いつの間にかボスになってた。組織は滅んだけど   作:コズミック変質者

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最初は7000字だった。でも書いているうちになんか書き足りないな、内容薄いなと思って書き加えたら大分ボリュームが増してしまった。
普段じゃぁありえないことだぜ、コイツは。

と、コロコロ思考が変わり過ぎて何書いてるのか分からない、けど書いてて楽しかった。


この投稿でアンケート終了とさせていただきます。
『アンケート結果は原作前に原作キャラと関わってもいい』に決定しました。
今回の投稿初期のアンケートで不快に思われた皆様、大変申し訳ございませんでした。


ちょっとした回想でもしてみよう。ロクなもんじゃないけど

月曜日ってホントにみんな辛そうだよね。道行く人たちの顔が完全に実写版ピ○チュウのしおれた顔なんだもん。学生も社会人もみんな同じ顔に見える。私はいつだって土曜日さ。なんで日曜日じゃないかって?日曜の朝は虚無感で満ちあふれるじゃん。まぁ生活スタイルとか考えたら完全にスキューロの臑を囓っているクソニートなんだけどな。

てかやっぱり日本人の顔に違和感覚えちゃうなー。生まれも育ちもイタリアだったせいか、もしくは自分の顔がイタリア風になったせいか。まぁどうでもいいか。

 

私の斜め前、運転しているスキューロの隣の助手席に座るシーラの顔色が悪い。持っている荷物(ケース)のせいだろうな。シーラの持っている超頑丈(スキューロ談)なこのケースは、幽紋波(スタンド)のパワーBまでなら防げるとかいう頭のおかし・・・くないか。オールマイトにぶん殴られたらケースが中身ごとスクラップになっちまうからな。

 

このケースの中身は本気でシーラの命よりも貴重で、重い物だ。もしシーラとケースが人質になるようなことになったら、迷わずシーラを切り捨てるぐらいには。何せこのケースの中身は私の持つ幽波紋(スタンド)ディスクの全て。ありとあらゆる幽波紋(スタンド)がこのケースに封印されている。

エニグマがあればもっと持ち運びやすかったんだけど・・・なんでないんだよ畜生。戦闘能力皆無だからあってもいいだろ。

このケース、耐久性だけではなく形状も凄い。見た目は普通なのに両側面に二個ずつ鍵がついており、開けた鍵に応じてその部のディスクが出てくる仕組みになっている。

 

普段は絶対にバレないように隠しているか、私が部屋にいる時は常にそばにいるようにしている。だがこうして外を出歩く時は、私が持つと流石に不相応過ぎて違和感マシマシなので、スキューロに持たせるようにしている。今はシーラが増えたので持ち運び役はシーラになったけど。

 

部屋出る前にスキューロが壁ドンしながら殺気モリモリで脅していたからな・・・。本当に今日はシーラの厄日になるな。

 

「着いたぞ」

 

「あの・・・ここってエステ・・・ですよね?」

 

着いた場所、エステ『シンデレラ』という高級エステティックサロン。世界的に有名なエステティシャンが経営している店で、店長は『魔法使い』と雑誌に毎月掲載されるような超凄腕。

 

「ソイツは肌身離さず持っていろよ」

 

車から降りて店を見上げる。見上げるほどデカいとかどうなってんだよ。ここ本当にエステティックサロンか?なんでエステに高さを要求してるんだよ。

あ、なんか女の子出てきた・・・。高校生くらいかな?うわ、この時間だと朝帰りじゃん。なんか肌とか凄い綺麗になってるし・・・。あぁ、またご趣味ですか。お盛んなことでございますね。

 

「日本の学生って、みんな朝までエステに通うようなものなの?」

 

「そんなわけあるか。どうせ、あの女のロクでもない趣味で連れこんだのだろう」

 

あの女、頭の中身は兎も角としてエステの腕に関しては本当に『魔法使い』って言えるレベルなんだよな。人の心を変える感じ?気弱を強気にしたりとか。実際今出てきた女の子も、黒塗りの高級車から降りてきた怪しい3人組に気付いて、ウインクして去っていくとかいう素晴らしいほどの勇気。

 

「行くぞ、シクリーザ」

 

スキューロに先導されて店に入る。そう、今の私はシクリーザ。パッショーネのボスではなく、イタリアから日本に旅行に来たただの女性。そばにいる二人は一緒に来た友人達。

勿論顔も体格も変えている。変えているといっても少ししか変わらないが、仕方の無いことだ。生まれつきのこのクソ個性、もう少し効果範囲広くしてくれないものか。それが出来たのならこんな場所に来なくてもよかったのに。

 

相変わらず煌びやかな内装だ。正にThe金持ちのマダム方が来そうな場所。うわ、シャンデリア吊るしてある。ここ本当にエステだよな?ガラス張りの螺旋階段とかもう完全にお伽噺のお城だぞ?

所々にある装飾がウザったい。煌びやか過ぎて目が痛くなる。どこに金かけてんだこの店は。募金でもしてろ。

 

『シンデレラ』がいるのはいつも最上階の部屋、アイツだけが入ることが出来る部屋らしい。最上階まで全部螺旋階段とか面倒極まりない。エレベーター付けろよって文句言ったら、お城にはないでしょう?とか言われた。やっぱりここエステじゃなくて城じゃん。

 

ただ螺旋階段だけならいいが、外見通りこの建物大きいんだよ。5階とか近所迷惑レベルだぞ?日照権の侵害で訴えられればいいのに。

最上階に着いた時には既に額に汗が流れている。前髪がくっついて鬱陶しい。こんな時、自分の体力の無さが疎ましい。精神力はあるのにスタミナがないとはこれ如何に?

 

「久しぶりだな、『シンデレラ』」

 

やはりこの店に、この階にいた。『シンデレラ』は機材の後片付けをしていたが、私達が来たことに気づいたのか、気楽に笑顔で手を振っている。シーラが横で驚いている。『シンデレラ』として私に重要視されていた人物が、まさかこんな女性だったとは思うまい。

 

「あら〜?あらあらあらあら〜?シクリーザ(ボス)じゃない〜。いつ日本に来ていたの〜?ていうかそこの子は〜?初顔だけど、幽波紋(スタンド)使いの子かしら〜?」

 

うざったい言葉遣いをしながら、『シンデレラ』はシーラを頭のてっぺんから足の爪先までをじっくりと見る。見られているシーラは居心地が悪そうだ。殴っていいぞ、ソイツ。ていうかむしろ殴ってくれ。

 

「うんうん。いいわね〜。実にいいわ、この子。私の素材としては合格よ〜。ねぇ〜今日もいつものやりに来たんでしょ〜?なら、この子も弄っていいかしら〜?」

 

「お眼鏡に適ったなら良かった。弄ってもいいが時間が無いのでね。なるべく手短に頼むよ」

 

「ボス・・・じゃ無くてシクリーザか。えっと、弄るって何を?」

 

若干恐怖を覚えたのか、シーラが少し引きながら聞いてくる。私の呼び方はボスではなくシクリーザに統一させている。外でボスなんて年下を呼んでいたら確実に怪しまれるからな。シーラの問いに答える間もなく、『シンデレラ』に肩を掴まれたシーラがそのまま運ばれていく。

ニコニコと薄気味悪い笑顔だ。それだけ欲求不満だったか。

 

「連れていかれたが、いいのか?」

 

「いいんだ。そのためにここまで連れてきたんだから。玩具になるのはシーラでいい。私は御免だからな」

 

正直いってアイツの個人的な趣味に付き合っていると、なんかメローネを想像しちゃうんだよ。ほら、あの気持ち悪い問診。一応は私も女性だからさ、流石にあんな感じで問い詰められて、あんなキスの仕方とか聞かれるのはゴメンなわけよ。アイツもそんなことするのよ。他人の心を丸裸にするために。対象が思う理想の顔を見つけ出すために。

 

「俺はともかくとしてボスに茶の一つも出さないとは、相変わらず失礼な女だ」

 

「あら〜?ちゃんとあなたの分も持ってきてあげたのにその言い草は何?」

 

スキューロのうわ言のような文句に、まるでタイミングを計ったかのようにポットとカップを持って出てくる。あの様子じゃシーラは簡単に捕まったな。待てよ、シーラ今放置されてんの?

 

「はい、アールグレイよ〜。砂糖は一つで良かったわよね?」

 

「・・・覚えていてくれて嬉しいよ」

 

嬉しいわけあるか。コイツの問診に紅茶やコーヒーに入れる砂糖の個数が項目にあったんだ。本当に何なんだよこいつ。『ベイビィ・フェイス』の息子でも作ろうとしてんのか?

御丁寧に自分で入れるのは私の分だけ。スキューロはカップだけでカップの中には砂糖が山盛りになっている。しかも砂糖が角砂糖じゃなくて粉末状だ・・・この女、酷い嫌がらせだ。スキューロのこと嫌いすぎだろ。

 

「そういえばニュースで見たわよ〜。イタリアで凶悪なギャングが一斉摘発を受けたって。イタリア中の警察と世界中のヒーローを総動員したイタリア全土での一斉摘発。確かボスの身柄も抑えたとか〜」

 

「ソイツは良かった。私の故郷のイタリアに平和が訪れたのはいい事だ」

 

「でも〜私の前にいる二人は摘発されたギャングのボスとその側近。あら〜どうしてかしら〜?ボスは捕まったはずなのに〜」

 

「何が言いたい」

 

「あら〜ただの世間話よ〜。何も関係ないわ〜」

 

コイツぶん殴りてぇ!って心の底から思えるのはコイツだけだ。キンクリの必殺ブチャラティ割断チョップ御見舞いしてやろうか?いいやダメだ。コイツがどれだけウザくとも、殺したくてもダメだ。コイツハツカエルコイツハツカエル。なんか暗示かけてるみたいだな。

 

「それで〜本題は何かしら〜?顔だけじゃぁないんでしょ〜」

 

「正解だよ『シンデレラ』。いいや、彩辻彩」

 

『シンデレラ』———本名彩辻 彩に依頼したいのは顔だけではない。私が測り損ねているもの、簡単にはいかないもの、そもそもの手が足りないもの、今まで確かめるべきものだったのにも関わらず、真実を知りたくないという私の臆病さが見逃してきたもの。

 

重い息を吐きながら、アタッシュケースに付いている四つある鍵の一つを開く。開かれた先にあったのは横に並べられている三枚のディスク。私の持つ数少ない貴重な四部の幽波紋(スタンド)ディスク。

そのうちの一枚を手に取り、机に置く。

 

「先日、とある(ヴィラン)が私の居場所を突き止めて、襲撃を仕掛けてきた。私と奴は戦闘に移行した。私が戦うことを選んでしまうほどの実力者だったからな、襲撃者は」

 

「へぇ〜殺したの〜?」

 

「いいや、駄賃として右腕を置いていってはもらったが、アレはアレで使い道があるからな。まだ生かしているが、殺すのは時間の問題だ」

 

私のミスで起きたことだが、アホな無能と悟られないように、あえて不都合な部分は言わない。呼び込んだのは私だとか絶対に言うもんか。

 

「戦っている時、アレは私の幽波紋(スタンド)が見えているかのような動きをとっていた。私がディスクを与えていない非幽波紋(スタンド)使いであるにも関わらず、奴は私の『ホワイトスネイク』の動きを見ていたのだ」

 

「ふぅ〜ん。つまりは〜私が『シンデレラ』に来る客に対して〜幽波紋(スタンド)を見せて、見える条件を炙り出せばいいのね〜?」

 

「話が早くて助か・・・早いよバカ」

 

コイツ、話が終わってないのにディスクぶっ挿しやがったよ。もう抵抗がないとかそういうレベルじゃねぇ。笑顔で挿したよ。ていうかまだ挿していいって言ってないじゃん。気が早いんだよ。

 

「う〜ん〜。やっぱりいいわ〜この感覚〜」

 

自分の幽波紋(スタンド)『シンデレラ』を早速呼び出し、踊るように自分の身体と同調させて旋回させる。楽しそうでなによりだよクソ野郎。

はぁーAFOが幽波紋(スタンド)を見ることが出来たということには必ず何かしらの個性が関わっているはずだ。でなければアイツが天然の幽波紋(スタンド)使いとして芽生えかけていたか。五部でトリッシュが幽波紋(スタンド)を持っていないにも関わらず、幽波紋(スタンド)使いの才能が半覚醒していたという理由で彼女は幽波紋(スタンド)を視認できていた。AFOもその口か、もしくはお得意の個性の強奪による何かしらの変化か。

ていうかアイツ、気持ち悪い顔だったからなるべく直視しないようにしていたけど、()はあったか?もし無いなら見えていた、という表現はおかしいかもしれない。

 

「いいわ〜やってあげる。私のお客は私の物。私の物に私が何をしようが私の勝手だもの〜」

 

相変わらず自由な奴。客からしたらいい迷惑だ。でもこんなクソみたいな奴でも性格隠していれば世界的なエステティシャンなんだよな・・・。世の中は残酷だ。

 

「じゃあ、私は彼女に魔法をかけてくるから〜、シクリーザは少しだけ待っていてね〜」

 

ヒラヒラと幽波紋(スタンド)で手を振りながら、奥へとまた消えていく。ああアイツの相手は本当に嫌だ。SAN値がゴリゴリ削れていくわ。

あ、でもシーラがどんな変化を遂げるのかは気になるな。シーラも美女なわけだしさ。

 

「いいのか?あんな女に任せて」

 

「脳ミソは兎も角として腕や『信頼』は確かだからな。頼りたくなくても頼らなければいけない。そういうラインにアイツはいるんだよ・・・。本当に、なんであんなのと出会ってしまったんだか・・・」

 

 

 

 

 

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彩辻彩と出会ったのは五年前、イタリアのミラノだった。近々ミラノでファッションショーが行われる予定だったらしく街はいつも以上に人で賑わい、テレビのカメラは連日会場前や、街に入るモデル達を追いかけていた。

そんな時、私は迷子になったのだ。

 

いや、普段ミラノの街とか行かないし。あの時ミラノに行ったのだってちょっと欲しい限定品があったから。ス、スキューロには勿論伝えたよ?まるで『はじめてのおつかい』をする子供を見守る親のような目をしていたけど・・・。

 

まぁ私の普段のホームはマッジョーレ教会付近だったからミラノまで行くのは実質初めてだったんだけど、スマホのGPSとかあるからいいかなって。まぁそれが失敗だったんだけど。

予想外にも人が多かったのだ。多すぎるほどに多かった。勿論の如くあちらこちらから乱れ飛ぶ電波によって私の電波は壊滅。GPSなど海の上に現在地を指し示した。

完璧と言えるほどの迷子。人波にあれよこれよと流されて、いつの間にかどこぞのカフェに行きついていた。

休憩がてらにカフェに立ち寄り、席がないので相席を頼んだ。その時に出会ってしまったのだ。当時、未だ駆け出しを終えたばかりのエステティシャンであった彩辻彩と。

 

初めて出会った彩辻は何故か突然発狂したように暴れだした。なんだコイツジャンキーか!?と思うほど唐突に。なんの前触れもなくだ。頭も痛いのか両手で抑えるほど。体を振り回すのは痛みを誤魔化そうとしているのか、それとも耐えきれないからか。

発狂した奴に関わりたくなんてなかったが、流石に人の目もある。私は何もしていないという証明のために一応大丈夫かと声をかけ、肩に手を置いた。

するとどうだ。突然私の両肩をガッシリと掴んで、私の素材になって欲しいと懇願してきた。お前さっきまでの発狂はどうしたァ!?と突っ込むようにあの時反射的にキンクリでぶん殴ったのは私の脳がフリーズしたからだ。いや、発狂していた奴に突然素材になってくれと言われたら、誰だって反応なんてできまい。出来たら凄いよ。いや、お世辞抜きで。

 

流石に幽波紋(スタンド)を持っていても怖かった。当時の私は十代前半の少女でしかない。まぁその頃から私の平穏を求めるスタンスが根付いていたのも理由の一つか。目立ちたくなかった私は速攻で逃げた。人混みに入って身長の低さを利用して足の間をすり抜けて、何とか遠くまで逃げた・・・と思っていた。

 

彩辻は私の匂いを嗅ぎながら辿ってきたとか、訳の分からないことを言って私のことを追ってきた。血眼になってか弱い少女を追いかけるとかまじキチガイの所業。

もういい加減本気でぶっ潰してやろうかと思った。たかが人間一人、事故に遭うのは不自然じゃあない。この女が街を走り回っていたのは周知のこととなった。なら、ここでたまたま事故に遭って亡くなったって、問題は無いじゃあないか。

 

行動に移そうとした時、どこからかスキューロが現れて彩辻をぶっ飛ばしたんだ。アーマー状に固めた氷の拳で。殴られた彩辻は地面を二、三度バウンドしながら転がった。

流石に気絶したかと思ったら、まさかの復活。第二ラウンド開始じゃあ!と言わんばかりに鼻息を荒くしていた。

 

まぁ勿論ながら勝てる訳もなく、スキューロがトドメを刺そうとしていたところを拘束させた。いつでも殺せるように『マン・イン・ザ・ミラー』で首から下を鏡の世界に送って、ギャングダンスを踊りたくなるような状態にしてやった。

尋問紛いをしたら吐くわ吐くわ。私のような人間は見た事がないだの、美しさに手を加えて更に美しくしたいだの。まぁ素材と言われるよりはマシだったかな。あんまり褒められたこととかないから、少しは気分が良かった。

 

そう、気分を良くしてしまったのだ。不用意なことをしないという条件で、アイツにシクリーザ()の顔を弄らせてしまったのだ。まぁ、当時は丁度、手が空いたら探していたからな。特に『顔』に詳しい人物を。

 

私の持つ体格変化の劣等個性、この個性はどうやら覚えた肉体の形を表に出すものらしい。ああ、つまりだ。私の個性はPCにダウンロードされている二枚の画像のどちらかをPCのホーム画像にするものだ。これなら分かりやすいか?

 

要は、私には二つの顔があるのだ。フェリシータ()シクリーザ()。しかし流石は違いが薄すぎるほどの劣等個性。指紋も声帯もDNAでさえほとんど変わらない。最早無駄ァ!と言えるほど。だから根本的に全てを変えたかった。

 

だけど普通に整形とか怖いし、何よりこの個性の影響でどんな風に作用してしまうのか分からない。

 

私の不安を解決してくれそうな幽波紋(スタンド)はあった。『シンデレラ』という戦闘力皆無の幽波紋(スタンド)が。スキューロに何人か用意させて使えるかどうかの実験をしたが、どうやら『シンデレラ』の扱いには相当のセンスがいるらしい。そもそも幽波紋(スタンド)とはその大半が才能の延長線上にあるもの。この幽波紋(スタンド)はその方向が特に顕著に出ている。『ヘブンズ・ドアー』と並んで元の所有者が屈指の才能マンだったからな。

だから探していた。私の顔を変えられるほどの『シンデレラ』の使い手となれる存在を。ただの、そこら辺にいる肩書きだけの無能ではダメだ。才能のないものに幽波紋(スタンド)を、私の顔は預けられなかった。

 

彩辻の実力は素人目でも分かるほどに、文句無しのパーフェクトと言えるものだった。最早別人にまで見えてしまうほど。

期待は少なめでスキューロと一緒にその腕を見てやったら、まさかのビックリな程の手腕。やっぱりタガが外れた人間ってのは凄いんだねって思い知らされたよ。

 

即採用して幽波紋(スタンド)を与えて慣れさせて、いざ開始!だと思ったらまさかの問診からスタート。自分の好きなものや日常での行いなど、完全にメローネみたいなことを言い始めた。挙句の果てにはキスの仕方まで。

 

問診だけで一時間。アホじゃねぇのかと叫びたくなるのを我慢していざスタート。整形は初めてだったから緊張していたが、途中で緊張の糸が切れて眠っていたらしい。

後でスキューロに聞いたが、彩辻は熟練の幽波紋(スタンド)使いのごとく、余計なことはせずに何も問題なく処置を終えたらしい。

 

それで、数週間後に包帯を取ったらあら不思議、そこには新しいシクリーザの顔があったではありませんか。

 

実際に体感してみて興奮するほどの素晴らしい腕だったため、今後も良い関係を築いていきたいと口を滑らしてしまった。すると奴は獲物がかかるのを待ち望んでいた詐欺師のように、極上の笑顔で私の両手を掴んで、こちらこそと言ってきたのだ。

全部終わって、帰ったときに後悔したよ。だって冷静になって考えてみなよ。周りを気にしながら怯えている人間が大好きとか趣味悪すぎだろ。私はそんな変態と、今後とも仲良くしていかなければならないのだ。

 

友好の証として『シンデレラ』を貸し出してしまっている。もういっそのことスキューロに始末させようか悩んだが、また顔を変えなければならなくなるかもしれない。それはいつになるか。一年後か、一ヶ月後か、一週間後か、明後日か、明日か。

いつ何が必要になるか分からない、もしそこに存在していたとき実際に近づかなければ対処のしようがない恐怖。

性格は屑だが、彩辻は確かに使える。私という彩辻にとっての最高の餌をぶら下げることで、制御する。信頼してもいいのだが、うかつに信頼してしまえば絶対に取り返しのつかないことになる。そんな気がしたのだ。

 

そこから現在に至るまでの数年間、彩辻とシクリーザ()の関係は続いた。私は会うたびに玩具にされて、彩辻はそのたびに腕を上げた。幽紋波(スタンド)を常時与えているわけでもないのにだ。世間が言うとおり、もはや彩辻の成長は『魔法使い』と呼べてしまうほどまである。

成長し、名が知れ渡り、人が金を積んで彩辻に『美』を求め、彩辻は私に金を振り込み、私は彩辻に遊ばれる。

 

こんな関係さっさと終わらせたいと思うが、この関係が彩辻の制御を取り持っているのだ。彩辻は私に忠義があるわけではなく、脅しに屈するようなまともさはない。

 

流されるがまま、私は彩辻を受け入れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったらしいな」

 

嫌な回想をして適当に時間を潰していたら、スッキリした顔になった彩辻が出てきた。シーラは・・・うん、ご愁傷様としか言い様がないな。顔とかはちゃんと綺麗になってる。だが明らかに顔に疲れが浮かんでいる。本当にエステしていたのか疑問に思いたくなる光景だな。

 

「準備は出来ているわ。さぁ、たぁくさぁん楽しみましょ~」

 

笑顔で手招くな。ていうかシーラじゃ満足出来なかったのかよ。

 

「スキューロ、シーラを看病してやれ」

 

スキューロが相手ならシーラも嬉しいだろ。

私はゴクリとわざと音が出るように唾を飲み込みながら、この世とあの世の境目にも見える敷居をまたいだ。

 

 

 

 

 

 

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「相変わらず綺麗で真っ黒な子」

 

人一人がすっぽりと収まる台の上で眠っているシクリーザを見下ろし、使い慣れた器材をもてあそびながら、彩辻は頬を緩める。

 

彩辻彩は『美』の探求者である。それは世間が言うような生易しい物ではなく、悍ましく冷徹、執念とも呼べるほどの物である。求める『美』のためならば、人など薬物などの実験で使われるマウスと同じ認識である。それはつまり、『美』のためになるのなら、たかだかマウス程度の犠牲など考慮しないということ。

 

この悍ましい精神は天性の物だったわけではない。この個性社会で生きていくうちに、芽生えてしまった物なのだ。誰にも知られず、隠れ潜みながら培われてきた物なのだ。

 

彼女は平凡な人間だった。ただ少し、周りとは毛色が違う個性を持っているだけで、どこにでもいる人間だった。そんな彼女がシクリーザをドン引きさせるほどの変態となったのは、やはり個性のせいだった。

 

彩辻の個性は人の感情を色彩として認識するもの。幸福やそれに近い感情は明るい色に、負の感情は暗い色に。第三者から見れば無個性として見られるこの個性は、確実に彩辻の精神を歪めていった。

 

彼女は優しい人間だった。人を喜ばせたい、幸せにしたいと心のそこから思っていた。それに対して持ち得た個性は、まさに最高の代物だった。学生の頃から夢を抱いていた彩辻は、人の観察を趣味としていた。彩辻の目に見える人の持つ感情の色。それらの違い、人による差違を判明させたかったのが理由だった。

 

高校三年間、長く短い時間を使って導き出した答えは、『美』だった。観察対象に女性が多かったのもこの答えになった理由だろうが、根本はそこではない。

 

男であれ女であれ、幸福な感情を出している人間は総じて外見に自信を持っていた。ファッションではなく顔。顔の善し悪しが感情に対して大きく関わっていたのだ。逆に顔が良くない人間は、自分に自信がないのが行動にも丸見えで、他人の視界に入らないように徹しているような行動を見せた。

そこにある感情が怯えだと気付いたのはすぐだった。そしてそれの解決法もすぐに見つけ出した。

 

高校卒業後、抜群の成績を保持していた彩辻はエステティシャンの道に進むべく、教師達の制止を振り切って国内屈指のエステ専門学校に進学した。

 

観察によって『美』に並々ならぬ興味を持ったため、完全な独学で鍛え上げたエステの手腕はプロにさえも引けをとらないと判断され、いずれは世界に通用すると判断された彩辻は特別に、世界で名を轟かせているエステティシャンに、専属で指導を受けられるようになった。

 

専属で指導してくれるという人の元に弟子入りしてから数年、彩辻の腕は既に師となった人物を超えるほどのものとなっていた。そこに対する師は悔しさや嫉妬を吐露するも、初めから分かっていた結果だと割り切って彩辻にとある仕事を任せた。

近々、ミラノで行われるファッションショー。その前準備となるモデル達のエステを行えと言ったのだ。

これを彩辻は渋々と引き受けた。

 

もとより、彩辻のしたかったことは負を正に変えること。今をときめく者を美しくするためではない。だけどイタリアに来てから扱うのは正の者だけ。偶に来る負の人間も、少し手を加えるだけですぐに反転してしまう。

 

この頃からだろう。彩辻の歯車が歪んだのは。

 

長い時間を過ごすうちに、彩辻は腐っていってしまったのだ。元来の目的は既に忘れ、自分が何故こんなことをしているのかと疑問にさえ思ってしまう。行動原理すら忘却してしまった彩辻に残ったのは、エステティシャンとしての天才的な腕だけだった。

 

ミラノに滞在してからも、高校時代からの日課として行われている人間観察は、ただ視界に色を映し、退屈を溜め息として吐き出す時間だった。もうどんな色がどんな感情を表しているのかも分からない。いろんな感情が混ざり合ってぐちゃぐちゃになっている。もう気持ち悪いほどに。

 

日本に帰ろっか、とこんな思考が頭の片隅に小さく生まれ始めた直後、相席を頼まれたので適当に受け入れた。彩辻にとってはそんなことはどうでもよかったのだ。だが、相席してきた人物を横目に見た瞬間、彼女の視界は消えた。否、消えたと錯覚するほどドス黒い色をした膨大な感情が視界を埋め尽くしたのだ。あまりにも大きすぎる負の感情。その情報量に脳が気を狂わせるほどの激痛を発する。

弾くように椅子を膝裏で倒しながら立ち上がり、呻き声を上げながら飲んでいたアイスコーヒーを腕で倒し、痛む頭を懸命に抑える。

 

大丈夫か?と聞かれて相席を頼んできた少女が彩辻の肩に手を置いた。触れられたことによって頭痛の中、彩辻はまたしても少女を視界に収めてしまった。今度は横目でなく正面から、二回目というほんの少しの耐性をつけてしまって。

 

頭を破壊するほど鳴り響いていた頭痛が波のように引いていく。次に彩辻の頭を支配したのはやはりどうしようもない程の目の前の感情だった。

 

理解不能なまでに大きくて、理解不能なまでに見えなくて、理解不能なまでに暗闇で、理解不能なまでに負の感情で。

 

頭がスッキリとしていくのを彩辻は感じた。人生で一度味わえるかどうかという程、頭の中がクリアになっていく。いや、もしかしたら本当の意味でクリア(まっさら)になっているのかもしれない。

 

少女を視界に収めることで、彩辻の思考が変えられていく。

感情の救済は『美』の探求という自己満足に。

人間は素材に。

純粋は邪悪に。

 

見てみたいと思ってしまった。その怯えの先、恐怖の壁の向こう側にある少女の姿を。絶望的なまでの負の感情を撤廃して、反転させて行動させて観察したい。タガが外れたらどうなるか、言葉は狂うか、行動は変わるか。

見たい見たい見たい見たい見たいみたいみたいみたいみたいみたいミタイミタイミタイミタイミタイミタイ。

 

彩辻彩という人間が完璧に狂った瞬間である。どこまでも純粋に、探求者として観察者として邪悪になった。自分の利益のために他者を平気で踏みにじることの出来る『吐き気を催す邪悪』がこの世に誕生したのだ。

 

気付けば彩辻は無意識に少女の肩を掴んでいた。かつてないほど、決して逃がさないと言う意識が表面に出るように、万力の如き力で捕まえていた。

 

 

「ねぇ〜、私の素材になってくれない?」

 

 

いつかきっと打ち砕く。少女の恐怖の壁を。そしてその姿を、自由自在に弄り回すのだ。自分の思うがままの究極の『美』を、少女で実現させてみよう。




朗報)今話のボス、人の視界に入るだけで人を狂わせる。


イカれてるキャラとか書いてて凄い楽しくなる。性根ねじ曲がってるからかな?



今更かもと思うかもしれないし、もしかしたら認識しているかもしれないけれど一応言っておきます。
この作品はタグ通り別に勘違いとかじゃありません。大体は深読みとか『運命』っぽい偶然ばかりです。それとボスも小心者なだけで、決して状況に対する認識が遅かったりだとかはありません。むしろ今の状況を出来れば、前向きに利用しようとします。そうじゃなきゃ精神的に潰れてますから。

再)今後の展開、主に2、3話後について

  • 原作前に原作キャラと関わってもいい
  • 何言ってやがる、直行で原作いけやダボが
  • 関わる原作キャラは俺達が決める
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