昔飼ってたワンコ(♂)がJKになってやってきた話。   作:バンバ

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僅か2話で評価バーがオレンジに染まって戦々恐々としています。

あと、この小説は、基本的に作者の性癖で出来ています。

・主人公の名前をミスってたので変えました
公也→幸也
内容に変化はありません。


JKと出かけたら出先でやらかされた話。

 ある曲の冒頭の歌詞から続く歌詞を借りると、この現実逃避にも説明がつくと思うんだ。

 

 例えば、仕事に寝坊してあと5分で会社に向かわなければいけない時。

 例えば、コンビニ等が無い中途半端に長い距離を歩く中で腹痛に襲われた時。

 

『夢ならばどれほど良かった』かと、思わずにはいられないことは多々ある。

 それは、今日のような場合でも同じなんだなあと、いや違う、今日のような場合は尚更そうなんだなあと、遠い目をせずにはいられなかったと言うべきか。

 

「コーヤ、選んで選んで!」

(どうしてこうなった)

 

 両手に色違いの首輪を手にした葵ちゃんを目の前にして、冷や汗がダラダラ流れてくるのを感じた。事案が発生しそうだ、誰か助けてくれ。

 どうしてこうなったのか、少しだけ遡っていこう、現実逃避とも言うね。

 

 あれは今日の9時過ぎ、もうすぐ15分に差し掛かるかといったぐらいの時間だったと思う。流石に昨日の今日で混乱やら嬉しさやらが抜けきらなかったが、だからといって約束を無かったことにするわけにもいかず、一先ずロボの、葵ちゃんのケータイに電話をかけるとにした。

 

 今思うと、ファミレスでのやり取りが相当尾を引いていたのだろう。会わなければいけない、という後ろめたさにも似た感情に襲われていた気がする。

 

『はぁーい、乾ですけど、どちら様でしょうか?』

 電話からはエラく間延びした、寝起きを思わせる声色の葵ちゃんの声が聞こえてきた。

 今時の学生の朝は早いモノだとばかり思っていたけど、葵ちゃんはそうでもないらしい。こういう所が、一々ロボを想起させた。彼も、朝は滅茶苦茶弱かったのを覚えている。

 

「えーと、おはよう葵ちゃん、立花幸也です。昨日ぶり、かな?」

『……え、コーヤ? ……ああぁコーヤ! コーヤだ! やっぱり夢じゃなかった! おはようコーヤ!』

「ごめん葵ちゃんテンションの落差にオジサンついて行けてないや」

『大丈夫! コーヤの声聞いて目が覚めたから! 今日どこに行こっか!』

「出かけるのが前提なのか……」

 

 俺の声は目覚まし時計か何かかなというツッコミは置いておこう。

 窓を開けて天気を伺えば、清々しい青空が広がっていて、日射しは春らしく暑過ぎない程度に地上を照らしていた。強すぎず、冷た過ぎない程度に風も吹き、実にお出かけ日和と言えそうだった。

 

 別に出かけるのは構わなかった。問題は葵ちゃんが何処に行こうとしてしているのか、だ。ヘタな場所に行くと俺や葵ちゃんの今後に関わる展開が待っていてもおかしくはない。いや彼女の場合はたぶん気にしなさそうではあるのだけど、学校にありがちな噂からのイジメとか、そういう展開になったらと考えたら居心地が悪い。

 

 というか根本的に高校生、下手すると中学生(15歳と言っていたのでどちらかわからなかった)と2mオーバーの巨人アラサー不審者の組み合わせは第三者の目で見たら相当アレではなかろうか。親子とか年の離れた兄弟とか、あるいは親戚には、……見えないか。

 ……職質されないことを願うばかりだ。

 

『それじゃあねえ、昨日のファミレスで12時前に集合しよ! そこでご飯食べて、そのあとの予定は集まってから!』

「昨日のファミレスね、わかったよ。事故には気をつけてね」

『む、大丈夫だよ。赤信号とか気をつけてるし! それこそコーヤだって散歩の時、バーって走って私のこと引っ張って行って歩道の信号無視ばっかりしてたじゃん』

「……そういうこともロボとして、覚えてるのね。まあ、今はいいや。それじゃあ、後でね」

『コーヤも足元には気をつけてね、昨日の顔見たら隈酷くてビックリしたんだから! じゃあ!』

 

 そう言って葵ちゃんは電話を切った。

 信号無視しながら走り回った件には心当たりしかない。そんなことまで覚えていられると、苦笑いするしかないな。

 

 それにしても、隈か。これでもこの半年で結構薄くなったんだけどなあ。自分のことながら気にしなさ過ぎたらしい。

 ……日付が変わってから帰宅するとかザラだった、というかほぼ毎日だったし。

 そう考えると、早くて定時の5時、遅くてもだいたい夜の9時には帰宅できるようになったなんて、変わったもんだ。

 

 しかし、これ大丈夫なのだろうか。大丈夫では、ないよなあ。

 乾課長にバレたら、何言われるかわかったもんじゃない。……今は忘れよう。胃が痛くなる。

 

 とまあ、そんなこんなで時間が過ぎて12時。住んでるアパートから徒歩10分くらいのファミレスで合流した俺と葵ちゃんは飯を食べつつ話し込んでいた。

 

 ……この時、及びその前後で起こったことは割愛させてもらおう。思い出すだけでも眩暈がする。

 

「コーヤ!」と俺を見た途端入口から一目散に駆けつけ飛びかかってきたりだとか。

 

 急にしゃがんでと言い出したと思ったら「昔のお返し」とかなんとか言って抱き着きながら頭をワシワシ撫でてきたりだとか。

 

 例によって昨日と同じく俺の隣に腰を下ろして、今度は料理が来るまでの間膝枕をしてとせがんできて、こちらが折れて10分程度膝枕をしていたり。

 

「あ、ほっぺにご飯粒付いてる」とか言い出して顔を見て近づけてきたと思ったらキスされそうになって慌てて顔を抑えることになったりだとか。その時にたまたま頭を撫でる形になり、その結果「やっぱり、コーヤの手って気持ち良いね」と葵ちゃんが顔をほころばせたり、と。

 

 色々あった気がするけど、何もなかった。何もなかったんだ!! 

 

 その後、葵ちゃんがペットショップに行きたいと言い出して俺がそれを了承して、最寄りのペットショップに顔を出した時、事件は起こった。

 

「コーヤはどっちがいいと思う?」

「それは、首輪かい?」

 

 葵ちゃんが、ロボが、ペットを飼っているのだろうか。かつて自分のペット、家族だった彼、彼女がペットを飼う、か。何だか感慨深いなと、革製の首輪を見て思案顔をする彼女を尻目に、そんなことを考えていたら、次の一言で全てを察した。

 

「どっちが似合うと思う? コーヤ、選んで選んで!」

 

 頭痛が痛いとかそういう領域じゃなかった。数秒だけ、完全に思考が止まった気さえする。あれ、おかしいなちょうどいい気温の筈なのに汗が止まらない。

 右手に赤の、左手に黒の首輪を持った葵ちゃんが、俺に、尋ねてきた。

 周囲には休日ということもあってか疎らに人が居る中で、である。

 突き刺さる視線、聞こえてくるヒソヒソとした声。そんな中で何もわかっていないのか自信ありげな表情でこちらを見上げる葵ちゃん。

 

「……あ、あおいちゃん、ちょっとようじおもいだしたからそとでよっかー」

「え、じゃあせめてどっちか決め」

「アーアー聞こえなーいさあ行こーう!」

 

 その後、どうにかペットショップを離れ、次会う時に首につけるタイプのアクセサリーでも買いに行こうと約束を取り付けて今日はお開きになった。

 一先ず、これで1週間の猶予期間を確保できた。どうしたらいいか。いや、もう、ええ? どうしてああなった……。天然とかそういう領域じゃないぞ……まさか俺と接する時だけロボとしての面が色濃く出るとかそんな感じの設定要らないよ? いやそれ以上に変な噂とか立たないでくれよ……? 

 

 もう、今は考えていたって仕方ない。今日は帰って寝てしまおうと、いろんなことが起こりすぎて疲れ切った状態で、帰路に着いた時だ。

 

 電話が一本かかってきた。こんな時に誰からだと思って画面を見る。

 

【乾課長】

 

「おぉーぅ……」

 

 俗に言う死体蹴りというヤツだろうか。もうやめて! 俺のライフは0よ! 

 しかし、出ないわけにもいかないのが社会人の辛いところで、結局出ざるを得なかった。

 

 Pi.

 はい立花です。え、あ、はい。ハイ……ああいえそんな! え? あ、はぁ。はい、はい。わかりました。では……

 Pi.

 

 ……仕事が終わったら乾課長とサシで飲むことになったんだが、どうすればいいんだろう。

 夕焼けを背に飛ぶカラスが「そんなの知るか」と言わんばかりにカアカア鳴いていた。

 

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