アンドロイドを愛した少年   作:トクサン

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 兎も角運ばなければ仕事が終わらない。よたよたと覚束ない足取りで倉庫を出た忠輝は老人のカラカラと笑う声を背に時間を掛けて奥の部屋に荷物を運び込んだ。台の上に横になっていた真心が顔を赤くして必死に荷物を運び込んで来た忠輝に「大丈夫?」と声を掛ける。忠輝は何度も頷きながらやっとの思いで荷物を真心のすぐ横に降ろした。

 

「あ、あぁ、大丈夫」

「ごめんね、おじさん多分久しぶりに人と話したから、ちょっと舞い上がっているんだと思う」

「……なるほどね」

 

 人間が好きと自分の口で言う程なのだ、あながち間違いでもない気がした。

 忠輝は真心の寝そべる台の傍に寄ると、「傷、大丈夫か?」と彼女を心配げに見つめる。真心は小さく微笑むと、「大丈夫だよ」と言った。そう言いながら忠輝の視線を遮る様に自分の傷を隠す。

 

「痛覚は切ったから、本当に痛みは何でも無いの、私自身は元気なくらい」

「痛覚……そっか、うん、なら良かった」

 

 痛みが無いのなら良い、けれど痛覚を切ると言う言葉が余りにも異質で何となく受け入れがたい何かが自分の中から込み上げたのを自覚した。それを悟られない様に下手糞な笑みを浮かべ、真心の手を握ってその場に屈む。

 握った真心の手は暖かかった。

 

「……ごめんね、忠輝」

「何がさ」

「………色々」

 

 問うた忠輝の言葉に真心は沈んだ声色で答える。彼女の言う色々に様々な意味が込められているのは何となく分かった。だから忠輝は何でもない様に応える。

 

「俺の家でもう聞いた」

「それでも、何回言っても足りない位」

「なんだよ、そんな殊勝に謝るなんて柄じゃないだろう、お前は」

「私だって真面目に謝る時位あるよ、こういう時とか」

 

 ぎゅっと握った手に力が籠る、其処から真心の感情が伝わって来るような気がした。忠輝は空いたもう片方の手で真心の手を包み静かに息を吐き出す。色んな感情をその中に混ぜ込んで自分の胸の中を落ち着かせた。そうすると少しだけ思考がクリアになった気がした。包んだ真心の手を擦り、忠輝は呟く。

 

「良いよ、真心が生きていれば、ソレで良い」

「……自動機械でも?」

「じゃあ聞くけど、真心は俺が自動機械だって言ったら嫌いになるのかよ」

「まさか、寧ろ親近感、ちょっと驚くけれど」

「じゃあそれと一緒だ、人間だろうとそうじゃなかろうと、真心は真心だ」

「……人間って、不思議だね」

「人間も自動機械も大して変わらないよ、外見も――中身も」

 

 寧ろ真心達(自動機械)の方が暖かくて人間味があるんじゃないかと、そう思ってしまう位に。忠輝は真心の正体を知るまで自動機械がこれ程までに人間に近い存在だという事を知らなかった。或は敢えて【人に似せない様に】作っているのかもしれない、そう勘繰ってしまう。

 忠輝が真心の手を握ってじっと屈んでいると、不意に後ろからガチャガチャと金属音を鳴らして老人が部屋に入って来た。彼は真心と忠輝を一瞥すると鼻を鳴らし、それから少しだけ笑みを浮かべて口を開いた。

 

「おう坊主、これから真心を治す、ちょっと退いてろ」

「あ……」

 

 老人は外套の上から工具の入ったベルトを巻き付けていた。どれも見た事がない工具ばかりだ、或は人間の手術に使う様な道具にも見える。ともあれ準備万端、これから彼女を『修理』するのだろう。忠輝の置いた段ボールの横に立って真心に「少し寝てろ」と告げる老人。真心は彼の言葉に頷くと、「忠輝、また後で」と微笑んだ。

 

「廊下で少し待ってろ、倉庫から適当に座れるモン引っ張って来ても良い、もし優佳子が来たら『治療中だから少し待ってろ』と言ってくれ、終わるまでは部屋に入るな、気が散る」

「……はい」

 

 忠輝は二人の言葉に頷き真心の手を放す。温もりを手放した瞬間、ひやりとした空気が手を包み込んだ。此処に居ても自分に出来る事なんて何も無い、そう理解した忠輝は一人部屋を後にする。後ろ髪を引かれながら扉を後ろ手に閉めて廊下に出ると静謐な空間が辺りに広がった。

 

「………」

 

 独りで待つ時間は忠輝にとって苦痛だった、誰も居ない空間は否が応でも忠輝を思考の渦に引き摺り込む。本当にこれで良いのかとか、今からでも遅く無いんじゃないかとか、精神力の弱い自分は現実と言う名の圧力に屈しそうになる。勢いで此処まで来たと言われれば否定できない、けれど少なくない自分の意思が必死に足掻いた結果でもあった。

 だから、退けない、退きたくない。

 

 忠輝は倉庫から埃を被ったパイプ椅子を引っ張り出してきて、そのまま廊下の端に広げて腰を落とした。ギシリとパイプが軋み錆びた表面が光を反射する。忠輝はそのパイプ椅子の表面を撫でながら思った。

 自動機械も、このパイプ椅子も、大元は一緒なのだ。人に作られて此処に在る、ただ違う点は『感情を持っているかどうか』、仮にこのパイプ椅子が喋り、独りでに動き、何らかの感情を抱いているのであれば忠輝もこう無機質的に接する事は出来ないだろう。それだけの違いなのだ、それだけの違いでこうも『人間らしく見える』のだ。

 ならば人を人足らしめているのは感情なのではないだろうか。

 

 感情を持っていれば、【人】と呼べるのではないだろうか?

 

 そこまで考えて笑ってしまう。人と自動機械の定義など忠輝は今まで深く考えた事が無かった。どれ程人間に近い自動機械でも、笑わず、泣かず、能面の様な表情ばかりで、タグを見れば「あぁ、やっぱり」と納得できるものだった。例え笑う機能を、泣く機能を持っていてもそれはお手本の様な綺麗過ぎる感情で。

 その中身が酷く空っぽである事を忠輝は知っている。何故怒るのか、何故泣くのか、その原因が無いから笑みも涙も空っぽに見える。この世界の自動機械は外見を取り繕った模造品でしか無かった。

 確かに真心達は余りに人に似すぎている、彼女達は自分達の感情を持ち、それに従って泣き、笑っていた。忠輝にはソレの何が悪いのか分からなかった。何故社会が彼女達を認めないのか、ただただ、分からなかった。

 彼女達が人間に害を為す何て、そんなのは一方的な決めつけなんじゃないかと、そう思ってしまう。

 

「っ……!?」

 

 そんな事を考えていると不意にガチャンと、廊下の向こう側にある扉が開いた。忠輝達がこの病院に入って来た時の扉だ、誰が来たのかと視線を向ければ見知った顔が廊下を覗き込んだ。整った顔立ちに化粧の薄い色、いつも通りのスーツ姿に忠輝は椅子から立ち上がる。

 

「優佳子さん……!」

「忠輝」

 

 扉を開き、中に入って来たのは優佳子さん。彼女は素早く扉を潜ると後ろ手に閉める。優佳子さんは忠輝を見ても驚く事は無かった。恐らく真心が事前に伝えていたのだろう、その代わり彼女の表情にはどこか心配げな色が見えた。彼女は手に持ったバッグを廊下の脇に落すと忠輝の前に駆け寄る。忠輝はただ何も言わず、駆け寄って来た優佳子さんと柔らかい抱擁を交わした。優佳子さんは忠輝にとって第二の母親でもあった。緊迫の連続でガチガチに固まった体が優佳子との抱擁で解れていく。

 

「ごめんなさい、遅くなって」

「いいえ、良いんです、すみません、お仕事中に」

「良いのよ、どうせ今日で終わる仕事だもの」

 

 そう言って優佳子は忠輝の頭を撫でる。忠輝の身長は百七十前半だが彼女の身長は更に上だった。確かもう少しで百八十に届くとか何とか。彼女はその事に多少なりともコンプレックスを抱いていた様だが、それがある意味彼女の【人間らしさ】に拍車を掛けていた。

 彼女は忠輝の頭を撫でながら周囲を見渡す、その眼は忠輝ともう一人の子ども――真心を探している様だった。

 

「それで、真心は?」

「今、此処の……医師、で良いんでしょうか、彼が奥の部屋で治療を、意識はハッキリしていましたし、心配しないでって言っていました」

「そう……政玄さんの腕なら大丈夫、任せましょう」

 

 優佳子はそう言ってほっと胸を撫で下ろし、それから忠輝から離れる。政玄、彼女は確かにそう言っていた。恐らくあの老人の名前なのだろう、忠輝は口の中で小さくその言葉を繰り返した。人間が好きな自動機械、あの老人の名前を忘れない様に。

 優佳子は忠輝の顔を優しく掴み、その眉の辺りに指先で軽く触れた。

 

「それで、忠輝、貴方は怪我をしていないの? 触った感じ、この眉の傷以外は大きな怪我をしていない様だけれど」

「あっ……えっと」

 

 優佳子は忠輝の体をじっと見つめながらそう問いかける。言われて初めて気付く。忠輝は此処まで必死に真心の事だけを考えて走って来た、自分もまた車に撥ねられたハズなのに。そう思って自分の体に意識を向けた瞬間、今まで我慢していた分が溢れ出したようにあちこちが痛みだした。腹部、胸、それに背中、転がった拍子に打った肘や膝も。

 けれど泣き出すのは余りに見っとも無いと思ったので、忠輝は何でもない様に笑みを浮かべ「大丈夫です」と宣った。痩せ我慢は男の得意分野、なに、そう難しい事ではない。心の傷と比べれば体の傷など、どうという事は無い。

 

「嘘ね」

 

 優佳子は忠輝の痩せ我慢を僅か一秒足らずで見破った。人が必死に嘘を吐いているのに、何故そうも簡単に見破ってしまうのか。忠輝は思わず笑みが引き攣る。

 彼女は不意に指を一本立て、その指先で忠輝の胸をツンと突いた。

 瞬間、何とも堪えがたい痛みが走り忠輝は顔を顰める。

 

「まさか、自分で気付いていなかったなんて……打ち身、鬱血しているんじゃない? 途中薬局で薬を買って来たわ、傷を見せなさい」

「いえ、優佳子さん、俺は大丈夫――」

「見せなさい」

 

 有無を言わせぬ迫力。普段クールな彼女は反面、こういう場面に於いては絶対に譲らない人間だと忠輝は知っている。忠輝は身を乗り出した優佳子の迫力に仰け反りながら、渋々頷いて上着を脱いで見せた。彼女の前で虚勢を張り続ければ更に強硬手段に出られる可能性がある、それだけは避けたかった。

 上着を脱ぎ捨てるとひやりとした空気が肌を撫でた。そして体のあちこち出来た青痣、擦り傷などが電灯に照らされ優佳子の目に飛び込んで来る。着替える時は急いでいたので気にならなかったが、改めて見ると中々酷い惨状だ。忠輝は他人事の様に驚く。特に脇腹と胸の鬱血具合は一際目立っている、恐らく背中も相当酷い事になっているだろう。自分で恐る恐る青痣に触れてみると鈍い痛みが走った。

 

「……これで良く大丈夫と見栄を張れた物ね」

「ははは、見直しました?」

「呆れているのよ」

 

 言葉通りの表情を見せ優佳子は溜息を吐く、忠輝も正直ここまで酷いとは思っていなかった。優佳子は脇に放っていたショルダーバッグを持ってくるとその中からビニール袋を取り出した。薬局マークの入ったソレは忠輝の治療を行うための道具が一式揃っている。消毒液から湿布に絆創膏、止血用のスプレーから傷口保護のジェルまで。良く此処まで買い込んで来たモノだと忠輝は目を瞬かせる。

 

「凄い買い込んで来ましたね」

「車に撥ねられたって聞いたのよ、当然でしょう」

「……確かに」

 

 それだけ聞くと大層重傷に思えるから不思議だ。

 

「重傷なのよ、それなりに」

「………俺、口に出してました?」

「そう顔に書いてあるわ――何年貴方と居ると思っているの?」

 

 母は強し、色んな意味で。

 改めてこの人には敵わないと実感しつつ、「兎に角椅子に座りなさい、順に治療するわ」と言われパイプ椅子に腰かける。治療を受けるとなると特にやる事も無く、手持ち無沙汰となった忠輝は手際よく切り傷や裂傷を治療していく優佳子を見る。彼女は真剣な眼つきで忠輝の傷と向き合い、その一つ一つ丁寧に治療して行った。傷口を消毒しジェルで保護した後に絆創膏や包帯を巻く。痛みは相変わらずだったが治療したという事実が忠輝に確かな安心感を齎す。こんなに自分を心配し、真剣な表情で治療を施す彼女もまた――自動機械。不意にちくりと胸が痛んだ。

 

「……真心から聞いたのね」 

 

 忠輝の視線に気付いた優佳子は彼と目を合わせず、淡々と手を動かしながらそう口にした。忠輝はその言葉に一瞬息を詰まらせ、それから一つ頷く。

 

「ごめんなさい、今まで黙っていて」

「いえ……俺は、全然気にしていません、寧ろ未だに信じられていないと言うか」

「……実感が湧かない?」

「……正直」

 

 素直に頷く忠輝。実際問題、あの銀色を見た今でさえ真心や優佳子が自動機械であるという事実を認められずにいる。或は、もしかしたら、そんな希望的観測が心の隅に燻っていた。

 

「そうね、突然今まで過ごしていた隣人がロボットなんて言われても、突然過ぎて呑み込めないわよね、それが普通だわ、嫌われても仕方ない」

 

 優佳子は努めて顔を上げない様に喋っていた。故にその表情を伺い知る事は出来ない、けれど何となく悲しみの感情を憶えている事だけは分かった。忠輝は兎に角何か喋らなければと思い、必死に自分の中の感情を言葉にした。

 

「確かに驚きました……けれど、だからと言って嫌いになるとか、そういう訳じゃないんです」

 

 忠輝は優佳子さんをじっと見つめ口を開く。真心も言っていた、自分が人ではないと知って嫌いになったかと。彼女達はなぜこうも人間と言う奴を理解していながらそんな事を口にするのか。

 忠輝は人間である優佳子を、真心を大切に思っているのではない。十七年共に過ごした二人を大切に思っているのだ。其処に『人間の』という前提条件は必要ない。確かに内心で大変な衝撃を受けたのは事実だろう、けれどだからと言って好き嫌いが逆転する訳ではなかった。それ程までに軽い関係ではない筈だ、自分達は。

 

「優佳子さんと真心が人じゃないって言われても、俺はそれを理由に離れたくありません、人間でなければならない理由なんて無いんです、少なくとも俺には」

「……そうね、忠輝はそういう子、知っていたわ」

 

 ぱちんと、肘に絆創膏を張り付けた優佳子はそう口にして儚く微笑んだ。その笑みは忠輝に向けられたものではない、ただ忠輝に『そう在って欲しい』と願っていた自分に向けて零れた笑みだった。

 その浅ましさに思わず自嘲の息が漏れる。けれど分かっていても願わずにはいられなかった。

 

「人が皆、忠輝の様であれば良かったのだけれど」

「此処の医師……政玄さんにも、同じ事を言われました」

「えぇ、そうでしょうね、彼も人が好きで仕方ないから」

 

 けれどそう上手く行かないのが世の中。社会の人間の大多数は自動機械が感情を持つ事を許容しない。彼女はそう言って忠輝の治療を終えた。最後に青痣の上に湿布を張り付ける。そしてビニールに医療品を全て戻すと、「ままならない物ね」と目を瞑った。

 

「優佳子さんも……その、人間になりたいんですか?」

「人に……? それはきっと政玄さんの言葉ね」

「はい、自分達は人間になりたくて仕方ない連中だと」

「それは、少しだけ違うわ」

 

 優佳子は政玄の言葉を否定した。そして数秒ほど沈黙して考え込むと、忠輝の目を真っ直ぐ見据え自身の考えをはっきりと述べた。

 

「私は別段人になりたい訳ではないの、勿論、人として生きられるのならそれ以上の事はないのでしょうけれど、私は単純に自動機械と人が共存していければ良いのにと、そう思っているのよ」

「……共存、ですか」

「えぇ、今の自動機械は人に使われるだけの道具……『感情』を許された自動機械の生産は私達で終わっているの、私達自動機械は共存するチャンスすら極僅かな期間しか与えられなかった――ねぇ忠輝、人間には『人権』があるわ、けれど私達には何も無いの、安全も、何もかもが保証されない、全ては持ち主の気分次第、悲しければ泣くわ、嬉しければ笑うわ、殴られれば痛いし【心】も傷付く、そんな私達を守ってくれる規則(ルール)は何も無い」

 

 私は人が好きよ、多分そういう風に創られているから。けれど同時に、人間程残酷な生き物は居ないと思っているの。

 優佳子の言葉には何か言い表す事の出来ない圧があった、まるで自分が体験して来たかのように朗々と、それでいて迷いなく彼女は言葉を切る。忠輝は優佳子の言葉に口を結び、ただ聞き入る事しか許されなかった。それが人間である忠輝と自動機械である優佳子の立ち位置だったから。

 

「愛玩動物の様な立場でも無く、ただの道具でも無く、良き隣人として、或は家族として、社会の一員として、私は人と共に在りたいだけ――それ以外は望まないわ、人に成りたいなんて言わない、私は自動機械のままで良い、ただ隣に寄り添う権利が貰えれば、それで、それとも此れは人の身に作られた存在としては我儘が過ぎるかしら?」

 

 どこか悲しそうな表情で優佳子は忠輝に問いかける。忠輝は首を何度も横に振って、「いいえ、いいえ」と繰り返した。彼女の言葉の何処に我儘があるというのか、心があり、感情があり、人と同じ外見があり――そんな存在を犬猫の様に、或はただの道具の様に扱えと言うのは少々、いやかなり抵抗がある。けれど人の社会は今までそうしてきた、そう在れと彼女達に強要して来た。

 

「……何故、人は優佳子さん達を受け入れられないんでしょうか」

「それは創った側と創られた側、それがはっきりしているからよ、上下は既に決定している、人が上で私達は下、そして上位者は下位者の成り代わりを決して容認しない」

 

 そんなつもり、微塵もないのだけれどね。立ち上がって優佳子は忠輝に背を向ける。パイプ椅子に腰掛けたまま俯く忠輝を見下ろし、優佳子は余った医療品をショルダーバッグの中に詰め込んだ。

 

「……ごめんなさい、こんな話を聞かせてしまって」

「……いえ、俺も――どれだけ無関心に生きていたのか実感しました」

 

 忠輝の声には力が籠っている。自分の大切な人が自動機械と知って初めてその在り方を考えた、今まで忠輝にとって自動機械というのは『そういうモノがある』という大雑把な認識だった故に。人に近しく、しかし機械的で、完全に人間を再現出来てはいない『在り来たりな人間モドキの絡繰り人形』、言葉は悪いがそんな印象だった。

 けれど此処まで完璧に人間に近付いた自動機械、もしそんなモノがあるのならそうだ、既存の自動機械と同等の扱いなど出来ない。その在り方を考えようとしなかった、彼女達がどんな気持ちで生きているかなんて考えなかった、立場を考慮しなかった。

 

 人と同じであるのならば、人と同じ待遇をするべきではないか?

 

 それはある意味当然の結論の様で、しかし恐ろしく困難であるだろう事は出来の悪い己の頭ですら何となく理解出来た。良くも悪くも人間と言うのは――得がなければ動かない故に。

 けれどそんな事を自分が考えても詮無い事だと、そう忠輝は正しく理解していた。

 

 

 

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