いつの間にかボスになってた。組織は滅んだけど   作:コズミック変質者

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今回の話でやりたいことが全く出来ていないのに、何故かボス×耳郎プロジェクトがゆっくりと進行してしまっている・・・。いつ投稿できるか、そもそもするかすら分からないけど。


8月13日、一部修正。


ようやく私の出番が来たよ!なんか気付いたら増えてるけど

昔から、夜の港のコンテナ街なんて薬や武器の闇取引の場として思われる場所だ。ドラム缶にコンクリートと共に詰め込んで海の藻屑を作る時もある。要は昔から印象が悪いのだ。

故に(ヴィラン)はヒーローが見回ると思って近寄らないし、ヒーローはこんな分かりやすい場所に(ヴィラン)が近寄るはずがないと思い、空白の地帯が生まれる。いや、それっぽいこと言っただけだから実際の所は分かんないけど。

 

いやぁ、コンテナ街近くのホテルから見てるけど、暗くて肉眼じゃよく分かんないや。あそこにいるであろうスキューロだって豆粒にも見えないし。灯りの一個くらいはつけて欲しい。どこにいるのか非常に分かりづらい。

『ホワイトスネイク』を向かわせているんだが、暗闇が深すぎて見えなさすぎる。

 

だから頼り辿るのは自分の感覚ただ一つ。私の『血』、それだけだ。

そう、ここには奴がいる。この世で唯一、私と同じ血が流れる忌まわしいあの男が。久しぶりに会うあの男の顔は、今も尚鮮明に思い出せる。乗り越えた恐怖(試練)は、私の心に深く残り続けている。

 

私の素晴らしい優しさで今日まで生かしてやったんだ。なら、最後にどう扱おうが私の勝手だよな。安心しろ、殺しはしない。が、会うのは今日で最後だろう。故に最後の私の優しさを与えてやろう。お前を道に乗せてやる。そしてお前の憧れ、目標、夢、希望に会わせてやろう。

 

 

 

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「ほぉ、組織の中でも名高い親衛隊の半数が居るとはなんとも素晴らしい歓迎だな。私のような老人にここまでの出迎えをくれるとは。ボスには感謝しなければな」

 

天候関係なく、雨傘を持った老人――ヴラディミール・コカキは、この場で自分とメディジーナを待っていた三人の男達を見渡す。全員から溢れ出るパワーには、警戒心が含まれている。軽いジョークでさえも殺されかねない。

いや、実際に殺されるのはコカキではなく、コカキの後ろに佇んでいるメディジーナだ。

 

対するのはボスの右腕のスキューロを筆頭に親衛隊が二人。白黒対照的な二人の男。警戒のためか、それとも能力の為か少し離れた位置にいる。

辺りは水浸し。雨が降った訳でもないので人為的な物だろう。態々濡らす理由は、おそらく濡れていることが能力の発動条件だからだとコカキは推測する。

随分と警戒されているが、それは仕方の無いことだ。ボスはメディジーナに大層ご執心なのだから。そしてコカキの与えられた幽波紋(スタンド)は、ボスの持つ幽波紋(スタンド)の中でも曰く付きのもの。

その気になれば親衛隊二人は言わずもがな、状況によってはスキューロでさえも無抵抗に殺すことが出来る。

 

だがコカキが幽波紋(スタンド)を見せるような動きをすれば、一瞬で殺されるだろう。ひしひしと伝わってくる感覚が、下手に動けば死ぬと歴戦のコカキに知らせてくる。

 

「ゆっくりとだ。ゆっくりとその雨傘を置いて跪け。勿論だが幽波紋(スタンド)も出すなよ。ボスがお見えになる」

 

「ふむ、私の雨傘は武器ではなく、ネアポリスのパロットの店で作らせた特注品のただの雨傘なのだがな。ああ不満があるわけではない。ボスが来るのなら当然のことだ」

 

ゆっくりと雨傘を地べたに置き、自分も地面に膝を突く。ジリジリと近寄ってくるスキューロの射程距離に、コカキはもう入ってしまっている。ここから幽波紋(スタンド)を出して攻撃すれば、相打ち覚悟でなら一人は殺せるだろうか。

こういった考えは悪い癖だ。長年裏社会に身を置きすぎたせいで、こういった警戒心が強くなってしまっている。身を委ねるべき組織のボスにさえ、こういった不埒な考えが浮かんでしまう。

 

『壮健そうで何よりだよ、コカキ。お前の働きはスキューロから聞いている』

 

「お久しぶりです。ボスのお陰で、これ以上ないほど人生で最高にいい思いをさせてもらっています。私程度の働きでパッショーネの、ボスの再起の足しになるのなら光栄です」

 

揺らぐ風景から姿を現すのはボスの現身『ホワイトスネイク』。恐ろしい迄の遠隔操作を可能とする幽波紋(スタンド)は、相も変わらずの存在感を示している。パッショーネのボスの地位にいるのに、相応しいどころか過ぎる程の力を持っている者が、再びヴラディミール・コカキの前に降り立った。

スキューロは『ホワイトスネイク』の、ボスの登場にコカキの横に移動する。コカキはゆっくりと『ホワイトスネイク』に近づき、その手の甲に尊敬と敬愛の口付けをする。

 

「麻薬チーム、ヴラディミール・コカキ、そしてメディジーナ。ボスの御命令のままに、参上いたしました」

 

麻薬チーム。パッショーネ内で最大の利益を最悪の方法で生み出している、組織の中で親衛隊以上に謎に包まれたチーム。構成員は勿論、麻薬の生産方法、流通ルートも一切不明。彼らに対して何かを知っているのはボスとスキューロのみ。今回の件で初めて、コカキとメディジーナのことを親衛隊の面々は知らされた。

 

『前置きはいい。今お前に求めるのはただ一つ。代わりとなる者は見つかったのか?私が信頼に値する、幽波紋(スタンド)を与え、麻薬チームの中核となる者が見つかったのか。重要なのはそれだけだ』

 

「ええ、勿論です。ボスのご要望通り、決して組織を、ボスを裏切らず幽波紋(スタンド)を与え、麻薬チームの中核となれる者は見つかりました。こちらの資料に詳細が載っています」

 

『スキューロ』

 

コカキが懐より取り出した資料をスキューロが受け取り、流し読む。細かく、だがボスを待たせないように素早く資料を読んでいく。経歴を、顔を、性格を、性能を、己の目でじっくりと、料理人が食材の鮮度に細かく拘るように確認していく。

 

「コカキの人選は当たりだ。性格も能力も経歴も申し分ない。コイツなら消す(・・)にはもってこいだ」

 

『決まりだな』

 

ボスの決定の意が下ると、スキューロの手にあった資料が一瞬で凍りつき、蒸発したかのように消えてなくなる。この瞬間、資料に記載されていた次の男(・・・)は資料と同様に消えることになったのだ。

 

『良くやったよコカキ。次が馴染むまでは、しばらくは日本でゆっくりとバカンスでも楽しんでいるといい。良い国だぞ。我らが故郷イタリアには劣るがな』

 

「おお、それはありがたい。日本のテラ、というものには以前から興味があったので。これを機会に観光を楽しませて貰いましょう」

 

『それと、ソレへ最後に何か言うことはあるかな?』

 

「お優しいのですねボスは。ありませんよ、道具にかける言葉など」

 

そう言ってコカキは地面に落ちている雨傘を持ち上げ、杖の代わりにしながらこの場から立ち去ろうとする。スキューロは控えている二人に視線を送り、コカキを近隣まで見送るように命じる。

コカキの幽波紋(スタンド)の射程距離は広い。射程距離に特化した『ホワイトスネイク』程ではないにしろ、この場にいる幽波紋(スタンド)使いの中で断トツで広いのだ。

そして何度でも言うがコカキの能力は強い。コカキ自身に戦闘力がほとんどなくとも、その能力だけでコカキを無敵に近い位置に立たせている。

襲われればたまったものではない。

 

完全にその姿が見えなくなるのを確認すると、『ホワイトスネイク』はスキューロに離れるように伝える。ここから先にスキューロは不要。あるのはメディジーナとボス、血の繋がった二人だけの時間である。

 

 

 

 

 

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一応さ、私は元日本人なわけよ。日本人だったなんて感覚はほとんど消えちゃってるんだけど、それでも私がかつてそうだった、っていうのはあるんだよ。だからさ、ね。

 

老人のキスなんか嬉しくもなんともねぇよ・・・。

 

一瞬怖気さえ走ってしまったぞ。いや、手の甲へのキスの意味はちゃんと分かってるんだよ?でもそれとこれとは違うでしょ。一応私も年頃の女性の訳でさ。誰が好き好んで老人の口付けなんか欲しがるよ。

 

私の護衛として、私と同じ部屋にいるシーラに濡れたタオルを持ってきてもらって思いっきり手の甲を拭く。幽波紋(スタンド)越しでも感覚が残っていやがる。

ていうかパッショーネ再起って何?このままウダウダして適当に隠れ潜むんじゃないの?一応次の幽波紋(スタンド)使いを探してたのは小遣い稼ぎ程度の感覚だったんだけど。いや、だっていつまでもメディジーナを置いておきたくなんかないし。

 

コカキなぁ・・・。一応信頼は出来ると思うのよ。それでもアイツは、なんか奥底を見せなくて怖いんだよな。私の周りにミステリアスで何か隠し事してる奴なんか要らないから、この後、私の『ホワイトスネイク』とスキューロの『マン・イン・ザ・ミラー』で襲撃をかけて頭の中弄る予定だけど。日本に来てから『マン・イン・ザ・ミラー』大活躍だな。あれ実際便利オブ便利だもんな。室内で監視カメラとかあったら使いにくいけど、屋外だったら無敵にさえなれちゃうんだしな。

私は適正なかったけど!畜生スキューロ羨ましすぎる。実はスキューロがチート主人公説あるぞコレ。

 

「それじゃあシーラ、今から集中するから何者をも私に近づけるなよ」

 

後ろで控えているシーラに言葉を残し、私の意識の全てを『ホワイトスネイク』に持っていく。これやると幽波紋(スタンド)のパワーが少しだけ上昇するけど、本体が肉人形になっちゃうしキンクリも使えないから全然メリットないんだよな。パワーの上昇もほんの少し、1.5Lのペットボトルを一本多く持ち上げられるようになるだけだし。

 

『久しぶりだな、忌々しい我が兄。いや今はメディジーナと呼んだほうがいいかな?』

 

まっ答えられるわけねぇよな。『キング・クリムゾン』を抜いたと同時に半分もぬけの殻になって、そこから私がメディジーナとして生かすために与えてやった人類を凌駕(・・・・・)する幽波紋(・・・・・)の効果で、肉体もぶっ壊れちまってるもんな。

 

「ヒー・・・ロー・・・オー・・・ルマイ・・・ト・・・父・・・さん・・・」

 

『報告にあった通り受け答えは出来ず、同じような言葉を機械のように繰り返すだけか』

 

『キング・クリムゾン』を抜いた時、私はコイツから魂を抜こうとは意識しなかった。真実を知って自己防衛のために自壊した精神は半分、残った精神は『キング・クリムゾン』と共に私のDISCとなったらしい。まただよ『ホワイトスネイク』。この間の件で問いただしたらまた出てきたよ。本体に隠れてやりたい放題しすぎだろ。

 

精神が自己防衛のために自壊するって本当にあるんだな。噂話か適当な戯言だと思ってたけど、どうやら事実らしい。また一つ賢くなったね!いや・・・割とマジでどうでもいいな。

 

『まずは、私の物を返してもらおうか』

 

何かの拍子で死なれたら困る。『ホワイトスネイク』の腕で頭を横に、大振りで殴る。拳が当たった感触はなく、当たった音もない。本来であればダンプカーにはね飛ばされるほどの衝撃だが、それすらもない。

 

『『マニック・デプレッション』確かに返してもらったぞ』

 

『ホワイトスネイク』の手にあるのは最悪のDISC。その気になれば世界の財政をひっくり返すことさえできる。原作でも私のも、パッショーネは『マニック・デプレッション』の能力を塩に付加することで既存の麻薬かそれ以上の依存性を持たせていた。そして本来なら欲にまみれた者達が流通ルートを探ったり麻薬を隠し持っていたりするのを、幽波紋(スタンド)能力が元という特殊さで乗り切った。

麻薬チームとは、本来はコカキのような管理兼護衛役すら必要ない。『マニック・デプレッション』という幽波紋(スタンド)一つあればそれでいいのだから。

 

『そういえば、大分姿が変わったじゃあないか。退廃的というかなんというか。少なくとも、今のお前を見れば誰もマトモな人間なんて思わないだろうな』

 

今のメディジーナは無造作に伸びた色素の抜けた枯れた白髪に、痩せ細り乾燥しきって割れた肌。

 

『まぁ容姿的には満点だな。いかにもって感じがする』

 

これから行くところ、行うことを考えればピッタリだ。マトモでない方が好ましい。あとは時期を見るだけ。あとは折を見て、DISCを突っ込んでここから追い出すだけ。

 

『なぁ、私ってやっぱり優しいとは思わないか?』

 

返答なんてあるはずがない。意識はさっき抜き取り空っぽなんだから。なんかゾンビっぽいけど、一応肉体は死んではないんだよな。

 

『お前の記憶を、ほんの少しだけ覗いたよ。物の見事に良い部分を見ることが出来たよ。夢だったであろう、この世界でオールマイトと共に教えを受け、緑谷出久と爆豪勝己と肩を並べ、雄英高校でクラスメイト達と切磋琢磨して最高のヒーローになるという光景を。

だがそれは最初の一歩目から打ち砕かれた。そもそもスタートラインが違うんだから一緒になれるはずがない。状況だってそうだ。ヒーローの価値観がイタリアと日本では違うのだからな』

 

可哀想だろうそんなこと。打ち砕かれた夢を、何とかして叶えてやろう。ああ、私はなんて兄想いの良い妹なんだ。うわ、自分で言ってて過去最高に気持ちわりぃ。

 

『会わせてやるよオールマイトに。肩を並べさせてやるよ緑谷出久と爆豪勝己に。切磋琢磨させてやるよ雄英高校と。夢だったんだろう?廃人となった今でも尚』

 

例え立場が違っても、言葉の上では同じこと。

 

『定まった未来に歓喜して感動の涙を流してくれよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『喜べよ、私がお前に与える最後の優しさなんだから』

 

 

 

 

 

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「そういえばスキューロ、一つ聞きたいのですが」

 

ボスと親衛隊が麻薬チームと出会う数時間前。任務前にビリヤードを嗜んでいた日本に来航した親衛隊の一人、ティッツァーノはキューをチョークで擦り終えると、相棒で親友のスクアーロの後ろから、抱き着いているように見えるほど重なり、キューボールを弾く。

弾かれたキューボールは他の玉を弾いていく。ポケットにボールは入らず、ただバラバラに散るだけに終わる。

 

「麻薬チームのヴラディミール・コカキという男、どのような男なのですか?かなりの警戒を持っているようですが」

 

今度はキューをスクアーロに渡し今度は違う体勢で、しかし重なり合いながら打つ。またもボールはポケットには入らずに、更にバラバラに散らされただけで終わる。

スクアーロはそれで満足したように視線を対面でワインをボトルで呷っていたシーラに投げる。どうやら今度はシーラの番らしく、シーラは後ろに立てかけてあったキューをチョークで磨く。

 

「あの男は・・・そうだな、一言で言えば、俺の前任者だ」

 

ヴラディミール・コカキ。元はイタリアの軍人だったが、何故か唐突に軍をやめて裏社会に小さな麻薬組織のボスとして現れた男。個性黎明期では比較的にまだ数が多かった無個性だが、裏社会はほとんどが力にモノを言わせるのが普通であり、いくら熟練の兵士だったとはいえ無個性のコカキでは生きていくのは難儀なことだった。

そのため金で用心棒を何人も雇い、周りを固めていた。

 

組織が大きくなる前に、コカキは自分のチームをパッショーネの前組織、つまりはボスの父親に売り渡した。溜め込んだ資金も麻薬も流通ルートも全てを使って。結果、得たのはボスの娘、つまりはフェリシータの護衛兼世話係。異例のことだ。外部からの、たとえ小さい組織とはいえボスという地位に就いていた男が、そんな役割を喜んで受け入れたのだ。

 

スキューロの言葉に、全員が目を剥く。ボスの幼少期から、あの男は誰よりも近くにいたのかと。いや、それにしても経歴が異常すぎる。

 

ちなみにだが、親衛隊の面々はボスが父親から組織を奪ったのを知っている。というのも、何気ないシーラの言葉でバレてしまったのだ。ボスの信頼を得て、近づいたが故の弊害だった。

少し考えれば簡単に分かることだ。今まではスキューロだけの秘密だったものが、信頼の代償として親衛隊に一部だけ公開されてしまった。しかし、だからといってボスの力を知る彼らがボスを裏切るわけがなく、元よりボスを裏切るつもりもない。

ボスには、返しきれない恩があるのだから。

 

「だけどよォ、それだけボスに近かったってなら、ボスが組織を立ち上げる時に殺されてても可笑しくないんじゃねぇのか?」

 

スクアーロの言うことは尤もだ。ボスはスキューロを使って組織の上層部、特に自分のことを知る人間を徹底的に皆殺しにしている。肉親だろうが例外ではなく、残ったのは残酷な殺戮現場だけと聞く。

 

「コカキはボスが組織を立ち上げる四日前、つまりは殺される前に、アイツの故郷のシチリア島に身を潜めていた」

 

「ですがそれならボスの幽波紋(スタンド)か組織の力があれば簡単に追跡できたんじゃありませんか?」

 

ようやく狙いが付いたのか、シーラがボールを弾く。前の二人と同じようにボールが入ることは無かった。不自然なまでに入らないのは、もう想像出来るとおり、最初から彼らに入れる気がないからだ。

 

「ああ。渡航記録がはっきりと残っていた。隠す気はないと言いたげにな。そして居場所が判明し殺しに行こうと思った直後、奴は戻ってきた」

 

「態々殺されにですか?」

 

「いや・・・分からない・・・」

 

その頃にはボスはスキューロ以外は信用していなかった。既にその姿を奥に隠し、自分を何処にも存在しない人間としていた。だがそのボスが、幽波紋(スタンド)越しとはいえ会おうと言ったのだ。しかし、幽波紋(スタンド)とはボスがDISCを与えてはじめて見えるようになるもの。コカキは幽波紋(スタンド)を与えられた人間ではない。故に、ボスはスキューロを通してコカキに幽波紋(スタンド)を貸し与えた。それがどれだけ異例な事かは言うまでもない。

 

それだけならいい。まだ幽波紋(スタンド)使いとしては完成していなかったとはいえ、その当時のスキューロの幽波紋(スタンド)はボスをして邪悪と言わせる程の能力を持っていた。いかにコカキに与えた幽波紋(スタンド)が強力とはいえ、完封することだって出来ただろう。だが、ボスはコカキと『ホワイトスネイク』越しとはいえ二人きりで会ったのだ。

あまりにも危険な行為だ。だが、スキューロがボスの決定に口出しすることは無い。ただ部屋の前に護衛として居ただけだ。

 

「何を話していたのかは分からない。だがその時に、コカキは幽波紋(スタンド)と麻薬チームをボスから与えられたのは確かだ」

 

スキューロがシーラから投げ渡されたキューを掴み取る。態々後ろに置いてあるキューを取るのが面倒だったからなのか、それとも取る前にシーラから投げ渡されたから受け取っただけなのか。

 

「もしかして、コカキはボスの弱みか何かでも握っていたのでしょうか?」

 

「そりゃあ有り得ねぇだろティッツァ。そのコカキっつう男がどんな男なのかは知らねぇけどよぉ、あのボスだぜ?脅したりなんかしたらすぐにぶち殺されちまう」

 

スクアーロの言うことは尤もだった。ボスの幽波紋(スタンド)は無敵だ。誰一人害することは出来ない能力に、ぶっちぎりのスタンドパワーは、ボスの持つ幽波紋(スタンド)の中でもずば抜けている。

 

「結局のところ、ボスの考えは私達の知るところじゃないってことよ。コカキがどうしてボスに近づくことが出来たのかなんて、どうでもいいでしょう。結局、ボスに仇なすなら殺すだけ。そうでしょ、スキューロ様」

 

「当然だ」

 

狙いすら定めず、スキューロの打ったボールは全てのボールを弾いていき、それら全てをポケットに叩き落していく。親衛隊の三人はスキューロがこれを行う為の前座。単純なビリヤードに飽きた彼らの遊びである。

 

私達(親衛隊)は組織内の不穏分子を消すためのチーム。もしコカキという男がボスに仇なすなら、私とスクアーロが率先して殺してあげますよ」

 

「まだ殺すと決まったわけじゃない。それを決めるのは俺達ではなくボスだ」

 

誰も異論を持つことは無い。何故ならそれはパッショーネという組織における絶対の掟の一つ。逆らうことは親衛隊でも許されない。そんなことをすればスキューロが率先して殺しにくるだろう。誰しも命は惜しいのだ。




態々シーラと同じことを繰り返すの面倒だしマンネリになるでしょ。

この作品におけるコカキはちょいとめんどうな設定になっています。今はまだ出しませんが。ていうか出せるのか・・・?

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