ゲパードM1は定時に帰りたい   作:さとーさん

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Monday 11/Mar/2061 8:05

「Charley, This is George. I got a Jackpot. Over. (こちらジョージ、ジャックポッドを引いた。送れ)」

 みなさんこんにちは、ゲパードM1です。ワタシは今、教会にいます。お祈りのためではありません。ワタシも大多数の人間と同じように神様なんて信じていませんので。コーラップスによる汚染と第三次世界大戦を指くわえて見てただけの神様なんて願い下げってやつです。

 ……ええ、そうです。ここはF02地区のシンボル、街を見渡す丘の上の教会、その屋根裏部屋です。グリフィンは荒廃した世界で衰退した宗教界にも多額の寄付金を納めており、今回はその恩恵に与ったみたいですね。

 ワタシの任務は至極単純。AfGが抗議行動……じゃなかった、襲撃のために足止めしたゴミ収集車を狙撃すること。ただそれだけです。

 初弾は先ほどの報告通り見事標的に命中。今も轟々と燃え盛っています。ワタシの放ったMk211徹甲榴弾がゴミ収集車の天板を貫通し、衝撃力を失った弾頭が車体の中で止まり、遅延信管が作動するとウェルロッドさんが事前に車内各所に仕込んでおいた炸薬を巻き込んで一気に大爆発、という寸法です。まさにワンショットキル。

 そんなエキセントリックな方法じゃなくて時限爆弾にした方が、とも具申したのですが、どうやらAfGのゴミ収集車襲撃計画は複数案あって最後までどの襲撃地点が本命か絞ることができなかったそうです。無線を使った爆破も検討されたものの、標的とされたクリーン・シティ社のゴミ収集の車体に使われている合金が電波を通さない恐れがあり、直接起爆させるしかなかったのだとか。

 ただ、幸いにして全ての襲撃候補地がこの教会から狙撃可能な位置にあったため、この作戦が採用されたとのことです。なんにせよ、うまくいって良かった。

 ……本当にうまくいって良かったのでしょうか。もう一度スコープで現場を覗いてみます。

 爆心地のアスファルトはめくれ上がり、炎上するゴミ収集車はもはや原型をとどめてなく、その真後ろに停車しモロに爆発を受けた乗用車は綺麗に横転しています。車体と道路の間から青白い腕が生えているのが気味悪く、しかしAfGメンバーが固まっていたゴミ置き場の周囲はもっと酷いことになっています。もう誰のものかわからない千切れた手足や飛び散る青白い臓物は所々が焦げています。日光を受けてキラキラ光るバスケットボール大の赤黒い球体は、爆散したフロントガラスを盛大に浴びた誰かの頭部でしょう。まさに阿鼻叫喚の惨状です。

 見るに堪えないのでスコープから目を外します。正直に言うと気分が悪くなってきました。こんな光景を見ちゃったら、もう二度とお肉は食べられないと思います。ヴィーガン生活の始まりです。

≪George, This is Charley. Check remain Ducks. (こちらチャーリー、残ったカモを確認せよ)≫

 ……指揮官からの追加の命令です。生存者を確認せよとのこと。えぇ、またあの地獄を見なきゃいけないの……。

 吐き気をこらえながら三度スコープを覗きます。組織の中心人物がいたゴミ収集車付近は見るまでもなく、動いているのは爆心地から離れたところに一人、えーと二人、三……ってこの人胴体ちぎれてるじゃん。二人、二人……三人…………お、あれは四人目……いやもうじき死ぬなあれ。うん、三人。三人ですね。

「……Charley, This is George. I ripped off all Ducks. 3 Boys wait at a distance the Roulette. (こちらジョージ、カモは全員平らげた。ルーレットから離れていたボーイ三人が待機中)」

≪George, This is Charley. Good job. I'm going to cash the chips. Out. (こちらチャーリー、良い仕事だ。これより換金に向かう。交信終わり)≫

 指揮官は詰めの段階に移行しました。……さてはて、これから指揮官もあの現場に向かうことになるわけですが、鉄面皮のような指揮官でも流石にあの光景には顔をしかめるのでしょうか。ちょっと見てみたくもあります。ウ、もしかしたらェルロッドさんなんか意外に吐いちゃったりして。まあウェルロッドさんはあの現場を見られないので残念です。

 でも……本当にこれで良かったのでしょうか。

 AfGだけではなく、おそらく近くにいたゴミ収集の二人も巻き込まれて死んだことでしょう。近くの建物にいた住民にも死傷者が出ているでしょう。正義なんて御大層なものはワタシにはよくわかりませんが、これがちょっとした殺戮であることはわかります。任務として割り切ってしまっていいものなのでしょうか。いささか良心が痛みます。

 けれど、これでやっと任務終了です。二次集結点で指揮官と合流後、明日には飛行機に乗って帰還できます。遅くとも明後日の夜には寮に戻れるはずです。汚れ仕事はさっさと切り上げて早く帰りたいです。

 ……おや、遠くでサイレンが鳴っています。きっと消防車でしょう。流石にやましいことで溢れかえるスラム街といえども、火事ばっかりはたまらないということでしょう。街中で暴漢に襲われたら助じゃなくて消防を呼べとはよく言ったものです。警察沙汰は関わると余計な迷惑を被るかもしれませんが、火事は放置するだけでもれなく迷惑を被るおそれがありますからね。

 さて、それではワタシはこの辺りでお暇いたします。続きは作戦報告書……は作らないんだった。えーっと、明日のニュースをご確認ください。それではご機嫌よう。

 

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