魔法少女リリカルなのは~恋する融合騎~   作:旗本

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第17話

***

 

「ありがと、ザフィーラ。一時はどうなることかと思ったよ。」

「ふっ。リインにしてもらった方がよかったのではないか?」

「よかないよ!?」

「そうですよ! リインにだって弟のトイレくらい手伝えるです!」

「そっち!? いや、できるできない以前の問題だから! 弟とか関係ないから!」

 

あれから。トイレに行きたくなって危機に陥ったデプスだったが、すぐ下にザフィーラが居ることを思い出して事なきを得た。事なきを得たと言って良いのか定かではないが、一応異性として認識しているリインに末代(?)までの恥を晒すことは回避できた。

 

「ははは……」

 

痴態を晒す相手がリインからザフィーラになっただけの話なのだが。

 

「そう気にするな。仕様のないことなのだ。」

「ザフィーラはこうなることがわかってたですか?」

「薄らとだが。あれだけ魔力を酷使していれば、な。我も経験があった。」

「え? そうなの?」

「あぁ。我の時も、お前と似たような状況に陥ったものだ。まだ生まれて間もない頃、鍛錬に身を入れすぎた事があった。その時だな。」

 

ザフィーラもこの辛さを経験したことがあるのか、と、少し意外に思ったデプス。しかし、ザフィーラの表情が少し暗いのに気づく。

 

「あれ? ザフィーラ? ……あ、もしかして……」

「言うな。」

「ザフィーラもおトイレ手伝ってもらったのですねっ!」

「言うなと言っているだろうッ!」

 

リインの残酷な程の天真爛漫さが発揮され、ザフィーラが吠えた。その目には、先ほどのデプスのように、うっすらと透明の液体が見えた、気がした。

 

***

 

「あー、風が気持ちいいなぁ……」

「ですねー……」

 

お昼過ぎ。

デプスの体は不調だが、風邪をひいたり、弱ったりした訳ではなかった。魔力痛は、痛み以外に、体に直接的な影響を与えることは無いのだ。

なので、せっかくリインもいるのだから、と、デプスは散歩にでかけることを提案した。

 

「デプス、大丈夫か? 振動が辛かったら言うといい。」

「うん、朝よりちょっとはマシになってきたけど……もし痛くなったとして、どうにかできるの?」

「引きずって連れていく。」

「余計痛いよ!?」

 

 

 当然、デプスは歩きまわれるほどには回復していないので、デプスを運ぶのはザフィーラだ。そのついでに、せっかくだからとリインも乗せて、いざ散歩へと繰り出した三人は、とりあえず、近場の公園へザフィーラが片手間に作ったサンドイッチを持って行くのだった。

 

「わぁ、誰も居ないですね!」

「僕らで公園を独占だね!」

「平日の昼の、しかも郊外の公園など、こんなものだろう。晴れでよかったな。」

「うん! 日差しもそんなに強い訳じゃないし、絶好のピクニック日和だね!」

「素敵です!」

 

公園へと到着した一行は、まずデプスをベンチに下ろし、リインとザフィーラでシートを敷き、遅めの昼食の準備をする。途中でリインが草むらの蝶に気をとられてふらふらと飛んで行ったが、一人と体の小さな融合騎二人分の用意なので、ザフィーラ一人でも準備に支障をきたすことは無かった。

 

「なんかごめんね、ザフィーラ。わがまま言っちゃって。」

「気にするな。努力に対する報酬と受け取っておけ。」

「……うん、ありがとう。」

「これからはその痛みとも長い付き合いになるだろうからな。」

「へ?」

「何を呆けている。一度で訓練が終わると思っていたのか? まぁ、高町やテスタロッサと共に訓練出来る機会はそうそう無いだろうが……高町から特別な訓練メニューを預かっている。きちんとこなせば……最初の内は、動けなくなることが多くなるだろうな。」

「……高町さんの心遣いは嬉しいけど、なんがか素直に喜べないなぁー……」

「慣れろ。」

 

辛辣なザフィーラの言葉にデプスが打ちひしがれていると、リインが氷で出来た棒を持ってやって来た。棒の先は丸くなっていて、中に何かが入っているのが分かる。

 

「リイン姉さん、それ、どうしたの?」

「なかなか止まってくれないので、氷漬けにしました!」

「……先の蝶か。お前も存外残酷なことをする……。」

「む! ちゃんと後で元に戻すので大丈夫です! リインだって無駄な殺生はしたくありませんので! でもこれ、きれいじゃないですか? どうですか、デプス?」

「うん、蝶さんがかわいそうだと思うよ?」

「うわぁぁぁ! デプスが反抗期ですー!」

「お前は何を言っているんだ。」

 

ぽこん、とリインをシートの上にはたき落してから、蓋のついたバスケットを開けてサンドイッチを取り出すザフィーラ。普段はそこまで積極的に料理をする訳ではないのだが、家に居ても手持無沙汰な事が多いザフィーラは、時間つぶしの一環として、それなりに料理も嗜んでいる。サンドイッチ程度の簡単な物ならお手の物だ。

 

「ほら、ちょうど日もいい具合に照って来たぞ。昼食にしよう。飲み物は何がいい?茶と紅茶しかないが。」

「リインは紅茶がいいのです!」

「僕も姉さんと同じので!」

「承知。」

 

ザフィーラはとぽとぽと水筒の紅茶をリイン達専用サイズのお猪口コップに注ぎ入れ、手渡した後に自分のコップへ残った紅茶を注ぎ込む。

 

あぁ、なんと平和な事か。

 

今度は一家皆揃って、と考えたところで、自分も随分と温くなったものだ、と、内心苦笑するザフィーラだった。

 

***

 

夕方。

簡単なピクニックを終え、デプスは再びベッドへと入る。リインはデプスと一緒にお喋りだ。

ザフィーラが風呂の掃除をしていると、がちゃりと音をたててヴィータが帰って来た。

「ただいまー。」

「あぁ、おかえり。今日は早いな。」

「おう、ザフィーラか。相変わらずお前におかえりとか言われると何故がムズムズするな。

普通はこれくらい早いんだよ。定時上がりの筈なのに、教導隊は仕事が多すぎだ……」

「お前が志願したんだろう。」

 

おかえりが似合わないというニュアンスの言葉に微妙な憤りを覚えないこともないザフィーラだったが、事実自分でもそう思っている節はあるのでスルーした。

 

「うっせー。なのはが誘ってなきゃこんな……いや、悪いしごとじゃないけどさ。見どころあるやつばっかだし、やる気もすげぇし。」

「何だかんだでやりがいは感じているのだな。高町も居るのだ、悪い職場ではないだろうな。」

「なのは……いや、アイツ、あたしが見てなきゃすぐ無茶しようとするし、させようとするし……ギリギリの範疇は弁えてるだけに質悪いし……あたしがちゃんとフォローしないといけねーんだよ。超疲れるぞ……」

「教導歴は高町の方が長いのでは無かったか?」

「うっせー。それとこれとは話が別だ。あ、頼まれてた分の食材、ここに置いとくぞ。」

「あぁ、頼む。今日は皆帰る時間が疎らだからな。タイミングを選ぶ必要のないカレーにする。」

「食材見りゃ分かる。手伝おうか?」

「ぬ、助かる。まぁ、我はもう少し掃除をしてから作業に入る。その時に呼ぼう。それまではゆっくり休むといい。」

「ならデプスのとこに顔出そうかね。どこ?」

「いつものデプスハウスだろう。リインと遊んでいる。」

「りょーかい。お、ポッキー発見、持ってこ。」

「ほどほどにしておけよ。」

「はいはい、もうはやてに躾けられてますよー」

 

ポッキーの箱を手に持ってすたすたと階段を上って行くヴィータを見送った後、残っている掃除を終わらせにかかるザフィーラだった。

 

***

 

「ただいまー」

「あ、はやてちゃん、おかえりなさいです!」

「お、リイン、ただいま。デプスはどうやった?」

 

日が落ちて、夜になった。既に八神家ははやて以外全員が帰宅し、そのはやてもたった今帰宅した。いつもより少し遅いが、リインが補佐につけなかったのが最大の原因というのには目をつむっているはやてだった。

「もうある程度は動けるようにはなりましたし、明日には完全回復です!」

「そかそか、よかった、ちょっと心配やったからなぁ」

「リイン的にはあれだけの飽和攻撃を受け切ったはやてちゃんがとても心配なのですが……お仕事、大丈夫でしたか?」

「ふふん、どうせ書類仕事ばっかりやし、大丈夫や。頑丈さには定評があるからな。なんだかんだでなのはちゃんもフェイトちゃんもほんのちょっっっっっとだけ手加減してくれてたっぽいからな……」

「確かに、本気の本気になった二人を見ていると、そんな気もしますね……」

 

二人してぞっとした後、お互いにリビングの方へ眼を向ける。

「もうご飯の準備できてますし、皆待ってますよ。もちろん、デプスも。」

「ん、私も腹ぺこや。待っててくれてありがとうな。」

「いえいえ、ご飯は皆で食べるのが一番です!」

「はやてさん、おかえりなさい!」

 

二人して笑顔を作っていると、部屋の奥からデプスが顔を出した。

 

「あ、ただいま、デプス。どしたん?」

「シャマルさんがチーズ買ってきてくれてたので、入れるかどうか聞こうと思って。」

「あ、お願いするわ。」

「あー! リインもお願いするのです!」

「はーい!」

 

「ザフィーラー!」と、大声を上げながらリビングへおぼつかない足取り(?)で浮遊していくデプスに、また、笑みがこぼれる二人だった。

 

***

 

「デプス、一緒に寝ましょう!」

「あ、姉さん。うん、そうしよう!」

 

そして夜中、デプスとリインは早めに自室へと上がり、就寝準備。

 

「今日は寝てる時間の方が長かった気がするから、今から寝られるか不安だったんだ。」

「確かに、寝過ぎると夜に後悔しますもんねー……お姉ちゃんが子守唄を歌ってあげましょうか?」

「さ、流石にそこまで子供じゃないよ。普通にお話しするだけじゃダメかな?」

「んー、明日はリインもお仕事がありますからねぇ。さすがにそうそう何度もお休みすることはできないのです。」

「あ、そっか……ごめんなさい。」

「気にしないでいいのですよー。それより、リインお姉ちゃんの子守唄の威力を試してみましょうよ、ね? リインの力なら弟一人寝付かせるくらいワケ無いです!」

「うん、あまり効果はないとおもうけどなぁ……でも、折角だし、お願いしてみようかな。」

「任せてください! ささ、デプス、こちらへどうぞ。」

「? お腹?」

 

リインが壁にこしかけて、足を伸ばした状態でぽんぽんとお腹を叩いているのを見たデプスは、リインが何をしたいのか理解が出来ずにまともな答えが返せなかった。

 

「ここですよ、ここ!」

「ここって……えぇ!? それ、子守唄に必要なこと!?」

「前に見たアニメでもやってたので、おそらくこれが最も睡眠促進効果があるのです!さぁ!」

「さ、さぁって……」

 

キリッ!とした顔でそう言われてしまうと、本当にそれが正しい事のように思えてくる。

暫くの間逡巡したデプスは、

「……おじゃまします。」

と、若干顔を赤らめながら、リインの股の上、お腹の方へ頭を乗せた。リインはしたり顔でデプスの頭を掴んで、太ももで首を固定する。

 

「にゃーんにゃーん、ごーろーりよー、にゃーんごーろーりー……」

(こ、この体勢は……えらいことなんじゃないのか!?)

 

そして始まったリインのお腹枕と子守唄。

これの効果がいか程であったのかは、当人達のみが知る事である。

 

 




溢れ出るザッフィーの主夫感。繰り返しますが、彼は一応資格は持っているので働こうと思えば働けるのです。それでも働かないのは、彼なりに考えた結果なのです。

そしてやらかした感のあるリインのお腹枕ですが、元ネタありです。
この為にちょおまを引っ張り出してその部分だけ見ようと思ったらいつの間にか一周してた罠。

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