魔法少女リリカルなのは~恋する融合騎~   作:旗本

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恐らくこれが今年最後の投稿になりますね。

来年もよろしくお願いします。


第10話

***

 膨大な魔力消費と、長期の魔力放出に、体が鉛のように重くなるのを感じる。

体が言うことを聞かない。もっと、頑張らないといけないのに。やらなくちゃいけないことがあるのに。

 

限界など、とうの昔に通り過ぎている。

 

 声を発することも出来ずに、デプスは膝から崩れ落ちた。

 このままではいけない。まだ、やりたいことがたくさんあるのに。必要とされなくなってしまえば、すぐに処分されてしまう。頑張らなくては、期待に応えなくては。

なのに、体は動かない。

 

 意識は朦朧としていたが、眼前で白衣を来た研究者達が何かを話しているのはぎりぎりで分かる。

 

「デプス、意識レベルの低下を確認。実験の続行、困難です。」

「構わん、続けろ。」

「了解。デプスの意識を覚醒させますか?」

「その必要は無い。こちらから接続して魔力を強制排出させよう。」

「デプスへの負担は?」

「構わん。」

 

――――壊れるなら、また新しいのを作ればいい。

 

 デプスが最後に認識できたのは、そんな言葉と、白衣を翻してどこかへ歩いていく主任の姿だけだった。

「待っ……置いて……か……ない……」

 

 自分には、何故感情があるのだろうか。こんな物が無ければ、こうやって捨てられることに恐怖することも、限界を超えても苦しくなんか無いだろうに。

 

 デプスの声が、その場にいた誰かに届くことは、無かった。

 

***

「……ス……! ……プス。」

「ん……」

「大丈夫ですか? デプスー?」

「……んん、リイン姉さん……? おはよー……」

 

 目が覚めるとすぐに、自分を心配そうに見つめるリインの姿がデプスの目に入った。寝起きだからかもしれないが、何だかやけに体が重いというか、気だるい。

 うぅん、と伸びをして、体を起こすと、リインがデプスの額に手を当てる。

 

「……どうしたの? 姉さん。」

「デプス、何だか凄くうなされていたですよ。悪い夢でも見ましたか?」

確かに、自分の状態を鑑みてみると、汗でびっしょりな割には、寒気のような感覚。

自分は、悪夢を見ていたのだろうか。内容は思い出せないが、何となく苦しかった気はする。

 

「あれ…? デプス、泣いてるですか?」

「え?」

 

リインに言われて、すっと目を拭ってみれば、確かに自分の目から涙が流れていることに気づいたデプスは、首を傾げていたが、だんだんと涙が後から溢れてきて、訳も分からないままに、嗚咽まで漏らしだしている。

 

「あ、あれ……? な、何で……?」

「デ、デプス!? え、えと、あの、えぇと……こういう時はどうすれば……」

 

 ついには本格的に泣き出してしまったデプスにリインは少し焦るが、いつぞやの、デプスが泣いていた時にしてやったことを思い出して実行に移す。

 

「リイン、姉さん……」

「大丈夫。大丈夫ですよ。リインはここに居るですから。辛くても、いくらでも受け止めてあげられます。」

「……姉さん……」

 

それは、ただの抱擁。されど、デプスにとってのそれは、大きな安息を与えてくれる、一種の安定剤として作用する。

みるみるうちに落ち着いてきたデプスは、ゆらりとリインから体を離すと、そのままベッドの中へ倒れ込むのであった。

 

「って、デプス!? どうしたですか!?」

「あ、あはは、よく分かんないけど、なんか頭がボーッとして……」

「や、やはりさっき手を当てた時も思いましたが、熱があるのでは……! 大変です! はやてちゃんに報告して来ます!」

 

慌ただしくデプスハウスの天蓋を開けて去っていくリインを見送ったデプスは、そのまま意識を手放した。

 

***

「ん……」

「あ、本日2度目のお目覚めですね、デプス! おはようございます!」

「あ、おはよー……」

「さっきは心配したのですよー?」

「え……?あ、う……リイン姉さん、俺……」

「辛そうだったので、勝手に熱を計らせてもらいましたけど、どうも熱っぽいみたいですね。シャマルが言うには、一種の熱暴走みたいな物で、安静にしていれば治るとのことですよ。」

「あ、そうなんだ……」

「はい!今日はお姉ちゃんがしっかり看病してあげるのでご安心を! です!」

「……うん、ありがと、姉さ……え、あ……」

 

 そこまで言われて、デプスはようやく頭が回りはじめて来たのか、今日はリインが休みの日だったので、一緒に街に買い物をしに行こうと言っていたのを思い出した。昨日は、それはそれは期待に胸を膨らませて眠ったものだった。

だが、その結果はこれだ。こんな様では、買い物など行けはしない。

 

「ごめん、姉さん。せっかくの休日なのに……」

「気にすることは無いのです! これはこれで楽しくていいのですし!」

「そ、そう……?」

「はい! 我が家は基本的に無病息災なので、こういう機会は滅多にないんですよ!」

「あぁ、確かに……」

 

 はやては仕事上身体を壊す訳にはいかないので、身体の事には細心の注意を払って

いるだろうし、ヴォルケンリッター達の体は言わずもがな。デプスも基本的にはこういうことは起きない筈なのだが、まぁ珍しいことには変わりは無いだろう。

 

「ちなみに、今ザフィーラが色々と役立ちそうなものを買いに行ってくれているので、もう少し待っててくださいね?」

「あ、うん。」

 

 今は、何よりも気だるさが勝っている。リインの言うとおりにしようと、またベッドに入る。ふと時計を見ると、まだ朝の8時を過ぎたころだった。

 

「あれ……姉さん、姉さん、俺ってさっきうなされてた時からどれくらい寝てたの?」

「へ? んー、1時間くらいですね」

「あれ、どうやってうなされてたのに気づいたの?」

「……それではデプス、おやすみなさいです!」

「あっ! 誤魔化さないでよ姉さん!」

 

 そそくさと去ろうとするリインを見ていると、何となく悲しくなってきて、つい「うっ、頭が…」などと、そこまで苦しい訳でもないのに大げさにつぶやいてしまう。

すると、ぴたりと動きをとめたリインがこちらの方をちらちらと見てきた。

 

あ、心配してくれてるのか。やっぱり姉さんは優しいなぁ。

 

 と思いつつ、「ううーん」と頭を押さえて棒読みでうなっていると、耐えかねたのか、

「だ、大丈夫ですか? その、やっぱり寂しいと辛いですか?」と言いながら戻ってきてくれた。リインからすれば、元々が羞恥心を隠す為の退避だったので、それが原因でデプスの体調が悪くなるようなことがあれば一大事なのだ。看病するつもりだったのにこれでは、シャマルに「リイン一人で大丈夫です!」と豪語してきた示しがつかない。

 

「あ、あはは、ごめん姉さん、別にそこまでしんどい訳じゃなくて……まぁ、ちょっと姉さんに避けられたと思って焦ったけど…」

「そ、そうでしたか! ……その、アレなのですよ、明日は休みですしゆっくりできるからベッドに突撃しようかなーという考えがたまたま、たまたま浮かんだだけであって、決して常習犯ではないのですよ! そう、たまたまなんです!」

 

妙にたまたまを連呼して強調するリインだったが、デプスはそれに疑問を抱くことも無く。

 

「へぇ、そうなんだ……でも、できれば事前に言ってほしいな。リイン姉さんばっかりずるいよ……」

「へ?何がですが?」

「俺も姉さんの寝顔が見たい! 一緒に寝たい!」

「あぁ、そういうことでしたか……うぅ、たしかに悪いことをした気分になってきたのです……」

「そうだ、今度は俺が姉さんところに行って寝てもいいかな? いちいち俺の所に来るのも面倒じゃない?」

「んー……別に構いませんけど、リインと寝ても、そんなに気持ちいいかと言われると、微妙ですよ……?」

「じゃあなんで姉さんは俺のところに来るの?」

「気持ちいいからです!」

「ほらやっぱり! いいなぁ、俺も姉さんと寝てみたいなぁ……」

「う……そ、そこまで言うなら構いませんが、まずは安静にして元気になるのが先決ですよ!」

「うん、すぐに治すよ!」

「全く、デプスはホントにお姉ちゃん子ですねぇ。」

 

 八神家に来てから、デプスはこうやって素直に自分のしたいことが言えるようになってきた。もちろん、外に出る時などの分別は弁えているし、それはつまり、家族に対しての遠慮が無くなって来たということであって、リイン的には頼ってもらえるのもあって、好ましいことには違いないのだ。

 

「まぁ、ザフィーラが帰ってくるまで、リインがついています。そうだ、どうですか?使いますか?」

 

そう言って、リインは自身の膝を指し、デプスの方に問いかける。

 

「え、流石にそれは姉さんに悪いよ……。頭だって重いだろうし……」

「嫌ですか?」

「……ううん。でも……」

「ならいいのです。病は気からとも言いますし、今回はおまけです! リインで安心できるなら、いくらでも安心するがよいなのです!」

「姉さん……ありがとう。じゃ、おじゃまします……」

 

 改めてかしこまったデプスがリインの膝枕を享受する。妻女は緊張して頭を完全には預けられない様子だったが、少しすると落ち着いてきたのか、だんだんと身体の力を抜いて行くのがリインに伝わって来た。

 

「どうですか? 気持ちいいですか?」

「うん……なんか、また眠くなってきたかも……」

「一応病人なのですから、ゆっくり眠るといいのですよ。」

 

 うつらうつらと船を漕ぎ始めたデプスの髪を梳きながら、リインは時計を確認する。ザフィーラが家を出てから、まだそこまで時間は経っていない。まだ時間はたくさんあるのだし、ゆっくりさせてもらおう。そう考えていると、おもむろに、「今度は……俺が……姉さんに膝枕を……」と、ほぼ寝入っているのに近い状態でつぶやき出したデプスに苦笑を返しながら、「女の子に膝枕する男の子もなかなか珍しいものですよー」と、自身も顔を赤らめなだら、弟のやわらかいほっぺをぺちぺち叩き返してやるリインだった。

 

***

「ただいまー」

「ただいまー、デプス、大丈夫かー?」

「お帰りなさい、はやてさん!ヴィータさん!」

「です!」

 

 はやてとヴィータが仕事から帰宅すると、元気なちびっこ2人がふよふよと浮かびながら出迎えてくれた。どうやら具合はよくなった様である。

 

「おぉ、デプス、元気かー?」

「はい! 姉さんが看病してくれたおかげで、すっかりよくなりました!」

「えっへん! なのです!リインにかかれば弟の看病なんてちょちょいのちょいなのです!」

「そかぁ、偉いなぁ。私も看てあげられたらよかってんけど、ごめんな、デプス。」

「いえ、はやてさんは仕事もありますし、その気持ちだけでとても嬉しいです。ザフィーラも色々と気を揉んでくれましたし、今度何とかしてお返ししたいですね。」

「ほほぉ、そりゃまた殊勝な心がけなこって。」

「そやなぁ、じゃあ、これからまだ寒くなるやろうし、編み物でも覚えてみるか?」

「編み物、ですか……俺でもできるかなぁ」

「デプスは結構手先器用やし、できると思うで?今度の休日に教えたるわ。シャマルもできるから、そっちにも聞けばええよ。」

「はい、ありがとうございます!」

「あ! リインも編み物一緒にしたいです!」

「え? でも姉さんの恩返しに編み物するのに……」

「お姉ちゃん的には弟に編み物をしてあげるというのも何かいい感じです!」

「そ、そう……?じゃあ、お揃いの物、作りたいな。」

「それはいいですね! あぁ! わくわくしてきました! 今からでもデザインを考えましょう! デプス、部屋へゴーです!」

「あ、うん!」

 

 慌ただしく去って行くちびっ子2人組を横目に、リビングへと入って行くと、シグナムとアギトが「お帰りなさい」とあいさつしてくる。シャマルの靴も玄関にあったし、帰って来たのは自分たちで最後。

 

「あれ?ザフィーラは?この時間やといっつもリビングに居んのに珍しいなぁ。」

「あぁ、その件なのですが……」

「ん?」

 

シグナムが言い辛そうに目を逸らしながら答えるので、何があったのかと気を引き締めるが、

 

「その、風邪を……引いた模様です。今はシャマルが介抱していますが……」

とのこと。

 

「……熱暴走ってうつるねんなぁ」

「いや、違うから。普通に風邪だから。」

アギトが何やら突っ込んでいるが、気にしない。

「まぁ大したことないならよかったわ。上におんねんな?私も様子見に行ってくるわ。」

「あ、はい。しかし、主を守る守護騎士が風邪をひくなど……」

「あたし達の身体も、風邪をひくようになったんだな。」

 

ヴィータがシグナムにかぶせるように、薄い笑いを貼りつけて言う。

 

 自分達は、あくまで夜天の書プログラムだった。風邪など、無論引いたことが無い。

それが、今日初めて風邪をひいたのだ。つまり、それだけ自分たちが人間に近づいているということ。それは、喜ぶべきことではないのか。まぁ、確かに情けない話ではあるけれど。

 

「……そうだな。」

 

 ヴィータの言葉の真意を理解してか、険しい表情だったシグナムも表情を緩める。

自分達は主と一緒に命を終えることができるのだ。それでいい。もとより、はやて無しの人生など、もう考えられない。自分達は、本当に幸せな存在なのだ。

 

「なんか、ありがとうな。みんな。」

 

 はやて自身も、守護騎士たちがいない生活なんて、もう考えられない。こんな人達を出会えて、自分は本当に幸せだ。

きっと、彼らがいる限り、私はずっと幸せで居られるんだろうな、と思いながら、ザフィーラの介抱に向かうはやてだった。

 

 

 




この融合騎達はナチュラルです。羞恥心が一般とは微妙にずれたところにあります。

そしてザッフィーがオチ要因になりつつある今日この頃。
あれですよ、デプスの為に街を色々と奔走してたらいらないものまでもらっちゃった的なあれですよ。
一番体強そうなのに(ry

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