魔法少女リリカルなのは~恋する融合騎~   作:旗本

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第13話

 八神家の留守を守る守護獣、最近は会う人会う人皆に犬と間違えられるので訂正するのも億劫になってきたザフィーラが八神家2階の窓や家具の拭き掃除をしていると、下からがらがらと何かが崩れる音がした。

 

(デプス? 何かあったか?)

(ぐっ……! ざ、ザフィーラ……)

 

 何があったのかと念話をかけてみると、返ってきたのはデプスの呻き声。

まさか、侵入者か……?

 

 今日はデプスとザフィーラ以外の八神家の面々は全員仕事なり何なりで出払っている。

確かに一番手薄な状態ではあった。

 

だが、下からの魔力反応は無く、何かが現れた気配も無い。

 

(害虫でも出たか?)

 

 即座に不届き者の侵入という事態を頭から取っ払ったザフィーラは、溝までぴかぴかになった窓を一瞥した後、のそのそとリビングへと降りていった。

 

デプスからの返事は無かった。

 

***

 

 リビングに到着し、眼前のキッチンに広がる惨状を目にしたザフィーラは、一瞬で事態を理解し、ため息をつきながらボウル等の調理器具に埋もれたデプスを引っこ抜き、ぺしぺしと頬を叩いて、

 

「届かないならば我に言えば良かっただろうに。」

 

 と、呆れ半分安堵半分といった視線を向けた。

上にある大きく開け広げられた器具棚とデプスが使うには微妙な高さの踏み台を見る限り、恐らくと言わず、十中八九直撃したのだろう。デプスは目を回していて、その頭上には星が回っているような気がする。

 

 八神家の器具棚は高い位置にあり、デプスの身長では手が届かない。

 

 それでも、ザフィーラがいるし、今までもリインはヴィータや等のちびっこ組が一人で八神家のキッチンを使うということは無かったのだが。

 

「おい、大丈夫か。」

「う、うぅん……」

 

 ぺちぺち、ぺちぺちと頬を叩いていると、ようやくデプスが意識を取り戻した。よく見ると額がうっすらと赤みを帯びている。

 

「額に直撃か?」

「あ、ザフィーラ。……あはは……その通りです……」

ばつが悪そうに苦笑するデプス。一応反省はしている様だった。

「全く、何故我に声をかけなかった? 大した手間では無いだろう。」

「いや、はは……ザフィーラな実はまだどこに何があるのか把握しきれてなくてね。全部出すのは流石に駄目だし、分からないのにいちいちザフィーラを呼んだら、何回も行き来させちゃうから。ザフィーラも、どの棚に何があるのか、把握してるわけじゃないでしょ?」

「いや、流石に大体は覚えているんだが……それに、仮にそうだったとしても、こうなっては元も子も無いぞ。」

「う……ごめんなさい。」

「まぁ、丁度我もすることはしてきたところだ。物の出し入れくらいなら手伝おう。」

「うん、ありがとう、ザフィーラ。早速だけど、このトレイとボウル以外を直して欲しいな。」

「承知。」

 

 頷いたザフィーラは、調理器具をテキパキと元あったであろう場所に直していく。直し終えたところで、ふと、ザフィーラはあることが気になってデプスに問いかけた。

 

「……浮遊魔法を応用すれば、このくらいはお前一人でもできたのではないか?」

「……あっ。」

 

その発想は無かった。と言わんばかりの表情を見せたデプス。

 

「お前は本当にデバイスなのか……?」

 

 呆れながらも、まぁこれからは試してみるといい、と、デプスの頭をがしがしかき回した後、デプスの様子を見守るザフィーラだった。

 

***

 

「それは何を作っている?」

 

 牛乳と生クリームを火にかけ、卵黄と砂糖を混ぜ合わせた物を投入するデプスにザフィーラが問いかける。特に急な用事があったわけでもないので、デプスを見守ることにしたのはいいが、ただ黙って見ているのも憚られたので、話題の一環として丁度良かった。

 

 ちなみに、ザフィーラは、料理に関しては、はやての傍についていたおかげで手伝うことも多かったので、それなりに覚えがあるのだが、お菓子作りに関しては手伝いの役目をヴィータやリイン、アギトが担っていた上に、機会もそう多くなかったこともあって、あまり知識があるとは言えなかった。

 

そんな訳で、実際にデプスが何をしているのかは分からないのだ。

 

「ふふん、これはね、アイスクリームだよ。」

 

自信満々に答えたデプスに、納得の表情を見せるザフィーラ。

 

「なるほど、言われてみれば……しかし、これだけの材料で作れるのだな。分量は大丈夫なのか?」

「うん、はやてさんと一緒にちゃんと調べたからね。分量はちょっと多めだけど、ヴィータ姉さんいるし……」

「……うむ、多すぎるということはまずないだろうな。」

 

 ちなみに材料はさっき挙げた4つ、砂糖と牛乳、生クリームに卵黄だけだ。

余った卵白はとり置きして、後でクッキーを作る時に入れるんだ、とはデプスの談。

混ざったアイスの元をトレイに移し、冷凍庫へ。

 

「ふぅ、とりあえず、これでしばらく待機かな。」

「あぁ。それに、もう昼だ。昼食も作ってしまうぞ。」

「あっ、そうだね。冷蔵庫何があったっけ……」

「引き出しにパスタがあったろう。茹でるから、ソースを出しておいてくれ。」

「あ、うん。この緑色の?」

「あぁ、それでいいぞ。」声を掛け合いながら昼食の準備を始める2人だった。

***

 

「ただいまー。あー……、肩いてー……」

 

 夕方ごろになって最初に帰ってきたのはヴィータ。

今日は教導隊と他隊との合同実地訓練だった筈。デプスは、教官であるヴィータは普段の仕事量に加えてさらに重労働を強いられていただろうことを考えて、リビングで本を読んでいたヴィータを精一杯労うつもりでいた。

 

「あ、お帰りなさい、ヴィータ姉さん。はい、お仕事お疲れ様。」

「お? アイスか! しかもこれ……もしかして手作りか?」

「あはは、そうなんだ。味見はしたから、たぶん大丈夫だよ。」

「最初はクッキー、次はマフィン、で、今度はアイスか。どんどんレベル上がってんなぁ……おぉ、んめぇ。」

「いやぁ、どれもほとんど混ぜるだけだから、実はそんなにうまくなってる訳じゃ無かったり……。でも、はやてさんが横についてなくてもできたのは進歩、かな? おかわりもあるよ!」

「マジか! ……おぉ、結構作ったんだな……」

皿の器にいくつか用意した一口サイズのアイスをすぐに食べ尽くしたヴィータを見て、冷凍庫からトレイ一杯のアイスを取り出すデプス。ヴィータはそれを見て目を輝かしながら、

「これ全部食っていいのか?」

等と言い出したので、

「だ、ダメだよ! そんなに食べたらお腹壊すよ!?」

 

と、慌てて止める。もしここでヴィータに食べられてしまえば他の面々が食べる分が無くなってしまう。

 

「分かってる分かってる、冗談だよ。……でも半分くらいはいいよな?」

「……分かってたけど、ヴィータ姉さん、ホントにアイス好きだねぇ。いや、俺も好きだけど……。」

「あぁ、アタシの活力だからな。いや、ホントこれうめぇよ。ありがとな、デプス。」

 

 そう言ってデプスの頭を撫でつけながら、トレイのアイスを掻き込むヴィータ。

食ったあっという間に半分程を食べきり、食ったと腹をぽんぽん叩く。

デプスは、最初はヴィータのあまりの食いっぷりに、心配と、もうちょっと味わってくれても……というもやもやした気持ちが浮かばないでもなかったが、嬉しそうにしているヴィータを見ていると、それも何だかどうでもよくなって、また頭を撫でてもらって上機嫌になってしまう。

 

「ただいま。」

「ただいまー。」

「何だ、もうそんなに減っているのか。夕食は大丈夫なのか?」

「お帰りなさい、シグナムさん、アギト姉さん、ザフィーラ。」

「おう、お帰り。へへん、このくらい全然問題ねーよ。」

「アイスクリーム、か。私も少しもらっていいか?」

「おー! うまそうだなぁ! デプスが作ったのか?」

「うん、そうだよ! 今準備するね!」

 

 ここで、ヴィータと同じく仕事で出ていたシグナムとアギト、夕食の具材の買い出しに出ていたザフィーラが帰宅。2人で荷物を持っている様子から、途中で合流したのだろう。

 

「今日は鍋だ。 シャマルと主はやてはもう少しかかるらしいが、先に準備だけ始めておこう。」

「分かった! あ、そうだ、クッキーもあるけど、生クリーム余ってるし、ホイップクリーム作っておこうかな。後でデザートとしてアイスと一緒に食べたらおいしそう。」

「おぉ、ナイスアイデアだな!」

「ヴィータ姉さん、あれだけ食べてまだ……まぁいいか、あの、言いだしっぺではあるけど、俺まだホイップクリーム全然うまくできないから、ヴィータ姉さん、アギト姉さん、手伝ってくれると嬉しいな。」

「おう、任せろ。それならアタシもできるぞ。」

「よっしゃ、さっさとやるぞ!」

「あまりキッチンを占領するなよ……?」

ザフィーラのぼやきは聞こえていない様子の3人だった。

 

 




フラグ回収も何もない日常。
ザッフィーがお父さんに見えてきた回。
そしてリインが息してない回。


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