いつの間にかボスになってた。組織は滅んだけど   作:コズミック変質者

23 / 31
個性特異点、覚醒、マスターピース。
どれもこれもが素晴らしい。どこまで何をしようとも、この二文字を応用することで全てを正当化してしまうなんて(考える気なし)。
素の耳郎ちゃんの改造を今回から出していきます。どこまで弄っても理由を考えなくていいなんて、なんて素晴らしいんだ・・・。


確信していた最悪の出現を見た。勝つのは私だけど

隣のエンデヴァー超不機嫌ワロタ。

なんてふざけたことを言っていられるかよ。目が真っ赤に充血し始めてるし心なしか炎の勢いが強くなってないか?感情制御ちゃんとしろよ。

いや、そりゃあ大嫌い?なオールマイトに陽気に話しかけられたのが気に食わないのは分かるけど。

ほら、周りの人も暑そうに手を団扇代わりにしてるぞ。

 

私か?ふっ暑さなどこれっぽっちも感じないね。この全身に透き通る清涼感。んッん〜実にいい気分だ。快適にエアコンの効いた部屋にいるのと変わらないこの感じ、最っ高だねぇ。

 

エンデヴァー、お前の身体から発せられる炎の熱への対策など既に済ませてあるのだ!『ホワイトスネイク』がな!適当な時間に席を外した時、人目につかないところでDISCを挿し込んだのだよ。肉体温度を適温に感じるようにな。急激な温度変化で身体が少し怠くなったけど想定内である。さっきまでのぜーはー言ってた私とは違うのだ。

 

 

『一回戦!!成績の割に何だその顔!ヒーロー科緑谷出久!!

対!ごめんまだ目立つ活躍なし!だが唯一の普通科心操人使!!』

 

 

紹介と共にコンクリートで作られた舞台の上に登場する主人公と哀れな敗者。個性は強いし確実に勝つことが出来るのにね。あんなクソチートが相手なせいで可哀想な心操君。ていうか緑谷、こっち側の控え室にいたのかよ。

 

おっ、もう心操の挑発始まってるじゃん。流石、口がはやいでございますね。言ってる内容はよく覚えてないけど、確かかなりの正論をぶちまけてたはず。まぁ私からしてみればチャンスをドブに捨てるなんてアホの極みみたいなものだよな。雄英に入れたからって余裕になってるのかねぇ。

 

うはっ、開幕直後からかかってやがる。尾白?が事前に対策を教えてくれたって言うのに。冷静に頭を働かせるくせしてなんの仕掛けもない馬鹿パワーキャラなのに、そんなにカッとなるなよ。心操が言っていることは限りなく正論なのにな。

 

ていうか心操も心操だよ。歩かせんなよ走らせろよ。もしくは降参するって宣言させればいいのに。やはり彼は典型的な運命を辿る敗者ですね。哀れ極まりない。いや、何気に親近感が湧いてくるかも。私も一歩でも間違えれば心操と同じ轍を踏むかもしれないしなぁ・・・。まっ、そうならない為にスキューロやら親衛隊がいる訳だし。

 

よし、そこだイケ!そのまま負けちまえ!負けるって分かってても心操を応援してしまう!もうグラントリノの目に入らないくらいの惨敗を・・・いや継承者ならどの道目に付くか。ええい、だが知ったことか!負けろ負けろ負けてしまえ!!緑谷出久が何者かに勝つことその物が癇に障るんだ!!

 

別に緑谷が負けることによって私に何か影響があるわけじゃあないのだが、嫌いな奴の不幸というのはいい味なのだ!今宵のワインの相方に貴様の敗北を添えさせてくれ!!

 

よし!!あと一っ・・・・・

 

 

 

 

 

————————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは如何なる恐怖にも屈しない勇気である。

 

 

それは弱者を思いやる優しさである。

 

 

それは如何なる困難も跳ねのける精神力である。

 

 

それは矜持と責任に殉じようとする覚悟である。

 

 

それは自身の宿命をありのままに受け入れる潔さである。

 

 

それは如何なる悪徳も批判する誇り高い意志である。

 

 

 

人はそれを、黄金の精神と呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

————————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

 

私は、それを見た。

 

視点が変わっていることなど気にならない。緑谷出久が私の正面にいることなど全く以って気にならなかった。常時の思考ならば焦燥でこの瞬間にもぶっ倒れていただろう。もしくは冷静な判断力を失って問答無用で殺しに行くか。

 

何故自分がここにいるのかも、何故緑谷出久が私のことを微塵も気にしていないかなど、それら全てがどうでもよかった。諸々の重大なこと、考えるべきことを些事と断定する程に、私は目を引かれていた。

 

私の目がいったのはたった一つ。緑谷出久の胸で鬱陶しいほどに輝きを放つ黄金の光、その中心と言うべきか奥と言うべきか。深淵などを軽く通り越すであろうその場所に、否、そこに、目の前に、それは存在していたのだ。

 

私がずっと探してきたもの。たった一抹の可能性すら拭えず、不安と共にいつか私の前に現れるという恐怖の一つ。好ましくはないが運命を強く信じる私にとって、運命を辿ってきたかのようにそこにある。あらゆる行動、あらゆる思想、何もかもが敷かれたレールの上を走っていることは、私はずっと考えていた。

私達は誰しもが、運命のレールを辿っている。勝つ者負ける者、得る者失う者、それら全ては定められた運命によって決められる。

 

だが私だけは、『キング・クリムゾン(深紅の王)』を保有する私だけは違う。完全に逃げられる訳では無いが、私ならばあらゆる運命を、非道を悲劇を回避することが出来る。運命に縛られないで生きることが出来る。

 

だが運命は決して逃がさない。運命を掴む者以外、必ず運命は引き摺りこんでくる。悪が正義に負けるように、敵が主人公にどう抗おうとも勝てないように。

 

だからずっと探していたのだ、運命の中心点を。運命が収束する場所を。世界各地の遺跡を掘り起こさせ、美術館を探し回らせ、コレクターを調べさせた。時が来るまで決して姿を見せぬと言うかのように、尻尾すら掴めなかった。そのまま存在しないという結果に辿り着ければ良かった。見つからないからないのだという、楽観的な思考が出来ればどれだけ良かった事か。

 

だがそれは出来ない。先も言ったが、私は決して好きではないが運命を信じている。幽波紋(スタンド)使いが幽波紋(スタンド)使いに惹かれ合うように、吐き気を催す邪悪が黄金の精神とぶつかり合うように。

この幽波紋(スタンド)を使う私には、必ずそれが現れるのだと確信していた。

 

たとえそれが壊れかけ、半分しか残っていなかったとしても、在ることには変わりない。運命を掴み取る為の唯一にして絶対の一手。私はそれがどうしようもなく怖く、恐ろしい。

 

やりたくなんてない。泣いて今すぐにでも国外へ逃げ出したい。また教会に引きこもっていたい。あぁだけど分かるのだ。無駄(・・)なのだと。決して逃げることは出来ない。死神のようにそれはやってくる。私が死ぬまで、私を引き摺り込むまで。何度でも何度でも、どこへ行こうともやってくるだろう。

ましてやそれが、緑谷出久(主人公)の元にあるのだ。

 

やらなければならない。やらなければきっと殺られるか、私にとって限りなく最悪なことが起こる。成功するビジョンなんて1mmも見えないし、逆にこちらが全滅する未来しか見えない。あらゆる不条理あらゆる災難あらゆる絶望がこちらを襲ってくるのだろう。

 

あぁ、ダメだもう諦めよう。諦めて部屋の隅で縮こまってこっちに来ないことを祈ろう。ただでさえAFOとかいう最悪と鉢合わせているんだ。これ以上悪いことなど抱えたくない。それでも何時まで逃げ切れるだろうな。何時まで平穏を手にしていられるだろうな。何をして追われるのだろう、何をして敵として現れるのだろう、何処まで逃げ切れるのだろう。

 

あるのは恐怖と絶望のみ。明日など来ない。希望は潰えた。未来は廃れた。力など無意味。唯一の力である幽波紋(スタンド)などゴミの様に払われる。理不尽の人型に全てを蹂躙され尽くされる。確定された未来である。それこそが定められた運命である。何処までも追ってくる。逃れることなど出来はしない。

 

震えて眠れ。否眠る時間など与えない。震える余力など必要ない。ただ絶望しろ、死ね。

それこそが運命の与えし結果である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巫山戯るな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが既に所有されているから諦めろと?敵が主人公だから諦めろと?ああ確かに絶望的だ。涙を流して嗚咽を上げて神に祈り救いを求めたい気分になるのは当然だろう。

何を弱気になっていたんだよ。バカじゃないのか私。最近の行動を振り返ると自分のことをちょっと頭のネジ緩んできたかなぁ?って思えていたが、全く以てその通りじゃないか。情けない情けない。何時までもこんなくだらない事で悩んでいるんだ。全く成長してないじゃあないか。

 

最初から、生まれたその日から考えていたことじゃないか。

 

常に人生における落とし穴を探し、無窮の平穏を過ごすのが私の人生の基本的な行動であり絶対のルール。それを阻む者は誰であろうと容赦しないと昔から考えていたじゃあないか。

なら一度や二度どころか百や二百、それどころか万を超える程にその可能性を考えなかったはずがないだろうが。

 

ああ確かに。想定していたのと実際に直面するのであれば心にかかる負荷も違う。聞いた瞬間に心臓が停止してしまいそうだ。想定していた時も必ず勝てるなんて思わなかった。

だが、まだマシだろう?

 

想定の内にはもっと最悪な事態があったはずだ。憑依緑谷強化緑谷、クラスになんか増えてるオリ主に(ヴィラン)連合に参加してる系オリ主。ほら、考えてみればバカみたいに出てくるぞ。

だから、なぁ。それに比べたらまだ可愛いとは思わないか、この程度。

 

むしろ相手がジョースター家だと思えばどうだろうか。緑谷出久よりもほんの少しだけ年上、東方仗助に関しては同い年であるというのに完成された肉体、完成された精神、なおも成長を続ける幽波紋(スタンド)がある。

彼らの肉体はたとえ瀕死の重傷を負っても敵を倒すまで止まらず、その気高き精神は周りの者をたとえ敵であろうと引き寄せる。昨日の敵は今日の友。これを地で行く相手がどれほど恐ろしいことか。

 

それに対して緑谷出久はやりやすい。ヒーローになりたいと言いながら一年前まで何もしてこなかった肉体は未だハリボテであり完成は見えない。未だ幼い精神はショッキングな光景に対しても怒りを燃やして動くことは出来ない。いや、憤怒で動けるかもしれないが。だがその能力はたとえ先が読めなかったとしても、最初にして本命が十全に使えない。

 

超パワー、確かに恐ろしい。近づけば風圧だけで殺られてしまう。だがパワーだけで戦うのが幽波紋(スタンド)ではない。他者に見えないというアドバンテージがある以上、たとえ使いづらい能力でも土俵に上がれば戦える。

 

 

そして最悪、最も下衆な手段を取ればいい。

 

 

簡単とはいかないが、簡単でないだけだ。あらゆる手段の悉くが踏み潰される訳では無い。あぁー心配して損した。いや、ちゃんと今も心配はしてるんだけどね。脅威認定は依然としてオールマイトやAFOの方が高い。だってほら、完成されたオールマイトが所有してみろよ。ゲロ吐くくらい怖いぜ、きっと。

 

はっはー!今夜はヤケ酒だぁ!吐くまで飲んでやろうじゃないかああああああああああああ———!!

 

 

 

 

 

————————————————————————————————

 

 

 

 

 

「おい、大丈夫かお前!?くっ、まさか脱水症状か!?おいそこのヒーロー、担架を持ってきてくれ!お前はリカバリーガールに連絡を取れ!」

 

どこかの会場どこかの席で突然倒れた女性に、興奮のあまり自分の炎の威力が強すぎたのかもしれないと、非常に申し訳ない気持ちになった強面大男のNo.2ヒーローがいた。

 

 

 

 

————————————————————————————————

 

 

 

 

『次が一回戦の折り返しの試合だあああ!!何でも溶かしちまう凶悪な酸の使い手ェ!芦戸三奈VS!入試の成績は文句なしの首席!俺と個性が少し被ってる耳郎響香!』

 

何度も補強されたコンクリートで作られたフィールドにて、楽しそうにこちらを見てくる芦戸に応えるように、こちらも楽しく見る。何度か授業の演習で組んだことはある。だが大抵はペア同士での演習だったり、ウチはサポートアイテムがありだった。

これから始まるのは一対一のタイマン。武器もアイテムも遮蔽物も何一つ存在しない、正真正銘のガチバトル。

 

勿論緊張している。これまでの二回の競技は戦う必要が無いのと、他者のサポートがあった。それ故にマトモに個性を使わなくても良かった。だがこの競技だけは、ほんの少しの油断もできない。切り札の出し惜しみはするが、幾つも手札を隠してはおけない。いや、『ディーヴァ』のない状況での手札はそこまでは多くないのだけれど。

 

『スタート!!』

 

「覚悟してね、耳郎ちゃん!」

 

開始と共に芦戸の手が振り払われる。既に分泌されていた酸が撒き散らされる。当然そんなことは計算内。寧ろ初手でこうして来なければおかしい。

 

正直、今のウチと芦戸の相性はかなり悪い。いや、そもそも『ディーヴァ』のない状況で相性がいい相手は多くない。身体能力では障子に負け、純粋な火力では爆豪に負け、手数の多さでは轟に負ける。一撃の強力さもそうだ。芦戸の酸は何もかもを溶かせる。素で受ければ痛みでマトモに動けなくなる。それに対してウチがマトモに出来るのはイヤホンジャックを振り回しての鞭のような打撃。そして肉体に音を直接打ち込む位。

 

後ろに思い切り跳んで酸を避ける。芦戸も直接人間に向けて振るうのは少し躊躇いがあるのか、振りまく酸は首より下を確実に狙っている。そして恐らくは酸の濃度も下げているだろう。

手加減をされているとは思わない。そうするのは当然である。

 

幾ら今の人間が個性を得る前よりも些か頑強になったとはいえ、人間は人間でしかない。芦戸の酸の前では意味が無い。本能的な他者を害する事への抵抗。そこを狙うのが最善だろう。コレは、第二候補だ。

第一候補は既に決まっているし行っている。ついさっきやったばかりの奴だ。ただこれには時間がいる。だから、

 

「うぅ、素早いなあ!」

 

「走り込みは欠かさなかったから、ね!」

 

回避をただ続ける。無論、イヤホンジャックでの乱打による牽制も行う。だが効果は薄い。芦戸が酸で他者を害することを本能的に抑えるように、ウチも傷つくことを恐れている。ただ殴る蹴るではなく、溶かす。未知の感覚、未知の痛み。当然、恐れる。

 

マトモに近づけない訳では無いが、近づくことのリスクが大きい。やはり『ディーヴァ』は申請しておくべきだったかな?

 

「なら、これでどうだっ!」

 

行動が変わった。さっきまではウチに向かって只管に酸を放出するだけだったのに、今度は違う。横ではなく下から上へ。まるで天高く振り上げるように手を動かした。

一度ではなく、水辺で水を掬って振り上げるように何度も何度も。

 

「不味っ———」

 

当然だが行動の意味がわからないことなんてない。ウチの集中を芦戸本人から上空へ振り上げられた酸へ向けただけ。さっきまでは酸を直接射ってくる芦戸に注意を向けていれば良かった。そうすれば自然と手の動きで何処へ『銃口』が向けられているか分かるからだ。だが上へ向かって放たれたことで、酸への本能的な恐怖によって上空へ意識が向けられた。

 

完璧な回避を行いたいが、そうすれば芦戸本体がこちらへ向かってくる。芦戸は恐らくは自分の個性故に酸に対する強力な耐性がついてるだろう。かと言って芦戸に注意を向ければ上空からの回避が疎かになる。

 

「ギリッギリ、セーフッ!」

 

イヤホンジャックを思い切り伸ばす。十メートル程離れたコンクリートの地面に全力の振動で採掘機のようにコンクリートを破壊してプラグをアンカーのように突き刺す。

突き刺したプラグを起点にウチの身体を引き戻す。本来であればウチの方へとプラグは戻っていくのだが、訓練と応用で強い起点(・・)があり幾つかの条件を満たせば、ほんの短い間ならウチの身体を引っ張ることが出来る。と言っても一回二回しか使えない技だけど。

 

「むぅ、流石だね。でももう一度〜!それっ!」

 

再び芦戸の両手が下へ沈み込み、溜め込まれる。この技は単純だが強い。爆豪や轟のようなぶっちぎりの強個性や一定以上の増強型個性相手では分が悪いが、ウチのようなタイプには滅法強い。

 

触れれば溶ける有害な酸。避ける為に意識は上へ向けられる。意識を上へ向ければ正面から芦戸本人が襲い来る。

 

だがさっきも言ったように、芦戸は恐れているのである。それは大きな隙であり、故にそこを突くのが最も効率的な勝算を得られる。

 

「えっ、来るの!?」

 

芦戸は沈み込み打ち上げる前に、必ず動作が止まる。芦戸の個性で出る酸は当然ながら液体である。液体は固有の形が無い故に飛び散り易い。それこそ無闇矢鱈に放ってしまえば目などの危険な場所に当たり、最悪失明だって有り得る。

だから絶対に上に飛ばすように、横に飛び散らないように動作を止めて丁寧に確実に放つ。だって彼女は優しいから。

更にこの技は必ず手で打ち出す必要がある。芦戸の酸は全身から放出することが出来るが、前述の理由で飛び散りを避けるために。普段から意識して使っている横の動きではなく上空への動き。腕全体からの放出時は無意識的に出来ていたことでも、方向を変えれば別である。

 

予想通り、方向転換して芦戸の方に全力で向かったことによって、芦戸は酸の打ち上げを止めてコチラへ放とうとしてくるがもう遅い。当然だが基礎的な身体能力も伸ばしている。特に脚力はどんな場面でも必須となってくる。戦場では足を止めた奴から死ぬって言われる程だし。

 

姿勢を低くしたプロレスラーが行うような力強いのは出来ないけれど、それでも十分なレベルでのタックルをお見舞する。それで倒れてくれれば御の字なのだが、素人のタックル一つで倒れるほど優しくはない。

それに芦戸はその外見からも分かるように異形型。普通の人間よりも僅かとはいえ、目に見えるほどには力強い。

 

でも大丈夫。もう勝ちは決まったから。

 

「え・・・?」

 

喧騒に掠れて消える一瞬の雑音と共に、芦戸の身体が力をなくしたように地面に落ちていく。静かな音の着地音。芦戸の視線は自然にウチを見上げる形になる。酸を放つことの出来る掌は地面に置かれている。

 

観客席から見ても、審判から見ても、ウチから見ても芦戸は自分から座り込んだ。糸が切れたように唐突に。なんの脈絡もなく。

 

だけどウチだけが知っている。何故芦戸が自分から座りにいったのか。知っているということは当然、ウチが仕組んだからだ。

 

今の芦戸には平衡感覚がマトモに機能していない。気付いていなかったようだけれど、芦戸の耳はウチの個性で発し続けていた『音』が原因で眩暈状態にもなっている。

 

人間にはそれぞれ、行動に応じて適した音というものがある。例えば動画サイトにあるリラックス出来る音楽であったり、脳を活性化させることでの眠気覚ましであったり。

逆に言えば適さない音というのもある。聞けば頭が痛くなる、気分が悪くなる。黒板を徒に引っ掻いた時なんかはそれである。

 

だからウチは同じ効果を持つ似たような音を少音ながらも放出して、近づいた時に一気に、一瞬の内に音を爆発させた。少しづつ頭を慣れさせて、中途半端に爆発する形にした。

 

この技はウチが偶然見つけ出したものである。個性の訓練をしていると、いつも聞いている音とは違う音が流れていたことに気づいたのだ。その音は発しているウチでも、聞いていて不快になったり聞きすぎれば体調不良や目眩などの症状が出てきたりした。

 

人体に作用する類の音。『イヤホンジャック』に秘められていた可能性の一つ。ようやく見つけた自分だけで使える武器。それがこの技。

『ハートビート・ディスネンス』。

 

何にも頼らずにようやく踏み出せた第一歩としては上々のものだった。個人的には満点花丸だ。

 

「うぅ、なんか頭がガンガンする〜」

 

「手、貸すよ」

 

座っている芦戸に手を差し伸べる。差し伸べられた手を芦戸は嬉しそうに掴み、同時に引き上げられる。負けたというのに清々しい笑顔をしている。ありきたりなことだが、彼女の人格の良さが垣間見える。

 

「あぁ〜負けちゃったか〜。私の分まで頑張ってね、耳郎ちゃん!」

 

「任せといて。絶対に勝つから」

 

そう言う耳郎の視線は芦戸からゲートへ向けられる。そこにいるのは待機している爆豪。フィールドからでも分かるほど、獰猛に勝利に飢えた目をしている。だが耳郎から向けられる視線と合うことは無く、爆豪の視線は耳郎の後ろへ向けられている。そこにいる(麗日お茶子)に向けられている。

耳郎が眼中に無い訳では無い。ただ今は、目の前の強敵(・・)に勝つことに意識を割いているのだ。

 

絶対に優勝すると周りを見下しながら豪語しているが、それは決して余裕で勝てると思っている訳では無い。余裕をかまして勝てる程、雄英高校ヒーロー科は甘くない。

 

故に爆豪勝己は麗日お茶子を油断せず、容赦なく叩き潰す。

 

 

 

 

 

 

 

————————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

「この少女、覚醒させていますね。いや、完璧という訳では無い。今も尚成長途中だ。どちらにせよ興味深い」

 

 

 

 

 

————————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

「何度も見直してようやく見つけた、そして理解した。耳郎響香の個性は、覚醒という進化を経ている!だが何故だ?何を以て先へ進んだ?」

 

 

 

 

 

————————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

「脱水症状だね。あとはストレス・・・日頃の疲れかの?まぁ軽い症状だし、じき目を覚ますよ。それとねエンデヴァー、

 

 

息子の活躍が嬉しくて周囲の温度を上げるのは構わないんだが、倒れちまう程上げるのはどうかと思うよ?」

 

「・・・すまない」




普通に考えて、有り得ないよなぁ。明らかにまともじゃないよなぁ。個性の突然変異でも『規格』に収まっていないんだよなぁ。個性が受け継がれるのは理解出来る。元がそういった個性だったから。個性が歴代の個性を宿すのは分かる。個性は変化して進化するのだから。
だがよぉ〜明らかにこれだけは説明がつかねぇんじゃぁねぇか〜?個性が『魂』を宿すだとぉ〜?分からねぇよなぁ。都合が良すぎるよなぁ〜。ご都合主義なのはわかるがよぉ、流石にその領域に踏み込むのはいただけないよなぁ。


ヒロアカ最新刊を読んだ感想です。
はい、ということでご都合主義にしっかりとした理由を付けました。『矢』をぶち込むという形で。魂を宿すなんて、それはもう『レクイエム』の領域じゃないですか。ジョジョとクロスさせている以上、ソレをご都合主義として見過ごすことは出来ないんだ。
これによってボスと緑谷の運命難易度がNIGHTMAREに突入開始。楽に死ねると思うなよ!



そして我らがボス、本気になる(吹っ切れる)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。