いつの間にかボスになってた。組織は滅んだけど   作:コズミック変質者

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個性は肉体と同じく成長する。そして成長の果てに精神の揺さぶりを超えて覚醒を得た個性は、かつてとは計り知れないほど強力になる。

なんて便利な設定だ・・・。


魂燃える雄英体育祭の時間だア!!私は出ないけど

『宣誓!我々生徒一同は———!!』

 

パッショーネの親衛隊は基本的に暇である。巨大組織としての体を保っていた頃は、毎日のように各地を奔走していたのが嘘のように。だが彼らが動かなくても良いということは、=ボスの身の安全が最低限は保証されているということ。

かといって、彼らが無闇矢鱈に動き回っていいかと聞かれればNoである。そういった行動に関する制限はあまりないのだが、出来る限りは最低限に留めておいた方がいいのは自明の理。鮫と舌は二人でよく出かけているが。

 

「へぇ、この主席の子がボスのお気に入りなのか。見た感じ普通に弱そうだけどな。まだNo.2の息子の方が強そうだぜ」

 

「個性自体は強力ではないですが、サポート兵器により引き上げられた能力は恐ろしいものですよ。音の放出で人体を軽く弾けさせる。ヒーロー候補とはいえ、子供に持たせるものではないと思いますけどね」

 

「ボスが渡したアレ、確かスキューロの奴が作ったんだって?それも三日で。ボスも規格外だがスキューロも大概だぜ」

 

幽波紋(スタンド)を七枚も同時に入れられるだけで充分です。まぁこのような事が出来るからこそ、ボスも彼に全幅の信頼を置けるんでしょうが」

 

むしろこの程度出来なくてどうすると、スキューロならば軽く言ってしまいそうだが。待機中の鮫と舌は戻ってきたシーラが顔を顰めるほど、友情の枠を確実に超えたイチャつきを繰り広げていた!

 

 

 

 

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わぁーわぁー!と煩い歓声が会場を包み込む。ドーム内に溢れかえるほどの人の群れ。ギラギラと肌を焦がす太陽の熱だけではなく、異常な人口密度が更に暑さを増幅させて苦しめてくる。灼熱地獄と見紛う程の熱気は、少しは改善されたとはいえ半年程前まで引きこもりだった私にはキツい。ドームの構造的に、影のある場所がない。あったとしても時間の経過と共に影は移動して日向になる。

 

私フェリシータは、今現在雄英高校が行う日本でのオリンピックと言われる雄英体育祭会場に来ております。去年とは違い幽波紋(スタンド)ではなく本体で。なんか前にもこんなくだりなかったか?

 

違うんだ・・・最初は耳郎ちゃんに誘われていたんだ・・・。電話でめちゃくちゃ艶のある声で言ってくるんだよ?いや国営テレビで放送するんだし、入場にはチケットがいるからと言ってやんわり断ろうとしたのだが・・・スキューロが「チケットならある」と言って「え、あるの?」と反射的に返したのを聞かれていたらしく、強く誘われて断りきれなかった。

全部私が悪いですね。

 

いや、バカ正直にギャングのボスがヒーローの跋扈する場所に行けるわけないじゃん何言ってんのワロスなんて言ってみろ。頭おかしい奴だと思われるでしょうが。

 

結局流されるままに時間が経って、この窮屈な場所に押し込められてます。特等席というわけではないけど結構いい感じの席ということで、少し位は気分を変えようと思ったが・・・ヒーロー多すぎ・・・。スカウトのためとかでなるべく近い席で見たいんだろうけど・・・お前ら仕事はどうした?

 

久しぶりにスキューロに負の感情を抱いたぞ。こんなことなら普通席で良かった・・・。周りとかめちゃくちゃ熱心なヒーローファンばっかりなのに一人だけギャングのボス(笑)。場違いにも程がある。

こうなったらさっさと終わってくれることを祈るしかない。

 

そういえばどうしてスキューロはチケットなんか持っていたのだろうか。ヒーローを見ることが趣味?ははは、だったら笑えねぇや・・・。

 

 

 

 

 

 

 

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オリンピックの代わりとも言われるほど、栄えある雄英体育祭での選手宣誓を行った耳郎は未だ競技が始まっていないのに疲れが見えていた。

後ろ姿から滲み出る程の哀愁はクラスメイトに感じさせないようにしても無駄である。何故なら彼らは既に耳郎の事を心から可哀想だと思っているからだ。

 

始まりはヒーロー科B組からだった。物間という、非常に人の神経を逆撫でするのが得意な少年が、A組全員に喧嘩を吹っ掛けた。A組は何かと目立つ対象であるのが通例だが、今年は(ヴィラン)の襲撃を乗り切ったということがあり、例年以上に絡んできた。主に物間が。

 

そのB組の流れに乗って、普通科の生徒達も続々参戦。普通科の中にはヒーロー科を受験したが、落ちたことによって滑り止めとして普通科に入った生徒もいる。未だ若い彼らからすれば、ヒーロー科は妬みの対象に他ならない。高校生といえども数ヶ月前までは中学生だった身。そういった感情を抱くことは普通である。

 

こうしてB組(物間)が火を付けて普通科の生徒が少しずつ油を注いでいく中、A組は最悪の状況の訪れを感じた。

 

 

火中へのニトロ(爆豪)の投下である。

 

 

人一倍どころか数十数百倍プライドが高く、己を一番、周りは石ころだと豪語する彼。そんな彼は常日頃から耳郎に次ぐ二番として扱われている。そのことを日々限界スレスレで我慢している彼が、単純な位置付けでは格下の彼らに好き放題言われる状況を我慢できるはずがない。怒りはすぐに爆発した。そしてそれを狙ったかのようにバカ(物間)が今度は核を落とそうとした所で、同じクラスの拳藤一佳が強制的に止めに入った。

だがそんなことで爆豪が止まるはずがない。噴火するストレスを抑えようと切島が必死に宥めていたが当然のごとく不可能である。

 

なんとか理性が残っていたのか、それとも本能が一線を越えるのを止めたのか。個性の不正使用などの問題を起こすことはなく、騒ぎすぎだと咎められるだけに終わったが、爆豪の気が収まるはずがない。

文句すら言わせないほど完膚無きまでに雄英体育祭で一位を取ろうと躍起になる。具体的には目を血走らせながら耳郎と轟を交互に睨んで。

 

非常に心労が溜まる。耳郎は轟のような性格はしていないため、爆豪の熱意を諸に受けていた。選手宣誓の時でさえも、背中にそこはオレの場所だ、と言う殺意混じりのありがたい視線を受け取っていた。

 

「選手宣誓ってこんなに疲れるものだっけ・・・?」

 

第一種目のスタート地点に立つ一年生達。みなこれからの競技のためにやる気満々といった様子だが、彼らとは反対に耳郎響香は疲れきっていた。こんな時に爆豪のような精神的強さや轟のように物事をいなす心が欲しい。耳郎の疲れは尤もである。何せ全国放送されているのだ。そう思うだけで胃がキリキリしてくる。

 

「まぁ爆豪の視線が凄かったからな」

 

「背中から今にも飛び掛りそうな位血走った目してたぜ」

 

入試首席のみが許される雄英体育祭での選手宣誓。それは爆豪にとっては後一歩だった場所であり、半年ほど前ならば自分が行っていて当然だと思っていたものであった。だが残念ながら爆豪は首席ではない。一つ後ろの次席である。これがもう少し離れていれば少しはマシだったかもしれないが、たった一つ違いだと我慢できるものでは無い。

射殺さんばかりの眼光は、耳郎も背中から感じとっていたし、それが爆豪のものだと理解するまでに時間はかからなかった。というか時折グルル、といった飢えた獣の声が聞こえていたような気もした。

 

「まぁでもよ、耳郎が選手宣誓で良かったと思うぜ。だって、なぁ?」

 

「まぁ確かにな。爆豪がしていればどうなっていたことか」

 

同意を求める上鳴に、障子もしんみりと頷く。まず間違いなく余計なことを一言は言う。そして煽りに煽る。最悪カメラの前で中指を立てかねない。ヒーロー候補が衆人環視どころか全世界の人達が見ている中で中指を立てるなど、放送事故レベルである。きっと翌日にはニュースにでもなるだろう。

 

 

『第一種目は障害物競走!!』

 

 

ルール説明は勿論ながら事前に何度もされている。個性の使用を許可されている雄英体育祭。基本的には使用不可の個性を使うということで、安全性の為にもルール確認と共に。

第一種目の障害物競走は個性の使用はありだが、危険のある他選手の妨害は禁止。無論、怪我などさせたら即失格である。

 

誰もがスタートラインギリギリに立って構える。ここにいる者達は推薦入学を除き、入試の実技試験を受けている。よーいドンで始まらないことを知っている。そして推薦入学者達も、入学したてのクラスメイトが実技でどれだけすごい活躍をしたかなどを話し合っているのを、何度も耳に入れている。

目先の問題は少し先にあるゲート。約160人がいっせいに入るには、かなり小さいものだ。単純に、前に立つものほど有利になる。

 

『スタート!!』

 

18禁ヒーローミッドナイト(高校教師に18禁ヒーローの採用はいかがなものかと思うが)の装備でもある鞭が振り下ろされるのを合図に、生徒達が一斉に走り出す。すぐにゲートは一杯になり、誰もが早く早くと抜け出そうとするが、ゲートを出た生徒たちがいっせいに転び出す。

 

「悪ぃな」

 

彼らの行動を留めたのは氷によって氷結した道であり、その氷が誰から出たのかなどは言うまでもない。氷の道を作り出した轟が、滑るように走っていく。考えられる限りでは最高の滑り出しだろう。もっとも彼らがいなければの話ではあるが。

 

「待ちやがれぇぇええええ!!」

 

「その程度は想定内だから・・・!・・・スケートやったことあって良かった」

 

A組の面々が他の誰よりも先に轟の背中を追い始めた。爆豪は開始と同時に連続で爆破を繰り返して飛翔してゲートを上から潜り抜け、切島は高い身体能力をふんだんに使って飛び越え、耳郎は優雅に滑りながら。

 

「だろうな」

 

轟は決して彼らを低く見ていない。寧ろ高く評価している。故に、轟にとっても彼らの動きは想定内。寧ろB組の生徒の動き出しが予想よりも遥かにいい。もしかしたら本当に警戒するのは彼らなのかもしれないと思案する轟を影が覆った。

 

「・・・ッ、おせぇ」

 

影は轟の足より創造された氷によって分断される。宙を舞う影は、鉄板の破片や中身であるネジやケーブルを吐き出しながら地面に落ちる。その影の正体はロボット。それも実技試験において最も難解だった壁であり、緑谷が殴り飛ばし、耳郎が出てくる前に破壊した0P(ヴィラン)

実技試験で一万もの人間を振るい落とさんと猛威を奮ったソレは、まるで紙屑のように引き裂かれて機能を停止した。

 

これこそ一つ目の障害。0Pのロボット(ヴィラン)の群れ。通称ロボ・インフェルノ。

 

先頭を独走する轟を妨害しようとロボットが動くが、轟の繰り出す氷塊による圧倒的な質量がそれらを押し潰す。0P(ヴィラン)は図体が大きいだけの木偶の坊である。今の彼らであれば倒すことも避けることも容易な相手だ。更には中身は思ったほど頑丈ではない。それなりの攻撃を与えれば壊すことは容易い。

 

実は試験でも使われていたこのロボットは、少し工夫をすれば受験生達の半数は倒すことが可能であったのだが、その時はあまりの大きさに腰を抜かしてしまったり、倒さなくていい(倒せない)敵だった、という心理が彼らの交戦意欲を挫いた。

だが実際に倒すべき敵としてみれば、面白いほどに弱い。単調な行動に軽い装甲。言わばヌルゲーである。

 

故に、彼らがこの程度で足を止めることは無い。

 

ロボットに対して致命的な電気で攻撃する上鳴は言わずもがな。三次元的移動で立ち塞がる全てを爆破する爆豪。強力な影の個性とのコンビネーションで確実に躱していく常闇。戦うつもりが更々ない耳郎は、イヤホンジャックをロボットに刺して跳び、まるでターザンのような動きをしている。

他のA組の面々も、思い思いの方法で乗り越えていく。試練として見るならば、彼らにとってはもうこの程度では壁にはならない。

 

(問題はB組。ちょっと舐めすぎてたかも。多分轟もそう思ってる)

 

ロボ・インフェルノを一度も攻撃することなく軽やかに乗り越えた耳郎は、走りながら少し前を走る生徒に目を向ける。頭から茨が生えた、茨の個性を持つ塩崎茨というB組の生徒。他にも何人かが耳郎の前にいたり、追従してきている。

これは耳郎にとっては予想外だった。A組という花形に目を奪われていたが故の失態。考えが足りなさ過ぎた。

 

A組という狭い箱庭は、全員が全員ではないが優秀過ぎたのだ。No.2の息子に、業界最多数のサイドキックを持つヒーローを兄に持つヒーロー一族の弟。暴力的だが圧倒的才能マン。アホだけど強個性。そしてオールマイトに匹敵するパワー。

例を挙げれば、単純故に強力。強大な力に対して圧倒的な力で押し潰すことの出来る、正しく生まれながらの強者は、必然的に彼女達の他へ対する脅威レベルを引き上げていた。

 

「自業自得だけどさ・・・」

 

心のどこかで低く見ていたのは確かだ。少し大人びていようがやはり子供なのだ、耳郎も。

 

 

 

 

 

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レベル高ぇなおい。

観客席から見てて普通にそう思うわ。特にヒーロー科A組とB組。A組知ってたけど、B組は思ったよりレベル高いぞ。確かにA組に負けず劣らずの優秀な面子が何人かいるのは知ってたけど、ここまでだったか?緑谷轟爆豪から下、何人か続いてB組だし。もっと圧倒的だと思ってたんだけどな、A組。

 

ていうか学校側も学校側だろ。なんだよ、最後の地雷って。怪我しない程度の火薬とか、最後の緑谷の起こした奇跡的な追い抜き、普通なら明らかに四肢欠損じゃすまないぞ。だけど観客達も大盛り上がり。私はドン引きだけどな。

あんな考え、思いつく方がどうかしてる。最悪死ぬかもしれないというのに、躊躇わずにやってたぞ。

 

耳郎ちゃんは35位。いやぁ、良かった良かった。途中の追い抜きでちょっとおっ?ってなったけど、無事に突破してくれてよかったよ。彼女が落ちたら私は即帰らなきゃだったからさ。いや、今からでも帰りたいんだけども。あれ、私は何を言ってるんだ?

 

第二種目までのインターバル。売り子にポップコーンを頼む。私の席には20を超えるポップコーンの空ゴミが。なんだかんだ言って楽しんでいるのかもしれない。傍から見ればずっと無表情でポップコーンを口に放り込んでただけなんだけど。

 

「隣、失礼させてもらう」

 

「あ、どうぞ」

 

隣に座ったのはスキューロと同じ位かそれ以上の身長を持つ大男。重々しい声には聞くだけで、こいつなんか強そうって思える声してる。

暑っついな。まだ五月だろ。照り輝く太陽も鬱陶しいが人の多さか?一気に気温が上がった気がする。

 

暑いなら一枚脱ごうか、と思うがきっと目立つ。脱いだら間違いなく目立ってしまう。あぁ、意識したらまた暑くなってきた。なんという悪循環だ。第三種目まで持つか・・・私の身体・・・。

 

 

 

 

 

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第一種目の熱が冷めない観客席。その熱は雄英高校の体育祭の難易度、そしてそれを踏破してみせた生徒達が生み出したものだ。

 

人間は圧倒的な強者の蹂躙を好み、泥臭い弱者の逆転を好む。轟焦凍と爆豪勝己による、強者同士の圧倒的な争い。勝ち組と称される個性を持ち、才気溢れる彼等によるトップ争いはそれは見物だったことだろう。

初めから首位を独走する轟をお世辞にも口が良いとは言えない爆豪が、それでも常にその後ろを追従し、果てには超えんと加速した。

 

多大な番狂わせを起こしたのが緑谷出久(弱者)だ。個性を一度も使わず、一つ目の障害のロボットの鉄板を使ってロボットの波を抜け、二つ目の障害である綱渡りは鉄板を背中に背負いながら、綱に巻き付いて少しずつ前進していく。

ここまでの成績なら、間違いなく下位だったはずだ。最後の最後まで個性を使用する素振りを全く見せなかった。

 

だが緑谷出久は逆転した。轟と爆豪(強者)を差し置いて一位を掴み取った。最後の障害である地雷の草原。緑谷は誰かが掘り出した地雷を自分で掘った穴に詰め、その上から思い切り自分を乗せた鉄板を叩きつけたのだ。

起こったのは大爆発。それもトップを争っていた二人の気を引くほどのもの。いくら学校側が用意した、怪我をしない地雷とはいえ、それは使用方を正しく守った場合の話だ。つまり、一度に大量に踏むことは全く想定されていないのである。

 

地雷の脅威は、広く知れ渡っている。時折発見される不発弾。これの処理のために1km四方を封鎖するなど当たり前。映画などでも、地雷を踏んだ男が奇跡の生還などといった作品があるが、そういった作品では例外なく、地雷で誰かが死んでいる。

銃火器ほどでなくとも爆弾、それも手榴弾などのように咄嗟には逃げられない兵器なのだ。いくら安全とはいえ、そんなものを集めて軽々しく爆破させるなど、狂気の沙汰としか思えない。

 

この体育祭はヒーロー科にとっては、ヒーロー事務所のインターンに誘われるかどうかの最初の登竜門だと聞く。スキューロにはよく分からないが、それほど将来に影響するものなのだろう。

 

だとしても、

 

「狂っている。ボスが生まれながらのカリスマなら、アレは生まれながらの狂気だ」

 

理性では大丈夫だと分かっていても、生存本能による一線というものが存在する。決して進んでは行けないラインというものがあるのだ。地雷と聞いて咄嗟に足が止まるように、銃口を向けられれば思考が停止するように、必ず生物として当然備わっている機能が体を引き止める。

だが緑谷出久には、まるでそれが感じられない。躊躇いなく行われた凶行には、流石のスキューロも目を見開いた。

 

「そうか・・・お前は・・・」

 

緑谷出久。身長166cm血液型O型右利き右投げ日本国静岡県折寺中学出身現在雄英高校一年A組所属父親は単身赴任中で母親と二人暮らし通学には電車を利用去年までは無個性だったがある時期に市役所に個性届が出された個性の内容は身体増強系で一度の使用で肉体が自壊する程の増強約一年前のヘドロヴィラン事件というオールマイトが解決した事件に幼馴染である爆豪勝己を助けようと行動。

特筆すべきは、周りの子ども達よりも一層強いヒーロー願望を持っていたということ。

 

目立った経歴はそれだけだ。人が死ぬような大きな事件に巻き込まれた訳でも、親に見捨てられるような暗い過去があるという訳でもない、ごく普通の少年。

ボスやスキューロとは似ても似つかない普通の子ども。寧ろスキューロから見れば、普通に人生を生きていくのであればこれ以上ないほど恵まれているだろう。

湧き上がるのは今まで味わったことの無い感情。誰とも共有されることなく、味わうことなく心の底に沈んでいた感情。それの名は———

 

 

「今度は私の方が早かったな。いや、お前は流石に遅すぎる」

 

スキューロの思考を現実に戻したのは観客席の角に座っている蝙蝠傘の男、ヴラディミール・コカキだった。隣にはロシア帽のようなものを被っている大柄な男がいる。

 

「お前から席の変更を申し出ておきながら、ここまで遅れるとはな。見ろ、既に二種目目に入ろうとしている」

 

「相変わらず、あの人がいなければ取り繕わないんだな」

 

「当然だ。私はあの人には敬意を持っている。恐れを持っている。なぜならあの人は我々とは違い、生まれながらの帝王だからだ。そしてこんな老人に似つかわしくない大役を与えてくださった。お前とは付き従った年季が違う」

 

コカキはパッショーネの前代、つまりはボスの父親が支配していた代からの強者であり、前代においてボスと父親に近しかった者達の中で唯一の生き残りである。そんな彼に与えられていた役は幼きボスの世話係と護衛役。パッショーネという組織の人間で、最も長くボスを見てきたのはコカキで間違いないだろう。

 

自分という存在をひた隠しにするボスが、自分をよく知るコカキを生かしている時点で、その信頼度は計り知れない。与えられた役目はスキューロとは違い裏方だが、長年に渡る裏社会への影響力はスキューロと同等以上。

 

「しかし唐突な席変更。・・・ふむ、どうやらあの人が見に来ているらしいな。後継者か、もしくはご友人でも見に来たのだろう」

 

「何故それを・・・」

 

「後継者については両者を見ていれば分かる。最も注目がいく人物なのだぞ?あらゆる動向に注意を向けていれば自ずと答えは見えてくる。ご友人は・・・勘だな」

 

ステインの勧誘にボスが発した最大の衝撃であったオールマイトの弱体化とその後継者。弱体化はともかくとして後継者など誰が予想出来ようか。

 

「なぁ、ボスがいるというなら、挨拶にでも行った方がいいのか?」

 

それまで黙り込んでいたロシア帽の男がここに来てようやく声を上げる。その声には不思議と退廃的な匂いが含まれていた。

 

「いや、まだやめておけ。お前はまだ信頼を勝ち取っていない。今のお前をあの人に会わせれば、私はお前を処刑して贖罪のために私も自死しなければならない。お前はようやく見つけた次なのだ。無駄にはしたくない」

 

「了解した」

 

男———マッシモ・ヴォルペはパッショーネの財産の半数以上を占める麻薬チームのトップでもある。彼らの関係を見れば実質的にはコカキが彼らの指揮を執っているが、コカキはあくまで麻薬チームの相談役というスタンスであった。なぜならパッショーネが売り捌く麻薬は、現時点ではヴォルペしか作れないのだから。

 

「さて、前座は終わりだ。さぁ聞かせて貰おう。ボスからの伝言を」

 

コカキの目が鋭くなるのと同じく、スキューロは懐から一枚のDISCを取りだした。




スケート中の(他称)カリスマボス。

(ホワイトスネイクぅううううう!!!決して手を離すなよ!!!油断なく私を支えるのだ!!!転ぶものかよ決してぇぇええええ!!!え、エピタフの未来がア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!)
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