機械仕掛けの人類へ   作:トクサン

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もうひとつの可能性

 

 大樹の麓まで近付くと、不意にアスファルト舗装された地面が動き出した。一体何事だと四郎と銀次が驚けば、何と地面がそのまま地下の方へと降下を始めたのだ。頭上からは閉まるシャッター、裏側を見れば合金特有の鈍い光沢が見える。地面そのものが入り口だったのか、振動一つ感じなかった。

 

「まるで映画の中に飛び込んだ気分だぜ……」

「映画なら良かったな、けれどコレは現実だ」

 

 降下する地面、凡そ三十メートル四方の巨大なシャフト。赤い光が降下する速度に合わせて上へと流れていく。降下は三十秒程だろうか、速くもなく遅くもなく、丁度エレベーターより少し遅い程の速度だった。

 

 到着すると同時に一気に視界が開け、思わず愕然とする。広い、それが最初に抱いた感想だった。シャフトと空間を遮るものはなく、隔壁一枚存在しない。大きさは奥行きだけで百メートル以上ある、そこに整然と様々な機械が所狭しと並べられていた。壁と床は白一色、まるで病棟のような配色だった。

 

 並ぶ機械群は見た事のない車両、あれは兵器だろうか? それに人型の大型機械も存在する。けれど無人機ではない、誰かが乗り込む形の有人機だ。それが膝を着いて保管されていた。数は十、二十、いや百、もっと存在するかもしれない。

 

 拠点、その言葉の意味を正しく理解する。此処はコイツ等の軍事基地なのだ、もしこの光景を見せて自分達の反抗心をへし折る作戦だったのなら褒めてやりたい、その目論見は達成しているとも。

 銀次と四郎が肩を寄せ合い、ごくりと唾を呑み込む。

 

「まるでアバランシェ特派艦隊のハンガーみてぇだ……いや、兵装の規模で言えば艦隊どころじゃねぇ、大和の京中央都並みだ……ここが連中の本丸なのか?」

「――いや、連中は此処を支部と言った」

 

 つまりここは数ある基地の一つ、そういう事になる。こんなものがまた、星各地に存在すると考えると恐ろしくなった。連中の技術を考えるに此処の兵器一つで大和級の艦船を墜としそうな気配すらしてしまう。そんな筈がないと思いはするけれど、自分達の常識が通用しないのは嫌でも理解させられていた。

 

 連中は危害を加えないと言った、しかしどうしても万が一敵に回った事の事を考えてしまう。ある意味リスクを最も重視する調査隊らしかった。

 

 格納庫らしい巨大な空間には何人もの機械達が存在していた。そして連中は車両の影に隠れてじっと此方を眺めている。地上で見たどの型でもない、恐らく整備用か支援用として製造されたユニットなのだろう。心なしか体格も小柄だった。

 

『人間……本当に、本当に見つかったの?』

『データベースでしか見た事無かった、私達と同じなのに生体反応がある』

『今までの活動は全部無駄じゃなかったんだ!』

 

 上の連中と比べて此処の機械達は随分と慎重だった。勇んで突撃して来る事も無い、ただじっと此方を見るばかり。囲まれるよりは良かった、まだ見られるだけの方がマシだ。

 

 ズンズンと進んでいく大柄な機械、銀次と四郎はその背に続き、後ろの二人もゆっくりと歩く。銀次と四郎には無数の視線が集中しており居心地が悪かった、ここまで大勢の存在に見られる事は二人の経験上余り無かったが故に。

 

『此方です』

 

 ウィンドに文字が表示される。先導する機械が足を止めたのはハンガーを真っ直ぐ突っ切った所にある幾つもの扉の前、見る限りどれも同じ扉だった。どうやら一つ一つがシャフトとして機能しているようで、人の移動は全てエレベーターで行われているらしい。扉の脇についたボタンを押すと一秒足らずでポーンと軽快な音が鳴った。

 

 先導する女がまず乗り込み、銀次と四郎が続く、そして最後に二人組が乗り込んだ所で扉が閉まった。エレベーター内は広かった、二十人程度なら入りそうだ。ボタンは驚く程多く、一番端のボタンには『50』の文字、その文字を見つけ連中が数字の概念を用いている事を理解した。いや、元々自分達の言語情報を知っているような連中だ、当然と言えば当然だろう。意外だったのは連中の扱う文字が人類の扱う文字表記と同じ事であった。

 

 最下層である50のボタンを軽く押した機械はそのまま扉を閉め、静かにエレベーターは降下を始める。その間銀次と四郎は無言であった。

 

「――あー……あ、ぁ」

「!」

 

 エレベーター内で降下を待っていると不意に大柄な機械が声を上げた。突然の事に情けなくも肩をびくつかせる銀次と四郎、そして暫くそうやって何かを呻いていた機械だったが、「あいうえ、あいうえお」と二人の母国語を妙なイントネーションで続ける。そうすると段々抑揚がつき、自然な形で発音できるようになった。

 

「突然失礼しました、たった今言語情報のダウンロードとインストールが完了したので……改めまして、私達の拠点へようこそ、藤堂様とご友人の方」

 

 突然ペラペラと理解出来る言葉を話し出した機械に四郎は面食らう、しかし銀次は予め電子世界で言語情報の件を聞いていた為に動揺はしない。だが名前まで知られているとは思わなかった。衣服――鎧武者から着用者情報を引き出したのだろうか、覚悟はしていたとは言え気分が良いものではない。

 

「大和の言葉が使えたのか……」

「データベースに登録されている言語ならば全自動機械人形がダウンロード・インストールを行って使用出来ます、先程は申し訳ありません、何分人間との接触は百五年と八ヶ月ぶりでして、島国である大和の言語情報を取得するのに手間取ってしまいました」

 

 申し訳無さそうな表情でそう言う。どうやら此処の連中はあらゆる国の言語を揃えているらしい。人類だけではない、或はまだ自分達の知らない星の情報すらあるかもしれない。銀次は会話が出来るならば勇んで矢継ぎ早に質問を投げかけた。

 

「……俺達はこれからどうなる? 此方に敵対の意思はない」

「私達は人間に危害を加えません、ただ保護させて頂くだけです」

「母国へ帰して貰えるのか?」

「それは――どうでしょう、確約はしかねます」

 

 それはどういう意味でか、銀次と四郎には分からない。先に上司を何とかしろと言う事なのか、四郎と銀次は何とも言えない表情を面頬の中で作った。

 

「今は何処に向かっている?」

「この拠点の地下五十階、大和の言葉で言うなら天下堅牢と呼ばれる場所です、この拠点の中で最も強固な防壁と迎撃設備を備えた階層となります」

「……其処に、お前達の創造主が居るのか」

「いえ、今はもう使われておりません、もう百五年前からずっと」

「なに?」

 

 最も堅牢な場所、そう聞いて拠点のトップの人間が居座っているのだと思ったが――どうやら違うらしい。一体なぜという疑問を抱くと同時、エレベーター内に電子音が鳴り響いた、最下層に到着したのだ。

 

 そして扉が開くと同時に一階の格納庫に負けず劣らずな空間が顔を出す。白一色の部屋、宛ら巨大な箱。しかし広大なその場所には格納庫と違って何も無い、車両も、兵器も、機械の姿も。ただ薄暗い白色が一面に広がっていた。

 

「この場所は友軍信号を持たない存在が侵入した場合、四方に設置された迎撃装置が一斉に攻撃を開始します、目には見えませんがエレベーターの扉から一直線、この一列のタイル以外には全て武装が仕込んであると思って下さい」

「……物騒だな、それに俺達はお前達の友軍じゃないだろう、何故攻撃されない」

「人間は最初から攻撃しない様に創られております」

「………」

 

 何か引っかかりを覚える。しかしそれを口に出す前に機械は部屋に踏み出す。その背中を真っ直ぐ、それこそ中央のタイルだけを踏む様に注意しながら部屋の中を歩いた。「別段、普通に歩いて貰ってかまいませんよ、攻撃はしてきませんから」と奴は言うが、不用意に兵器に触れたいとは思わなかった。

 

 真っ直ぐ真っ直ぐ、広い部屋を突っ切ると広大な部屋とはあまりにも不釣り合いな小さい扉の前に出る。横合いに認証用のディスプレイが一つ、後は両開きの白い何の変哲の無い扉。そのディスプレイに機械が手を翳すとピピピと言う音と共にガチャンと扉が音を立てた。

 

「さぁ、どうぞ」

「………四郎」

「わぁってる」

 

 機械は扉を開けたままドアマンの様に待機していた。銀次は一声かけてから部屋に踏み入る、その背に四郎が続き、それから二人組の機械、そして最後に大柄な機械が部屋に入る。大柄な機械が後ろ手に扉を閉めるとやけに音が響き、四郎と銀次は飛び込んだ部屋の中を見渡した。

 

 巨大な廊下だ、天井には小さな照明が点々と存在し白い地面を照らしている――そして左右に等間隔で扉が備え付けてあった。それぞれプレートが存在し、『001』、『002』といった風に記載されている。

 四郎と銀次はその長い廊下と立ち並ぶ扉の数に困惑を隠せなかった。

 

「これは……」

「お好きな部屋をどうぞ、どこも清掃は定期的に行っていますので直ぐに使用可能です、ご要望があれば出来得る限り応えます、ただ部屋の改築等はお時間を頂く事を御理解下さい」

「どういう事だ」

 

 銀次は振り返って三人の機械を見る。四郎も銀次の隣に立ち、訝し気に連中を見ていた。大柄な機械はニコニコと微笑むばかりで何も答えない、左右の機械に至っては安堵の表情を浮かべている。理解出来ない、銀次は続けて問いかけた。

 

「これは、捕虜という事だろうか?」

「いいえ、最初に言った通りです、私達は貴方達を保護し、守護する存在だと」

「……お前達の創造主に逢わせて欲しい」

 

 銀次は一歩踏み出してそう言い放った。しかし目の前の機械は眉を下げ、どこか寂しそうな声色で告げた。

 

「申し訳ございません……私達の創造主たる『人類』は百五年前に絶滅致しました」

「―――今、なんと言った」

「私達の創造主たる人類は、百五年前に絶滅致しましたと」

 

 人類。

 

 目の前の機械は確かにそう言った。つまりこの星を有していた知的生命体は自分達と同じ存在だったという事か? その時銀次を襲った衝撃はどれほどか、少なくとも一瞬全ての思考が止まってあらゆる感情が吹き飛んだ。

 

 人類――それは自分達を指す存在。

 

 この機械の姿形を見ただけで凡そ二本の足、二本の腕、目は二つで鼻と口は一つだと分かる。即ち連中の言う人類とは己の存在そのもの。

 

 それが意味する事は一つ。人類は既に月と火星以外に居住可能な星を開拓していたという事。こんな広大な基地を作る程にか? それも――百年以上前から。

 

「それは……つまり、俺達人類が百年前から此処に来て開拓したって言うのか? ――馬鹿な、あり得ない」

 

 瞬間的に廻った思考、しかし銀次はそんな筈はないと断じた。百年前、その頃はウィル・Oエンジンの開発すらされていなかった時期だ、精々出来てロケットエンジンを積んだ原始的な宇宙航行が限度だろう。大和は宇宙航行を可能とする艦船を作る技術力で列強に顔を並べた技術大国である。そんな大和が初の近距離跳躍を可能とする『宇宙航行艦船・新海』を作り上げたのが凡そ八十年前。そこから更に星々を股にかける程の長距離跳躍を行えるようになるまで二十年、まだ見ぬ第二の地球を見つける為に、そして宇宙を開拓する為に特派遠征連合艦隊、俗にいう調査隊が生まれたのが五十年前の事だ。

 

 最初は人死にも出した特派遠征、生物の存在する星を見つけられるのは本当に稀だ。だからこそ人の住める星の発見は話題にもなるし、凡そ秘匿する事は叶わない。連合艦隊はその名の通り母星である地球から国境を越えて集められた人材で構成されている、故にどこかの国が星を占有する事は叶わない。元々それらに関しては協定が結ばれているのだ、長距離跳躍による調査は各国から出し合った資源と金銭、人材によって行われる世界規模のプロジェクト。

 

 衛星を打ち上げるのとはワケが違う。

 けれどそれ以外には考えれなかった、考えられなかったが――その思考を銀次は自ら否定した。

 

「人類って俺達の事だろう? 百五年前に絶滅――つまり俺達が本格的に宇宙へと進出する前に、この星に居た創造主、人間は滅んだっていうのか? ロケットエンジンの機体で? 一体どれ程の時間航行すれば到着するって言うんだ!」

「……いや銀次、考え方を変えてみろ」

 

 あり得ない事だと機械三人に吼える銀次の肩を四郎が掴む。四郎は冷静であった、無論彼も銀次の思考に追従している。此処には人類が居た、そして滅んだ――人類と言う言葉に四郎も自分達を想定した。遥か昔に人類がこの星に辿り着き、そして強大な文明を築いたのだと。

 

 しかし可能性はそれだけではない、興奮する銀次を前に四郎は淡々とした口調で言い聞かせた。

 

「気持ちは分かるぜ、俺も人類がそんな前に、それこそ百年以上前からこの星に来るなんてあり得ねぇと思っている、ロケットで来れるような近い場所にあるんなら今まで調査隊が気付かねぇ筈が無い」

「あぁ……あぁ、その通りだ」

「けどよ、仮にだ、仮にだが……俺達と全く同じ地球がもう一つあるって可能性はどうだ?」

「なんだと」

 

 四郎の言葉に銀次は強い口調で返す。「確かにスゲェ確率かもしれねぇけど、ゼロじゃねぇだろ」と言って四郎は続けた。

 

「そっちの学問はからっきしだから詳しい事は分からねぇけど、人間――猿以外にも賢い動物は多い、例えば蛸だ、大昔の宇宙人が蛸みてぇな格好しているのは連中頭が良くて、もしかしたら海から地球を支配したかもしれねぇからだと聞いたぜ? だから地球がもう一度やり直すことになったら人類以外の存在が支配する可能性だってある」

「何が言いたい?」

「だからよ、逆に言えばもう一回やり直しても『人類が支配する』可能性だってある訳だ」

「………」

 

 銀次は四郎の言葉に黙り込んだ。四郎が言いたい事は理解した、つまりこの星は『もう一つの地球』であると。地球と似たような環境、同じように人類が発達し、星を支配し、母星である地球よりも早く技術を発達させて――そして絶滅した。

 

 そんな事があり得るのか、銀次は自分自身に問いかける。ゼロではないのだろう、しかし確率は決して高くない。そもそも地球と同じ様な環境の星というだけで確率は凄まじく低い。人間が生きていけるような星、その存在がこの五十年の調査で発見された数は片手の指で足りる。けれど人類のような知的生命体の存在は終ぞ発見されなかった。

 

 そこで更に人類が生まれ育ち、同じような道を辿り、技術を発展させる。それも我が母星よりも遥かに早い速度で。

 

 一体どれほどの確率か、それに連中は大和の言語情報すら持っていたのだ。それが地球を観測して得た情報なのか、それとも人類が発展する上で自然に生み出されたものなのか。全く違う星の同じ生命体が同じ言葉を話すか? 銀次は頭を抱えて唸った。

 

「一体どんな確率だ……そんな事が、あり得るのか」

「考えたって分からねぇよ、実際、此処には百五年前に人類が居て、そんでスゲェ技術を持っていた、今はもう居ない、そんだけだ」

「……お前は何でそんなにケロッとしているんだ」

「いや、だってよ、同じ人類だと思ったら何か気が抜けて、クソでかいエイリアンが出て来るならまだしも人間だぜ? 連中が作った機械だ、なら俺達を保護するってのもマジだろう」

「…………」

 

 銀次は完全に警戒を解き、呑気に腕を組んでゆらゆらと体を揺らす四郎を見る。しかし四郎の言う事も事実、同じ人類だと分かった途端胸を覆っていた靄のようなモノは晴れていた。得体のしれない巨大な何かではない、等身大の同じ人類だと分かると妙な安心感があった。

 

 見れば三人の機械は先程とうって変わって心配そうな表情で此方を見ている。自分が剣吞な雰囲気で叫んだからだろう、銀次は一つ息を吐き出すと天井を見上げて言った。

 

「……なら当面は、母星に救難信号を出す事が目的か」

「存外簡単にいけそうだけどな、通信塔なんぞ建てなくても此処の設備でどうとでもなりそうじゃねぇか、此処に人間が居ないっていうならこの文明もそっくり全部俺らのモンになるんだろう? これって勲章ものじゃないか?」

「せめて死に掛けた甲斐はあったと言う事か、だとしても実力でも何でもない所が痛いな」

 

 銀次は呟いて三人に顔を向ける。そして徐に手を胸に当てると、そのまま兜の解除信号を送った。瞬間、パシュンと音を立てて面頬と兜が畳まれていく。頭頂部から首回りにかけて展開していた装甲が重なり畳まれ、脊椎の方へと姿を消した。そして面頬が鎖骨の辺りに収納され銀次の素顔が露わになる。

 

 久々に吸い込んだ空気は随分と美味く感じた。籠っていた熱気が外に排出され僅かに汗ばんだ頬を拭って銀次は三人を見据える。考えたってしかたない、その言葉には賛成する。所詮頭の中で思考を重ねようと現実にそうであるかどうかは聞いてみなければ分からない、兎に角此処はかつて『私達の知らない人類』が存在していた星、そしてこの機械達はその遺産という事だった。

 

「……そこの大柄なお前は知っているだろうが藤堂銀次だ、母星へ戻るまでの間、世話になる」

勘解由小路(かでのこうじ)四郎、藤堂とは馴染みなんだ、世話になるぜ」

 

 四郎は兜を展開する事無く銀次の隣に並びそう自己紹介する。機械の三人はしかし、二人の挨拶を他所に銀次の顔ばかり見ていた。浮かべるのは驚きの表情、何か顔についているのかと訝しむと――三人の顔からサッと血の気が引いたような気がした。

 震える指先で大柄な機械が銀次を指差す。

 

「あぁ、ぁ……血が、血が……ッ!」

「血……? ん、あぁ」

 

 額を軽く擦って見れば指先に凝固した血液が付着していた。そう言えば墜落時に頭を打ったままだった、本当ならば治療してから動くべきだったのだろうがすっかり失念していた。幸い大した怪我ではない、消毒でもしてガーゼでも貼っておけば勝手に治るだろう。

 そう思って口を開こうとすると。

 

『緊急通達! 優先度等級一、指定された医療ユニットは直ちに最下層人類居住区まで急行せよ! 通達内容、保護した人類に負傷を確認、繰り返す、人類に負傷を確認! 人類医療班の出動要請、メディカルセンターの起動、並びに最悪の事態に備えカプセルの解凍指示!』

 

 拠点内に警報が鳴り響いた。天井の照明が一瞬で赤色に染まり白一面だった世界が赤に切り替わる。一体何事だ、何が起こったと銀次と四郎の二人は浮足立つ。そうこうしているとエレベーターへと続く両開きの扉が物凄い勢いで開け放たれ、そこから白い衣服を身に纏った機械が数人雪崩れ込んで来た。

 

『医療ユニットM020から025まで、到着したわ!』

『フルフェイスを被っていない方です、急いで! 額から出血しています!』

『! カーゴはやくっ!』

『分かっている!』

『装甲服はどうするの!? このままじゃカプセルに入らないよ!』

『カプセルは最終手段! 兎に角急いで、傷の具合を確かめるのッ!』

 

 えっ、えっ、何?

 そう言いながら右往左往する銀次。そんな彼の体を四方八方から囲んだ機械達は持ち運び可能な寝台――カーゴと呼ばれたソレに銀次を無理矢理寝かせた。そして恐ろしく速い手際でベルト固定され、そのまま半重力で浮遊するカーゴは銀次を乗せてエレベーターまで飛んで行った。後に残されたのはハラハラとその様子を見守っていた三人の機械と四郎。

 

「………え?」

 

 四郎は呆けた声を出して、そのまま何も出来ず突っ立っていた。

 

 

 

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