いつの間にかボスになってた。組織は滅んだけど   作:コズミック変質者

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ごめんなさいごめんなさい投ごめんなさいごめんなさい稿ごめんなさいごめんなさい遅ごめんなさいごめんなさいれごめんなさいごめんなさいてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

今から言い訳始めるんで、興味のない人はすぐに下にスクロールを推奨します。


全部キーパッドアプリが悪い。

この話を書き始めてから少し経ったら(それでも投稿遅れてた)まさかの普段愛用している某有名キーパッドアプリがまさかの不具合。これまで何度も何度も使って記録させてきた「」『』《》|——などが一切記憶されないという地獄の不具合。
不満大爆発ですよ。烈火の如き苛立ちでしかりませんでしたよ。

気分がいい時に指が進むのと同じように、気分が悪い時には指が進まない。それどころかろくな文章が思いつかない。最悪の時はこれまで書いてきた文章が気に入らずに全部削除。
気分を変えようとちょっとした短編を投稿しても心は荒むだけ。もう地獄でした。

そしてようやくアプリの不具合が直ったらこの通り!アソパソマソもかくやという程の指の進み!クオリティは保証しないけど。

さぁ、私の汗と血と涙の染み込んだ本編を味わうがいい!


狂人の相手なんてしたくない。呼んだのは私だけど

いつもと同じく、暗い路地裏で贋作のヒーローの粛清を終える。呻き声を上げて地面に倒れる血濡れのヒーローに対して、なんの感慨も抱かない。彼からしてみればそこにいるのはヒーローとは名ばかりの、純粋であるべきその名を汚す塵でしかない。

 

胸に秘めるのは社会が良くなれという純粋な正義感。

自分の行いは間違っていない。無数の贋作が蔓延るこの世の中、ヒーローという名の重さを、意味を忘れた者達への粛清。

 

過剰なまでに神聖視されている彼のヒーロー像から呼び起こされた凶行を、誰も止めることが出来なかった。倒れるヒーローも、凶行を止めようとした果てにその身を血に濡らし、無力に地に伏せたのだ。

 

「はァ・・・愚かな贋作・・・ヒーローを名乗る贋作は・・・はァ・・・粛清を与えなければ」

 

「赤黒血染。いや、今はヒーロー殺しステインだったな」

 

「誰だ・・・!」

 

声がした方へ、振り向きざまに納刀しようとしていた軍用ナイフを投げる。殺すのではなく流血させることを目的に鍛え上げられた技能だが、その技は既に必殺の領域にまで到達している。並のヒーローでさえ目で追えないほどの速度で振り投げられたナイフに、しかし手応えは存在しない。

 

「中々の技能だ。そこら辺のチンピラやヒーローなら即殺されるだろう。だが残念だったな。刃物を使う以上、俺との相性は最悪だ」

 

闇より出てきた男の右手には、ステインが投げたナイフの柄の部分が握られている。高速で飛来するナイフをブレードごと掴むのは理解できる。だが柄を掴んで止めるのは、明らかに異常である。

ナイフを掴んだのは純粋な技量か、それとも個性か。

 

間違いなく個性であると考えられるが、そうではない、技量の可能性も捨てない。もしそんなことを個性なしでできるとすれば、目の前の男は相当な手練。油断すれば一瞬で殺られるかもしれない。

その考えが脳裏に過った瞬間、本来の武器である刀を抜刀する。

 

逃げるという道はない。目の前の男はそんなことを許しはしない。

 

「別に殺しに来たんじゃあない。話があってきたんだ」

 

掴み取ったナイフを軽く放り投げる。投げられたナイフは速度は遅いがやはり刃物。取り損なえば大怪我を負ってしまう可能性もあるが、ステインは軽く掴み取る。

 

(ヴィラン)・・・いや自警団(ヴィジランテ)の方か・・・?どちらにしろ、悪しき者達と話すことなど———」

 

「人の話は最後までよく聞くんだな。俺はそのどちらでもない」

 

「ならば何者だ・・・?はァ・・・何が目的で接触してきた」

 

返答によっては切り刻むこともやむなしと、血に濡れた刃を舐める。一目見るだけでゾッとするほどの姿。その姿形から為された行為は、明らかにマトモな人間ではないと教えてくる。

 

「ボスがお前と話をしたいと言っている。俺はお前をボスの場所に連れていくために来た」

 

「・・・俺がついて行く理由がないな」

 

「その刃物、大分傷んでるんじゃあないか?刃こぼれが酷い。そんなんじゃあ碌な手入れもしてないだろう。それにお前自身にも疲れが見える。当然だな。お前が活動を始めたのは三ヶ月前。その間に15人を殺害、19人を再起不能にまでしている」

 

「・・・それがどうした」

 

「警察はバカじゃあない。既に再起不能になったヒーロー達から聴取を終えているだろう。お前はお喋りみたいだからな。お前の持つその思想を元に、捜査をしているだろう。勿論、お前の使う金縛りの様な個性も含めてな」

 

過去にステインはとある地方の高校のヒーロー科に所属していた。だが現状のヒーローの体制に異議を唱え『英雄回帰』という主張をしたが、たった一人の学生の声が社会に届くはずがなく、波紋一つ起こすことなく消えていった。正攻法を捨てた彼はどんなヒーローよりも過酷な修練を積み重ねると同時に、その思考を絶対のものとした。

 

「それがなんだと———ッ?!」

 

これ以上は聞く必要は無いと、その肉体を切り刻もうと動こうとした時、自らの異変に気付いた。肉体が思うように動かない。痛みはなく、氷か何かで動きを妨げられているわけでもない。肉体そのものがステインの意識についていけていない。

 

「『偉大なる死(ザ・グレイトフル・デッド)』。安心していい。ボスからは殺すなと指示を受けている」

 

「か、身体が・・・重い・・・」

 

「まだそこまで動けるのか。これ以上は殺しかねないが、まぁそれだけ動けるなら構わないだろう」

 

「ぐぉっ・・・!」

 

更なる負荷が身体にかかり、自重に耐えられなくなり地面に四つん這いになる。先程までヒーローを追いつめていた者とは思えない無様な姿だった。見下ろす者と見下ろされる者がはっきりと分かたれる。

 

「お、俺の腕が・・・?!」

 

身体をなんとか支える腕は、まるで枯れ果てた老人のようにしわくちゃだった。ステインはまだ若い。それこそ未だに20代真っ盛りで、身体にはエネルギーが満ち溢れている。なのに自分の腕はどうだろうか?一目で戦えないと分かるほどにまで枯れ果てている。

 

視界に映り込んでくる、伸ばしっぱなしのバンダナで押し上げただけの髪も元の色など忘れて真っ白になり、元々ほとんどなかった艶もゼロになっている。

 

「肉体を・・・老化させる個性・・・!それも周りだけを巻き込み・・・自分には害無し・・・!」

 

「半分だ。半分だけ正解だ。肉体を老化させる、その見解は正しい。いや、こんなことは分かって当然だ。答えに入れることですらない」

 

まるでステインを審査しているような口調。力関係は明確だった。ステインに勝ち目はない。今の肉体の状態ならば無造作な蹴りの一発でさえ肋は折れて臓器が傷つき致命傷となるだろう。だが見下ろす彼はソレをしない。

 

「この能力は無差別でな。人間だろうが植物だろうが、『命』があるのなら巻き込んでしまう。制御を手放せば使っている俺でさえ老化させる。老化に抗う方法は明確な物として存在するが、まだ(・・)お前に教えるわけにはいかないな」

 

「ハァ・・・何を・・・言っている・・・」

 

「ああ、落とす前にこれは言っておかないとな」

 

何か、ステインの知らないルールに抵触したが故の制裁を与えられるのか。だがそれならば何故、自分の個性(・・)を話すなどと言う無駄なことをするのか。問答無用で黙らせて、彼の語るボスとやらの目の前に引きずり出してしまえばいいのに。それくらいの覚悟は常に出来ている。ただ相手が違うだけで。

 

「俺は個性など使っていない。次の選択は、間違えるなよ」

 

頭に強い衝撃を受けて、ステインの意識はそこを境に落ちた。

 

 

 

 

 

 

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「お疲れ様ですスキューロ。それが噂のヒーロー殺しですか」

 

今は形無きパッショーネの保有するアジトの一つ。室内に物はほとんど無く、また窓もない。あるのは親衛隊4人分の椅子と、スキューロの釣り竿『ビーチ・ボーイ』の糸で簀巻きにされて部屋に運び込まれたステインの分の椅子。そして簡素な机。ステインの椅子が部屋の真ん中にあり、他の椅子はステインを取り囲むように配置されている。

 

ステインの拘束を一度解き、椅子に座らせてからもう一度拘束する。椅子の脚に手足を縛り付け、なるべく動きにくいように。そんな面倒なことを、釣り竿で行うのは面倒なことだが、この釣り竿は幽紋波(スタンド)であり、使用者のスキューロはボス曰く10億に一人の幽紋波(スタンド)使い。ソレが真実であれ嘘であれ、ボスがそう言うのならそうなのだ。

 

拘束されたステインの身体は、先程の戦闘時と比べて血色も良く、枯れ木の如く老化した肉体は元に戻っている。心做しか、より健康的になったようにも見える。

 

「世間を騒がす有名犯罪者様が普通の奴らには見えないとはいえ、釣り竿で引きずられてくるなんてな」

 

「普通の縄なら逃げられていただろう。個性の都合上、こいつはどこに武器を隠しているかは分からないからな。そろそろ起こす。スクアーロはシーラの側に寄れ」

 

「ふん、個性ね」

 

座席位置は変わった。いつも彼らが集まるときの位置ではなく、このような異例の状況下でより効率良く、より安全な位置へ。彼らは当然のことながら、全員が幽紋波(スタンド)使い。ボスの力の一端をその身に秘めた者達。すなわち彼らはボスの所有物に他ならない。

親衛隊に、幽紋波(スタンド)使いに勝手な死は許されない。

 

シーラが床に落ちているホースを手に取り、大量の水をステインの顔にかける。いや、水の勢い的にはかけるよりも直撃させると言った方が正しいだろう。しかも嫌らしいことに、口と鼻の間を狙っている。顔に当たって弾けた水が鼻に侵入して刺激を引き起こしてくれるだろう。

一瞬にして部屋は水浸し。室内でホースを使って放水するなど、日本でも世界でもあり得ないことだ。

 

「ぐぉっ・・・ハァハァ・・・ここは・・・そうか、ボスとやらの居場所か・・・」

 

相当に理解力が早いらしい。手足を括り付けられた状況と、いつでも自分を殺せる位置にいる親衛隊達。誰も彼もが手練だということは、簡単に感じ取れる。逃げようにも武装が一つもない。隠していた暗器も無くなっている。

スピードが人並外れていようと、筋力は常人の枠に収まっている。手足を頑丈に縛る縄を、椅子の足という頼りない柱を率いたとしても千切る事は出来ない。分かりやすいほど詰みである。

 

「それで・・・はァ・・・ボスとやらは来ないのか?」

 

「もういる。お前の前にな」

 

「はァ・・・そういう事か・・・」

 

ステインから少し離れた所にある机には、一台のPCがポツンと置かれている。真っ暗だった画面には薄い光が灯り、緑色の文字が黒に刻まれる。

 

「はァ・・・マトモに姿を現さない臆病者か・・・なるほど、確かにボスに相応しい」

 

『君のことを私が評価しているから。評価できるほど君のことを知っているから。だからこそ私は君の前に姿を現さないのだよ』

 

くだらない挑発に乗るほど短気というわけでは決してないが、流石にボスのことを言われては座して黙しているわけにはいかない。ボスからの直接の命令だったから、殺すわけにはいかないが腕の一本を奪いたくなるくらいには苛ついた。親衛隊の中で最も血気盛んなスクアーロが、己の幽紋波(スタンド)で攻撃しようとしたその時、機械による変声による男とも女とも付かない、だがどちらかと言えば男性の声に近い機械音声が、スクアーロの動きを寸でのところで止めた。

 

『おいおい何も驚くことじゃあないだろう。別に画面に文字が出たからといって、こんな方法で言葉を交わすのは不便でしかないだろう。会話に遅れをとってしまえば、そこから生じる齟齬で会話がまともに成り立たないだろう。あぁ、あまり好みではないのだが、効率、というものだよ』

 

この場の空気に似合わず、ここにはいない誰かは気の向くままに話を進めていく。その言葉の対象は果たしてステインなのか。ステインにはまるで愚痴のように聞こえた。

 

『はじめまして、ヒーロー殺し。私はパッショーネのボス。早速なのだが、まずは私と『友達』にならないかな?』

 

「・・・何を言っている」

 

『それともこういった方が好みかな?協力関係を結ぼう。メリットデメリットは・・・まぁ言わなくても理解しているか』

 

協力関係=友達。随分と愉快な考え方をしているようだと、鼻で笑う。恐らく相手の目的はステインを手駒とすることだろう。ステインにはそれだけの価値があるという、確固とした自覚がある。

有象無象のヒーロー達に、自分を殺すことは出来ない。自分を殺すのは(ヴィラン)でも贋作でもなく、オールマイト(平和の象徴)ただ一人。彼を除いて有り得ないと、ステインは本気で思っている。

 

確かに、世の中にはオールマイト程ではないとはいえ、強力なヒーロー達は確かに存在する。だが固定観念というのは恐ろしいもので、ステインにとってのヒーローとはただ一人だけなのだ。それは何が起ころうと変えることの出来ない虚構。

 

「断———『断らないよ、君は。ああ、まずは私の話を聞いてくれないかな。無駄話はしないし時間はたっぷりある。逃げようとしても今の君はロクに抵抗できないし、彼らが許さないだろう。それに君もここで死ぬのは本望じゃあないだろう?』———ちっ」

 

確かに、ステインにはやらねばならないことがある。ここで万が一にも激しい抵抗をすれば、自分がどうなるかなど簡単に想像がつく。ステインをここに連れてきたであろう『老化』の個性を持つ明らかな実力者に、彼に追従するほどの者達が三人。武装もない今の状態では、一人として殺すことは出来まい。

ここで無為に散らす命を自分は持っていない。不本意ながら、大人しく話を聞くしかない。

 

『君は、今を変えたいんだろう?』

 

ソレは突き詰めればステインの行動理由であった。ステインは自分の評価にそぐわないヒーローを『粛清』している。オールマイトという完璧なヒーローを元に作り上げられた彼の評価基準はヒーローとして確かに素晴らしいものだ。理想的なものと言える。

だが人間は万人が綺麗な生き物ではない。彼が認めるヒーローになれるものなど、探すだけで半年はかかる。

 

その粛清の果てには、完璧なヒーローだけが残る。オールマイト程ではなくともヒーローを名乗るに相応しい者達が光を掲げている。贋作のない本物の世界。そんな世界を作るのは、ボスの言う通り今を変える行為に他ならない。

 

ヒーローに対する高い意識を持つが故にヒーローに絶望し、辿り着いた姿は真贋の審判者。

 

『君の思想は理解出来るとも。無意味な欲に溺れてヒーローという栄名を汚す者達は数えきれない。増えすぎた彼らに審判を与える者が必要だ。なんだかんだ言って、世間はヒーローという存在に甘い。彼らに対して真に厳しい態度を向けられる者こそが、今の社会に必要だと思うよ』

 

「・・・何が目的だ」

 

『恒久的な安寧』

 

躊躇いなく告げられたその言葉には、ステインのヒーローに対する想い以上の感情が込められていた。

 

『ヒーローも(ヴィラン)も、究極的に考えれば邪魔でしかない。ヒーローは確かに若い者達にとって綺麗な光景に映るだろう。華麗に敵を薙ぎ倒し、手遅れ以外の死者は一人も出さず鮮やかに全てを助け出す。そんな姿を見せられ、聞かせられ続ければ、ヒーローを目指すものが多くなるのは当然のことだろう。まぁ、私には微塵も理解できないんだがね。

だが光輝ある者を汚そうとするのもまた人だ。輝き放つその存在を、自らの手で壊してみたい。単純な理由なんていらない、ただそうしたいから。理由信念理念理屈矜恃願望渇望羨望一切合切関係なし。こういった手合いが最も面倒なんだ。一度定めた目的に突き進むその行動に一切の手加減がない。被害なんて知ったことかと行動する。

まだ泥棒なんかの方が優しいよ。知っているかい?個性出現前と現在に比べると、大きな犯行では無い、コンビニ強盗なんかの今となっては小規模事件として扱われるモノは、出現前の方が頻度が多かったんだ。厄介事しか運び込まなかった個性唯一の良点と言える。

すまない、話を戻すよ。

 

要は、ヒーローに憧れてヒーローを目指す者もいるようにヒーローがいるから犯罪者になる者達がいる。ヒーローも(ヴィラン)も大差はない。私からすれば災厄の種に過ぎない。だってそうだろう?ヒーロー活動をする度に周りに被害が出るんじゃあたまったものじゃない。

まず社会が、ヒーロー達が考えるべきはどうやって(ヴィラン)の出現を防ぐかだ。

そこでヒーロー殺しステイン、君の話だ。

 

私は君になって欲しいんだよ。ヒーローが越えるべき最後の()に。力ある者がヒーローに就くのは大変結構なことだ。事実彼らのお陰で、ある程度は私の平穏は守られている。だが、足りない。圧倒的に統率者足り得る者達が少ない。いや、中には素質ある者もいるのだろうが、このヒーロー飽和社会の中ではその才能は贋作によって埋もれていく。それは、とても悲しいことだ。

そう、私もある意味では君と同じく、今を変えたいんだ。ヒーローという名前があらゆる抑止力になる世界。私が欲しいのはそれだよ』

 

狂気的なまで熱望するその言葉に、ステインは味わったことの無い感情を覚えた。その正体は怯え。

 

「お前は・・・ヒーローを暴力装置に変えるつもりか・・・?!」

 

『それを選ぶのは私じゃあないよ。あくまでも選ぶのはヒーローと民衆。私はただ私の望む形の一例を言っただけに過ぎない。現在の情勢でも、各国が持つ核弾頭は確かに抑止力になってはいるだろう。

だが、そもそも傷付けようとする奴がいなくなればヒーローも必要なくなると、君だって思わないか。ステイン。いいや、赤黒血染』

 

まるで、悪魔の囁きだ。(彼女)の言葉には形容しがたい魔力がある。言葉が心に溶け込んでくる。激しい言葉を投げかけているはずなのに、その言葉はまるで怯えるステインの心を優しく包んでくる。

狂気的だが、正しい答えを持つ彼の言葉はステインの思想に入り込んでくる。

 

「考える・・・時間をくれ」

 

『構わないとも。こんな重大な、ともすれば未来を変えるようなことを早急に答えさせるつもりは無い。ゆっくりと考えるといい。出る時は私の大切な部下のスキューロに着いて行ってくれ。あぁそれと———』

 

思い出したかのように、彼は優しく言葉を投げた。

 

 

 

 

 

 

 

『もし君が私の元に来てくれるなら、その時は君の大好きなオールマイトの秘密と、彼の後継者(・・・)について教えてあげるよ』

 

最後に、誰もが驚く特大の発言を残した。

 

 

 

 

 

 

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『よかったのですか、彼を協力者に選んで』

 

いいわけないよ・・・。正直あんな狂人、相手にするのも嫌だよ。でもしょうがないじゃないか。入学編、USJ編、林間合宿編、爆豪奪還編から見て、使えそうで単体で動いている、唯一まともに過去知ってて付け込めそうなネームドヴィランがアイツしかいねぇんだよ!!

基本的に他の奴らは(ヴィラン)連合で動いているし、荼毘はステインの思想を受け継いで、意味ありげな発言する位しか知らねぇし、渡我被身子に関しては知る度に関わりたくなくなるんだよ!!

・・・侮ってたかもなジャンプワールド。やべぇ奴はとことんやべぇ。

 

「それだけ、今はあまり派手に親衛隊を動かしたくないんだよ」

 

今回のステインに関しては、正直危ない橋を渡ったという自覚はある。

 

というのも今回なぜステインを協力者にしようと思ったのか。それは私達を取り巻く状況にある。端的に言うと、世界各地でパッショーネ探しが始まった。それをスキューロから告げられた時、は?と言ったよちゃんと。ヒーロー達が最近パッショーネを、というか私を探し始めたって。

いや、おかしいことなんて何も無い。振り返れば当然のことだ。世間にはボスは捕まったと公表したけど、現状は捕まっていない。だって私はここにいるから。だけど辿る宛もないはずだ。麻薬はしばらく市場には出回ってないし、関係者は全員処分した。

そこまで捜査が広がっているわけでもなく、探しているのも一部の、掃討に参加していたヒーローだけらしい。それなら別にいいんだ。適当に殺っちまえばいいんだから。戦う前に殺るのは十八番だしね。

 

だけど、相澤消太・・・。あのなんちゃって不死身の男が秘密裏に探っているという報告をスキューロから受けた時は、思わずソファから転げ・・・落ちなかったな。そもそも人をダメにするソファだから転げ落ちれないや・・・。

 

普通にスキューロ達に殺らせればいいんだが、何故か成功する予感が一切しない。こんな予感がしているのに、成功するのかどうかは不明であり、最悪相澤の大進撃で返り討ちにあう可能性もある。

何度も繰り返し繰り返し、飽きるほどに言うが幽波紋(スタンド)は取り返しがつかないのだ。正真正銘命よりも重たい代物を、相澤などの勝てなそうな奴においそれと使って手元から離す訳にはいかない。

 

ならば、答えはヒトォツ!

 

原作キャラをぶつけよう!

この世界で私が知っている原作キャラ達は大まかに二つ。ヒーローか(ヴィラン)か。ヒーローなんて以ての外なわけで、頼るのは(ヴィラン)になるのだが、残念ながら私の原作知識では、そのほとんどが連合に属している。例外はただ一人。参加を約束しておきながら物の見事に返り討ちにあったステインだけ。

 

正直、悩んだ。ステインの立ち位置は確かに(ヴィラン)なのだけれど、その思想はヒーロー万歳オールマイトヒャッハー!汚物ヒーローは消毒じゃあ!である。第一の世紀末患者である。

 

何度も悩み考え直した。使うべきか使わないべきか。ステインが私を殺りに来る可能性もあるのだ。他にも使えるのがいるんじゃないか?と。

でもステインの戦闘能力は悩みをぶち壊した。

圧倒的個性強者の轟と、友情パワー全開の飯田と、主人公を相手にして負けていないのだ。エンデヴァーという介入で潰れたが。個性が機能しなくても、技術は最高クラス。限りなく少ない相澤特攻である。

 

決断してからの準備行動は早かった。遅かれ早かれステインは連合に勧誘を受けてそれを承諾する。早めの方が良いことは確か。

連れてくればあとは簡単。彼の欲しい言葉をかけてあげればいい。ステインは死柄木の今を変えるという点に賛同した。同じように、そしてよりステインの思想に近くすれば後はチョロイチョロい。

 

・・・嘘です、内心ビビりまくってました。普通に怖いよアイツ。目とかギンギンに血走ってるし。鼻もなんか出っ張ってないし。もしかしたらホラー映画に出ても違和感なかったりしてな。

 

結果として、答えをここで聞くことはなかった。承諾するかは五分五分。もしこちらの申し出を断り、連合に加わるのならそれで構わない。その時は多分原作通り負けるだろうし、連合にパッショーネのことがバレようが今更である。既にスポンサーにはバレてるし。

そうなれば、相澤を殺すのはスキューロか・・・スクアーロだな。シーラでも構わないけど、彼女は色々と大雑把だからなぁ・・・。

 

ていうかヒーローなんかにいつまでも構っている時間なんてねぇや。

私は私で、探さなければならないからな。たとえあろうとなかろうと———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———『運命からの贈り物』は、なんとしてもこの手に収めるか、壊さなくてはならない。

 

 

 

 

 

 

 

『それとボス、オールマイトの秘密、後継者というのは?よろしければ我々にも教えて欲しいのですが』

 

「ん?ああ、構わない。オールマイトが元々は無個性で、別のヒーローから個性を受け継いだということと、今年の雄英の新入生に、次代のオールマイトの個性を受け継ぐ後継者がいること。そして個性を渡したオールマイトは日々弱体化が進んでいることかな?」

 

『・・・っ!?どこでそんな情報を、なんてことは聞きません。流石はボスです』

 

 

 

 

 

 

 

「まさか・・・あのオールマイトが弱体化していたとはな・・・」

 

「ええ。そしてその個性が受け継がれるものであり、今代の後継者が雄英にいるとは。ですがこれで合点がいきました。オールマイトは後継者を育てるために雄英高校で教師となった」

 

最後のボスとティッツァーノの会話を聞いていたスクアーロが、驚愕を露にしながら呟く。ティッツァーノは貰った情報をもとに、自らの中でパズルのピースをはめるように補填していく。

 

「ボスにかかればスリーサイズまで筒抜けになったりしてな」

 

「それはそれで恐ろしいですが、ボスならばとは思ってしまいますよ。常識で捉えることが決して出来ない人。わたしたちの誰一人、ボスを測ることが出来ないなんて、今に始まったことではない。何であれ、わたし達はボスの命令に従っていればいい」




RTA作品面白強すぎる。

あと最近個人的な好みに当て嵌る作品が少し増えて気分が上がる。

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