今回はちょい短めです。
***
「「いただきまーす!」」
「はい、召し上がれ。ゆっくり食べなー」
はやて特製、融合騎サイズのミニオムライスを口いっぱいに頬張る。
「はぁ……幸せ……」
「美味しいですー!」
口の中に広がるふんわりとした卵の食感と、食が進む優しめい味つけのケチャップライスにリインと2人で舌鼓を打つ。
「ありがとうなー、でもデプス、ゆっくり食べや言うたやろ。」
「あうっ!」
かき込み過ぎたのか、はやてに頭を軽く叩かれたが、それでもデプスの食事ペースは緩まない。
八神家に来てから数日、デプスは改めてはやての料理技術の高さを実感していた。研究所で与えられたような栄養接種だけを目的とした固形物とは、まさに天と地程の差。比べるのもおこがましい。
手料理は、食べることが幸せなことだということを何より実感できる、素晴らしい物だ。幸せの絶頂に立ったような気分のデプスの食は止まらない。リインが半分も食べない内に、自分の分のオムライスを食べきってしまった。
「ごちそうさまでした!」
「……いや、嬉しいのは嬉しいねんけどな。」
注意しなければ、と思いつつも、幸せそうなちびっ子達を見ていると、どうも難しい。それに、デプスは元々こういった経験に乏しかったのだ、少し位はいいのではないか、といった考えがはやての頭に浮かぶ。
(……あかんあかん、そうやって甘やかし過ぎるとロクな事になれへん。)
少しずつ、ゆっくりでもいいから、こういった教育は進めなければならないのだ。それが保護者としての役目だ。と思案したが、未だ結婚もできていない事実に気づき一人愕然とするはやてであった。
「ごちそうさまです!」
「いや……まだ20前半やし……これで普通やろ……うん……普通や……」
「はやてさん?」
「……え!? ……あ、あぁ何でもないねん、何でも!」
考えている間にリインも食べ終わり、変なことを呟いたのを聞かれてしまったのを何とか誤魔化しにかかるはやて。
「……そうそう、シャーリーはどうやった?ええ子やったやろ?」
「あ……はい!最初はちょっと不安でしたけど、気さくで気立ても良くて、良い人だと思いました。」
話題に食いついたデプスを見て、何とかなったか、とはやては胸を撫で下ろした。
八神はやて、2○歳。絶賛彼氏募集中である。
「まぁ、優れた技術者さんには、変わった人も多いですからね。シャーリーは優れていても常識人なので安心です!」
「たまにちょっとおかしいけどなぁ。この前も最新型のデバイス設計図見ながら鼻息荒くして興奮してたし。」
ちなみに、何故シャーリーがこうして話題に上がったのかというと、デプスのメンテナンスをしてもらったのである。勿論、あまり大っぴらにはできないので、小さな研究室で最低限のデータ取りを行った程度の物であるし、調整と言っても大したことはしていない、らしい。
六課時代からの付き合いで信頼できる上に、執務官補佐であるがティアナが同じ職についた為に暇ができたシャーリーは、メンテナンスを頼むには丁度よい相手だった。
リインの定期メンテナンスという隠れ蓑もあった為、見つかる可能性は低かったが、巻き込んでしまうことに少し心を痛めたはやてではあったが、当の本人は「新しいユニゾンデバイス!?な、なんという甘美な響き…!ぜひ、ぜひ見せて下さい!共犯でも何でも構いませんから!」と興奮しながら詰め寄ってくるシャーリーの剣幕を思い出し、あ、やっぱ大丈夫だったか。と考えを改めた。
「それにしても、特に大した問題もなくて良かったですねー」
「うん、まぁ、完全に解析できた訳じゃないらしいけどね。あの人が言うならきっと大丈夫だよね。」
彼女がとても優秀な存在だということは、今日の件でよく分かった。普通のデバイスならまだしも、まだデータの少ない融合騎をいきなり「解析と調整、してね。ほら、これ。」と出されて、実際にそれを成してしまうのだから、それはもう疑いようもなく優秀だ。人格も含めて、中々稀有な人材なのだろう、と、少し上からの目線に見えなくもないようなことを考える。
「まぁ、どうも現状では抜けないプロテクトがあって、解析しきれないブラックボックスがあるのは、微妙に不安ですけれど、それも時間があれば解ける物らしいですし、ひとまずは安心ですね!」
「うん。変なものじゃなければいいけどね……。そういえば、リイン姉さんもメンテナンス受けてたけど、どうだったの?」
「リインは今回の調整でカートリッジを搭載してもらったのです!」
「えぇっ!?」
「嘘です!」
「ですよね!」
「……ユニゾンデバイスのカートリッジってどこから排出するんやろなぁ……口から?」
「……うわぁ……」
顔を引き締めたはやての言葉に、口からガコンガコンと音を立てながらカートリッジをロードするリインを想像するが、あまりにもあまりな図だったので、すぐに頭から追い出したデプスだった。
「……尻から……」
「やめて姉さん!!!」
リインがとんでもない事を口走りそうになったので全力で止めに入る。頭から追い出した筈の悪夢の様な図が再び強化されて蘇ってきて、頭をぶんぶんと振って振り払った。
「でも、カートリッジかぁ……使ってみたらどんな感じなんだろうなぁ。」
ベルカの騎士はカートリッジ搭載のアームドデバイスを好んで使うが、勿論、融合騎であるデプスやリインには搭載されていない。
研究も進み、安定してきたとは言え、カートリッジシステムは未だ術者、デバイス双方に大きな負担をかけてしまう。
元々術者への負担の大きい融合騎とは相性がかなり悪いのである。
「デプスがカートリッジを得れば、目下の課題である火力不足は改善されますね!」
「うん、まぁ、シグナムさんやヴィータ姉さんなら別に火力の底上げもあまり要らない気はするけどね。」
「魔力消費がかさむのが痛いとこやなぁ。」
「そうですね……」
デプスの魔法は確かに効果が高いが、それだけに燃費も悪く、ユニゾンすれば基本的に短期決戦を余儀なくされる。
が、火力が無いと短期で決められるか、という部分に不安が残る。
「魔法の構築次第である程度なら緩和できるとは思うですよ。」
「……うん、これから、少なくとも、ヴォルケンリッターの誰と組んでもフルパフォーマンスで臨めるように、相談していくつもり」
実を言うと、既にザフィーラ用の魔法だけは構築済みである。彼に合うように波長などを微調整した既存の魔法と、彼の能力を活かせる様に編み出した新しい魔法。実戦で使うような事はできればあって欲しくないが、中々自分でもうまく作れたと思う出来なので、試してみたい気持ちもあることにはある。
「まぁ、時間はあるしな。休日が重なった時に……な?」
「……ですね。」
とはいえ、基本的に八神家の面々は忙しい。特に優秀な医務官であるシャマルや教導隊に所属ヴィータ等は、家に帰ってきても書類処理など、何かしらの作業をしていることが多い。
その為、デプスとの調整の為のまとまった時間を取るにはまだ至っていないのが現状である。
ザフィーラとゆっくり調整できたのも、彼がたまたま自分の時間を多く持っているというだけなのである。
……まぁ、それは彼に仕事が特に割り振られていないのが原因ではあるのだが、本人の名誉の為にも言っておくと、彼は仕事ができない訳ではない。むしろ優秀な部類に入る、はず。
AAランクは伊達ではないのだ。
ただ、それを発揮する機会に恵まれない、というだけなのである。一応、要人警護の資格等も持ってはいる為、働こうと思えば働ける。ただ、それ以上にザフィーラは今の「留守を守る」仕事を気に入っているし、暇な時間はたいてい自己鍛練に費やしている。
この頃はデプスも、フレームサイズを変更してザフィーラと共に鍛練に励んでいるが、まだまだザフィーラと比べると、かなり体力で劣っており、すぐにダウンしてしまうというのが悩み所である。
融合騎だって鍛えれば強くなるのだから、鍛えるに越したことはない。
「ザフィーラ!」
「む、なんだ。」
机の下で丸まっていたザフィーラに声をかける。
ご飯を食べている時から一言も話さなかったので、もしや寝ているのではと思ったが、そういう訳ではなかったようだ。
「今度鍛練する時、俺用にメニューを組むの、手伝って欲しい。」
「あぁ、そういうことか。確かに、無理をして我に合わせているのも、良くないな。」
「うん。いちいちダウンしてザフィーラに気を使わせるのも、アレだから。」
「え、何々? デプスもザフィーラと一緒に訓練しとったん?」
「えぇ。……家にいると基本的に……あんまりやることないから……」
「……あー、なんか、ごめんな。」
遠い目をしてそう言ったデプスに、はやてはあまりついてやれないことを申し訳なく思って謝ったが、デプスはすぐに自分の言い方が悪かったのだと思い直した。
これでは催促したようなものでないか。
はやての性質を鑑みれば、たとえ自分に非がなくても、そうやって背負いこんでしまうのは自明の理だというのに。
デプスはそんな不自由よりも、はやて達に対する感謝の念の方がよっぽど大きいことを伝える為にあわてて訂正する。
「あ、いや、別にはやてさんは悪く無いじゃないですか!何も謝る必要なんてないのに……こちらこそすみません……変なこと言っちゃって。俺、別に不自由ってことはないですし、本当に、ここに来て良かったって思ってますから。」
「デプス……」
「まぁ、動き辛いのは、もうしばらくの辛抱なのですよ。管理局の体制も整ってくれば、状況も変わってきますし……」
「それに、将来デプスを局勤めさせるなら、体力があるに越したことはありません。」
「ん……確かにな。よし、ザフィーラ、しっかりデプス鍛えてやってな!」
「委細承知。まずは、我についてこれるくらいにはなってもらわんとな。」
「う……。お、お手柔らかに……」
嫌な予感を感じつつ、苦笑と共にそう答えるデプスだった。
***
「ぜぇ……ぜぇ……」
「ふむ、もう少しきつくしても良かったかもしれんな。」
「ま、マジですか……」
翌日、早速デプスはザフィーラの、限界ギリギリをうまくつついてくるようなスパルタ訓練によって息も絶え絶えといった惨状に追い込まれていた。
「ザ、ザフィーラって、結構スパルタだよね……」
「なに、今に始まったことではないだろう。今までの訓練を見れば分かっていたはずだ。それに、だ。」
高町の教導はこんなものではないぞ、と言うザフィーラの言葉に、「そんなものがあるなら、一度受けてみたいもんですよ」と苦笑しながらデプスが答えると、
「言ったな?」
と、珍しく口角を吊りあげて薄く笑ったザフィーラに、軽い悪寒を感じるデプスであった。
「あれ?そういえば高町って、あの……砲撃がどうとか言ってた……」
「さぁ、休憩は終わりだ。次のメニューに行くぞ。」
「え、ちょ、ごまかさないでよ!」
「それが終われば昼食だ。今日はハンバーグらしいぞ。」
「本当っ!?」
結局はぐらかされたデプスだった。
珍しくリインがあんまり喋らなかった回。
おい、いちゃこらしろよ。
融合騎にカートリッジつけたらマジで超強いと思ったんですが、どうなんでしょうね。
勝手に負担が大きいからつけてないなんて理由にしましたが、なのはさんがstsであれだけバカスカ使ってたのを見る限り、微妙なところです。あ、でもあの人負担とか関係な(ry
そして合法自宅警備員と化したザフィーラ。本人がいいならそれでいいのです。
最後の方でデプスに死亡フラグが成立した気がしますがきっと気のせいでしょう。気のせいですよ。
感想、誤字報告お待ちしております。