昔飼ってたワンコ(♂)がJKになってやってきた話。   作:バンバ

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15日(水)夜 自宅にて
知り合い「オリジナル日間1位おめでとう!」
俺「はいぃ? ……はいぃ!?」
次の日の夜
知り合い「日間ランキング上位入りおめでとう!」
俺「アイエエェ……」
今日 書いてる息抜きに他の作品を読みにランキングの様子を見にきた(今までは感想通知が凄くて他まで意識が回らなかった)
俺「ランキング1位、お気に入り4桁、だと。ヒェ……」

いやほんとありがとうございます。
でもオレンジで戦々恐々してたのに赤って。お気に入りも4桁台って。
やっぱ皆さんあれか、イチャイチャほのぼのハッピーエンドが好きなんだな。俺もだ。
しかし今日はオジサンしか出ないんです。次回期待して。


上司とオジサンが飲み食いしながら話す話。

 朝から果てしなく気が重たい。これ程までに風邪をひいて休みたい日は大学を卒業してからの社会人生活で一度もなかった気がする。トボトボと歩きながら思案する。今日だけは薄くなってきていた隈も逆戻りになっている気がする。頭痛が痛いなんてレベルじゃないぞ。致命傷だ。

 ホワイト上司様の前任と口論になった時も此処までではなかった。いや本当に、どうしてこうなった。

 

 そもそも一体全体、苦手意識を抱いている相手と一対一で飲まなきゃいけないのだ。禿げそう。

 その根本的な原因は思い当たる。というかほぼ一つに絞れている。

 

 葵ちゃん、もとい、ロボがやらかしたということ。多分ポロッと言ったんだろうなあって。だって昨日だけであんなことやこんなことがあったのに、トドメにあの事案(ペットショップの件)があった後だ。言っちゃあいけないような話とかポロッと喋りそう。というかそんな絵面が易々と想像できる。オジサンの胃は既にボロボロだ。

 

 悪気は、無いんだろうなあ。というか悪気があったら昨日の別れ際に「一緒にいれて嬉しかったよ、今日はありがとねコーヤ!」なんて言葉を投げかけてきたりはしないか。

 俺自身、13歳も離れてる女の子と一緒に過ごす経験なんてこれまで過ごしてきて一度もなかったからなんとも言えない部分があるけれど。きっと、楽しかったし、嬉しかったんだろう。

 

 俺ファミレスでは顔赤くしてた覚えしかないけど。ペットショップでは社会的に死にそうになってたけど。

 

 ただ、俺の中でのロボ、葵ちゃんに対する感情は、間違っても恋愛ではない。

 複雑な形になっているけど、それらは懐かしさであったり、かつて別れた彼との再会から来る嬉しさであって、年下の女の子とイチャイチャできたぜワーイ、みたいな下心を含む感情は一切ない。

 

 あくまで親愛、言い過ぎな表現で例えても家族愛だ。今は他人だけど。

 彼女は彼であって、俺の中では異性とかペットで、と。

 

 そういう部分の話がごちゃごちゃに混ざり合って、整理し切れていない、というのが正直なところなのだけど。ああ面倒臭い。部屋の布団に潜り直して不貞寝でもしてしまいたい。

 しかし悲しいかな、体は社畜として仕事をしに会社へと確実に歩みを進め、どうしようどうしようと考えてるうちに無事に会社に到着してしまった。

 

「はあ゛あ゛……おはようございます」

「おっ、おはよう立花……どうした? 凄く顔色が悪いぞ?」

 

 声を掛けてくれたのは我らがホワイト上司様こと雨宮さん。今日も柔和な笑顔が素敵っすね。しかしこんな若づくりでアラフィフだから、人は見かけによらない。

 なお、結婚願望は捨てきってないらしいけど、お付き合いした人たちそのことごとくに「愛が重過ぎて無理」と言われるらしい。一体なにをしでかしているんだろうか。

 

 そんな雨宮さんが驚いたような顔でこちらを見やる。まあ、普段こんな顔をしない自覚もあるので、当然といえば当然か。

 

「いえ、大丈夫です。むしろ仕事して嫌なこと少しでも忘れておきたいんで」

「そ、そうか。でも、今日はそこまで仕事を振られてるわけじゃないから、無理はするなよ?」

「ありがとうございます」

 

 さて、今日も一日頑張って稼ぎますか。

 乾課長から声が掛かるまでは、いつも通りに。仕事は仕事ってね。

 

 

 

 

 時間は飛んで。昼食も食べ終わり、今日の分の仕事も粗方片付いて、同僚や周囲の人たちの書類製作も手伝い終わって帰宅の準備を進めていた時だ。

 

「立花君、少し話があるんだが」

 

 若干威圧的な声が聞こえてきた。顔を声の方に向ければ、スーツ越しにも分かる鍛えられた身体の主張が激しい巌のような男が、今俺が一番会いたくない相手が居た。あかん、胃が痛い。

 

「お疲れ様です乾課長、この後の話ですか?」

「ああ、その事でな。ここではなんだ、行く予定の店まで行こうか」

「あ、はい」

 

 席を立ちカバンを持って乾課長について行く。周りの声を聞きあげれば「立花今度はなにやからした?」「あいつ意外なところでやらかしてたりするからなー」「この会社きっての武闘派が二人……閃いた!」とか色んなことを好き勝手に言ってるようだ。というか武闘派ってなんだ。俺はただ体がデカイだけの一般人だっての。あと今度はなにやらかしたって言った奴、後日社食奢ってもらうからなこの野郎。

 

 

 

「いらっしゃい! こちらのテーブルにどうぞ!」

 

 会社から徒歩2分と言ったところに、お目当ての店はあった。居酒屋だった。焼き鳥のタレが焦げるいい香りがこちらまで伝わってくる。テーブルまで通された俺たちは、その流れのまま注文することにした。

 

「生を……立花君生行けるか?」

「あ、大丈夫です。あとねぎま大皿いいですか?」

「ああ、構わない」

「よっし、すみませーん、生二つとねぎま大皿でお願いします」

「はーい、生二ねぎ皿ー!」

 

 厨房の方から聞こえてくるはいよー! という声、炭火で焼き鳥を焼く音、ガヤガヤとした雰囲気が混ざり合って、やっぱり居酒屋はこうだよなと思いながらお冷やを一口飲んだ。

 

 社会人になってからやはりお酒はどうしても関わってくる要素だと思う。

 飲み会や、同僚や後輩の愚痴を聞いたり、嫌なことを忘れたい時なんかも酒に頼ることはあるかもしれない。まあ、酒は飲んでも飲まれるな、なんて言葉があるくらいだから飲みすぎには十分気をつけないといけない。でも美味しいから仕方ない、仕方ないんだ! 

 

「はい生とねぎま大皿お待ちー! あとこれお通しの枝豆です!」と店員さんがジョッキに並々と注がれたビールを、二人で軽くジョッキをぶつけてから飲む。ごっ、ごっ、と喉を通る苦味に炭酸が気持ちいい。空きっ腹にお酒は飲みたくないんだが、一杯だけなら良いだろう。

 

 半分ほど飲んだところで、ジョッキをテーブルに降ろしてねぎまを食べる。鼻を抜ける香ばしさと甘辛いタレで濃く味付けされたそれらを飲み込んで、また一口ビールで流し込んだ。……あー、美味え。

 

「随分酒が進むな、立花君」

「あ、いえ、なんかすみません」

 

 現実逃避の為に割とがっつり食を楽しんでたとは言えず、流石に失礼だったと反省する。

 しかしそれを見た乾課長は緩やかに首を横に振った。

 

「気にしなくてもいい。いや、それは別にいいんだ。……単刀直入に聞こう。うちの娘とは、どういう関係だ?」

「あー……」

 

 やっぱり聞かれるよなあと思いながら、なんと返答したものかと悩む。直球で葵ちゃんの前世がー、みたいな話をしても確実に頭おかしいものを見る目で見られる未来しか見えない。

 何かしらの趣味でたまたま知り合いー、と話をしたとしてもその場限りの嘘というのは露見しやすいのでこれも却下。

 

 ウンウンと悩んでいると、「ああ、別に付き合っているとか、そういう部分は気にしてはいない」と驚くような言葉が出てきた。

 

「え?」

「私としても、普段の君の勤務態度も知っているつもりだし、最低限どのような人間か把握しているつもりだ」

 

 そう言ってグビリとビールを飲み、枝豆をプチリプチリと口に含んでまたビールを一口飲むと、ジョッキを置いた。

 

「その上で、うちの葵と交際している、というなら別に構わない。娘の人生は、あくまで娘の物だ。親がしていいのは精々、少しでも前に行けるように助言することくらいだと、私は思っている」

「あ、ありがとう、ございます」

 

「多少年の差は気になるところだが、君のことは信用も信頼もしているつもりだ」と僅かに赤くなった顔で無骨に笑う乾課長。

 

 いいお父さんだなあ。やっぱり本来はいい人なのだ。

 これで仕事で無茶振りする部分が抑えめだったらなあと、思わずにはいられない。

 

 この人のことが苦手な理由は、基本的に仕事の物量が多いことその一点だけなので、他は基本的にいい人なのだ。その一点があまりに酷い(おそらく本人も自覚していない)ので俺たちからは半分くらい冗談でブラック上司とか言われてたりするわけだが。

 

 しかし、だ。それ以上に、それ以上に不味いことに気がついた。いや勘違いならそれでいいんだよ? ただ、何というか。そう。

 外堀から埋められていってる気がする。

 

「しかし、まあ、なんだ。……あまり変なことはするなよ? 今回の件は、うちの葵が発端だったとはいえ、まさか人前でそのような事をするとは」

「アッハイ、ホントウニスミマセンデシタ」

 

 その後は酔いが回った乾課長の小さい頃の葵ちゃんの可愛さ談義や「たまに前世が、とか言い出す時もあるがそういう年頃なのだろうから大目に見てやってくれ」などといろんな話をして、つつがなく一対一の飲み会は終了した。葵ちゃん……ロボ……結構ガバガバ話してるのね。

 


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