に立派な忍になるって!! そして儂をそうなるように強くしてくれた黒影様!! 共に黒影様の元で修業した皆!! 儂にとっては……皆儂にとって大切な家族じゃ!!」
「チッ!! 綺麗事ばっかり言いやがって……それで私がはいそうですかって納得すると思ってんのかぁ!?」
夜桜の言葉も龍姫に対しては全くの無意味なのか、夜桜に目掛けて連続で拳を振るう龍姫だが、全て夜桜の手甲に防がれて行った。
「綺麗事でも良い!! 儂は誰に何と言われようと、四季を、美野里を、叢を、そして雪泉も!! 儂はもう一つの家族を助け続けるんじゃ!! それが出来なくて、弟妹達を守る事なんて……」
「出来るかぁあああああああああああああああああああああああ!!」
そして夜桜は叫びながら龍姫にアッパーカットを食らわし、食らってしまった龍姫は吹っ飛んでしまう。
「あんたに話しても何んの意味も持たないだろうけど、この際だから言うわ!! お姉ちゃんは、両姫お姉ちゃんはこんな私を見ても自分の顔に泥を塗ったとか、名を汚したとか微塵も持たないのよ!!」
「そ、そんなの両備ちゃんがそう思ってるだけでってわぁあ!!」
鎌倉の斬撃を避けながら話した両備の言葉に、鎌倉は反論しながら斬りかかろうとした矢先、両備の銃撃によって思わず転びかけた。
「良い!! 私は両姫お姉ちゃんとは違う!! 誰よりも強くて、誰よりも優しくて、そんなお姉ちゃんとは違う!! 私は……」
「私だぁあああ!!」
両備は鎌倉に言い続けながらライフルに備えていた刃を振るい、鎌倉はそれを避け続けた。
「だから私は!! 私なりのやり方で両姫お姉ちゃんの様に強く……いや、両姫お姉ちゃんよりも強くなって見せる!! それが私が見つけた、両姫お姉ちゃんに恥ずかしくない、」
「忍である為のやりかただぁあああああああああああ!!」
そうして避け続ける鎌倉に向かって叫びながら銃撃を放ち、銃撃を鎌で防いだ鎌倉は、思わず後ろに下がった。
「あぁもう!! さっきから自分勝手な事ばっかり言って!!」
「そう言うのがイラつくんだよ!!」
夜桜と両備の言動に、それぞれイラつきながら戦闘態勢を続ける鎌倉と龍姫を見ながら、夜桜と両備は背中を合わせる。
「あぁ~あ、随分と嫌われてるわね、あんた。」
「それはお互い様でしょ?……そっち、任せて貰っても良いですか?」
「それはこっちの台詞よ。お互い、今戦ってる奴に用がある見たいだし。」
「そうですね……まさか、こういう形で両備と背中を合わせる時が来るとは。」
「そりゃどうも、夜桜先輩。」
両備と夜桜、かつては同じ月閃だったもののあまり会話する事は無く善忍と悪忍に分かれた二人、だがそんな二人も、これまでの戦い、そして今この瞬間を経て、奇妙な友情に似た何かが芽生えていた。
『…………』
トォン………
『忍!! 転身!!』
その二人、夜桜と両備が拳を合わせた次の瞬間、二人は同時に忍転身をし、夜桜は龍姫を、両備は鎌倉を見ながら、
「夜桜!! 鎮魂の夢に沈むけぇの!!」
「両備!! 悪の誇りを舞い掲げるわ!!」
そう言った次の瞬間、それぞれの戦う相手に向かって走り出す。
「はぁあああああああああ!!」
「このぉ!? 調子に乗るなぁ!!」
龍姫に向かって拳を振るい続ける夜桜に対し、龍姫はそれを避けながら反撃にと拳を返したが、夜桜はそれを受け止めるように防ぎ、素早く龍姫を殴り飛ばした。
「がぁああ!? だったら、これでどうだぁ!!」
飛ばされた龍姫は拳を作り直すと、そのまま地面を両拳で殴り、周囲に砂煙を放った。
「っ!?…………」
一瞬驚いた夜桜だったが、慌てる事無くその場を動かずに目を閉じた。まるで周囲の気配を感じるように立った夜桜に対して、龍姫は砂煙の中を掻い潜る。
「そこだぁあああああああああああ!!」
夜桜の後ろを取り、双竜のオーラを纏った両拳を夜桜に向けて放とうした次の瞬間、
「秘伝忍法……極楽千手拳!!」
「がぁああああああああああ!!」
夜桜は振り返りながら秘伝忍法「極楽千手拳」を、今度は間違える事無く龍姫に放ち、それを受けた龍姫は声を上げながら後ろに飛んだ。
「同じ過ちは………繰り返さん!!」
夜桜は龍姫に向けて拳を向け、その言葉を口にした。
「くぅう!!」
「フン!! 大口言ってても、接近戦は僕の方が上手いっぽいね!!」
その頃鎌倉と戦闘を繰り広げる両備だったが、両鎌を使っての連撃は遠距離射撃が主流のやり方である両備には少し辛いと思われたが、
「これで……終わりって!?」
「その瞬間、待ってたわ!!」
鎌倉が両鎌を同じ方向で振るうの待っていたかのように笑みを浮かべた両備はライフルを手からは離し、両鎌の柄部分を掴んだのを見て驚く鎌倉。
「このぉお……イカレ両姫オタクがぁああああああああああああ!!」
「おわぁあああああああああああああああああ!! あぁあああああああああああああああああ!!」
そのまま両備は両鎌を持ったままの鎌倉を、両鎌ごと思いっきりぶん回し、鎌倉の目をある程度回したら柄を離し鎌倉を飛ばした後、後ろに一回転しながらライフルを手にした両備はそのライフルを構えて、
「秘伝忍法……リコチェットプレリュード!!」
「あ゛ぁあああああああ!!」
両備は秘伝忍法「リコチェットプレリュード」を放ち、鎌倉の近くに設置した爆弾に両備が銃弾を放ち、その爆撃を受けた鎌倉は地面に落ちて行った。
「フフン、流石に自分のすぐ近くまで設置された爆弾までは、血で溶かす暇は無かったようね。」
鎌倉に昨日のお返しと言わんばかりに、両備は悪い笑みを浮かべながら言った。
――――
「はぁあああああああああ!!」
「だぁああああああああああ!!」
一方葛城と対決する焔も、激闘を繰り広げていた。
狭い路地裏にも関わらず、焔は六刀による斬撃を、葛城は足甲による蹴りを放ち続けていた。
「このぉおおおおおお!!」
焔の斬撃を足甲で防いだ葛城は、そのまま三刀を払うとの同時に強力な蹴りを食らわせ、それを腹に食らってしまった焔は後ろに下がった。
「がぁああああああ!!」
(くぅ……この野郎、マジで容赦なしって事か……だったら、)
戦う事はあっても殺すような事はしなかった葛城が、今度は本気で殺しにかかってるような気迫に飲み込まれそうになるものの、焔は六刀を強く持ちながら、刃に炎を纏わせた。
「秘伝忍法!! 響!!」
「秘伝忍法……クロスパンツァー!!」
焔が秘伝忍法「響」を繰り出したのと同時に、葛城も秘伝忍法「クロスパンツァー」を放った。
両者の秘伝忍法がぶつかり合って周囲に火花をまき散らしていった次の瞬間、両者の攻撃が強くぶつかったのと同時に両者とも後ろに吹っ飛んだ。
「くぅう……」
「ぐぅうううううう!!」
葛城はすぐさま地面を強く踏んで止まり、焔も六刀をブレーキの様にして止まると、すぐさま構え直した。
――――
「ハァアアアアアアアアアアアアアアア!!」
激闘を繰り広げるのは飛鳥も同様だった。
飛鳥は二刀の脇差を振るうって斑鳩に攻撃し続けたが、斑鳩はそれを飛燕で防ぐか、まるで幽霊の様な動きで避けて行った。
「ハァ……ハァ……ほっといて欲しいって言っておきながら、私の攻撃には対応するんだ。」
「……降りかかる火の粉は、払うだけの事です。」
息を整えながら構える飛鳥に対して答える斑鳩だったが、飛鳥は今の斑鳩を見て納得できていなかった。
「でも、今の斑鳩さんの戦い方は……斑鳩さんじゃない!!」
これまで修業として斑鳩と戦った事のある飛鳥だからこそ分かる事だった。
今の斑鳩には何時もの様な素早さをも合わせ持った戦いでは無く、まるで死んだ人間の様な戦い方のようだったからだ。
「悪いけど……今の斑鳩さんに負ける気は、全然ない!!」
そう言って斑鳩に対して二刀の刃を上から振りかざした飛鳥だったが、その刃は斑鳩の肉体に届く事は無かった。
「なぁ!?」
「調子に乗るのも……いい加減にしてください。」
飛鳥の斬撃を素早く飛燕の刃で防いだ斑鳩は飛鳥を後ろに退かせると、そのまま刃を鞘に戻したかに思えば、
「秘伝忍法……鳳火炎閃。」
斑鳩は抜刀しながら秘伝忍法「鳳火炎閃」を繰り出し、蒼い炎を纏った鳳凰が飛鳥に向けて放たれた。
「ぐぅうう!! ぐぅうううううううううう……だぁあああああああ!!」
だが飛鳥はそれを脇差を前に十字にして防ぐと、そのまま気合を入れ、後ろに向かって蒼炎を振り飛ばすように斬り裂いた。
「ハァ……ハァ……ちょ、ちょっとは本気、出したじゃん?」
飛鳥は息を荒だてながらも、斑鳩に向かって余裕の笑みを浮かび続けながら構えた。
――――
「ぐわぁああ!!」
「なぁあああ!!」
所戻って薄桜女学院では、夜桜と両備の攻撃を食らってほぼ同じ方向に飛ばされた龍姫と鎌倉は立ち上がり、並び立つ夜桜と両備を睨んだ。
「あぁもう!! どこまで私をイラつかせりゃ気が済むんだあのクソ弟子!!」
「本当……両姫お姉様の面汚しとかそれ以前に、嫌になる!!」
そう言いながら秘伝忍法を放つ準備をした龍姫と鎌倉を見た夜桜と両備はと言うと、
「っ!! 両備!!」
「分かってるわよ、一気に決めるわよ……私達の誇りいや、」
「プライドを取り戻す為に!!」
「……はい!!」
夜桜に答えた両備の答えを聞いた夜桜は笑み浮かべながら頷き、同時に秘伝忍法を放つ準備した。
『秘伝忍法!!』
「ドラゴン・ズロア!!」
「血鎌旋風!!」
「地獄極楽万手拳!!」
「リコチェットプレリュード!!」
龍姫と鎌倉、夜桜と両備の秘伝忍法が放たれ、四つの秘伝忍法は中央でぶつかり合い、ぶつかって動かないままであったが……
『っ!! うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
夜桜と両備は気合を入れて更に二発放ち、それによって夜桜と両備の秘伝忍法は威力を増して、龍姫と鎌倉の秘伝忍法を押して行き、
『ぐはぁああああああああああああああああああああああああああ!!』
遂に打ち消されて夜桜と両備の秘伝忍法を食らってしまった龍姫と鎌倉は再び吹っ飛び、そのまま頭から地面に落ちて行った。
「くぅうう!! いい加減調子に乗んじゃねぇぞ……」
「もう切れた!! 両備ちゃんは首処か全身刈り取ってゴミクズの様にしてやるんだから!!」
だがまだ負けを認めていないのか、龍姫も鎌倉も、立ち上がって再び構えようとしたその時だった。
「そこまでですわ。」
二人を止めに入ったのは仲間であるはずの闇で、闇とその隣に立つ転界は、仕事が終わったような顔をしていた。
「んだよ闇!! これから逆転するんだから邪魔するな!!」
「もう当初の目的である薄桜女学院の忍学生達は回収しました。これ以上ここにいる必要もありません。」
「でもでもぉ!! アイツらも斬り刻まないと気が済まないよぉ!!」
「それはまた今度にしなさいな。漆月が何時も言ってるでしょ?」
「お楽しみは、最後に取っておくと。」
まるで駄々をこねるように言う龍姫と鎌倉に対して転界と闇が言った後、闇は最後に笑みを浮かべると、そのまま転界が作った空間の中に入って行った。
「……あぁもう分かったよ!! おいクソ夜桜!! これだけは言っておく!! 私はお前も……お前達もクソ黒影も絶対認めねぇ!!」
「覚えておいてよ両備ちゃん!! 次会った時は絶対刈り取ってあげるんだから!!」
納得は行かないもの、仕方なしに戻る事にした龍姫と鎌倉は夜桜と両備に対して捨て台詞のような言葉を言いながら去って行き、全員帰ったのを確認すると、転界もその空間に入ってまもなく、転移空間は消え去った。
『………』
龍姫と鎌倉が去ってたのを見ていた夜桜と両備だったが、その表情は浮かなかった。
龍姫と鎌倉との対決は自分達の優勢だった。しかし最も護るべきだった薄桜女学院の忍学生を護れず奪われてしまった。ハッキリ言って勝利とは言い切れなかった。
戦いに勝って勝負に負けると言うより、戦いに勝って忍務に失敗すると言った方が早いのかもしれない。
「………四季。」
そんな中、夜桜は四季の元に近付くと、その場で頭を下げた。
「昨日は、本当にすみません。儂にとって、四季も美野里も大事な家族だと言うのにそれを忘れて……こんな、こんな儂でも良ければで良いんですがもう一度……」
四季に謝罪していた夜桜はふと頭を少しだけあげると、四季がそっぽ向きながら夜桜に向けて手を出したのが見えた。
「……来るの、遅い。」
「……すまん。」
少しだけ顔を赤らめながら言った四季の言葉に答えながら、夜桜は四季の手を握って立ち上がらせた。
「……総司、ちょっと良いかしら?」
「何だ? 先に言っておくが、」
「礼なら言わないわよ。それよりもっと大事な事。」
そんな光景を見ながら両備は総司に話しかけ、それに下を向きながら答えた総司に対して両備は話始める。
「鎌倉には大層な事言ったつもりだけど、正直言って今の私じゃアイツらを止める事は恐らく無理。……別にリーダーとして認めなくても良いけどさ、これ以上負け戦を続けて蛇女の誇りを軽んじれるのは私も御免。あんただってそうでしょ?」
「………」
総司に話しながら両備は近づき、手を差し伸べる。
「だから私に力を貸して。蛇女の……私達の誇りを、そして仲間を守る為に。」
真剣な眼差しで総司に訴える両備を見た総司は、両備の手を借りずに自分の力で立ち上がり、
「お前と私は対等、そういう事なら協力してやらんでもない。」
「フン、初めからそのつもりよ。」
そう答えた総司に対して両備は頷き、そのまま手を繋ぐ両備と総司。
「ふぅ、良かったね夜桜ちゃん。」
「両備ちゃん……」
その光景を遅れてやって来た美野里と両奈は見て微笑み、神裂と芭蕉も同じように微笑んでいた。
ちなみに、千歳は少しだけ顔を赤らめるだけだった。
「……夜桜、あんたに話したい事があるけど、良い?」
「偶然ですね、儂も両備と話をしたかった所じゃ。」
その後、両備と夜桜は真剣な目つきで互いを見ながら、ある話を始めるのだった。
――――
「がぁあ!?」
一方、葛城と相対していた焔は、劣勢を強いられていた。
葛城の今まで感じた事のない殺意、強さに何度か押されてしまったのもあるが、葛城の蹴りは焔の身体の至る所を蹴り続け、焔の体力は奪われていた。
「随分と動きとノロくなってんじゃねぇか?」
「くぅ!?」
(このままじゃ埒が明かねぇ、こうなったら……っ!?)
葛城を睨みながら考えた焔は、覚醒状態の「紅蓮の焔」になる為の太刀を抜こうとしたが、その太刀がいつの間にか無くなっている事に驚いた。
「探し物は……これか?」
驚く焔を見ながら話す葛城を見ると、その手には焔の七本目の太刀があった。
どうやら戦闘の際、背後を一瞬取った際に奪ったようだ。
「……敵の得物を奪たぁ……悪忍のやり方見てぇだな。」
「別に良いだろう。所詮忍に善とか悪とか区別する必要なんてねぇ……最初っから真っ黒何だからよ。」
「……飛鳥が聞いたら、絶対泣くぞ。」
「知った……事かぁ!!」
焔の太刀を後ろに放り投げた葛城に対して焔が睨みながら言った言葉に答えながら、葛城は焔に近付いてそのまま蹴り上げた。
「秘伝忍法……トルネードシュピンゲル!!」
「がぁあああああああああああああ!!」
蹴り上げ宙に浮いた焔に、葛城は「トルネードシュピンゲル」を放って、その竜巻に巻き込まれた焔は悲鳴を上げながら地面に叩き落ちて行った。
「がぁあ……くぅう、」
「……これで、終わりだ。」
ダメージのせいでまともに立ち上がれない焔に対し、葛城はトドメの蹴りを与えようとしたその時だった。
キィン!!
「なぁ!?」
葛城が焔を蹴ろうとしたその足甲は、目の前に現れた者によって防がれてしまう。その者は……
「ひ、日影!?」
焔がずっと帰るのを待っていた、日影だった。
「大丈夫か焔さん? それと、久しいな葛城はん。」
「あぁ……オメェは相変わらず無表情だな。」
「感情ないしな……あんたは随分と、変わってもうた見たいやな。」
焔に聞いた後、日影は葛城と話しながら構え、睨みあう。
何時ナイフと足甲が交わっても可笑しくない空気に、焔も思わず喉を鳴らした。
「はぁ~い、そこまでそこまでぇっと!!」
だがその空気を壊す者がいた。
声が聞こえた方に顔を向けるとそこには、葛城を迎えに来たのか、破忍のリーダー漆月が立っていた。
「……何しに来たんだ?」
「葛城を迎えに来ただけどさぁ困るなぁ~。勝手に焔ちゃんを倒そうとするなんて。前にも言ったけどさぁ……」
「あぁそうだったな。あんたにとってこいつは、焔は飛鳥と同じく最後のお楽しみだったんだよな。悪かったよ。」
「うん、分かればよろしい。」
葛城と話した後、漆月は上半身を何とか起こした焔に近付づき、その場にしゃがみ込んだ。
「オメェが……漆月。」
「そう。久しぶりだね、焔ちゃん。」
「は、ハァア?」
漆月の返答を聞いて思わず首を傾げた焔も気にせず、漆月は話し続けた。
「本当はもっと焔ちゃんとは話しでもしたい所だけど……今回は葛城を迎えに来ただけだからさ。ま、次の機会にでもしとくよ。」
チュ、
「なぁ!?」
漆月が焔の鼻先に、小さくキスしたのに焔が驚く中、漆月は立ち上がって葛城の元に近付いた。
「んじゃあね焔ちゃん。行こう、葛城。」
「……あぁ。」
漆月は焔に挨拶した後葛城に言いながら去って行き、葛城も焔と日影を睨みながら漆月の後をおった。
「…………」
(何だ……あの漆月から感じた物は? 何処か、懐かしさを感じるような………)
漆月と葛城が去った後、焔は漆月にキスされた鼻先を擦りながら、そんな事を考えていた。
――――
「ハァ……ハァ……ハァ……」
斑鳩と戦闘を続けていた飛鳥の身体も、疲れの色が強くなっていた。
斑鳩の斬撃と秘伝忍法を避けるか防ぐかで何とかして来たが、その全てを避け防ぎきる事は出来ずに忍装束は至る所がボロボロ、脇差の刃も刃こぼれが出来ていた。
「もういい加減諦めてください。これ以上やっても……無駄ですから。」
「ハァ……ハァ……む、無駄かどうか、まだ分からないよ。」
そんな状態の飛鳥を見て斑鳩は言うが、飛鳥の瞳は今だ諦めていなかった。
「……相変わらずですね、あなたは。そこまでして私を?」
「当然…でしょ? な、仲間一人救えないで、忍の道を極める事なんて出来ないもん!!」
「……そうですか。だったら、」
飛鳥を見て今だ諦めていないのを悟った斑鳩は、飛燕の鞘を宙に上げた後、飛燕の持ち手を両手で持ったの同時に刃の蒼炎を纏わせる。
「ここで……あなたを倒すまで。」
そう光の失いかけてる左目で飛鳥を見ながら呟いてると、飛燕に纏った蒼炎の刃が伸びた次の瞬間、
「絶・秘伝忍法、絶華鳳凰閃!!」
斑鳩の絶・秘伝忍法「絶華鳳凰閃」が繰り出され、襲いかかって来る蒼炎の刃に飛鳥は避けようとしたが、
「っ!?」
疲れが溜まったせいか、飛鳥の脚は動けずその場で膝をついてしまい、もはやこれまでかと思われたその時……
「秘伝忍法!! 薙ぎ払う足!!」
突如として巨大な烏賊が飛鳥上空に現れると、その烏賊は飛鳥の上を回転し、それによって斑鳩の斬撃から飛鳥を守るのだった。
「こ……これって、」
「まったく、外に出たら出たらで、トラブルに巻き込まれるな。お前は。」
「や、柳生ちゃん!?」
その烏賊を見て飛鳥が呟くと後ろから声が聞こえ、振り返ると柳生が歩いて来た事に驚いた。
「飛鳥ちゃん!! 大丈夫!?」
「雲雀ちゃん!! それに風魔ちゃんも!? ど、どうして……」
「流石に帰って来るのが遅いって柳生が言ってたもんで、それで一緒に飛鳥先輩を探してたら……」
飛鳥の元に駆けつけるように雲雀と風魔がやって来ると、柳生は飛鳥の前に立って斑鳩と対峙した。
「柳生さん……それに雲雀さんに風魔さんまで……」
「おい斑鳩。お前に何があって、何で俺達の所に戻ってこないかは知らん。だがこれだけは言わせてくれ。俺達には……お前が必要なんだ!!」
「…………」
「だから斑鳩、戻って来てくれ。俺達はお前が居ないと……」
「そうだよ斑鳩さん!! お願いもう止めて!! そんな……自分を許せないような顔しないで? 悩みがあるなら、雲雀達に相談してよ!!」
柳生と雲雀を見て少しだけ驚いた斑鳩に対し、柳生と雲雀は戻ってくれるよう説得したのだが、斑鳩の表情は変わる事無かった。
「……何を言われようと、何をされようと……私はもう、皆さんの元に帰るつもりは………ありません。」
「お、おい!!」
「斑鳩さん!?」
「……斑鳩さん………」
斑鳩は呟きながら後ろに振り返り、柳生と雲雀の静止も無視してこの場から去って行き、その悲しみに満ちた背中を見て、飛鳥は斑鳩の名を言うしか出来なかった。
「……お前もお前だ飛鳥。あんまり心配かけさせるな。」
「柳生ちゃん。そ、そうだよね。あんまり心配かけ過ぎると雲雀ちゃんが悲しむもんねって……」
斑鳩が去ってしまったのを見た後、柳生が飛鳥に対して口にした事に飛鳥が答えようとすると、柳生が飛鳥に抱きついた事に驚く飛鳥。
「雲雀だけじゃない、俺だって同じだ。ハッキリ言って、これ以上お前が苦しむ所は、見たくない。」
「や、柳生ちゃん。」
「もう俺にとってかけがえのない者は雲雀だけじゃ無いんだ。斑鳩も……葛城も……それにお前も、俺にとってかけがえのない仲間なんだ!!」
柳生が飛鳥に対して話しながら自身の顔を見せると、その瞳には涙が溢れかけていた。
「そうだよ飛鳥ちゃん!! 何でもかんでも自分で抱え込まないで!! 私も手伝うから、だから苦しそうな顔見せないで!!」
「雲雀ちゃん……」
そう言った雲雀に至っては完全に涙を流しており、それを見て困惑する飛鳥に、風魔は手に持っていた物を渡した。
「あ、飛鳥先輩!! これ!!」
「え? 風魔ちゃん、これって……」
風魔が渡したのは、飛鳥の好物である太巻きだった。それを見て驚く飛鳥に対し、風魔は口を開いた。
「あの……私、飛鳥先輩の色んな所が好きなんです。修業を頑張る所も、どんなに倒れても立ち上がる所も……でも、でも……」
「でも!! 一番好きなのは飛鳥先輩の笑顔なんです!! だからそんな、そんな苦しそうで悲しそうな飛鳥先輩の顔なんてもう見たくないんです!!」
風魔の大量の涙を流しながらの叫びを聞いて、飛鳥は自分の馬鹿さを思い知った。
(……馬鹿だ私は。つくづく馬鹿だ。こんなに私の事を心配してくれる仲間が居るのに、一人で抱え込んじゃって。これじゃあ……これじゃあ今の斑鳩さんと変わらないじゃん。)
そう考えた飛鳥の瞳からも涙が溢れ出て来、それに気づいた飛鳥はその涙を拭って柳生達を見た。
「ぐすぅ……皆ごめん、それから……ありがとう。」
その時に飛鳥が見せたのは、久しぶりの心からの笑顔だった。
――――
「……んじゃあ、わしはこれで。」
「っ!? ま、待て日影!!」
葛城と漆月が去ってしばらくした後、日影が再び葛城を探す為に去ろうとしたのを見て、焔は急いで日影を止める。
「なんや焔さん? あぁ、勝手に出て行って事はすまんかったと思ってるで。」
「そ、そんな事じゃない。……お前が、お前が本当は葛城の事をどれだけ心配なのか、どれだけ助けたいってのは言わないでも分かる。だが……これだけは約束してくれ!!」
日影の言葉に対して答えながら話す焔の瞳からは、次第に涙が溢れ出来て……
「必ず……必ず帰って来てくれ。正直言ってさ、オメェや詠が急にいなくなって、寂しいんだよ。私にとってお前も詠も……大事な家族なんだ!! だから……だからさ………」
涙を流しながら訴えかける焔に対し、日影は後ろに振り返ると……
「……詠さんに会ったら、焔さんが寂しがってるってだけでも伝えとくわ。」
「……あぁ、絶対だからな!!」
日影が話した事に焔は涙を拭いながら言い、それを聞いた日影は小さく頷いた後、先を急ぐように去って行った。
「………ハァ、帰ろう。未来が寂しがってるだろうし、春花にもあんまり心配かけたくないしな。」
日影の後ろ姿を見届けた焔が息を吐いた後、そう呟きながら未来や春花が待っているアジトに戻った。