いつの間にかボスになってた。組織は滅んだけど   作:コズミック変質者

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他の小説に浮気してたけどヒロアカの単行本がかなりいい展開になってきてるので頑張って投稿。でもまたすぐに浮気する気がする。


いつの間にか体育祭が終わってた。もう次にいるけど

 目が覚める。開いた傍から差し込んでくる目を細めなければまともに開くことも出来ないほどに鮮烈な光。当たり前だけれど生きている。ピッ、ピッ、ピッ、という規則正しい電子音だけが聞こえるかと思えばそうでもなく、薄くだが歓声らしき声が聞こえてくる。

 

「ヅっ———」

 

 起き上がろうと上体に力を込めてみれば、ダムが決壊したように全身に酷い激痛が走る。燃え上がるような烈火のごとき苦痛が、代価を払えと当然の如く全身を駆け巡る。無茶した分の代償が、今この時も苦痛となって払われる。

 流石に起き上がることも出来ないとは想定外――でもなかった。

 

「起きたか」

 

「相澤、先生・・・」

 

 ベッドを囲むように掛けられている白いカーテンの内側に、相変わらず包帯だらけの相澤先生が座っていた。ここにいるということは、おそらくは実況の仕事は終わったのだろう。そして、ということはやはり自分は。

 

「結果は、やっぱり・・・」

 

「ああ。爆豪との戦いは引き分けだったが、爆豪は線の内側、耳郎は外側だったから、勝ったのは爆豪だ。三位決定戦もこの有様だから不戦敗。ベスト4だな。今丁度閉会式やってるよ」

 

 最後の激突は一度目の爆豪の技でライン際に追い込まれていた。二度目で何とか押し返せたと思ったけれど、そう甘くはなかったらしい。いや、引き分けだった時点で負けは決まっていただろう。負傷度が何より物語っているし、こうしてベッドの上にいるのだから。

 

「勝ったのは、轟ですか?」

 

「いや、爆豪だ」

 

 驚いた。最後の攻撃で爆豪もそれなりに負傷はしていたはず。少なくとも過度な動きは出来なくなっていると思ったのだが、まさか爆豪が勝つとは。予想外もあったものだ。それだけ爆豪がウチの想定を上回っていたか、もしくは轟に問題があったのか。

 もし後者なら、きっと爆豪は大荒れだろうな。叫び散らしているかも。

 

「はぁ・・・お前の身体の事だが、婆さん、リカバリーガールと他の治癒系の個性を持つヒーロー達が協力して治療した。緑谷程重い負傷はなかったから後遺症とかの問題は無いらしい。ただ少なくとも向こう二週間は絶対安静。完治するまでの間は婆さんの所に通院とのことだ」

 

 それは、運が良かったと言うべきなのか。告げられた診断を疑ってしまいそうだが多種多様な重傷患者を見てきたリカバリーガールお墨付きなのだからまちがいないだろう。アレだけの怪我を負って僅か二週間で済ませてしまうとは。予想だと一ヶ月は安静と言われると思っていたし、覚悟もしていたがリカバリーガールをはじめとした治癒系の個性持ちは強力らしい。

 

「正直、お前には悪いことをしたと思ってるよ」

 

 思案に耽っていると、相澤先生が頭を掻きながらボヤく。

 

「最初からサポートアイテムを使うつもりが無かったのは分かっている。いや、お前のことだから使う可能性も考慮していたんだろうな。だが結局は本人が持ってきてない書類に許可を出して、怪我を負わせた俺の責任だ。すまなかった」

 

 そう言って、頭を下げられた。確かに相澤先生の言葉通りかもしれない。爆豪が勝手に記名して提出した書類なのだ。事後承諾とはいえ本来であればサインを出すなど以ての外である。問題行動だと言われても何ら可笑しくない。

 だがその言い分が通るのであれば自身こそが最も罪深い。許可を出そうが書類が受理されようが、最終的な選択肢は自分に与えられていたのだ。当たり前だがこんなことになったのは自業自得。

 

 サポートアイテムを使うこと自体は何も問題ないのだ。要はどのように使ったかが問題なのだ。そして使ったのは自分であり、使い方を選択したのも自分である。確かに爆豪や相澤先生にも非はあるだろうが、それでも根本的に悪いのは自分である。

 

「親御さんには連絡しておいた。直に来るはずだから、じっとしていろよ。まぁ治療の反動やらでマトモに動けないらしいが。あぁ、帰る時はそこにある車椅子を使うといい。返すのはいつでもいいぞ」

 

 そう言って相澤先生は立ち上がって出口へと向かう。恐らくこれから事後処理等が待っているのだろう。本当に悪いことをしてしまった。

 

 その後入れ違いにリカバリーガールがやって来たが、どうやら相澤先生から伝えられた通りの内容で、しばらくは松葉杖生活になるらしい。

 

「悔しいな」

 

 枕は涙で濡れていた。

 

 

 

 

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「んっぐ、ぷはぁ〜!あぁぁぁぁぁ癒されるぅぅぅ」

 

 風呂上がり、バスローブに身を包みながらソファにどっかりと腰掛け、一本数十数百万はするワインをグラスに注がず、ボトルごと呷る。今日は色々と忙しいらしく、スキューロが珍しく部屋にいない。どうやら隠れ家の一つでシーラ達と共に何かをしているらしい。

 コカキとのドライブ中にツマミの用意をしておくように言っておいたので、テーブル上に生ハムとチーズが盛り合わせられていた。

 

 とにかく喉を潤したくて仕方がない。手当り次第にワインボトルを保管庫から持ってこさせて、開けて開けて開けまくる。嫌なことから逃避する為に酒に逃げるのは正直どうかとこうしている今でも思うが、こうしなければやっていられる筈もない。

 

「さぁて、どう調理してやるべきかぁ」

 

 こうして幸福な時間を謳歌している途中でも、嫌なことを考えるのはやめられない。最早習性みたいなものだ。脅威が明確化している今、考えずにはいられない。思考停止が死に繋がることだってある。このタイミングにも最善の行動への糸口を逃してしまうかもしれないのだ。

 

「さしあたってはステインだけど、さてどっちに動員するか」

 

 当初の予定では個性無効化が可能な相澤を始末しようと引き入れたのだが、緑谷に直接ぶつけるべきかもしれないという考えも生まれてきた。ステインの個性は性能や発動条件等の問題もあり、個性全体として見れば中の下程度だが真に重要なのは個性ではなくその戦闘技巧。功績として残ったのは飯田の身体に痺れが残ったということ。これは非常に素晴らしい。

 

 原作では飯田だったが、緑谷のような一瞬の制御ミスも許されない奴相手ならば、手足のいずれかに恒常的に痺れが残るというのはあらゆる動作を一瞬とはいえ遅らせることが出来るということ。

 その遅延をつけられるかは別として、そういった明らかな欠点は非常に嬉しい。

 

「でもなぁーステイン雑魚だしなぁ」

 

 個性を威力控えめで殺傷しないようにぶっぱする以外捻りも何も無い轟と、復讐から少しは冷めたとはいえ負傷していた飯田、ギリギリ常時5パーセントの緑谷。今思えばなぜ負けたか分からない。あんなに強キャラ感出しすぎていたのに。

 

 緑谷達にぶつけても、どうせ敗北するのだから相澤を相手にさせれば勝率がもっと高いのではと思ったが、これが無駄な一手になる可能性が高い。相澤は正直言ってどこまで出来るのか分からない。私の知る相澤の戦闘は多対一や守護ばかりなので直接的な一対一の戦力が読みづらい。

 分かっているのはドライアイによる戦闘継続時間の短縮と、豊富な経験から上位の相手にもそれなりには食い下がれるということ。攻撃方法は捕縛布か素手の打撃のみ。個性による強化はなし。

 捕縛布の硬度は測定不能。少なくとも単純な力技や燃焼での破壊は不可能と予測。

 

「無理じゃん」

 

 決まった。ステインは原作通り緑谷にぶつけることにしよう。どうせ勝てないだろうけど、一縷の望みにワンチャンやり合って貰うとする。本当に有能なら手足の一本は奪えるだろうし、ただの踏み台になるならそれでもいい。当初の予定通りに殺す。

 

 正直ステインという手札に優位性は無い。アイツが有名になれたのは戦った相手がそれなりでしか無かったからだ。そもそも得意のフィールドにいたくせに餓鬼の拙い攻撃に殺られるような奴が強いはずがない。

 裏切られるのは御免だし、アチラも私の言葉を振り返っていつ不信感を抱くかも分からない。相澤以外を出来るだけ掃除してもらった後、即座に処分させてもらおう。

 

 ステインの処理ついでにもしかしたら緑谷も殺れるか・・・?いや二兎を追う者は一兎をも得ずと言うし、それに従って・・・いやでも案外殺れるかもしれない・・・。うわ、悩ましい。どうせだったら一緒に殺してやりたいのに、緑谷は面倒臭すぎる。

 

 まぁどうせいつかはやらなきゃなのだ。一度だけアプローチを仕掛けさせて、そこで殺せれば万々歳。殺せなければそれはそれとして別の手を打てばいい。主導権を握っているのはコチラだ。直接戦闘も暗殺も、専用の幽波紋(スタンド)ならある。ステインには文字通りの命懸けで頑張ってもらうとしよう。

 

「後で処分方法はしっかりと話し合っておかないとな」

 

 

 

 

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 体育祭という一大イベントが終わってから、表には市民の不安を増長させぬ為にもあまり出されぬが、裏では血で血を洗うかのごとき事件がたった一人の犯罪者により多発していた。それはサイドキックでも例外なく。補助とはいえ彼らはヒーローを名乗る身だ。ならば彼らにも裁定は下されるべきだ。

 

「はァ・・・これは愚か者への・・・はァ・・・粛正だ・・・。そして・・・はァ・・・あるべき未来への道標だ・・・」

 

「このッ・・・イカれた屑がッ・・・!」

 

 パッショーネの支援を受けて、彼にとっての穢れたヒーロー達に粛正という名の殺害を行うヒーロー殺し、ステイン。その凶行の効率は前までの比ではなく、細かく定められた期間ごとに各地を移動することで場所を撹乱しながら、次々とパッショーネに害ある存在――パッショーネ掃討作戦に参加したヒーロー達を始末している。

 

 どんなヒーローでも人間であるのならば汚点はあるし欲はある。ヒーローならば清廉潔白であるのは当然のことだと思っているステインからしてみれば、そんな連中は世に蔓延る贋作。パッショーネから送られてくる粛清対象の資料を読んで、しかしただ受け入れるつもりはなく、自らが納得して私刑を執行する。

 

 少しは脚色もされているのだろうが、証拠となるものまで見せられては是非もなし。速やかな粛正を、厳粛たる征伐を。同じ現場にいた(ヴィラン)にも裁きを与え、ステインは闇へと身を隠す。

 

 骨伝導のインカムにより送られてくる支援者達との合流ポイント。命じられるがままに向かった場所には派手な黄色の車。周りに人がいないことを警戒しながら乗車する。

 車内には二名の先客が運転席と助手席に座り、何やら囁きあっていた。

 

「どうでした?」

 

「はァ・・・問題は、何もない・・・」

 

「当たり前だろうが。下手に問題なんて起こしてみろ。お前終わるぜ?そうじゃなくて、そいつの着心地の話を聞いてんだよ」

 

「そういった報告も私達の役目ですので」

 

 先客の一人、スクアーロが指差すのはステインだが、その対象はステインに装備されている装備の数々。ステインの為だけに用意されたパッショーネ製の特別装備。ステインの戦闘スタイルや注文に従って何度も改良を重ねたため、今回の一件でのお披露目が初になる。

 

「切れ味に関しては・・・はァ・・・上々だ。技量さえ加えれば・・・はァ・・・コンクリートさえも切断可能とはな」

 

 抜いた刃の鋼の輝きに目を細める。先程まで赤い命に濡れていた刃は、納刀と同時に綺麗に拭き取られている。

 刃を納め、次に首まですっぽり隠す黒い装甲のようなチョッキを指差す。

 

「だがどうにもこれだけは・・・はァ・・・少々重い。いや、重さとしては・・・はァ・・・大したことは無いが前のと比べるとな・・・」

 

「そいつに関しちゃ仕方ねぇだろうよ。俺らみたいな防御面が能無しだと、最悪一発でお陀仏なんだぜ?だからテメェは黙ってそれ着てりゃぁいいんだよ」

 

 これは死なれたら困るからなのか、それとも実験的な意味合いを込めてなのかはステインには判断できない。だが少なくとも役に立っていないわけではないし、実際に害が出ているということも無い。これに慣れることが出来れば違和感は消えることだろう。

 

「すみません、スクアーロは貴方のことが気に入らないみたいで。私自身としては貴方に死なれては困ります。それに貴方だって夢半ばで死ぬなんて御免でしょう?だからどうか、命を守るという意味で」

 

「・・・はァ・・・言われずとも外すつもりは無い。実際・・・はァ・・・こういうのがあって困りはしない」

 

「それは良かった」

 

 マトモに相手にされずに心の中で閉じ込めていた疑問が、まるで心を読んでいるかのようにティッツァーノの口から答えられる。だがそれはティッツァーノからの言葉であり、彼らのボスの真意なのかは分からない。

 

 

 

 

 世間が未だに雄英体育祭の熱に浮かされていた時、ステインは自らの今後に答えを出して彼らに付くことを決めた。無論、部下や駒になるつもりなど毛頭なく、あくまでも契約上の同盟相手としてだが。

 

 彼らはステインに様々なサポートを施す代償として、特定のヒーロー達へ粛正を与えることを依頼してきた。私怨でもあるのか、もしくは別の意図があるのかは分からないが、ステインがヒーローへ粛正を与える対象は、その強さが、精神性がヒーローと呼べる基準に満ちていない者達。

 滅私奉公の理念を当たり前として自分に課している者だけが真のヒーローである。

 

 ステインはそれを社会へ示す。ヒーローとはこういう存在なのだと、こうでなければならないのだと。より良き明日を、一つの涙も流れない世界を作り出そうと声高らかに禍津の刃を血に染めながら高らかに叫びあげる。

 

 故に今は雌伏の時だ。気に入らないがパッショーネの下で従い続けよう。与えられた任務は可能な限りこなしてみせよう。だがいつか、禁を破る日が来れば・・・。

 

 

 

 

 

「はっ、言いたい放題言ってるねぇ。今から適当な所に突っ立って街頭演説でもしてみるか?具体的にどんな思想なのかってさ」

 

 車を走らせるスクアーロはカーモニターに映る番組を見ながらカラカラと笑っている。映されているチャンネルには堅物そうな身なりをした壮年の男女が議論を行っている。コメンテーター、専門家、芸能人など様々なジャンルから取り集められている。

 

 彼らが議題として話し合っているのは今まさにこの場にいるヒーロー殺しについて。正確にはヒーロー殺しが掲げる理想について。

 

「幾つか前の仕事で派手に曝け出しましたからね。その思想は今や注目の的、時の人です。専門家やコメンテーター達が議論の題材にするには困りませんよ」

 

 肯定や否定、疑念だったりが交互に交わされていく。中には的外れなことを言ったり、時として核心に近いことを言う者もいる。だが誰も深くまでは掘り下げない、と言うよりもそこまで考えが及ぶことがない。

 なぜならステインの思想は紛れもない狂人のソレ。元がそうであるのに、ボスによって小さくとも歪められている。

 

「どうよ時の人とやら。俺としてはやっぱり目的ってのはハッキリと言った方がいいと思うぜ。ちゃんと頭は可笑しいですよって応援してくれる皆さんに認識してもらう為にさ」

 

「無駄口は・・・はァ・・・いい」

 

 この男達は気に入らない。が、目的の為に支援を施してくれるのはありがたい。どの道一人っきりでは出来ることに明確な限界がある。逃走や拠点の調達だって楽ではない。変装系の個性を持っていればまだ簡単だったかもしれないが、残念ながらその手の物も持っていない。

 

 しかしそれとこれとは別。この男達は唾棄すべき悪である。排除されるべき屑に他ならない。行動を起こしておらず、あくまでも推測の域を出ないが、上が上である。下についているこの男達だってマトモなはずがない。

 

 どれだけの実力があるのかは分からない。だがどうしようもない程に警鐘が鳴り響くのだ。コイツらを相手にした場合、命はないという警告が。

 

 正直に言えば、こんな奴らと組むなどはゴメンである。曲がりなりにも(ヴィラン)に属するであろう者達。即ち社会の敵である。だがそれでも、この身は既に罪人であり、この男達と同じ社会の敵。ならばこそ、いずれヒーロー達によって裁かれるのが定めである。

 

 ならば構わない。己が裁くべきは偽りの名を騙る者たちのみ。悪は己の認めた本物が打ち砕くだろう。故に受け入れる。この男達がこの世にのさばることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、こんな感じの思考を植え付けた」

 

 ただ一人のために特別に用意された地下空間で、シクリーザではなくフェリシータと呼ばれる女性が、独り言のように呟いた。彼女の周りには幾百枚ものDISCが乱雑にばらまかれている。いや、地面だけではない。

 

 幾つもの人間を模したような置物や、高速で動き続ける()にも何十枚も突き刺さっている。それらには幾つもの傷があったり、他の場所には壊れたであろう同じ物が積み重ねられている。

 

 そんな彼女の様子を影から見守り続けるスキューロ。彼は何も返さない。何故なら彼女が、自分に対して何かを言っている訳では無いから。その言葉を遮らないように、ただそこにいる。

 

「言葉だけで惑わせると思うほど、ステインは私の言葉に共鳴できない。そもそも考えてみろ。アイツは曲がりなりにも正義なんて謳っている。名乗った覚えはないが、コチラは間違いなく悪だろう」

 

 静謐に語りながら両手に展開される左右三枚ずつ、合計六枚のDISC。熟練した手つきで振り抜き、DISCを弾くように投げ飛ばす。その有様は最早射出や射撃の領域だ。

 この動作だけで、彼女がどれだけ修練を積んでいたかが読み取れる。恐らく果てしない数を繰り返していたのだろう。何度も何度も、いつか来る未来のために。

 

「まず間違いなく、何らかの抵抗はされるだろう。裏で情報を流されるとかな。そういった所までコチラで全て管理しようとすれば、敵意が増幅されるのは明白だ。悪による完全管理など、決して受け入れることなどしないだろう」

 

 放たれたDISCは的とは見当違いの方向に飛翔していくが、その勢いを緩めずに壁にぶつかり、そこからまた弾かれる。一見すれば失敗したと思えるソレは、しかし次へ繋げるための布石である。

 

「だから事前に少しだけ心と思考、いや、この場合は思想か。まぁどちらでもいいが、緩めてやるのさ。私の言葉と決して齟齬を起こさないように。適度にコチラを警戒しながら、それでいて指示をちゃんと聞いてくれるように」

 

 壁に弾かれたDISC達は尚も勢いを衰えさせず、互いを四方に弾き合う。ぶつかり合う音が何度も響き、縦横無尽に空間を切り裂くように宙を駆ける。

 

「何度か適度に実験をして時間をかけたが、成功した。奴の思想を都合のいい方向に変えることができた。よって、今のステインは純然たる悪の一人。ヒーロー達の登竜門の最後にいる存在だ。自分を倒さなければ数多いる(ヴィラン)は倒せないぞってな」

 

 DISCは急激に停止する。そういう風に命令が施されていたかのように、一斉にその軌跡を閉ざしていく。DISCが止まった場所には六枚のDISCが深くまで突き刺さった的がある。人間であれば明らかに死んでいるであろう場所に。

 

「いつか私達を殺してくれる存在が現れるだろうって、本気で信じているよ。別に笑うつもりはない。夢は誰だって見るだろう?何も可笑しい事はない」

 

「まぁ私の夢と違って、ステインの夢は夢のままにしてもらうけどね」

 

 

 

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