機械仕掛けの人類へ   作:トクサン

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未来人形

 

 森を抜けた先には街が広がっていた。否、正確に言うのであれば嘗て街だったモノ──即ち廃墟である。周辺には蔦や苔、木々がびっしりと生え揃い宛ら打ち捨てられた世界そのもの。大樹となった木々は葉を傘の様にして大地に影を落としていた。銀次は前を歩く機械に目をやりながらも周囲の景観に驚きを隠せなかった。こっそりと足元に転がっていた破片を拾い、まじまじと見つめる。それは見間違いでなければ見慣れた材質のもの。少し力を入れればパキリと半ばから折れ、灰色の粉塵が指先に付着した。

 

「銀次……この建物は」

「あぁ、鉄筋コンクリート造りだ──文明が余りに酷似している」

「トップが人間だからか?」

「だからと言って此処まで似るか普通? 俄かには信じられない、実は既に地球と友好関係を築いていたと言われた方がまだ納得できる」

 

 破片を地面に放りながらそう口にする。建物はビル形式で窓も存在している。既に廃れて廃棄されてはいるが今でも地球に存在する建物だ。鉄筋コンクリート造り、どうみても地球文明の技術である。

 しかし信号や標識、車といった存在は見られない。まるで住む事だけを考えた様な作り方だった。銀次は訝しむ、しかし完全に疑い切れないのも事実。何せ今まで同規模の文明を築いた存在と人類は出会った事がないのだ。そもそもの判断基準が無かった。

 

「銀次、金属・熱源反応だ」

「……分かっている」

「多いぞ」

 

 周囲を観察しながら進んでいくと視界の隅に熱源探知の文字が躍る。数は十、二十、三十まだ増える。銀次は自分の体が硬くなっていくのが分かった。多勢に無勢、もし連中が襲い掛かって来たら二人だけでは撃退できないだろう。いや、相手が戦闘用機械人形でなければ或は。

 街の中心には一際大きな樹が生えていた。そしてその大樹の麓に数え切れないほどの機械が集っている。整然と並んでいる訳では無い、ごちゃごちゃと群衆のように蠢き合っている。外見だけは限りなく人間に近い、それだけ見るとただの人間の集まりに見えた。

 

「出迎えか……四郎、野太刀は掴んでおいてくれ」

「了解、銀次も万が一の時は頼むぜ」

「当然だ、こんな所で死にたくはない」

 

 そう言いながら金属反応に目を向ける。生体反応はない、奴らは全て機械だった。人間は──連中を作り出した生命体の存在は見えない。隠れているのか、或は全て丸投げしているのか。自律機械を作るだけの文明なのだ、当然離れた場所でやり取りが出来る無線の類も作ってあるだろう。

 既に連中の創造主には存在を知られていると考えた方が良い。

 

『皆! 人間、人間見つけたよ!』

 

 前を行く機械が何事かを口にする。すると蠢いていた機械の群衆がピタリと動きを止め、それからグルンと一斉に此方を見た。その迫力は一瞬銀次と四郎の足が止まってしまう程。一斉に甲高い駆動音が鳴り響き、幾つもの瞳を象った無機質な目が二人を射抜いた。否が応でも緊張が高まる、四郎は担いだ野太刀を掴み、銀次もまた脇差を強く握った。

 

『ホントだ、人間だ! 生きている人間だ!』

『嘘じゃなかったの!?』

『死んでなかった! 死んでなかった!』

『人間? 本当に人間!? 嘘ッ!』

 

 瞬間、わっと歓声のような声が上がる。それは喜びの声の様で、群衆は屯していた大樹の麓から一斉に二人目掛けて駆け出した。多くの人型が自分達目掛けて殺到してくる、その姿は恐怖を駆り立てるには十分過ぎる。

 

「銀次ッ!」

「まだだっ、まだ構えるな……ッ!」

 

 言いながらも鯉口を切る銀次、コレが攻撃の前兆ならば迎え討たなければならない。囲まれたら終わりだ、銀次は腰部の携帯小箱から電磁榴弾を取り出し、ピンに指を掛ける。万が一の時は地面に叩きつけて動きが止まった瞬間に逃走するつもりだった。

 群衆は砂煙をあげながら二人の近くまでやってくる、もしそのまま突撃してくるようなら即座に起爆させる。銀次はディスプレイ操作で対電磁波用のコーティングを施すと衝撃に備えた。

 

「四郎、プロテクトは」

「もう終わってる……ッ!」

 

 その答えを聞いた瞬間、こちらに駆けていた群衆は凡そ二メートル程の距離でピタリと足を止めた。

 あと少し進んでいたらピンを抜いて起爆させる所だった。四郎は野太刀を両手で掴み今にも斬りかかりそうな気迫。銀次も後ろ手に電磁榴弾を隠し、もう片方の手は脇差を掴んでいた。

 止まった? 四郎と銀次の心臓がバクバクと鳴り響く。兵装を握る手には力が籠った。 

 

『わぁ、凄い、本当の人間を見たのは初めてだよ!』

『ねぇ、どうすれば良いの? 人間を見つけたら保護しなきゃだよね? 守らなきゃだよね? 中央管理局に同行をお願いすれば良いの?』

『わ、私も分からない、けど守らないって選択肢はないよ……』

『私達の言葉が分かってないみたい、星の外の人?』

『ずっと昔に宇宙に飛んだ人間かもしれない!』

『パトリア・パトリオットがあるのに? そんな事をしたら死んじゃうよ』

『散布される前に出たのかもしれない、きっと地球に戻って来たんだ!』

 

 ワイワイ、がやがや、機械同士の何らかのやり取り、それを銀次と四郎は冷たい汗を流しながら見守っている。何を言っているのかは分からない、しかし誰も彼もが武器を持たず攻撃的な意志は見せていなかった。

 

「お、おい……銀次、こういう場合はどうすりゃ良いんだ」

「慌てず、騒がず、慎重に、とはよく言うけれど……取り敢えずいつでも逃げられるようにはしておくんだ」

 

 それしか出来ない。囲まれてはいないが逃げるのは難しいかもしれない、銀次は近付いて来た事で連中の素体をじっくりと観察する事が出来た。遭遇した時の機械一体だけならば特殊機体という可能性もあったが、そうではないらしい。目前に並べられた機械はどれもこれも人型。

 余りにも人間に近い──いや、近すぎる。皮膚と言い眼球と言い、その見た目は人間に近いなんてモノじゃない──人間そのものだ。

 

「探知機能が無かったら完全に騙されていたな」

 

 ポツリと呟く、それは四郎にも聞こえない声量。

 こんな人間に近い機械は四郎達の母国である大和、それどころか世界どこにも存在しなかった。見た目だけならば迫る事も出来ただろう、けれど連中の感情豊かな表情、行動、仕草、どれも凡そ機械とは思えない程に【生物的】だった。

 こと自律機械の技術に於いて明らかに自分達の星よりも技術が発達している。下手をすると鎧武者の出力よりも上かもしれない。人工知能、無人機の強さは中身を考えなくて良い事だ。

 そんな事を考えていると不意に、群衆の中から一体の機械が歩いて来た。外見は皆似たようなものだ、恐らく幾つかの型が存在しているのだろう。ソイツは銀次と四郎が最初に遭遇した機械に酷似していた。

 

『──まずは中央管理局に連絡を、それから指示を仰ぎましょう、市街全域に緊急警報発令、捜索全隊に帰還命令、各員無いとは思いますが脅威に備え市街守備に回って下さい、貴女達が失敗すればこの人たちが死にます、鼠一匹通さないで下さい』

『わ、分かった!』

『うん!』

 

 集っていた群衆がバッと一斉に散っていく。その様は正に蜘蛛の子を散らす如く。やけに気合の入った、という表現は少しおかしいか。しかし機械たちは何か使命に満ちた様な表情で一斉に駆け出した。ビル群の隙間を潜り、壁を蹴って屋上に跳躍。目の前にいた存在が一瞬で消えて居なくなる。地面を蹴った次の瞬間には六、七階建ての建築物を易々と飛び越えていく。その様子を銀次と四郎は呆気にとられた様子で見ていた。

 その運動能力──凡そ鎧武者とは比べ物にならない。

 

「な………何だ、今の」

「………」

 

 正しく二人にとっては悪夢だった。自分達の誇る大和製強化外骨格【鎧武者】、戦闘用のパワードスーツとしては量産型として最高傑作と呼ばれる程の性能を持つ。しかしその鎧武者と比較しても、つい今しがたまで屯していた機械達の運動性とは雲泥の差があった。

 この鎧武者では逆立ちしたってあんな、三角飛びやビルを易々飛び越えるような真似は出来ない。これは戦闘になったら一気に押し込まれて終わる、例え火砲があったって連中を捉えられる気はしなかった。

 

 この場に残ったのは大型の機械が一体、そして両脇に同型の機械が二体。両脇の二体は銀次と四郎、両名と同じ程度の大きさだった。しかしそれでも戦うとなれば苦戦──否、逃げる事さえ困難だろう。

 

『二人はこの場で待機を、アクセスポイントを開いてこの方達と意思疎通を図ります』

 

 何事かを口にした大型の機械は銀次と四郎に歩み寄って来る。此処まで来て銀次は腹を決めた、これ程の技術を持った文明である。電磁榴弾程度では運動機能をマヒさせる事も難しいだろう、何らかの形で対策を行っていると思っていた方が良い。

 銀次は脇差から手を放し榴弾を収納、完全に戦闘態勢を解いた。その様子を見ていた四郎が「おい!」と声を荒げる。突然の声に歩み寄っていた機械が足を止め、銀次は四郎の方に顔を向けた。

 

「銀次、何してんだよ! 兵装から手を離すんじゃねぇ!」

「四郎、腹を決めろ、多分俺達じゃ逆立ちしてもコイツ等には敵わない、なら少しでも警戒する姿を見せず友好的に振る舞った方がマシだ」

 

 そう言って銀次は機械に向かって一歩踏み出す。四郎は銀次の言葉に未だ納得出来ないのか、野太刀を掴みながら唸っている。何かあった場合は銀次を救出できるように合戦仕様のままだ。反して銀次は内部機能を通常仕様に戻す、これで大した出力は出ない。そして徐に脇差の鞘を腰から取り外し、そのまま機械の足元に放った。

 ガシャン! と音を立てて地面を転がる兵装。それをマジマジと見つめる機械。

 

「俺達の兵装だ、通じていないとは分かっているが、戦う気はない……どうか殺さないで欲しい」

 

 そう口にして銀次は背中の中巻野太刀も続いて排出、鞘から刀身を僅かに覗かせ武器であるとアピールする。そして納刀した状態のソレを同じように機械の足元に放る。そして完全に丸腰になった状態で両手を挙げ、そのまま相手の出方を伺った。

 

『キルヒ、これは』

『……恐らく武器です、この方達の』

『こんな金属の塊が?』

『えぇ、多分──戦闘の意思がないと伝えたいのかもしれません、二人とも、武装の解除を』

『でも後ろの人間はまだ……武器、危ないよ、傷付く前に武器だけでも壊すから』

『……なら私だけ武装を排除します』

 

 瞬間、銀次に歩み寄っていた機械の両掌に穴が空き、そこからシリンダーのような円筒がゴトン! と地面に落下した。次いで両足の脇からボックス型の何かが排出される、それを見た四郎が警戒を露にするが銀次は動じることなく見守った。

 そして機械は銀次と同じように両手を挙げて見せる。銀次は目の前の機械が兵装を排除したのだと理解した。

 

「四郎、コイツは兵装を棄てたぞ」

「何で分かる?」

「熱源探知だ、熱量が下がっている」

 

 銀次は言いながら一歩踏み出した。そして向こうも一歩踏み出す。

 そうして互いに一歩ずつ歩み寄り、手を差し伸べる距離になると恐る恐る両者は腕を下げた。心臓がバクバクと音を立てている。機械は四郎に手を差し出した、そして手首の皮膚が僅かに凹み、溶けるようにして消える。中から金属製のポートが出現した、それも一つだけではない、幾つかの時代を感じさせるようなポートだ。見た事のない様な差し込み口さえあった。

 

「──UAPか」

 

 銀次は呟き、鎧武者の手首、その内側からケーブルを抜き出す。幸い機械の手首に並ぶポートには差し込めるタイプが存在した。ここまで用意周到だと何とも、寧ろこの星の生物は人類の創造主か何かかと疑ってしまう。人はソレを何と呼んだか。

 

「銀次、オイ、下手に接続してウィルスでも流し込まれたら……!」

「大丈夫」

 

 例え鎧武者を失ったとしても生身と大して変わりない、コイツ等の前であるのならば等しく狩られる側だ。

 銀次がケーブルを手首の差込口に差し、そのまま接続を試みる。最初は意味不明な数字と文字の羅列であった。銀次は電子科の人間ではない、故にプログラム方面には全く明るくない。なすがまま、なされるがまま。元々人間が機械に対して処理速度で勝てる筈が無いのだ、だからこそ人間は機械に自我と感情を与えなかった訳だが──いや、きっとそうでなくとも人は機械に感情を理解させる事など出来なかった。

 暫くその文字と数字の列を眺めていると、ポーンという軽快な音と共に幾つかのウィンドが開いた。

 

「これは……位置情報?」

 

 立体化された周辺の地図、そこに表示される赤い点が三つ。恐らくこれが機械の位置、そして暫くすると青い点が二つ表示された。これはきっと自分達だろう、この短時間で目の前の機械は鎧武者の全機能、信号を暴いた様だった。

 

『大和製強化外骨格【鎧武者】、システム掌握、機能情報参照、該当言語探知、データベースアクセス申請、検索、ヒット──第七回特派惑星調査隊、第一艦隊神楽所属、ア号隊特別戦闘員藤堂銀次、中央情報統合所アクセス、情報開示申請、検索、該当なし、言語情報対象、ダウンロードを開始します』

 

 次いで一つの大きなウィンドが開く。銀次がソレに目を向けると見覚えのある文字が目に飛び込んで来た。文字列は『これは貴方の纏っている衣服から情報を引き出し、データベースより作成した文章です、意味は通じていますか』とあった。銀次は一も二も無く頷いた、その様子を見た目の前の機械は嬉しそうな表情を浮かべ再び文章を構築する。

 

『解析とダウンロードが、まだ完全ではありません、同時進行で、この文章は作成されています、不出来はご容赦を──まず、私達は貴方、貴方達、貴方方に危険、害を加えません、その意思を持ちません、私達は守ります、守護する立場にあります』

 

 害を加えない、その文書だけで一先ず銀次は胸を撫で下ろした。守護する立場というのは良く分からないが、敵対しないという事だけが今は大切だった。

 

『貴方達を拠点、支部に連れていきたい、決して害さない事を誓います』

「拠点……支部?」

 

 思わず疑問の声を上げると位置情報を表示していたマップが動いた。俯瞰視点だった画面は横から眺めるアングルへ。断面図のように映し出された画面には地下に巨大なスペースが存在していた。この大樹の地下に凡そ考えられない程の巨大な施設があるのだ、銀次は驚愕した。この広さは街を一つ収納できそうな程──一体どれほどの年月をかけて完成させたのか。

 

「……四郎、今から情報を送る」

「おう」

 

 銀次と機械をじっと見つめ、異変があれば直ぐに斬りかかれるようにしていた四郎は銀次の声を聞き頷く。数秒して送られて来た情報は自分達の位置情報、そして巨大な地下施設の存在。四郎は驚いた顔で銀次を見た。流石に四郎もこれ程巨大な地下施設は見た事がなかった様だ。

 

「此処に俺達を連れていきたいらしい」

「……オイオイ、いきなりそんな、まさか行くつもりじゃねぇよな?」

「その気なら連中は無理矢理にでも連れていけるさ、危害は加えないと言っている」

「言葉を交わせたのか?」

「あぁ、どうやら向こうのデータベースには此方の言語情報すらあるようだ」

 

 銀次は面頬の中で唇を噛んだ。人類はこの星を知らないというのに、コイツ等は人類の知識を得ている。つまり一方的に観察、あるいは観測する為の手段が存在しているという事。それも自分達の存在を隠したまま──いや、もしかしたら上層部だけが知っている星の存在かもしれない。

 仮にそうだとしても秘匿されるという事はそれなりの理由が存在するという事だ。この時既に銀次の中でこの星の文明は完全に人類のソレを上回った。

 

「これは、本当に上位者か何かかもな」

「天照神座とかいう眉唾物か?」

「覚悟だけはしておいた方が良い、『私は世界を創造した神だ』と宣う存在が出て来てもおかしくない、それで腰を抜かしたら笑いものだ」

「……了解」

 

 機械達は何かやり取りを行う二人を心配げに見つめている。言葉がきちんと通じているか不安だったのだろう。四郎は担いでいた野太刀をゆっくりと下げると、そのまま背中の鞘に納刀した。流石にこれ程の技術力を持つ星と敵対する事は避けたい、もし人類に見つからない様にするための術を持っていたとしたら完全に勝ち目はなくなる、元より銀次達に母星へ連絡を送る手段など無いのだから。下手をすると一方的に星を破壊されかねない。

 四郎も自分達の言語情報を持っているという言葉が決め手だった、自分達は知らない、相手は知っている──この差は大きい。

 それも圧倒的な技術力を持つ相手ならば尚更。

 四郎が兵装を収納した事で機械達の雰囲気が心なしか柔らかくなり、どこか緊張気味な機械に向かって銀次は頷いて見せた。今更だが頷きが肯定である事は既知の事らしい、不思議なモノだ。

 

『良かった、感謝します、拠点は此方です』

 

 そう文字を並べた比較的大柄な機械は銀次に背を向け、残った二体の間を通って歩き始めた。二体の機械は四郎と銀次を見て動かない。先に行けという事なのか、銀次は放り捨てた兵装を回収しつつ先導する機械の後に続いた。四郎も警戒しながら恐る恐る銀次に続く。その背後に二体の機械がつき、まるで捕虜のような形で連行された。

 足早に隣へと並んだ四郎が銀次に問いかける。

 

「銀次、おい、本当にこれで良いのか?」

「……こいつらの運動性能は見ただろう? 幾ら鎧武者が傑作機だからと言って無茶だ、アレは既存の強化外骨格で戦えるレベルじゃない、最低限拡張強化装備が要る、肉の体じゃない分自滅する可能性もないからな、人間が耐えられない速度でもビュンビュン飛び回るぞ、こんな野太刀程度振り回したって当たらない」

「だとしてもだ、連中がヤバイ技術力を持っているのも分かった、けれどこのまま素直に連れてかれて拘束なんてされてみろ、何されるか分からねぇぞ?」

「危害は加えないと奴は言った、それを信じるしかない」

「機械の言葉なんぞ信じられるか」

「ならどうする? 逃げるか、今なら二対三だからな、電磁榴弾と奇襲で離脱は可能かもしれない、けれどそれからどうするんだ……? あの大勢の『強化個体(ランカー)』から逃げ続けるのか」

 

 銀次は淡々とした口調でそう言い募る。所詮機械の言葉だ、信じられないという四郎の気持ちも理解出来る。そして連中の要求を蹴った場合の事を考え、銀次はついていく事を決めたのだ。四郎もあの大群に追われる想像をしたのだろう、ビルを跳躍で飛び越えるような連中だ、恐ろしく速く自分達を追い立てるだろう。四郎は小さく身を震わせた。

 逃げ切れる気がしない、それが結論だった。

 だったら最初から大人しくして居た方がまだ温情がある。

 

 

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