魔法少女リリカルなのは~恋する融合騎~   作:旗本

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第3話

「……えっと、つまり、違法施設に遺棄されてた融合騎の処遇が決まらんから、ウチで引き取ろうって感じやねんな?」

「……うん、そんな感じ。」

「そういうことです!」

 

 リインはさっきから興奮しっ放しで、説明も要領を得なかった為、改めてヴィータから説明を受けたが、だいたいそういうことらしい。

 

「で、君がデプス君か」

「……はい。初めまして。融合騎のデプスです。」

「へぇ…。ウチにはアギトもおるし、融合騎には事欠かへんねんけどなぁ。」

「そ、そんなこと言わずに!はやてちゃん!お願いです!後生ですから!な、何でもしますからっ!」

 

 そう言って頭をぶんぶんと何度も下げるリインの様子に、ヴィータは若干ひきつった笑いを浮かべながら、

 

「はやて、リインがこんなわがまま言うのって珍しい事なんだし、聞いてあげてもいいんじゃないかな?」

 

 とはやてに打診する。デプスは2人がこんなに自分の為に気を揉んでくれただけで十分に嬉しかったが、できることなら、自分も彼女等と共にありたいと思うようになっていた。

 

「うーん……でもな、ユニゾンデバイス一基って、そんなに軽いもんとちゃうからなぁ……」

「は、はやてちゃぁん……」

 

 リインは今にも泣き出しそうな勢いだ。それを見てシャマルやヴィータはどうなるかと一瞬身構えるが、

 

「あはは、何てな。冗談や冗談。デプス君はどうなん? ウチは別に受け入れるのは構わんで?」

 

と、はやてがあっけなく掌を返したのを確認してほっと一息ついて緊張を緩めた。

 

「俺は……リインさん達に助けられて、自分から求めるのは、ちょっと浅ましいかもしれませんけど……凄く嬉しくて。できれば……リインさん達と……その、一緒にいたいかなって。」

「ん、そかそか。あー、じゃあ今度歓迎パーティでも開かんとな! ウチもいつの間にか8人の大所帯や……。」

「えぇ!? は、8人ですか!?」

「うん、8人やで」

 

 これにはデプスも驚いた。既に7人の家族が居たのにも驚きだが、それに自分を加えても余裕があるとは。だが、リイン自身も稼いでいると言っていたし、もしかしたら家族みんなでそれぞれきちんと稼いでいるのだろうか。恐らくはやても高ランク魔導師であるし、きっと給料もたくさんもらっているんだろうなぁ、と考えていると、はやてが、「最初は1人やったのに、えらいところまで来たもんや……」と、しみじみ言うのを聞いて、何を思ったのか、

 

「あの……はやてさんも……1人だったんですか?」

と、つい尋ねてしまうデプスだった。

 

「ん?あぁ、そうなんよ。9歳までは仕送りもらって1人で生活しとってんけどな、そこから色々あって、いつの間にか、こんなことになったんよ。」

「……その色々、いつかお聞きしたいものですね。」

「ええよええよ。これから一緒に過ごすんやったら、時間なんていくらでもあるやろし」

「リインもいっぱいお話するのです!」

「え?うわわっ」

 

 よかったー!と言わんばかりに飛びつくリインに、それに恥ずかしそうではあるが満更でもない様子のデプス。それを見たはやては、

 

「ふーん……、へー……、ほぉー……」

 

と、にやにやとした笑みを見せる。ついでにシャマルも

「あらあらうふふふ」

と含み笑い。

 

ヴィータは無反応だった。

 

「これは、これから面白い事になるかもしれへんなぁ。」

 

はやてが呟くと、シャマルも、微笑ましいですねと笑みを返す。

 

「ヴィータちゃん達はいつ頃帰ってくるの?その時にお祝いできればいいんだけど……。」

 

 八神家はほぼ全員がきちんとした役職を持って働いている。その大半の職場である管理局は、万年人手不足に悩まされている事もあって一人にかかる負担がそれなりに大きいのだ。よって、家に全員が揃うことは少ないのだが……

 

「3日後くらいかな。ちょうどあたしらは非番の日だけど……どうだ?」

「あー……シグナム以外は非番の日ね……。」

「そんなの、有給とらせりゃいいじゃん。どうせ溜まってんだろ。」

「え、何もそんなに気を遣わなくても……」

「いーんだよ。ゲストは大人しく祝われてろ。な?」

 

 それにしても有給を使わせてまで来てもらうのはそのシグナムさんと言う人に悪い気もするが、周りは誰も彼も「まぁなんとかなる」といったような雰囲気である。

心の中でシグナムさんに何度も謝罪しながら、結局この場は流されてしまうデプスだった。

 

***

「やりましたですよー! これで本当に姉弟になりましたよ! デプス!」

「え? ……えぇ?」

 

 いつの間にか家族に数えられてしまったことに驚愕するが、すぐに合点がいって納得する。

確かに居候、というより家族の方が響きがいい。それに、より深い繋がりを感じられるというものだ。

 

「家族……」

「はいです!デプスはこれから八神デプスになるのです!」

「なんか微妙な語感だな。八神デプス。」

「えー、そんなこと無いと思いますよ! ヴィータちゃんのセンスがおかしいだけです!」

「あん? 言ったなー?」

「あ、あわわわわ、リインの小さな頭に指で万力をかけるなんて酷いです! あいたたたたた!」

 

 漫才を始めたヴィータとリインを尻目に、デプスは「家族」という言葉を噛み締める。

デプスにとって初めてできた温かい繋がり。その重みを、しっかりと受け止めて。

 

「じゃあ……俺はこれから、八神デプスと名乗らせてもらいます。【超電の化神】と銘打たれたこの身、あなた達に捧げることを誓います。」

 

自分が生まれた時、本当の、本当に最初。

 その時に付けられた二つ名を口にする。

こんな仰々しい名前、本当は嫌いだった。自分はそんな器じゃないし、異名をつけられていたって、研究所では所詮ただの研究材料でしかない。辛い思い出が蘇って、口にするのも憚られていたけれど、それでも、この名は自分が自分であることの、唯一の証明だから。その力を精一杯、大切な人の為に使えるように。

 

「おいおい、何もそんなかしこまらなくてもいいんだぞ?あと家族ならあたしにも敬語はいらねー。」

「そうですよ。みんな対等なのです! これからよろしくお願いしますね!デプス!」

「2人とも……うん! ありがとう!これからよろしく!」

 

今度は遠慮せずに、心からの笑顔で応えることができたと、そう思う。自分の笑みに、微笑み返してくれる人達が、目の前に居たから。

 

***

「デプス、デプス。ちょっといいですか?」

 

 自分の受け入れ先はなんとかなったが、まだ施設調査の事後処理は終了していない。ヴィータもリインも書類作成に終われていた筈で、自分は動くことができないのでとりあえず先ほどの石の上で空を見上げていたのだが、リインが後ろから声をかけてきた。

 

「あ、リインさん。どうしたの? 仕事は?」

「こっそりヴィータちゃんの所に混ぜてきたのです!」

「うわぁ……」

 

書類に囲まれて涙目のヴィータを想像し、心の中で合掌をしておく。

 

「それでですね……私のことはお姉ちゃんと読んでくれていいのですよ?」

 

 リインから提案(?)されたのは、自分を姉と呼ぶこと。まぁ、実際に頼りにしているし、慕う気持ちもあるのでそう呼ぶこと自体は吝かではない、が。

 

「う……えーと、お姉ちゃんはちょっと恥ずかしいから……リイン姉さんでいいかなぁ?」

「はぅあ!……こ、これが末っ子を得た感覚……! ひ、筆舌に尽くし難しッ! ヴィータちゃんが年下を欲しがった気持ちが今理解できました!」

 

なんか1人で悶えてるリイン姉さんだった。リイン姉さん…悪くはない響きだと思った。

 

 

***

「おかしい。これは絶対におかしい。」

 

 ヴィータは困惑の極みにいた。さっきまでに作成した書類の数と、残りの書類の数が、どう考えても合わない。

 

「絶対に増えてやがる」

 

 自分は特に書類の山をいじってはいない。そして、誰かがそれをいじったとしても、隣までくれば自然と気づくはずである。だから、誰にも書類を増やすなんて嫌がらせを行うことはできない。というかそんなことをしてメリットのある奴がいない。

……一人を除いては。

 

「……リインってこんなやつだったっけ……」

 

 確かにリイン相手にこちらからいろいろと仕掛けることはあったが、その報いだろうか。日に日に強かになりゆく妹分にどう報復してやろうかと考えていると、

 

「八神三等空尉、すまないがこちらの書類……書きこんでくれないか?」

「……了解」

本気で泣きたくなったヴィータだった。

 

***

「家に帰る前にちょっと買い物でもするかー」

「それは名案です! みんなに素敵なお土産を買いましょう!」

 

 先刻、引き渡しも含めた任務は全て完了したが、転送ポートの使用時間までにはまだ余裕があった。ここも管理世界なので、クラナガン程ではないものの、ショッピングモールやデパートなど、様々な施設でにぎわっていた。

 

「すごい……人がいっぱい……」

 

 あまり人と接したことの無かったデプスは、ここまでたくさんの人が一つの場所に集まった光景を見たことがなかった。さらに、町中の看板、店頭の商品、どれも初めて見る物ばかりで、興味の対象には事欠かない。

 

「リイン姉さん、これは一体……電子タバコ……?普通のじゃだめなの?」

「電子タバコですか? これはタバコをやめたいけどやめられない人の為の物で、せめて吸ってる感覚だけでも味わって欲求を誤魔化そうというものなのです。中に入ってるのは水蒸気だけなので身体に害はないのですよ。あ、でもデプスは絶対に吸っちゃだめですからね! デバイスがタバコなんて吸った日には、何が起きるか分かりません!」

「なるほど……面白い発想……。あ、大丈夫だよ姉さん。別にタバコは吸わないから。」

「お前らはなんの話をしてるんだよ……」

 

そんなやりとりをかわしつつ、ショッピングモールでお土産を探す。

 

「やっぱここにしかないお菓子とかがいいよな。……お、これなんてどうだ?」

「おぉー!ど、ドラゴン肉のハンバーグですか!なんて興味をそそられる響き…!」

「そ、それって……みんな喜ぶのかな……?」

「ぜってー喜ぶって!たぶん!よし、買おうぜ!」

「賛成です!」

 

 リインとヴィータは完全に自分たちの好みでお土産を選んでいるが、一般常識に疎く八神家の面子の好みなどを知らないデプスには意見ができず、二人を止めることはできない。明らかに自分達の好みだけで判断しているのだが、まだそこまでヴィータ達のことを知っていないのも一因であった。

 

「お!あそこにもアイス屋発見! しかも結構いい感じだぞ!」

「アイスですか!」

「アイス!」

 

 融合騎は二人揃って一気にテンションアップする。リインはもとより、デプスも先日貰ったアイスをすっかり気に行ってしまい、今度は違うアイスが食べられる、と、上機嫌だ。

メニューを見て品物を選ぶ。

 

「リインとデプスは身体が小さいのでハーフで充分なのです!」

「昨日はレギュラーで死ぬ思いをしたからね……」

 

 デプスは初めてのアイスをたべた時、あまりのおいしさに一気にレギュラーサイズのアイスをかきこんでしまい、それはそれは酷い目にあった。今度はハーフでじっくり食べればそれで満足だ。こう言う時に小さい体は便利である。

 

「おっちゃん、ストロベリーのレギュラーと……」

「レモンシャーベットとチョコミントのハーフセットをお願いします!」

「おぉ、お嬢ちゃん達……妖精さんかい?初めて見るなぁ。」

「そんな感じです!」

「違うだろうが。」

 

 ヴィータのツッコミをもろともせずにリインは店主の男と会話を進める。リインの人懐っこい性格はこう言う時に大いに役立ったりもするのだ。

 

「ははは、お嬢ちゃん面白いな! ほれ、バニラ一個サービスしてやるよ!」

「わぁ! ありがとうございます! さ、デプスもお礼を言いましょう!」

「うん、ありがとうございます!」

「こりゃあ礼儀正しい妖精さん達だな。そっちの赤い譲ちゃんも。 よし、こっちもサービスだ!」

「おぉ、おっちゃん! ありがとー!」

「毎度あり! また来てくれよ!」

 

 こういうふうに、しょっちゅう店の人と仲良くなって、その末にサービスしてもらえることが多いのだ。外見との相乗効果もあるだろう。ヴィータは心の内でしてやったり、と黒い笑みを浮かべていた。

 

「あ、ヴィータちゃん、そろそろいい時間ですよ! 転送ポートへ行きましょう!」

「ん、そーだな。デプス、満足できたか?」

「うん! ヴィータ姉さん、ありがとう! いい経験になったよ!」

「あ、あたしも姉さんなのか……?」

「あ、嫌だった……かな……?」

「い、いや、全然かまわねーぞ! へへ、そうか、あたしもお姉ちゃんか……!」

 

機嫌をさらによくしたヴィータ達一行は、勇み足で転送ポートへと向かうのだった。

 

 

~一方その頃~

「主はやて、どうなさいましたか。」

「あ、シグナム?あのな、お願いがあんねんけどな、3日後やねんけど、ちょっと有給とって欲しいんよ。」

「ほう、それは構いませんが、何かあったのですか?」

「八神家にな……新しい子供が誕生してん……」

「!?」

「じゃあそういう事で、よろしくなー。」

「え、ちょ、待っ! 主!?」

ブツッ

「……何があったというのだ……!」

 

 




やっぱり不憫なヴィータさん。
そしておかん属性が付加されつつあるヴィータさん。
彼女のポテンシャルは未知数ですね。

唐突に現れる主人公の二つ名…!
ゆくゆくは戦闘描写とかにも入りたいなーって。
一応いろいろと設定は考えております。
そして俺の技のネーミングセンスがすさまじいことを再確認しました。悪い意味でな!!

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