魔法少女リリカルなのは~恋する融合騎~   作:旗本

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第14話

 高層ビルが立ち並ぶ街並みを再現したシミュレータの中、金色に輝く小さな閃光が縦横無尽に駆け回る。

 シミュレータが生成したスフィアが光弾を閃光に向けて放つが、鋭角的な軌道でぎゅんぎゅんと迫るそれには全く当たらず、数秒もしないうちに、光弾を放ったスフィアは閃光から伸びた雷撃によって破壊されてしまった。

「天雷(あまついかずち)」

 呟いた後、いっそう光を強くした閃光は、追加で周りに生成されたスフィアを三基いっぺんに雷でたたき落とした。

 

***

 

「雷撃による物理破壊……。魔力量の低さを補うためかな。どう思う? フェイトちゃん。」

 

 大立ち周りを繰り広げるデプスを離れのビルから眺めながら、高町なのはは、そう、隣で真剣な顔をしながら遠くを見据えるフェイトに問いかけた。

 

「うん、それが一番じゃないかな。あれだけの資質があれば、下手に魔力をつぎ込むより効率はいいと思う。……非殺傷みたいな細かい調整が効かないから 、扱いはちょっと難しいけど。」

「もうそろそろ15分だね。 破壊したスフィアは116基……耐久性のある大型スフィアも含めてだから、火力も速さもなかなかのものだよ。ね? ザフィーラ。」

 

 フェイトのコメントに頷き、今度はフェイトとは逆側でデプスの様子を観戦していたザフィーラに話しかける。彼とデプスは仲がいいらしいので、活躍する場面を見られて少しは、いつもの仏頂面を崩しているかと思っていたが、ザフィーラの表情は厳しいものだった。

 

「あぁ。確かに強力な力だ。……だが。」

 

 ザフィーラの視線の先では、肩で息を切らして動きを止めるデプスの姿があった。

 

「魔力切れやな。」

 

 ザフィーラの隣に居たはやてが真剣な面持ちで声を発し。

 

「15分かぁ。デプス君の魔力量、低いと言っても、Bはあるんだし、もう少し保って欲しいかもね。」

「Aランクのスフィアをこれみよがしにぶつけておいてよく言う。 あれをデプス単体の力で破るのは骨だぞ。」

 

 魔力の変換自体にも魔力は使用する。当然、変換を多用するデプスは普通の魔導師よりも燃費が悪いのだ。基本的には単体での運用を視野に入れられていなかったのだろうか。確かにユニゾン前提なら魔力不足の問題はある程度緩和される。

 

 しかし、今はデプス自身の力を底上げするのが目的なのだ。まず自身の力量を測るためには、自力で頑張ってもらわなければならない。そんな状況で、自分より高ランクのスフィアが相手では、変換する魔力の純度を高めざるを得ないだろう。燃費の悪さに拍車がかかるというものだ。

 

「あはは、ばれてた。でも、そうじゃないと全力でぶつかれないでしょ?」

「それに関しては同感だな。」

 

 魔力切れで完全に動けなくなったデプスの所へ追い打ちをかけに動くスフィアを消し、倒れこむようにへたった彼に近づきながら、なのははデータ上で見た彼の力と実際に見た力を照らし合わせ、事前に考えた特訓プランをどう修正しようか考えていた。

 

 

***

 

「お疲れ、デプス君。」

 

倒れたデプスに近づいたなのはがデプスに声をかける。デプスは顔だけをなのはの方に向け、

 

「あ、あぁ、高町さん、すみません、もう魔力切れちゃって。」

「ううん、それでいいの。それだけ頑張ってくれた証拠だからね。」

 

 えらい、えらい、とデプスの頭を撫でるなのは。デプスも疲れた表情ながらすこし安心したような表情になっている。

 

「デプス、お疲れ様です!」

 

 その様子を見て、何か思うところがあったのか、はやてについてきていたリインがデプスの顔を覗きこんだ。

 

「リイン姉さん、ありがとう。俺、頑張れたかなぁ。」

「えぇ、ちゃんと見ていたですよ! えらいえらいです!」

「ね、姉さん、恥ずかしいよ…」

「なのはちゃんには負けません!

「何も張り合わなくても……」

 

 そんなやりとりをしながら、リインの手を借りて

何とかかんとか立ち上がり、ふぅと一息つくデプス。

 

「この後はどうするんでしょうか?」

「うん、今から私がスフィアと誘導弾で絨毯爆撃をしかけるから、デプス君はそれを避けすに防ぎきってね。」

「はい……はい?」

 

 一瞬自分の耳を疑ったデプスだったが、プロテクションの種類は問わない、とにかく動かなければよし、と次々条件を指定していくなのはの様子を見る限り、聞き間違いと言う訳ではないようだった。

 

「あの、俺、魔力切れちゃってるんですけど。」

「自分の限界を超えたいなら、全部出し切ってからじゃないとダメなんだよ。」

「そういうもの、なんでしょうか。」

「うん! ……あ、ちゃんと防げなくても全治1カ月程度で済むようには調節してあげるから、心配はいらないよ!」

「……リイン姉さん。」

「さすが、なのはちゃんはスパルタなのです!」

助けを求めるようにリインの方を見るが、にこにこ笑顔で返されればもう何もこちらから求めることはできない。

「ザフィーラ。」

「よかったではないか。これがエースオブエースの教導だ。いい経験になるだろう。」

「ちなみに、はやてさんは?」

「はやてちゃんなら、フェイトちゃんに連れられて別室だよ。今頃は多分カンを鈍らさない為の基礎トレと軽い模擬戦だろうね。フェイトちゃん、熱くなりすぎて加減忘れなきゃいいけど……」

「そうですか……」

「あ、これを無事に乗り切れたら、休憩挟んで別のメニュー入るよ。はやてちゃんからしっかりやれって頼まれてるからね。」

「はやてさん……」

 

 俺、なんか悪い事したっけ……と、微妙にうなだれながら、切れた魔力をどうやってひねり出そうか考えるデプスだった。

 

***

 

「……」

「……」

「はやてちゃん、デプス、あとちょっとですよ、がんばるですよぉ……」

 

 あれから。

結局気合いで魔力をひねり出し。

一瞬でも手を抜こうものなら、途端にハチの巣にされそうな、こちらの限界ぎりぎりを何故か完璧に把握しているような絶妙な射撃の雨に晒され。

 

 それが終わってからも、限界まで使いきった筈の魔力を、何度も何度も気合いだけで捻出し。

限界ってなんだろうな、とデプスが自分で思い始めたところで、ようやく次の休憩の後のメニューで今日は終わり、というありがたいお言葉を頂いたのだった。

長めの休憩を言い渡されたデプスは魔力がすっからかんになってしまった己の身体を休める為にどさりと倒れ込んだ。リインが疲労回復の魔法をかけてくれているがお礼も満足に言えない程に疲れきっている。

 

 隣でははやてがグロッキー状態で倒れている。はやてが訓練服を着ているというのも珍しいが、ここまで疲弊しきった姿を見るのもまた珍しい。

 

「ごめんね、ちょっとやりすぎちゃった。」

 

なのはの隣ではフェイトがけろりとした顔でそんなことを言ってのける。

 

「あはは、はやてちゃん、やっぱりかなり体力落ちちゃってるみたいだね。まぁ、しょうがないことだけど、それでも捜査官なんだから、もうちょっと欲しいところかなぁ。」

「む……無茶……言わ……」

 

 はやてが何かを伝えようとするが、限界まで疲労しきった状態では満足に口もきけない。隣でデプスの肩をさすっていたリインが一人だけはやての呟きに気付き、だ、大丈夫ですかっ!とはやてにかけた簡単な治癒魔法の出力を上げるのだった。

 

「主、デプス、これを。」

 

 すると、スポーツドリンクを持ったザフィーラが現れ、はやてとデプスの横に飲み物を置いた後、

なのはとフェイトに渡す。

 

「ザフィーラ、ありがと。」

「全く、分かってはいたが、加減が無いな。」

「勿論、私は本気だからね。でも、デプス君、ちゃんと必死に食らいついてきてくれたよ。この気迫は、立派な強みになると思う。」

「そうだな。これだけの訓練を受ければ、何をするべきかも、見えていることだろう。」

「そうだといいね。」

 

 そう、訓練は一日で終えるものではない。無論、なのは達がつきっきりで見てやれる機会はそう多くない。だが、デプスが更なる高みに登るためには、ザフィーラが課すトレーニングだけでは足りないのが現状なのだ。

いや、足りないと言うには語弊があったかもしれない。

ザフィーラとデプスには明確な差があった。その差が今の状況を生み出しているわけなのだが。

 

「我も少し体を動かしておくか。」

「あ、うん。よろしくね。」

 

呼吸を整える2人を一瞥した後、ザフィーラは一人、訓練場へと歩いて行った。

 

***

 

 訓練場で用意できる飲み物がせいぜい30センチ程度のデプスの体にあわせて作られているということは、ない。

 

 デプスがこれを飲むためには、魔力なんてもうどこにあるのか分からない自らの体に鞭打って、決死の思いで体のフレームサイズを大きくしなければならなかった。

 

「これザフィーラ絶対わざとだよね。嫌がらせだよね。」

「た、たぶんそんなことないと思うですよ!」

 

 どうも疲労状態では思考が卑屈な方向に動きがちだ。ようやく落ち着いてきて、余裕ができてさぁ水分補給だと思えばこれだ。

 

「どうしよ……」

 

 もうさっきから絞り出して絞り出して、絞りつくしてしまった魔力は当分回復しそうもない。向こう数日間は普通の生活を送るのにも支障をきたしそうだ。

 

「もうちょっと魔力があればなぁ……」

 

 デプスはもともとユニゾンを前提とした設計をなされている。誰とでもユニゾンできる、というのが理念にあるからだ。だが、デプスはまだ完成形というわけではなかった。

 

 魔力波長を合わせることはできても、燃費の悪さは未だ改善されていない。以前シグナムとユニゾンした時も、元々消費の多い魔法を使用し、最適化を行っていなかったとはいえ、たった一度の魔力行使で魔力を使いきってしまったのだった。きちんとユニゾン相手用に予め魔法の最適化をしていれば結果は違っていただろうが、それでは誰とでもユニゾンできるなどと語ってよいものなのか。

 

「そういえば、リイン姉さん。」

「はい、何でしょう?」

「融合騎の魔力も、鍛えれば増えるのかな?」

「んー、それはもちろん、使い込めば魔力量は増えると思いますよ。リインの場合、はやてちゃんやヴィータとユニゾンしても、そこまで魔力を酷使されることはなかったので分かりませんですが……人口とはいえ、リンカーコアがある生き物……リイン達を生き物と言っていいかはちょっとアレですけど、そうである以上は、伸びると思いますよ。」

「そっか。」

「そうですね、デプスの今後の課題は、魔力量を増やすことでしょうか。」

「うん。これから、ザフィーラと一緒にするだけじゃなくて自分でもやらないと……」

「そういうことなら、リインも一緒にやってもいいですか?」

「リイン姉さんも?」

「はい! 一人でやるより、仲間がいた方がきっと捗ると思うのですよ。」

「あはは、ありがたいなぁ。と言っても、魔力量を増やす訓練なんてどうすればいいか、分かんないけど……」

「ここにはなのはちゃんもフェイトちゃんも居るんですから、後で聞けばいいのです! それに、まだ訓練は終わってませんしね!」

「う……そうだった。……あ、これどうしよう。」

「あ! デプス! 今いい事を思いつきました!」

「本当!? 魔力使わずにこれを飲む方法?」

「はいです! 実はリイン、自分用に水筒を持ってきてたので、それを使えば!」

「おー! それは助かる!」

「ロッカーの方に置いてますから、すぐに取りに行ってくるのです! もう少しの辛抱ですよ!」

「うん、ありがとう、姉さん!」

 

 テンションが上がって来た2人は両手を繋いでぶんぶんと振り回している。さっきまで死んだような眼をしていたデプスもすっかり元気になっていた。

リインはその後急いでロッカーの方へと飛んで行ったので、デプスはなのはの方へ行き、次の訓練について尋ねることにした。

 

「最後は何をするんでしょう。」

「あ、デプス君。もう大丈夫なの?」

「あ、もうちょっとだけ待って下さい……すみません。」

「ううん、まだ休憩時間中だから大丈夫だよ。最後は私とフェイトちゃん、はやてちゃんとデプス君で模擬戦!」

「……えっ」

 

 なのはさん、俺魔力切れです!と言いたいところだったが、そんなことは向こうも承知の上だろう。何か考えがあるのだろうか。

 

「デプス君は魔力切れだろうから、ユニゾン有りだよ。」

「……ということは、ザフィーラと?」

 

 はやての魔力波長は特殊で、今のところまだユニゾンの目処がたっていない。

これから一緒に生活していく上で、少しずつ合わせていけられたらいいのだが。

 

「うん。まだデプス君がユニゾンしたところ、見て無いからね。訓練の形式上、仕方のないことだけど。ちょっとは興味あるから。」

 

 それが本音か、と心の中だけで思ったデプスは、それでも、と少しだけ心が躍る。

まだザフィーラとのユニゾンをした状態で模擬戦を行ったことはない。

が、ザフィーラとは魔法の最適化も済ませてあり、 どういう風に戦えるのか、自分でも興味が無いと言えば、ウソになってしまうのだった。

 

「わかりました。そういうことなら、魔力はザフィーラ任せですけど、頑張ります。」

「うん、期待してるよー。」

 

 微笑むなのはを尻目に、未だ倒れたまま動かないはやてが心配なデプスだった。

 




ようやく生還いたしました。BADEND回避です。第三部完です。

前ほどの更新速度は無いでしょうが、これからちまちまと更新していく予定ですのでよろしくお願いします。

なのはさんのセリフ考えてると針目縫さんのせいでなんか煽ってるような感じになっていくのを必死に抑えるのが大変でした。
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