いつの間にかボスになってた。組織は滅んだけど 作:コズミック変質者
もう後戻りは出来ねぇってな。
ボスの雰囲気が険しくなっているのを感じる。今ボスはこの鏡の世界にいない。遠距離でも使用出来るボス曰く「
表裏一体のこの世界、ボスがいるという雰囲気はこちら側にも伝わってくる。
不穏な空気だ。過去語りをしていたシーラ・Eは少しだけ顔色が悪くなっている。全てを語り終えてからだ。ボスの雰囲気が変化したのは。やはり護衛には相応しいとは思われなかったか。
いくら俺が適正だと考えても、全てはボスの意思で決まる。使うか使わないか、生かすか殺すか。
普通の組織であれば、シーラほど優秀な者を殺したりはしない。シーラは若くして組織の敵対勢力を一人で滅ぼし、そいつ等が持っていた縄張りを組織へ提供している。普通のギャングであればボスの側近として重宝されてもおかしくない。だが、パッショーネは違う。
『ホワイトスネイク』が指を少し動かす。まるで指を鳴らすように、不気味に動かす。ここにシーラの
『スキューロ、
「な・・・!?正気かボス!?今のアンタはここにいる!現実世界にアンタは存在している!!それに出てしまえばシーラ・Eの
思わず口を噤んでしまう。ここにいるボスの気迫が、俺にそれ以上の言葉を言わせない。そしてそうなることで、俺は冷静さを取り戻す。
「すまない。アンタの決定に逆らうつもりは無いんだ。ただ、」
『それ以上は言わなくてもいい。お前が私の為に言ってくれたのは理解している。有能な部下というのは時として上司に諫言をするものだ。だがなスキューロ。これは必要なことなのだ。私にとっても重要なことなのだ』
「・・・分かった。『マン・イン・ザ・ミラー』、鏡の世界を閉じろ」
そばに控えていた『マン・イン・ザ・ミラー』が世界を閉じる。眩い閃光と共に鏡の世界は崩れて閉じられる。視界を開ければ同じ様な部屋だが、ここはもう鏡ではなく正しく現実。文字は正常な方を向き、全ては反対になっていない。
現実世界で待機していた『ヴードゥー・チャイルド』がシーラの中に戻っていく。出しっぱなしで疲れていたか、もしくはボスの放っていた威圧感か。どちらにせよシーラには疲れが見えている。
「ボス?」
ゆらりと、『ホワイトスネイク』が霞のように消えていく。それと同時に後ろ、部屋と廊下を繋ぐ唯一の扉が開く。
そこから入ってきたのはシーラから見てみれば場違いなどこにでも居る十代後半の少女。だがその身から放つ気配は『ホワイトスネイク』が放っていた物と同種のもの。すなわち帝王の威圧。
そして俺から見れば、それは個性を使って顔も体格も変化させていない、
「先程まで話していたが、はじめまして、シーラ・E。私の名は
「・・・え?」
シーラが抜けた声を上げる。当然だ。突然出てきた少女が、突然イタリア最大のギャングのボス等と名乗れば、こうなるのは当然だ。ありえないと断じてしまうだろう。だが内心ではシーラも気付いているはずだ。少女がその身から放つ威圧感は間違いなくボスの物。想像のボスと現実のボス。いっそ清々しいほどのギャップだ。
「ああ、安心していい。普段は個性で誤魔化しているが、正しい私の顔は、身体は確かにこれで合っている。信じられないのならば証拠を見せよう。出てこい、『ホワイトスネイク』」
ボスの身体から出てきたのは間違いなく『ホワイトスネイク』。塩基配列の刻まれた身体も、体の各部位にある紫の飾りも、間違いなく正しいものだ。
「これで信じてくれたかな?私がパッショーネのボスだということを。理解してくれたのならば頷くんだ」
ボスの言葉に、シーラがゆっくりと頷く。ボスはそんなシーラを見て満足そうに頷き、『ホワイトスネイク』を消してシーラの顔に自分の顔を寄せる。あと少し近づけば鼻と鼻がぶつかるほどの距離。シーラの顔が唐突に青ざめていく。
「なぁシーラ・E。先程私は語ったな。私の考える『信頼』を。これが私が君にする『信頼』だ。これこそが私が君に与える『信頼』だよ」
ボスは顔も姿も性別も声も名前も誰にも教えない。ボスのいう『信頼』とは恐らく、自分を見せること。顔も姿も性別も声も名前も何もかもを相手に見せること。ずっと秘匿してきた。知ろうとした者を残虐に処分し、組織にボスの正体は探れば死ぬという暗黙の了解を作り出す程に。俺と対面する時も、顔も声も微妙に変えていた。
そのボスが、『信頼』のために全てを投げ出す博打のような行為をしている。
「君は今まで何人に顔を覚えられてきた?10人か?100人か?どんな人間に自分を教えていた?行きつけのバーのマスターか?レストランの店員か?隣の家の夫婦か?同じ組織の者達か?
私は一人だ。私はスキューロという絶対の信頼を任せられる大切な部下のみに、私を見せてきた。
なぁ分かるだろう?私が何を言いたいか。理解しているだろう?私が今、何をしているか。
私はお前に預けたのだ。『信頼』という私の大切な『平穏』を。お前が警察にでも駆け込んでパッショーネのボスの顔を見たといえば、私は終わる。私の積み上げてきた、守ってきた何もかもがだ。この時世、記憶を読み取る個性などいくらでもあるからな。
シーラ・Eよ、私はお前に『信頼』を与えた。今この世界にまだたった一つしかない、私の命がかかった『信頼』を与えたのだ。ならば、お前は私に何を返す?何を持って私の『信頼』に値するものを返すのだ?
敵対か?逃亡か?公表か?それとも同じく信頼を返してくれるのかな?何でもいい、今ここで私に表明してくれ。私にその想いが本物だと示してくれ。私に敵対するのなら『ヴードゥー・チャイルド』で私を殺しにこい。逃亡するというのならばすぐにここから出ていき、二度と私の前に顔を見せるな。私を公表するというのならば警察かヒーローにでも知らせればいい。それとも信頼してくれるというのならば何かを示せ。
さぁ、どれを選ぶ?君は自分の未来をどう選択する?決めるのは自分の意思だ」
相も変わらず、こういった時のボスは凄まじい。俺の時もそうだった。ボスはこういったギリギリの勝負によく出る。見ていてヒヤヒヤしてしまう。あの時は自分のことだったからまだマシだが、今回は他人。思考が読める訳では無いので不安しかない。
いや、ボスが大人しく殺されるはずもない。もし敵対するアクションを起こせば即座に殺すだろう。あの時と違い、ボスは抵抗しないとは言っていない。『ホワイトスネイク』の速度なら、『ヴードゥー・チャイルド』に追いつける。それにボスにはもう一体の
「私は・・・」
今にも挫けてしまいそうな、掠れるほどの声だ。それに声に迷いを感じる。逃げるか従うか悩んでいるのか。こうなったのはボスの威圧感にやられたからか。無理もない。常人であれば声だけで心が折られる程なのだ。
「私は『覚悟』をしてここにいる」
掠れるシーラの声を塗りつぶすように、ボスがシーラから顔を離した。
「お前にもしかしたら殺されるかもしれない、裏切られるかもしれない、『平穏』を失うかもしれない。そんな『恐怖』に彩られ、暗闇に消えた道から、輝く朝日の如く、美しい『平穏』を取り戻すために『覚悟』したのだ。『覚悟』とは暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことだ。
私は『恐怖』を乗り越え踏破し『信頼』するために『覚悟』した。別に言葉で理解する必要はない。『心』で理解するのだ。
シーラ・Eよ、君の『覚悟』を見せてくれ。君の進むべき道を、私に見せてくれないか」
ボスの言葉———『覚悟』。ああ、俺は理解出来た。この『心』でボスの言葉を理解した。己を臆病者と語るボスが、何よりも大事にしている『平穏』を暗闇へ消し去る可能性のある選択肢を与えること。それその物がボスの『覚悟』だったんだ。賭けなんかじゃあない。アレこそがボスが道を切り開くために見出した物だったのだ。
俺の時だってそうだったじゃあないか。
「私は・・・!」
シーラの体が崩れ落ちる。いや、崩れ落ちるかのような速度で片膝を突いている。その姿はまるで主に忠誠を誓う騎士のように、気高く強固な忠誠を物語っている。
シーラ・E、本名シィラ・カペッツートはこの瞬間、ボスの『信頼』に忠誠を返すことに決めたのだ。それは正しく、過去のスキューロと同じ光景だった。絶対的な帝王に頭を垂れる忠実な臣下。
「ありがとう、シーラ・E。いや、シィラ・カペッツート。私は確かに君から『忠誠』という『信頼』を受け取った。そしてその『信頼』を盤石のものにしようじゃあないか。出番だ、『ホワイトスネイク』」
待っていたとばかりに三度『ホワイトスネイク』が出てくる。ボスが何をしたいのか、俺にも分からない。が、シーラはボスに身を預けるように微動だにしない。どうやら、殺される覚悟はあるらしい。シーラの様子に満足したようにボスは頷く。
「私の『ホワイトスネイク』のDISCには複数の種類が存在する。他者の
だから、これは保険だ」
ボスがDISCを片手に、もう片方の手でシーラの顎をクイッと持ち上げる。床に視線があったシーラは強制的にボスと目を合わせられる。
上がったシーラの目は、ボスに入れ込むような熱い視線となっていた。彼女もまた、ボスのカリスマに真実魅入られたのだ。
「さぁ、私に全てを委ねるのだ。安心しろ、痛みもなく一瞬で終わる」
DISCがシーラの頭に入っていく。人の頭にDISCが入るというあまりにも異質な光景は、俺は既に見慣れたものだった。命令に何を書き込まれているかは分からない。が、恐らくはボスの『平穏』を守るためのものだろう。
「これで私達の『信頼』は成立した。これからよろしく頼むよ、シーラ・E」
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う・・・上手くいった。目の前の障害を乗り越えられた。確かに私は『覚悟』を終えた!
もうやだよ全部投げ出してゲームして引きこもってたい。『信頼』を得るのに毎度毎度『覚悟』が必要になるとか冗談抜きで胃がもたない。
こちとらクソ雑魚メンタルで日々怯えて暮らしてんだぞ。メンタル面で圧かけて来るなら主人公にやってこいよ。
今回はいつものよく知らないうちに事態を進ませるのではなく、私が場の主導権を得るために、態々一対一で素顔を晒してやったんだぞ。ホントに危ない橋だった。『ホワイトスネイク』って一応パワーAスピードAだけど、純粋なAって訳でもないんだよな。Bには勝てるけどAには一歩劣るんだよ。
『マン・イン・ザ・ミラー』とかと同じ。パワーが能力に振られてるタイプ。それにしては色々と性能高いけど。
シーラに与えた『ヴードゥー・チャイルド』はパワーはBで一歩劣るけど、スピードは紛れもないA。あのまま戦闘になってたら『ホワイトスネイク』のラッシュを抜けてぶん殴られてましたね。今日が日曜日で良かった。ゴミ収集車だけは勘弁だからね。
何はともあれ一件落着。シーラにはしっかりと命令DISCを差し込んだ。本当は私の腕をシーラの頭に入れた方が手間が要らないんだけど・・・なんか気持ち悪いじゃん。入れる方も入れられる方も。
命令DISCには勿論、私の正体について極秘にすることを一番として植え付けた。これからはシーラに入れたDISCがどれだけ効果を保っていられるか気にしなければ。
ていうか今回、恐れるべき相手であるジョルノの名言とか応用したけど・・・ちゃんと使い方合ってたか?あまり喋ることが少ないから喋りすぎると息継ぎが多くなるんだよな。『ホワイトスネイク』が便利すぎるのも問題だよなー。
今、シーラはこの部屋にいない。顔を青くしていたから今日だけ別の部屋で休ませている。明日にはこのマンションを出なければならない。私の護衛として、万全を期してもらいたいのだ。精神の揺らぎが時としてダイレクトに性能に出てくる
「切り終えたぞ」
ダイニングからスキューロが熱々のピザとタルトを持ってくる。スキューロ、やはり料理も万全である。和洋中からスイーツまで、コイツ本職料理人じゃないのか?と勘違いするほどの腕がある。デリバリーのピザでも良かったのだが、明日は忙しい。舌に合うか不明な物より、三ツ星レストラン顔負けの腕を持つスキューロの食事の方が、英気を養える。
「明日、9時にはここを出ていく予定だ。新幹線が来るまで時間は大分余っているが、何かやりたいことでもあるか?」
「ああ、それなんだがね。明日、『シンデレラ』の所に行こうと思っているんだ」
「・・・『シンデレラ』の所にか?随分と急だな」
あ、スキューロ機嫌悪くなったな。声音でわかるくらい嫌ってるもんな、『シンデレラ』のこと。まぁ原因はアッチだから、スキューロは何も悪くないんだけど。
ピザの生地に乗ったチーズをわざと長く伸ばしながら、上を向いて垂直に口の中に入れていく。身に付いてしまった癖なんだ。変な食べ方とか言うなよ。
『シンデレラ』。パッショーネの中でも私とスキューロしか知らない人物。一応はパッショーネ所属で、半年に一度、口座に金を入れ続けてくれている人物。
「俺達二人で行くのか?」
「いや、シーラ・Eも連れていこう。もしかすれば、彼女も『シンデレラ』のお眼鏡に適うかもしれん。まぁその場合は、シーラ・Eが無事で居られるかは分からないが、今後は私の代わりになってもらう」
『シンデレラ』はとある問題を抱えている。偶に、本当に偶に自分が目をかけた相手を自分の望み通りにしたいということで、態々その人物とイタリアまで来て、スキューロを通して
『シンデレラ』との交友を続けていきたいし、貴重な人材であることから普段から珍しくかなり譲歩している。日本に支店作るなんて言い出した時には金まで払った。・・・私のポケットマネーで。
シクリーザとして接し続ける限り、『シンデレラ』はモロに私の弱点となる。別に強い訳でもないし、有能な個性がある訳でもない。ていうか私の周り無個性ばかりである。
『シンデレラ』は私と同じく一点における『信念』が強いのだ。私が徹底して『平穏』を求めるのと同じく、『シンデレラ』も強固な『信念』を持ち、それに従って行動している。
それにちゃんと私が決めたルールに従っているため、下手に文句を言いにくい。
全く、頭の痛い話だ。
喋りながらも手と口はピザを運び続ける。
「まず間違いなく、あの
「いいのか?あの種類は貴重なものなんじゃあないのか?」
「そうだ。数少ない切り札を切ってでも、私の為にはアイツの力は必要なのだ。それに奴は約束を破ることは無い。それは私達が出会ってから今日まで、しっかりと証明されている」
ピザを取ろうとした手が実体を掴まず、指が皿に当たる。あ、痛い・・・爪が少しだけ傷ついた。別にネイルとかしている訳でもないし、人に爪を、自分を見せたいなんて一度も考えたことは無いけれど、私は性格上人の視線などを気にし過ぎてしまうのだ。
人に会ったり外に出る時は服装は正すし、髪はきちんと整える、顔は化粧っけなしで帽子をかぶったりして少しだけ隠す。
外に出ないからあんまり意味ないけど・・・。
毎日食べ続けたらデブの道をフォーミュラカーで最果てまでゴーアウェイしそうなタルトを口に含む。中身はリンゴだ。いいよ、リンゴは好物だ。ふむ、彼奴め、また腕を上げおったな。あっという間にペロリとタルトを平らげてしまった。更に欲しいと空腹感を感じないように、スキューロが持ってきてくれたアフタヌーンティーをすぐに口に入れる。
ぬるめのティーがまだ欲しい、食べたい、食わせろ寄越せと言い出しそうな体に満腹を感じさせてくれる。
「ふぅ・・・」
しかし、『シンデレラ』か。アイツはまだ歯止めが利いているからまだいい。まだ食い止めることが出来ている。まだブレーキがちゃんと機能しているからいい。
アイツの本質はゴミ屑筆頭の
チョコラータは好奇心が群を抜いているが、アイツは好奇心はほんの少しだけ。それでも常人に比べるとかなり大きいが、アイツの中で群を抜いているのは探究心だ。好奇心も探究心も行き過ぎれば最悪の代物だ。もし放っておけば最悪とも呼べる存在になっていたかもしれない。
それでも始末しないのは、私に対する有用性が高すぎるのとやはり歯止めを理解しているから。アイツの探究心は異常なものだが、人並みの常識を理解している。
ああ、会いたくねぇ。けど会わなきゃいけないんだよな。東京から出る前に施術だけはしておかないと。もしまたそれ以上のことをせがまれたら、うん、シーラ・Eに全投げしよう。他の面倒事はスキューロにぶん投げられるけど『シンデレラ』関係だけは別だ。ホントにあの二人は仲悪いから。最悪殺し合いになるんじゃね?っていつもピリピリして、私が何故か仲介してたから。ていうか普通の奴じゃ手に負えない。見向きすらされない。だから普通じゃないシーラに任せる。多分シーラなら『シンデレラ』の好みに合うはず。
日本に来て初めての任務が『シンデレラ』の相手とか、合掌して黙祷してやりたくなる。でも護衛とは身を呈してでも対象を守り抜くこと。その身を呈して、是非私を『シンデレラ』から守ってくれ。
アイツホントに扱いづらいんだよな。吐き気を催す邪悪って訳でもない。ただ理性が突き抜けてるだけなのが面倒なんだよ。やっていることも別に殺しとかじゃないし。
ああ、なんであの時アイツとの関係を一回きりにしなかったんだろ・・・。さっさと交友関係切っておくべきだった。でもそうしたらそうしたらで
せめてスキューロとの仲がもう少し良ければ、もっと安心していられたんだけどな・・・。
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休日の洒落た場所には洒落た人間が集まるものだ。その場に溶け込もうと、ふさわしくあろうと背伸びしたオシャレをして、普段以上に化粧に時間を使って。この場にいる自分に自信がない、もしくは自分よりも綺麗な者を知っている。
不安は顔には出ずとも、行動や仕草にでてしまうもの。気を使って他者から一歩引いたような行動をしている者。そんな者こそが『相応しい』。
他者から虐げられている者、自分が下だと思っている者。人間のカーストの下に位置する者こそが『シンデレラ』の
『シンデレラ』は道行く人たちを見ながら、サングラス越しに獲物を探す。自分が魔法をかけるのに相応しい者はいない。『素材』がよくても中身がダメだ。頭の緩いバカに価値はない。『シンデレラ』の求める者は現実を知り、
いささか求めるラインが高すぎるのも問題なのだ。かつて、修行中に見た最高にして究極の
このままでは千日手。『シンデレラ』は世界的な店を持つ身で、明日も今夜も仕事がある。あまり気は進まないが、求めるラインを下げるしかない。
(見つけた)
飢えを満たすため、素材にこだわりを求め続けて既に2時間。ラインを下げたからか『シンデレラ』は素材を見つけた。これから素材を捕まえて、下ごしらえをして実食に移る。今回の素材は少し期待度は薄いが致し方ない。
「ねえ、そこの貴方。違うわ、貴方じゃないわ。隣の、そう貴方。ねえ、少し私とお話しない?二人、でね」
私は『シンデレラ』。私は美の魔法使い。私の魔法で貴方の枷をなくしてあげる。貴方をお姫様にしてあげる。虐げている周りの目を奪って、王子様の心を奪って、這いつくばらせてガラスの靴をなめさせましょう。
綺麗なお城、使用人は周りの人間、王子様は奴隷。それはきっと、とても気持ちのいいことよ。
さぁ私の手を取って。貴方に魔法をかけてあげる。あらゆる物を思い通りに出来る美の魔法を。
再)今後の展開、主に2、3話後について
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原作前に原作キャラと関わってもいい
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何言ってやがる、直行で原作いけやダボが
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関わる原作キャラは俺達が決める