1.ハグレ王国
「…ローズマリーちゃん、本当にデーリッチちゃん大丈夫かな?」
「大丈夫だとは思います…一度目の前で実際にワープをしているので座標を間違えない限りは」
遺跡に残っていた資料を読みながら、ユナに返事を返す。
…ちなみにちゃん付けで呼ばれているのはユナ曰く年齢が28歳で年上だからだそうだ。
デーリッチより低く、見た目は本当に少女にしか見えないので心底驚いた、
なおユナと呼んでいるのは本人がそう呼んで欲しいとのことだったからだ。
そんなことを話していると、
シュイン
「うおおっ!?本当にワープできたでち!?――ってごほっ、ごぶほっ!」
話をすればなんとやら、件のデーリッチが無事…とは言わないが戻ってきたようだ。
「大丈夫?デーリッチちゃん?」煤を払い払い
「大体座標通りに出てくるみたいだね。距離に制限もないみたいだし……。」
「全身煤だらけでち!もうちょっとマシな場所に呼べなかったでちか!?」
「壁に埋まらなかっただけ良かったと思ってくれよ。それに座標を計算したのは私だけど、
ゲートはデーリッチの魔力で開いてるから。」
「そうなんでちか?まぁ、細かいことはいいでちっ!今はこの凄い力で何をするかが大事でち!」
「…(このアイテム、確かにキーオブパンドラ……。しかし最初の召喚士と呼ばれていた者の杖が、こんな辺境の遺跡に転がってるなんてことが…)」
「聞いてるでちか?」
「え、何を……あぁ、まさかデーリッチ、昨日言ってたことを、本当に実行する気なのかい?」
「勿論でち!このキーオブパンドラさえあればどんな場所でもひとっ飛びでち!そうなれば
ここを拠点に私たちの王国を作る事もできるでち!」
「確かに、その鍵の力を使えば、遠くに散らばった仲間たちを集めることができるかもしれない……。
山も国境も関係なくなるしね。」
「ただ、まだこの鍵のことは依然としてよく分かってないことも多いのもからね、
その鍵の実験は個人的にしてみたいな。」
「おお、じゃあ早速……。」
「あ、あのー!」
デーリッチとそんな話をしているとユナがおずおずと挙手して声をかけてきた。
「えっと、もし最初によかったら私も転送できるかどうか実験をー……。」
「あぁ、そうだったね、デーリッチはまだ魔力に余裕はあるかい?」
「全然大丈夫でちよ!」
「それじゃあユナ、デーリッチの傍に。」
「はい!」
「…(にしてもユナが人間とは違う種族で変わった体質を持ってるとは思わなかったな。)」
ユナが仲間になった後、ユナから教えてもらったことだが。
なんでもユナは前の世界では【グラスランナー】と呼ばれる種族であり、
なんと魔力を持たない種族だという。
そのことにも驚いたが、もっと驚いたのはその後、
魔力を持たない代わりに魔法に対してもかなり鈍く、自分に向けらた魔法をかき消すこともできるそうだ。
そのため、キーオブパンドラの転移にこの能力が発動してしまう懸念があった。
「それじゃいくでちよ!」パァァァァ
シュイン
「おお」
結果から言うと、デーリッチもユナも無事目の前からワープしていた。
シュイン
「ただいまでちー!」
「戻りました!」
そして今度は暖炉の中ではなく、しっかりと部屋の中央に座標が合わせれたようだ。
「おかえり二人とも、どこか変な感じがしたりしてないかい?」
「特にはないでちね」
「私も特にはないです!」
「それならよかった、これで懸念していたこともどうにかなったわけだし……。」
「早速王国作りでちね!それじゃ――。」
「…まずはどうするでち?」
「ああ、うん…だろうね……。そのあたりはいろいろと説明するから。
仲間が増えるまで、しばらく私に任せてくれないかい?」
「勿論いいでち!ローズマリーが参謀なら100人力でち!」
「私もお手伝いできることがあれば手伝います!」
「それで、まずはどうするんでちか?ローズマリー」
「うん、じゃあまず最初だけど……。たった三人だけじゃ王国もヘッタクレもないわけだ。
さっき君が言った通りまずは仲間を集めよう。」
「ハグレたちは基本的に僻地に潜んでいる。魔物や追いはぎ等の危険を考えると、
まずは戦闘できるメンバーとして四人は欲しい。」
「そういえばユナちんは戦闘ができないんでちたね…」
「も、申し訳ございません…」
「いや、気にしてないよ、むしろユナの呪歌や鼓咆、あれには私たちには到底できない力があるからね、支援に期待しているよ。」
「そうでち!」
「あ、ありがとうございます…!」
「…話を戻すよ、とりあえずのメンバー候補として、昨日リストアップしておいたものがある。
今から向かう場所は、ほら、ここだ。」
「えーっと…て、てこてこ山――?ぱっとしない地名でちね?」
「初歩的な魔物しか出現しないし、座標もはっきりしている。まずはここに飛んでみよう。」
「ここには何がいるんでちか?」
「それは行ってから説明するよ。さぁデーリッチ。
準備ができたらキーオブパンドラでこの座標にワープをお願いするよ。」
「任せるでち!」
「えいえいおーです!」
次回、てこてこ山へ!