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見晴らしのいい大草原を象った大アリーナの上空、二組の男女が睨みをきかせて佇んでいる。
片側にはリインフォースツヴァイとユニゾンし、普段の茶髪を白く染め上げ、藍の目は空色へと変化した八神はやてと、同じくデプスとユニゾンし、金髪に黒装束、茶色の目は緋色の目へと色を移したザフィーラが構えている。ユニゾンの影響で、お互いに、その体に内包する魔力は、普段とは桁違いに力強い。
対峙するのは、白と黒、対照的な色と意匠のバリアジャケットに身を包んだ、高町なのは、フェイト・T・ハラオウンの二人。
互いの身に纏った雰囲気は温和なものだが、その瞳には強烈な闘志の炎がぎらぎらと燃えている様にさえ見える。四人の戦士は、そのいずれもが、この戦いを待ち望んでいたのだ。
(フェイトちゃんにさっきはいいようにやられたけど、ユニゾンありならそうはいかんで……! 覚悟しときや……)
(この状態で高町やテスタロッサとどれだけやれるか……何にせよ、我は自分の役割を果たすのみだ。)
(もう魔力は切れてるしボロボロだけど……ザフィーラの魔力はあるし、一矢は報いたいなぁ……うぅん、報いるんじゃない、勝ってみせる。それくらいの気持ちでないとダメだ!)
(デプスとザフィーラ、か……楽しみだな。)
(フェイトちゃんと久々にタッグだ! 張りきらなきゃね!)
それぞれが違った思惑を持って戦いに臨む。
「それじゃ、よろしくお願いします。」
「あぁ。」
ザフィーラとなのはは歩み寄って握手をし、お互いの定位置に戻って臨戦態勢に入る。
特別訓練の最終メニュー、小細工抜きの全力戦闘が始まろうといていた。
『それでは、訓練を開始します。』
あらかじめ設定しておいた自動アナウンスが入り、4人の雰囲気が目に見えて鋭くなる。ザフィーラは、魔法の発動準備をしながら、頭の中で自分の取るべき行動を、己の中にいるデプスと再確認していた。
(いけるな? デプス。)
(はい!)
『ENGAGE!』
アナウンスの直後、最初に動いたのははやてだった。
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「バルムンク!」
はやてがそう叫んだ瞬間、24本の魔力で構成された白い魔力剣がはやての周りで展開され、バルデッシュをサイスフォームで展開し、はやての方へ切り込もうとしたフェイトの方へ飛んでいく。
(なのはじゃなくて私!? それにあの物量、私達に気づかれずに魔法の発動準備を!?)
フェイトは、自分に比べると動きの遅いなのはをザフィーラとはやての二人がかりで速攻で倒す、または、ザフィーラを自分にぶつけ、なのはをはやてが遠距離から押し切る疑似1対1戦法で来ると予想していた。その理由は、なのはの魔力量から放たれると誘導弾と砲撃がそれだけチーム戦では恐ろしい威力を発揮するからだ。
特に誘導弾の方は、無視できない威力を維持しながら、非常にいやらしいタイミングで行動を邪魔してくるし、回避不能に近い攻撃を間断なく放ち続けられるので、とにかくなのはから目を話す訳にはいかない。視界の開けたこの草原のようなアリーナでは尚更だ。
勿論、なのはの動きはフェイトに比べれば遅いというだけで、水準以上の速度は持っているし、防御に関しても周りの教導官に不沈艦と言わしめる程のもの。それに、そんな理由から、たいていの戦いで真っ先に狙われ続けて来たなのは自身の経験もあって、なのはを速攻で落とすこと自体もかなり厳しいものではあるのだが。
それを差し引いても、なのはをノーマークにすることは、即敗北に繋がりかねないレベルの事柄なのだ。
ザフィーラは、大した遠距離攻撃を持っていない。デプスの能力を見る限り、たとえユニゾンした状態でも、それは変わらない筈。試合の開始位置的に、開幕から放たれるであろうなのはの遠距離攻撃を阻害できるのははやてだけ。ザフィーラがなのはの邪魔をするには、少しだけ距離がありすぎる。
自分でも、今の状態では間に合うかどうか。
全力の時なら分からないが、今は自分となのは、そしてはやてはリミッターがつけられた状態だ。
かなりの無理を通して保有戦力制限を満たしていた機動六課に在籍していた時に比べれば軽くなってはいるものの、それでも、強大すぎる力には少なからず制限が付く。
今のフェイトとなのははAAAランク、はやてに関してはAAランクにまで下げられているのだ。
もっとも、魔力ランクこそ現状ではなのは達に劣るはやてだが、リインⅡとユニゾンすることで魔力量に関してのなのは達アドバンテージは無いと言ってもいい。さらに、魔力操作の精密性も、シュベルトクロイツとリインフォースⅡを介する事により、レイジングハートとなのは以上の力を発揮できる。
まぁ、それはひとまず置いておいて。
いくら速度特化型の融合騎とユニゾンしたとはいえ、ザフィーラがあの位置からなのはの邪魔をするのは、難しいのだ。
よって、なのはの魔法を妨害できるのははやてだけ。そのはやてが今こちらに攻撃を向けている。
つまりこの攻撃を凌げば、フリーになったなのはが援護に入ってくれる。
複雑な軌道で迫る24本の魔力剣。まっすぐこちらに飛んで来る物は無く、上下左右から囲むように迫ってきている。引きつければ収束に合わせて回避できるか。
いや、はやてのことだ。魔力剣ひとつひとつに爆破術式なんてものを仕込んでいることも考えられる。それに、おそらくはやての狙いは……
「雷獣走破!」
私を動かしてザフィーラとぶつけること!
突進してくるザフィーラを鎌で受け止める。ユニゾンの影響か、力でも若干の不利。
逃げ道をふさぐように降り注ぐ魔力剣。直撃は無いが、まともには動けない。
こうなってしまえば私の動きはかなり制限される。いくら運動量はあっても、二人がかりで狙われればひとたまりもないだろう。
(私が一人で戦っているなら、ね!)
だが、これは2対2のタッグ戦。自分が狙われているということは、なのはが空いている!
ザフィーラの攻撃をいなしながら、マルチタスクの要領でなのはを見やる。
「ッ!?」
そして魔法陣を展開するなのはの姿を期待したフェイトの視界に映ったのは、苦い顔で白色の短剣の群れを迎撃しているなのはだった。
(これは……魔法の同時発動!! 迂闊だった! やっぱり1対1狙いかッ!)
「ぬぅん!」
ザフィーラが放った蹴りをギリギリのところで受け止める。速いし、重い。以前行ったザフィーラとの模擬戦を思い出す。あの時は速さで勝っていたため、かなりいい勝負だったのだが、今はどうだ。あの流麗で洗練された体捌きに、ユニゾンにより自分とほとんど変わらないスピード。純粋に近接戦闘を挑むのは不利だと判断する。どうにかして距離を放し、中距離からの射撃戦に持ち込みたい。そうすれば、はやての様子も見やすくなって一石二鳥だ。
だが、なかなかザフィーラはこちらを離してくれない。なのはの援護には行けそうも無かった。
ちらとなのはの方を見れば、はやての放つブリューナクに邪魔されて、攻撃魔法を発動する暇がない様だった。
こうなった原因は、自分の判断ミス。二つのデバイスを扱うはやてなら、魔法を同時発動することは不可能ではないことを失念し、こちらへの攻撃に意識を向けすぎていた。
(ごめん、なのは! 私のせいだ!)
切り替えもかねて、なのはへ謝罪の念話を送る。すると、いつも聞き慣れた、元気で凛とした、力強い声が帰って来たのだった。
(大丈夫、フェイトちゃん! 手は、打ってあるから!)
その言葉と共に、はやての後ろからバインドのリングが現れた。
「ッ!? 設置型ッ!? なんでこんなとこにっ!?」
「試合前から魔法の準備してたのは、はやてちゃんだけじゃないんだよ?」
「ッくっ!」
はやてがバインドに捕まってしまう。それに伴い、はやての射撃魔法が止まった。
「リイン!」
(はいっ! 拘束解除するですっ!)
リインが懸命にバインドブレイクを進める。が、それを黙って見届けるなのはではない。
「させない!」
次から次へとバインドをかけ、リインのバインド破りがたちまち追いつかなくなってしまった。
「悪いけど、今回は一撃で決めるよ!」
『Divine Buster』
なのはの杖に光が灯る。砲撃が来る。
「リイン、あれの直撃前にバインド破りきれる?」
(あうぅ……どうあがいてもちょっとだけ間に合いません……!)
「あちゃあ……」
1手。たった1手読み違えただけでこの様だ。やはりなのは達は強い。自分の指揮官としての甘さもある。
もう今の自分にできることは少ない。せいぜいが、ザフィーラとデプスがこの状況を打開することを祈って、次の攻撃の準備とバインド破りを進めることくらいだ。
(ザフィーラ、デプス、頼むからなんとかして……!)
もはや、祈るほかないはやてであった。
***
(今なら一気に巻き返せる!)
流れをこちらに持ってくる。あわよくば、この1手で決める。
そう考え、フェイトはバルディッシュの出力を上げてザフィーラに一気に斬りこんだ。
しかしザフィーラは手甲で魔力刃を逸らし、杖の柄を掴む。だが、それはフェイトも織り込み済みだ。
「ブレイクインパルスッ!」
『Break Impulse』
杖を掴まれたことを利用し、一気にザフィーラに密着、素手でのブレイクインパルスを試みる。
ブレイクインパルス。杖、または素手での接触により、目標の固有振動数を割り出した上で、それに合わせた振動エネルギーを送り込んで粉砕する魔法だ。
本来クロノが得意とする高等魔法で、執務官試験に臨む際、伝授してもらったものである。
他の魔法と違い、武器を介さず発動できるので、こういった超至近距離での攻防の際に重宝する。魔力消費も少ないので使い勝手もいい。習得するのは大変だったが、時が経った今でもよくお世話になっている魔法だ。基本的に武器で戦うフェイトが不意打ちで出せば、初見で対応できる者はそういない。
「!?」
ザフィーラの瞳に驚愕の色が映る。やはり意表は突けた様だ。このまま手を当ててしまえば、こちらの勝利はほぼ確定となる。
「電光石火」
しかし、今のザフィーラにはデプスが付いていた。デプスはすぐさま反応速度を強化する電光石火を使用し、鎌の魔力刃を逸らした拳を引きもどし、再びフェイトの腕を逸らしたのだった。
「ッ!?」
次に驚愕するのはフェイトの方だった。完全に不意をついたはずだったのに対応された。このショックがわずかにフェイトの反応を遅らせる。
「はぁっ!」
そこへザフィーラが体当たりを放ち、フェイトの体を吹っ飛ばした。
(ザフィーラ! はやてさんが!)
(分かっているッ!)
珍しく声を荒げるザフィーラ。彼にとっても今は瀬戸際だった。自身の役目は盾。主の守護。それが今は主から離れ、死地に立たせてしまっている。
この窮地を乗り切らずして、何が守護獣か!
「ておあぁぁぁぁぁッ!」
気合い一閃、ザフィーラは大きく拳を振り抜き、魔力の壁を発生させた。
そして丁度その瞬間、なのはのディバインバスターが発射される。
「届けぇぇぇぇぇぇッ!」
彼が発生させる魔力障壁は、せいぜい自分の周囲に出すのがやっとな、近距離用の技だ。普通に撃ったのでは、この距離からはやてを守る事など、到底できはしない。だが、今はデプスが居る。
「届かせますッ!」
裏拳の体で放たれた壁の軌道に、雷を当てる。そうすることで壁ははやての方を向いた。
そして、次に方向を持った壁の上に、電気のレールを敷く。魔力の通り道を作ったのだ。
ザフィーラの放った壁はぐいぐいと伸び、遂にははやての前までたどり着いた。
その目の前には、はやてに着弾する直前のディバインバスター。
着弾。
「ッ!? 防がれた!」
「クッ!」
そこで体勢を立て直したフェイトが、ザフィーラにソニックムーブを使いつつ接近。斬りかかる。
しかし、それをザフィーラは受け止め、更なる気迫を持って返した。
「我は盾の守護獣……そう易々と、主への攻撃が通ると思うなッ!」
ザフィーラが吠える。その向こうで爆炎が晴れていく。やがて、黒い煙の中から、杖を構えたはやてが現れる。
その手に握られたデバイス、シュベルトクロイツからは、白色の光が溢れている。
「ようやってくれた……」
「……まずいッ!」
なのはが反応した頃には、既に準備は整っていた。
「ようやってくれたで……デプス……ザフィーラ……試合はまだ始まったばっかりやッ! いくで! クラウソラス!」
気合いを込めたはやての叫び。それからすぐに、なのはの体を、銀の砲撃が襲った。
はやての言うとおり、試合はまだ始まったばかりなのだ。
書いてる途中にデータが吹っ飛び、ひぃひぃ言いながら記憶を頼りに書きなおしてたらこんな時間になっちめぇました。
もしかしたら文章が所々おかじいかもしれません。元からですか? …そうですか……
フェイトがブレイクインパルスしたり、なんかよくわからないけど気合いでザフィーラが壁を伸ばしたりしてますが、こまけぇことは気にすんな!です…!戦闘描写、本当に難しいです……
周りにりりなの知ってる友達が居ないのもあってなかなかいい感じにシミュレーションできないんですよね。妄想力が足りない(白目)
感想、誤字脱字報告、お待ちしております。